「ほむほむ、中々に興味深い話だね。うん束さん的には別に良いよ、此処はセキュリティもあるから安全だからね。此処にいれば大丈夫だし束さんも自衛の準備あるから」
「有難う御座います博士」
簪との邂逅の後、束の元へと出向いて楯無から受けた提案などを全て話して顧問になる許可を取り付ける。これで後は千冬に簡単に最後の話をして顧問になるという感じだろう。束としては元々この学園に出向いたのは一夏のサポートやらが目的なので生徒会顧問への就任は生徒へのサポートもし易くなるし一夏が生徒会に入ってくれればよりそれも円滑になる事だろう。
「にしてもこの簪だっけ、この子の専用機興味深いな。束さんとは別の目線なのに目指している物の究極系は同じって言うんだから面白いよね。ジョー君もそう思わない?」
「情報がないとこんな感じに乖離するのかっていい例ですな」
ジョージは自身のIS機能の慣熟訓練を終えて水分を補給しながら答えを返す。ジョージ的にも簪の作っている専用機は興味深い、自分達のそれに酷く似ているというのもあるがこの世界でどんな観点でアーマーを観察、研究して既存の技術に組み込んで発展させるのかというのも気になる。そして同時にある事を思う。
「その簪ちゃん、どんな風に見る」
「素質はある、度胸もあるし努力を惜しまらないし視野も広い。必要なのは正当な評価を与える人間だな」
「やっぱり会長さんが優秀過ぎるのか」
「完全な上位互換だな楯無は、上手くフォローしていったとしても本人としてはずっと心苦しい思いをし続けるだけだ」
簪は同年代の代表候補生と比べても上位に入る程の優秀さ、今は専用機が完成しきっていないので訓練機である"打鉄"を使っているがそれでも機体の特性をすべて把握した上でそれらを本来のスペック以上に引き出す事が出来る才覚を持つ、才能を引き出す素質を持つ努力する天才と形容するべき……だがそんな彼女を上回る才能と実力を誇るのが姉の楯無なのである。
「そりゃ比較されて辛いだろう……自分が正当に評価されずに比較されるってかなり精神に来る、周りがその気がなくても本人からしたら自分なんて必要ないなんて結論に至りかねない」
「束さんも箒ちゃんには悪いことしまくってるからなんか自分の事言われてるみたいでなんか辛いわぁ……箒ちゃんからのメールに返そうかな……内容に迷うけど」
と思いがけない攻撃を受けた束は少しは避けていた箒との交流を取る事に決めて先程来ていたメールへの返信を決めたのであった。
「んでよレイ、この子の専用機は元の形から今さっきの完成予想図に作り直してるんだろ。出来るのか?」
「既に6割ほどは終わってるらしい、元々の専用機の特性を活用しながら各部は実家のコネと自分のコネ、そして整備課の友人たちの全面協力の賜物だそうだ」
「中々にやり手な嬢ちゃんだな」
そして改めてイグがちゃっかり記録していた完成予想図を見上げる、束としては簪の意図や愛情が籠っているそれをパクるなんて無粋且つ侮辱に値する行為をする気はない。寧ろ完成を応援してあげたいレベルの完成度、そのまま完成させられたら純粋に褒め称えたいほど。そんな物を見つめながらジョージは何処かで見た気があるするのを漸く思い出した。
「前にキャットが手に入れてた機密情報にあった奴に似てるんだ」
「俺も知ってる、というかまた彼女か……本当に深入りが好きだな」
「そのお陰でアッパーカット作戦も行えたんだ、そう言うなよ。ミョルニルアーマーの前身だった筈だった奴だな」
「ああ、それの名前もフルンディングやユグドラシルだった」
ジョージ曰く、巨大である上に制御が複雑、そして何より搭乗者が持たないレベルの負担が圧し掛かるのでスパルタンが纏ったとしても一度の戦闘が限度な上に搭乗者は高い確率で使い捨てになるというもの。だがその力は確かな物、公式な物かは不明だがキャットが見たものでは単騎でファントムを撃破したという記録まであったという。
「そんなお嬢ちゃんにお前は付き合ってやるのかい」
「彼女に戦闘訓練に参加したいという申し出はあった、許可は出すつもりだよ。後……彼女は一夏とも会いたいとも言ってた」
「一夏にか、確か奴の専用機は……」
「ああうん束さんの奴……」
一夏と簪はある種の因縁がある、が、その因縁も研究所側が技術の頓挫で束にそれが回って来たので実質的に研究所は自分のやるべき仕事を投げ捨てたに近い状態にある。一夏としては殆ど因縁はないだろうが、簪からすれば専用機の開発を投げ出された事になる元凶とも言える存在ともなる、理性的な彼女が短絡的な行動をとるとは思えないが……燻り続けるよりも確りと処理させてやった方がいいというものだろう。
と言う訳で後日、一夏の許可を取って専用機の整備授業という事で整備室へと訪れると矢張り簪の姿があった。彼女は073の姿に感激したように目を輝かせるが一夏の姿を見る少しだけ暗い瞳を向けた。何か思う所があるのかもしれない……とその時だった。
「うおおぉすげぇ!これ先生のアーマーリスペクトモチーフだろ!?いいなぁやっぱりこういう感じのが良かったな俺!!こっちの方がすげぇロマンだし何よりカッコいいじゃん!!」
「―――っ!!話が分かる、これには肩にカノン砲、腰にはスラスターとガトリングを付けるつもり」
「何それカッコ良すぎ、いやでもガトリングはシールドに着けねぇか!?」
「ガトリングシールド……迂闊だった、何故私はその可能性に……!!」
問題に発展するかもしれないと心配していたのは完全に無駄だった、何やら熱く語り合う二人の間には不思議な友情の橋が生まれているように見えた。
「―――更識 簪、簪でいい」
「織斑 一夏、一夏でいいぜ」
「「貴方/君とは盟友になれそうな気がする……!!」」
この後、ラウラも確りと盟友入りした模様。
S-B230キャット コールサイン:ノーブル2
ノーブルチーム所属のスパルタンⅢ。ノーブルチーム副官。
優れた情報技術・暗号解析技術を持ち、彼女に解析できなかったシステムはない、と称されるほど。その一方で任務を超えて物事に「深入り」する傾向があり、彼女によってチームが機密情報を入手しようとしたことが問題視されている。
右腕はある戦闘における負傷が原因で機械化されているが、その戦闘の模様はゲームの実写CMとして映像化されている