一方通行<Accelerator>のヒーローアカデミア 作:モンステラ
世界総人口の8割が超常能力『個性』を持つに至った超常世界
それが彼の転生してきた世界だった
そしてこの世界では個性を悪用する『
父親の個性は触れているものを操る個性
母親の個性はエネルギーを観測する個性だった
そんな両親から生まれたのが彼だった
アレイスターが言っていたように、個性は彼が望んでいた『ベクトル操作』だった
しかし、彼には一方通行のような演算能力がなかった
少しでも個性を使おうものなら激しい頭痛とおびただしい出血に襲われる
それをどこからか嗅ぎつけたのか個性を研究している研究者たちがやってきて、個性の開発、改良をしたいと言い出した
両親は反対していたが、彼はこの提案を受けることにした
結果から言えば彼の演算能力は大幅に向上し、ベクトル操作も本物の一方通行の様に扱える様になった
赤外線などを常に反射していると髪は白くなり、瞳は赤くなった
容姿までもが一方通行の様になっていった
この頃からだった様な気がする。両親の態度がよそよそしくなったのは
小学校高学年の時だった。いつもの様に学校が終わり、いつもの様に家に帰宅する
そこにはいつも通りではない異様な雰囲気を感じ取った。別に家の家具が壊されている訳でも壁や床に血痕がついている訳ではない
しかし、彼は『何か』を感じた
ゆっくりと廊下を通り、リビングに入る
そこには
3人の男に拘束されている両親がいた
手は縛られ、床に座らされている
「逃げなさいッッ!!!」
母親が叫んだ
自分が助かる可能性を少しでも上げるためか、母親としての最後の情かはわからない
そんな両親を見て彼は愚かにも学園都市最強の
「あ?んだよこのクソガキはよぉ」
「泣かれると面倒だ。やっちまえ」
男たちはそう言うと少年のもとへ近づく
「悪いな坊ちゃん。少しお寝んねしてなぁ!!!!」
少年に近づいてきた男の腕が巨大化し、少年の顔目掛けて振りかぶる
こんな攻撃を子供が喰らったらひとたまりも無いだろう
が、男の目の前にいる少年は次元が違った
メキメキゴキャッ、と鈍い音が響く
「へ?」
素っ頓狂な声を出したのは殴った男だった
そして痛みは徐々に肥大化する
「ぎ、がぁぁぁぁああ!!???」
絶叫が響き渡る
少年を殴った巨大な腕が不自然な方向へ折れ曲がっている
痛みに耐える様に男はその場で蹲る
「な、何しやがったテメェッッ!!!!」
奥にいた男が目の前で起きている異様な光景を見て吠える
そのまま掌を少年へ向ける
「死ねぇぇ!!!」
もはや子供といえども手加減はしない
男の掌から炎の塊が発射される
一直線に向かってくる炎の塊に少年は回避行動はおろか瞬きすらせずにただただ立っている
少年の体に炎の塊が触れた瞬間、逆再生の様に炎の塊が男の元へ戻っていく
「ひ、んぎゃああああああ!!!!!」
男の皮膚は焼き爛れ、許容を超えた痛みで男の意識は吹き飛んだ
それを見ていた最後の男はそこでやっと気がついた
自分たちと目の前の少年に絶対的な壁が存在することに
「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!!」
腰を抜かし、それでもなお少年から逃げようと這いつくばりながら逃げる
彼はゆっくりと男の元へ近づく
壁まで追い詰められた男は涙目になって懇願する
少年はそれを無視し、男に触れる
びくん、と男の体が跳ねる
生体電気を操り、男の意識を刈り取る
次元が違いすぎた
彼の能力はこの世界では異常とも呼べるほどに強すぎた
彼は両親の拘束を解くために彼らに近づく
そこには恐怖で顔を歪める両親の姿があった
「ひぃ!ご、ごめんなさい!!」
「触るな!!離れるんだ!!」
母親は少年から自分を守る様に体を縮こませた
父親は少年から母親を守る様に位置どり、睨み付けてきた
母親からは恐怖心を感じ取った
父親からは敵意を感じ取った
両親からの拒絶を感じ取り、彼は思った
『そうか、俺はバケモノになっちまったのか』
少年は一方通行の気持ちが少しだけ分かった気がした
この絶対的な力を持つ代償を
その日から彼は
◇◇◇
目を覚ますとそこはいつもの天井だった
どうやら夢を見ていたようだ。それも幼少期の悪夢のような記憶
俺が一方通行になろうと決めた日の記憶
「チッ!クソったれが」
あの日から様々な研究所をたらい回しにされた
