「スパルタン-S-073。戦闘訓練時の教官を受け持つ事になっている、皆宜しく頼む」
挨拶を述べるスパルタン、直後に広まるのは困惑と驚愕の声。学園という場所からしてもその姿は余りにも異質過ぎる、肌を一切見せないスーツの上を重厚な鎧が取り囲んでいる。ヘルメットも完全に顔を覆い表情どころか視線すらうかがう事も出来ない、何よりこの声色は男の物だった。女子高であるIS学園では酷く目立つ。
「え、ええっ……?」
「声からして、男の人……だよね?」
「何か凄いゴツいの着てる……」
「ねえねえ今の声凄い渋くてカッコよくない!?」
「うんうん、低いけど確り通るダンディズム溢れる声。間違いないあのメットの下はナイスなダンディなお方よ!!」
「凄いカッコいい人……声だけなんかやばい惚れそう」
と両極端な反応がクラス内には波紋している。それはそれで当然とも言えるだろう、加えて述べたそれも名前というよりも区別を行う為のコードネーム的な印象を与える。様々な意味で異質な存在なそれに対して疑問が浮かぶ中で唯一安心と明るい顔を浮かべていたのは世界で初めてISを稼働させてしまった男、千冬の弟である織斑 一夏であった。
「(お、男の人、間違いない男の人だぁ……!!良かった俺ずっと男で一人此処にいるのかと思ってたよぉ……)」
一夏の心情は安心に溢れかえっていた。彼は不慮の事故……と言ってもいいのだろうか、兎に角ISに触れたせいで問答無用でIS学園への入学を強制された上に今まで勉強もした事もないISについて学んで行かなければいけない。しかも世界情勢的に考えて一夏は絶対にISから逃れられない、加えてIS学園は女子高である。今までクラス内で全周囲から女子の視線を放たれて胃が痛くなる寸前にまで行っていた。そこに現れた073の存在は酷く助けになった。
「(っつかあの人カッコ良すぎだろなんだよあれFPSに出てくるパワードアーマーかよやべぇよ俺ISなんかよりあれの方が何百倍も良いんですけどというか是非ともそちらを着させてください)」
ゲームをよくする一夏にとって073は全く別の視線も向けていた。彼が纏っているそれはゲームに出てくるパワードアーマーその物。ISよりもある種慣れ親しんだものに近しい物の方を望むは当然なのかもしれない。
「彼はこの学園の警備体制の増強の一環として出向して頂いた、彼は学園での業務の補佐の一方で警備を行う。彼の邪魔をするなよ、そして彼を
その一言にクラス中がざわついた。篠ノ之 束のネームバリューは改めて凄まじい、ISの開発者というだけではなく全世界が血眼になって探しているのにも拘らず未だに足取りすら追う事が出来ずにいる世界最高の科学者。そんな存在から遣わされたという事に驚愕の瞳が向けられる。
「篠ノ之 束が彼をここに派遣したのも彼女の厚意だ。どこぞの男がISを動かしたせいで色々大変だろうからと気を回してくれたようだ」
「(間違いなくそれって俺だよな……じゃあ束さんが俺の心配をしてあの人を……?)」
と思う一夏の考えは間違ってはいない。実際その通りなのだから。
「彼の厚意で戦闘訓練時の教官を引き受けてくださった、敬意を忘れるな。そして―――彼に無用なちょっかいや失礼な行為だけはやめておけよ、余計な気を回せば彼から博士に情報が渡る」
「あ、あの渡ったらどうなるんですか……?」
「そうだな、博士の機嫌を損なった場合……身の破滅は確実だと保証しておこう、故に敬意を忘れるな」
千冬の言葉に全員が強く頷いた。此処まで強く言っておけば面倒な事は起こそうとはしないだろう、後はこれを他のクラスや学年にも通達しなければならない。これを怠って妙なちょっかいが出た場合、排除に踏み切られる事もあり得るのでマジで忘れる事は出来ない。
「織斑先生、その辺りにしておいた方が……」
「警告は忘れられんのだが……まあ十分か、それでは一言どうぞ」
「一言、ですか」
そう言われて073は素直に言葉に詰まる。何を言えばいいのだろうか、相手は何も知らない一般人の少女らが大半を占めているだろう、中には深くISに関わって軍事関連の知識なども備えている物もいるだろうが……そんな彼女らに向けてどのような言葉を掛けるべきなのだろうか。少しだけ考えてから言葉を紡ぐ。
「私が教えるのは単純な事だけ。不満に思うかもしれんが人生経験の一環として取り組んでくれ」
そう区切った後この程度で良いかとも思ったがクラスの女子らは何やらもっと喋って欲しそうな瞳を向けている、まだ喋った方が良いかとも思いながらその視線の中に織斑 一夏の物があった事に気付き彼へと一瞥すると一言だけ言う。
「必要になったら声を掛けてくれ、声には応えよう」
そう言って挨拶を終了した。様々な感想が少女らの口から小声で出る中で一夏は最後の言葉が自分に向けられた物だと気づいて胸を撫で下ろしていた。困ったら相談しろ、それに近いニュアンスの物で話し相手程度に放ってくるという事だと思った。兎も角この学園内で味方が出来た事に大きな喜びを感じていた、が直ぐに始まった授業にて頭を抱える事になったのであった。
「レイ君、いっくんは如何だった?」
「普通の少年、ですね現状では」
「ありゃ見込みなし?」
「いえ……しかし言葉の意味に気付く程には勘が鋭いようで」
スパルタンⅡに施された肉体改造
炭化セラミックの骨化。
骨折を防ぐ為、先進素材である炭化セラミックを骨格構造に移植。
リスク:移植される量が骨格の総量の3%を越える場合、著しい白血球壊死を引き起こす。また対象が思春期前後の年齢である場合、骨の液状化などの極めて深刻な症状が発生する可能性がある。
筋肉増強の注射。
タンパク質複合体を筋肉に注入し、細胞の密度を高め乳酸の回復時間が短縮する。
リスク:5%の確率で致命的な心臓容積の増加が発生する。
甲状腺インプラント。
ヒト成長ホルモンの分泌を促す触媒を入れたプラチナペレットを甲状腺に移植、骨格と筋肉組織の成長率を高める。
リスク:稀に象皮病が発生。性欲の抑制。
頭毛細血管の反転。
感光性細胞である網膜の桿状体、円錐体の下の毛細血管の流れを押し上げて視力を強化。
リスク:手術に伴う拒絶反応による、網膜の除去と剥離による永久的失明。
神経樹状突起の超伝導加工。
生体電気の伝達に用いる神経を人為的に加工された素材に置換する。反射神経は300%の向上、知能・記憶力・創造性の著しい向上も期待される。
リスク:深刻なパーキンソン病とフレッチャー症候群となる恐れがある。
以上の改造を施された75名のスパルタンⅡ達は33名しか生き残らなかった。