夏休みに突入したIS学園、普段の活気も半減したように静けさを持つようになっている。学園の多くの構成している海外からの生徒達は帰省の為に学園を離れているので当然ともいえる、と言っても全ての生徒たちが帰っている訳ではなく一定数の生徒は存在している。そんな学園になっても普段通りに変わらない巡回をし続けているスパルタン、073と052。夏季休暇中に外部からの侵入者がないとは限らないので巡回は必要なのである。それらが終了したら束の元へと戻るが、部活動に励んでいる一夏たちの元へ行くか生徒会に顔を出すかの二択へとなっていく。
「ノ、ノーマル初クリアァァァッッ……」
「お疲れ、さん……」
「いやぁ最後のラッシュマジでキッツ……」
「私ももうだめ……」
とソファにだらしなく身体を投げ出している一夏たちだが全身に滲み出ている圧倒的な疲労感、仮想空間における活動ゆえに身体に実際に疲れは蓄積している訳ではない筈なのに疲労感が凄まじい事になっている。病は気から来る物なのだと改めて思い知らされた一同であった。
「漸くノーマル制覇か、お疲れさん。ほれっ差し入れのラムネだ、いるか」
『あ、有難う御座いますぅ~……』
とノーブルが持って来たそれを受け取る、良く冷えているそれらを頭に当てて清涼感に癒しを感じつつも次は喉奥にそれを流し込んでいく。そんな様子の彼らにノーブルは少しだけ溜息のようなものを吐く。
「お前らそれで本当に大丈夫なのか、次はいよいよハードに挑戦するだろう」
「い、いや暫くは今回の経験を活かす為にトレーニングモードで……」
「それぞれの専用機に馴染ませるつもりです……」
と鈴と一夏が交代交代で説明するように話す。箒も箒で打鉄でそれを行うつもりでいるらしく、簪は今回得られたデータを基にして専用機の開発を加速させるつもりらしい。ノーマルモード攻略のお祝いに束から自分が手に入れるまで時間が掛かり過ぎてしまうパーツを073が貰ってくれたらしく、それを組み込んでいよいよ形にしていくらしい。稼働データのお陰で細かな調整まで出来るのでそれに専念するつもりでいる。
「まあそれもいいだろうな、というかお前らはあのモードに固執しすぎなんだ」
「いやだってISで集団戦するって本当に貴重な体験なんですよ、それが仮想空間とはいえ出来るんだからやらないなんて損ですよ」
「あのエリートのソードの振り方とかも凄い参考になったからなぁ……千冬姉が夢中になっちゃうのも分かるぜ」
因みに千冬は千冬で日に日にハーデストの難易度に喰らい付けるようになっており、間もなくハーデストのクリアも可能になってくるのではと思っている。
「そう言えばノーブル先生、スパル先生は何処に行ったんですか」
「ああ、あいつなら生徒会に顔を出してる。あいつは生徒会顧問でもあるからな」
「ええっそうなんですか?」
その言葉に思わず簪が大きく身体を揺らしてしまった、まさか姉が先生に接触している……いや普通に考えれば普通の事だがまさかこの部活も収めようとしているのかと勘繰るのだがノーブルはそれを否定するような答えを直ぐに出してくれた。
「しかしそれでは先生は二足の草鞋を履いているのでは」
「あ~……生徒会顧問って言っても名前を貸して貰いたいって話らしいぞ。なんでも他の先生方は忙しくて顧問になれないからずっと不在だったんだが、名前だけでも貸して欲しいって頭下げられたらしい。顧問が不在だとその分、書類が増えるんだと」
「あ~……なんかそういうのありますよね、代理証明書類をやらないといけないとか。俺も役所でそういう経験ありましたよ」
と胸をなでおろしてしまう簪、同時にある種の罪悪感にも似た物が走った。何故自分はそこまで姉を敵視しているのか、姉が悪くないなんて分かっているのに。自分が姉の優秀さに嫉妬しているだけで本当な姉のことを嫌っている訳ではないのに……と思う中で073が部室へと顔を出した。
「よぉサバイブ、生徒会の用事は終わりか」
「ああ。此処の施設のデータ提出と名前を貸した程度だ」
「ンでどうだったよ会長さんの様子は」
「稼働開始からまだそこまで立っていないのに稼働効率と技術向上が早すぎるとな」
それは当然と言えば当然かもしれない。『伝説の戦士たちを追いかけて』はコブナント戦争のデータを基にしてAIなどが組まれている、その内容も実際に戦いを経て得られた物によって構築されている。AIの再現とはいえコブナントたちの今回は本物に酷似している。それらの苛烈さも、そんな中で揉まれている訳だから成長もする筈。
「そうだな……4人とも今日はこれで上がるのか」
「いや大分マシになってきましたから、イージーで俺達がどれだけ動けるのか試すのもいいかなぁって」
「あっそれいいわね、ノーマル攻略の為に結構作戦とか考えたもんね」
「ああ。タイミングに合図、フォーメーションやら大量にな」
「それらの改善を試すチャンスかもね」
それらを見つつジョージはレイへと目配せをした、表情が見えない筈なのに相手が少し悪い顔になっているのが分かって肩を竦めながら了承を送るとよっしゃと声を出しながら手を叩いた。
「それじゃあお前ら、マシンに入れ。但し難易度はノーマルだ」
『えっ~!!?』
「まあそう言うな、その代わり今回は俺達も一緒に同行してやるから」
それを聞いて瞳の色が変わった、それはスパルタンの二人の戦いを間近で見る事が出来るという事になる。そんな機会に巡り合えるなんて思っても見なかったのか驚きながらも全員が興奮しながらもマシンへと走ってメットを被っていく。僅かに見えている口元は緩められた糸のように湾曲し、喜びで溢れているのが手に取るように解る。
「さて、やろうぜ」
「やれやれ……火力支援期待してるぞ」
「任せろ」
HALO
フォアランナーと呼ばれる古代種族が建造した、フラッドという存在への最終兵器。
その正体は強力な電磁パルスを照射し、フラッドではなくフラッドの餌となる知的生命体を殺す装置。フラッドにとても長い期間悩まされていたフォアランナーの遺物、そしてコブナントが救済を与えてくれる物と大いに誤解している存在。
その照射範囲は半径2万5千光年。
このHALOが大きな役割となり、物語は加速しながらうねりを上げていく。