どの研究所もこの最強の能力は手に余るらしく、最終的にはかなりの金額を貰い、普通の人間らしい生活をしている
もちろんいくつかの誓約はある
例えば、二度と両親と関わらないことである
それを決めたのは勿論あちら側である
「そういえば今日は試験だったか」
今日は雄英高校の入学試験であった
数々のプロヒーローを排出している名門中の名門
洗面所へ行き、歯を磨き、顔を洗う
鏡には白い髪、赤い瞳、整った顔立ちに細いラインの少年が映っていた
(俺は、俺だ)
まるで鏡の前にいる自分自身に言い聞かすようにポツリと呟く
そのまま制服に着替え、缶コーヒーを飲む
(俺には何かを守ることなんてできねェと思ってやがるあのクソ共に見せてやる。俺にだって何かを守れる力があるってことをよォ)
飲み終わった缶コーヒーをクシャリと潰し、ゴミ箱へ放り投げる
時計の針が7時45分を刻んだのを確認すると、彼は立ち上がり、玄関へと向かう
「…行ってくる」
誰もいない部屋に寂しそうに呟くと、そのまま出て行った
彼の家から雄英高校までは歩いて30分ほどの所にある
そのため彼は歩いて雄英高校へと向かう
「めっちゃ白くね?」
「ほっそーい」
雄英高校に近づくにつれて他の受験者も増え、雑音が増える
雑音に少々苛立ちながら、能力を使う
無駄な声や音を反射し、静寂の中突き進む
音を反射し、しばらく歩いていると目的の建物が見えてきた
(でけェな)
目の前にあるのが雄英高校
今回の試験は実技試験と筆記試験に分かれており、どちらも簡単にはいかない
しかし、ベクトル操作を可能にするための演算能力を有している彼にはあくびが出るレベルである
指定された教室へと入り、筆記試験の指示を待つ。周りの受験生の様子は様々だった
緊張している者、最後の最後まで諦めずに参考書を読んでいる者、大人しく座っている者
そして彼の隣の受験者は、
何故かめちゃくちゃ焦りながら鞄を漁っていた
(あァ?何してンだ、コイツは)
彼の隣にいるのはピンク色の肌で額からツノみたいな物が生えている少女
「うわちゃー。消しゴム置いてきちゃったよぉ。切島に借りとけばよかったなー」
流石に消しゴムを忘れたことに焦っているのか、表情はかなり焦っていた
彼は自身の筆箱から消しゴムを取り出し、机の上を滑らし、彼女に渡す
「…使いたきゃ使え」
「え!!いいの!?でも、そしたら君の消しゴムが無くなっちゃわない?」
「必要ねェよ」
そう言って彼は机に突っ伏してしまった
すぐに寝息が聞こえ始めた
筆記試験が終わるとすぐに昼食の時間だった
彼はすぐに食堂へ行き、クックヒーロー『ランチラッシュ』の作る料理を堪能しに行った
1人で席に座り、ステーキ定食を食べていると、先ほどのピンク色の少女と黒髪の少年がやってきた
「あ!!さっきの消しゴムの人!!」
「あァ?」
「ここ座ってもいい?」
見れば彼女らも料理を持っている。おそらく席の確保に失敗したのだろう
ちょうど彼は4人がけの席に1人で座っていた
流石にここで断るのは人として終わっているだろう
「……勝手にしろ」
「ありがと!!」
「悪ぃな!!」
多分悪い奴らではないのだろう
人の悪意にしか触れてこなかった彼にとっては新鮮なものだった
食事も終わり、コーヒーをすすりながら反射の設定を確認していると
「そういえば切島は筆記どうだった?」
「俺か?俺はまぁまぁとしか言いようがねーな。お前はどうだったんだよ?」
「私は貸してもらった消しゴムが大活躍だったよ!!」
そう言って2人はコチラを見てくる
彼は彼らを無視し、席を立つ
「俺のことなンざどうでもいいだろ」
そう言い残して、彼は実技試験の説明会場へと足を進める
筆記試験はあくびが出るほど簡単だった
一般的に見れば難しい問題だっただろうが、スーパーコンピューターをも凌ぐ彼にかかれば造作もなかった
次は実技試験だ
こちらも彼にかかれば余裕だろうが、さっきの筆記試験よりは楽しめるだろう
◇◇◇
「今日は俺のライヴにようこそーーッ!!!エヴィバディセイヘイ!!!」
実技試験の説明のために集められた講堂で、ボイスヒーロー『プレゼント・マイク』がスーパーハイテンションで叫ぶが反応するものは1人もいない。いるわけがない
(うるせェなァ、オイ)
配布された説明用紙を一通り見終わった彼は、机に突っ伏していた
凄まじい音量で話すプレゼント・マイクを見て、顔をしかめる
しかし、プレゼント・マイクは止まらない
