「―――いやなんだこの提案は」
「いや私もどうかと思いますけどそれだけ要請が多いんですよ」
生徒会の顧問へと就任した073と052、基本的に073をメインに据えて052はサブに回る事にして顧問をやっていくことを決めながら顧問として生徒会へと顔を出した。間もなく夏休みに入るがその前に始末して起きたい仕事があるからと会長の姿はそこにあった。そこで見せられた提案書の一つに難しい声を作る顧問にまあそうだろうな、みたいな声を出す。
「各部からの要請が多いというのは以前教員室で小耳にはさんだ事がある、だがそんなにか」
「はいそんなになんです、だからこっちに凄い要請が回ってきたりもしてるんです」
その要請というのは織斑 一夏の部活動への入部要請というものだった。んなもん生徒会に文句言う暇があるのなら自分で勧誘するなりすればいいだろうに。本人に入部の意志があって互いの合意と許可されあれば彼を入れるなんて簡単な事だろうに。
「誘いたくても周囲の女の子がガッチリガード固めて無理、だそうですよ」
「篠ノ之達あたりか……それを越える気概も無いのに無理だからこっちに面倒を掛けるのか」
「全くやってられませんよ、といっても生徒会の役割として生徒達の不平不満を上手く発散させるっていうのもありますからねぇ……ハイハイ戯言戯言お疲れ様です、でぶん投げ焼却炉、っていうのが出来ないのが面倒なんです」
と言いつつも顧問誕生のお陰でやるべき書類が激減して彼女としては万々歳で処理しようと思えば処理出来るのだが問題は処理の問題なのである。力技で解決しようとすれば全体から反感を買う、といっても一夏は一夏で逆に部活動にはあまり興味を示さないだろう、それよりもIS操縦の訓練の方が大切に決まっている。
「う~ん……この際一夏君に生徒会に入って貰えませんかぁ~ってお願いしてみようかな。それで生徒会に入った一夏君を時々部活動派遣にすれば……いやそれだと彼の負担が増えるだけだしなぁ~……」
頭を捻りながら唸りを上げている、そんな彼女へとハーブティーを差し入れする虚。それを受け取りながらも考えが纏まらない、そんな中で気分転換がてらにお願いした簪関連の事を尋ねてみる。
「あの簪ちゃんはどんな様子ですか?」
「同年代の中ではずば抜けて優秀だな、故に残念だな。彼女を彼女として見ないのは」
「アハハハッ……すいません、見てたのが私ぐらいだったので……」
楯無は楯無で簪を見つめて正当な評価とフォローをし続けていた、だが流石に一人だけでは無理が出る。それが今の現状だ、彼女の忙しさなどを加味すると致し方ない物もある。故に彼女の力を正当に評価して共に仲良く過ごせる友達こそが最高の薬になりえる。
「織斑やボーデヴィッヒと仲良くやっている、共に好きな事を話しながら専用機のアイデアに生かしている」
「へぇっ~……私なんて一夏君とは喧嘩にならないかなって凄い不安だったんですけど……意外にならない物なんですね」
「奴が彼女の趣味を理解しているのが大きいがな」
「ええっこっちの方がよくね?!俺ロマンも大好きだけど実用性との両立も大好きだぜ」
「でも私はこっちの方が良い、いやでも……う~ん……」
「「少佐殿ご意見を求めます!!」」
「逆に考えるだ、何方も取り入れちゃっていいんだと」
「「その考えはなかった……!!」」
「いやでもなんかそれってブレーキ役不在じゃないですか、ツッコミ不在の恐怖が出来上がりそうで怖いんですけど……」
楯無の不安通り、ロマンを理解した男子と現実するロマンと実用性の同居を目指す少女、そしてそこにロマン大好きな現役軍人が手を組んだ事でえらい事になると分かるのは少し後の事だったりするのであった。
「ああもういっその事、一夏君が部活でも立ち上げてくれたら楽なんだけどなぁ……」
「立ち上げる」
「ええ、それなら生徒達の勧誘も難しくなるし生徒会としても何で勧誘対策してくれないのかっていう言い訳もできますし内容によって一夏君のメリットにもなります」
それを聞いて073は少しばかり考える、多種多様な物が揃っているこのIS学園。此処は様々な部活動が容認されている、それは生徒達のフラストレーションを解消する場として部活が有効と判断されているからである。一夏はこの学園唯一の男子生徒、彼が抱えるストレスの事を考えれば部活の新設は恐らくあっさりと許可されるだろう。
「……ならばそれを促してみるか、それを生徒会が支援する形にすれば保護もやりやすいだろう」
「それいいですねぇ!ああでも内容とかどうするんですか?」
「博士に掛け合えば一発だ、電脳ダイブを応用したVRでのIS機動訓練ならば学園としても利になる」
「―――凄いわ、それなら訓練機の予約問題の解消にもつながりますね。その試験段階として一夏君の部活でお願いすると」
楯無的にもそれは魅力的な話だった。クラスメイトも訓練機の予約を入れたはいいが、人数が多くて自分の手番がまだまだ先で中々練習できなくて困っているというのはざらな話だった。中にはまだ専用機が与えられていない代表候補生もいるので、それらの問題の解消案としては非常に魅惑的。
「博士には俺から話を入れよう、一夏にもうまく誘導しておこう」
「すいませんお願いします、これなら夏休み前に一番の問題が解決するぞぉ~!!」
そんな喜びの声を上げる楯無は生徒会室から立ち去っていく顧問の姿を見送っておく。最初こそ怖かったが触れ合ってみると彼が人気教師となった理由が分かった気がする。
「ねぇ虚ちゃん、先生って本当にいい男よねぇ……結婚するなら先生みたいな人がいいわ私」
「ご安心ください会長は絶対無理ですから」
「ちょっと酷くないかしら!?これでも魅力に自信あるのよ!?」
「篠ノ之博士が御認めになると思いますか?」
「う"っ……」
「ほうほう電脳ダイブ応用のVR訓練か、いいね。いいよその位だったらお安い御用だよ、ク~ちゃん手伝って~」
「はい分かりました」
S-A259カーター コールサイン:ノーブル1
ノーブルチーム隊長でありスパルタンⅢ。
冷静かつ広範な視点を持ち、的確な指示を出す隊長としてメンバーからは絶大な信頼を得ていた。また非常に柔軟な思考を持ち、通常部隊との混成指揮も難なくこなしてみせる。
キャット、エミール等問題児ですら彼には一目置いていた事からも、能力以上のモノを持った指揮官だったようだ。