「こいつはシヴィィィ!!!!受験生のリスナー諸君に実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!!??」
もはやプレゼント・マイクをとめれる者などこの世にいないのではないかと思わせるようなテンションだ
配布されたプリントについて説明を始めるが、彼は特に疑問などはなかったため、昼寝をしようとしていた
机に突っ伏して目を閉じるが、隣から何やら独り言のようなものが聞こえた
彼は横目で見ると、隣にはブツブツ言っている緑毛の受験者がいた
(ったく、何なんですかァ?この世界にゃ変人しかいねェのかよ)
彼はある程度の音を反射に設定する
『反射』は無意識の内に行う、もっとも簡単な演算によって成り立っている
必要最低限な力を算出し、それ以外の全ての力の向きを反射するように設定する
音という振動が消えた世界で彼は目を瞑り、居眠りを始める
「質問よろしいでしょうか!!!!プリントに記載されている4種の仮想敵についてです!!先ほどの説明では3種類しか説明されていませんが、それはどう言ったことなのでしょうか!!!もし誤載なら恥ずべき痴態!!どういうことか説明を求めます!!」
説明も終盤になったところで、1人の受験者が挙手し、堂々とプレゼント・マイクに質問する
そして、そのまま後ろを振り返り
「ついでにそこの君たち!!そう、縮れ毛の君!!さっきからボソボソと気が散るじゃないか!!そして白髪の君!!いつまで居眠りしているんだ!!物見遊山ならば立ち去りたまえ!!!」
ビシッ!と指差し、プレゼント・マイクにも負けないような大声で注意をする
注意をされた緑色の髪の毛の少年は周囲に笑われながらも顔を赤くし、謝っていた
一方、隣の白髪の少年は居眠りから目覚めることはなく、いまだに机に突っ伏していた
「オーケーオーケー!!そこの受験生、ナイスなお便りサンキュー!!説明しちまうと、この4体目は0Pのお邪魔虫だ」
4種類目の仮想敵は得点0のお邪魔虫
しかも、倒すのは実質ほぼ不可能とのことだった
「Plus Ultra!!!」
目を覚ました彼が聞いのは雄英高校の校訓だった
説明会も終わり、指定された体育館へ向かおうとしている者が多くいる中、彼はあくびをしながら伸びをする
「……」
そんな中、隣の少年、先ほど彼と一緒に注意されていた少年がずっとこちらを見ている
「……なンか用か」
「えっ、いや!!何でもないです!!」
そう言うとビューッと走り去っていった
その背中を眺めながら、彼は首を傾げる
(ンだァ?アイツはよ)
彼も自身の試験会場を確認し、その場から立ち去る
やはり、この世界には変人しかいないようだった
彼が向かったのは、高校規模としてはデカすぎるであろう体育館だった
もはや体育館とは思えないほどだ。街一つがスッポリと入っているレベルだ
指定された会場に入ると、多くの受験者すでに集まっていた
受験者はそれぞれ動きやすい格好をしていた
ジャージや体操服など人それぞれだった
しかし、彼だけが浮いていた
白とグレーの縞柄の長袖のTシャツに黒色の長ズボン
「チッ!」
舌打ちをし、反射の設定を確認する
周りの受験者たちも雑談したり、準備運動をしたい、精神統一をしたりしていた
しばらくすると、指定された時刻になったが、何も連絡はない
彼だけだ
空気の些細な流れや周囲の異変を肌で感じ取っていた彼だけが気がついた
『ハイ!!!スタァァァァァトッ!!!!!!!』
プレゼント・マイクによる突然のスタートの放送
それが言い終わるか終わらないかのタイミングだった
ダンッッッ!!!!
足にかかるベクトルを操作し、驚異的なスピードでスタートダッシュを決め、目標を補足する
文字通り目にも止まらないスピードで加速した彼の前に一体の仮想敵が現れた
「ブッコロス!!!」
片言の日本語で叫ぶ仮想敵に対し、彼はただ手を前に出すだけだった
たったそれだけで、仮想敵の装甲を紙のように突き破離、戦闘不能にする
一瞬の出来事だった
それを見ていた他の受験者たちも慌てて行動を開始する
その間に彼は目の前にいる大量の仮想敵に向け、手を向ける
そしてその手が空気を掴み取る。暴風がうねり、風の槍が大量の仮想敵を破壊する
これだけの破壊力を持つ攻撃で怪我人が出ていないのは、彼の能力と演算によるものだろう
「さァて、ゲーム開始ってな」
そう言って彼は凶悪な笑みを浮かべ、仮想敵に向かっていった