クエスト:デジモンアドベンチャー   作:破壊光線

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 お使いのパソコンは正常です。(2回目)

 あと、コロモンは進化してアグモン、グレイモンと名前が変わっていますが、原作リスペクトでコロモンのまま行きます。


クエスト:デジモンアドベンチャー3

 ネコに引っかかれたシリカと太一。あの後コロモンも爪の餌食になり、三人とも仲良く同じ場所に同じ傷がある。

 太一とコロモンは若干血が流れていたが、シリカはそこまで深手を負っていない。それでも痛いには変わらないが。一方、3対1にもかかわらず勝利したネコだが、満足そうに尻尾を上げて子供部屋を出ていった。

 

「ネコに負けるかよ」

「しゅん」

「どうして私まで……」

 

 二人と一匹はそれぞれ不満を言いながらも怪我の手当てをする。頬にガーゼを張ったため、虫歯が悪化した見た目になったが、ひとまず手当てはできた。

 ポーションが使えればこんなダサい恰好しなくて済んだのに。アイテム画面が表示されないバグを恨みつつ、シリカが頬をさすっていると、コロモンがいきなり顔面に抱き着いた。もごもごしながら引きはがすと、コロモンは嬉しそうに。

 

「友達のしるし、だよ。君とボクは似ている気がするもん。きっと仲良くなれるよ」

 

 苦笑するシリカを他所に、コロモンは太一とヒカリにも同じように抱き着いていた。

 太一に見つかったり、コロモンが言葉を喋ったり、ネコに襲われたりと色々なイベントが起こったが、シリカは目的を忘れたわけではない。ゲンナイの依頼もあるし、個人的に本当に東京か確かめなくてはいけない。

 太一はコロモンと遊んでいるヒカリを眺めていた。これはチャンスだと、シリカは彼の肩を叩いた。

 

「あのさ、こんなことを聞くのも変だと思うけど、ここって、東京のどの辺?」

「光ヶ丘」

「光ヶ丘!? それじゃあ、SAO事件はどうなったの?」

「SAO? 何それ」

 

 太一はSAO事件を知らないらしい。ゲームに囚われて、ゲームオーバーが死につながるゲーム、SAO。発売日にテレビ局がこぞって取り上げたこの話題がニュースになっていないはずがない。

 なら、この光ヶ丘はSAOの中に存在する街の一つなんだろう。ピナとはぐれた理由が分からないが、コロモンというモンスターが生息しているのも納得できる。シリカは質問を変えてみた。

 

「……そっか。じゃあ、ここは何層?」

「何層って……層なんかないけど」

「え」

 

 おかしい。

 拠点となる街にもかかわらず、NPCに階層を訊ねても分からないと帰ってきた。シリカは何か情報が無いかと必死に周囲を見渡した。すると見つけた壁にかかったカレンダー。

 階層、場所が分からなかったとしても、時間というのも大切な情報だ。シリカが目を凝らすと、カレンダーは三月の後半に入っていた。ここまでは普通だが、シリカにとって信じられない数字が並んでいた。

 

「1995年……うそ、1995年!」

「そうだよ、今年は1995年。さっきからシリカさん変だよ」

 

 太一から変な人を見る目で見られているが、シリカにとってそんなものはどうでもいい。勢いよく子供部屋を飛び出すと、彼女の視界に飛び込んできたのは、見たことも無い箱型のテレビだった。

 

「何この箱!」

「テレビだよ。そんなのも知らないの?」

「テレビはもっと薄いんだよ!? ナーヴギアは? スマホは? パソコンは?」

 

 シリカは太一の肩を掴んで祈るように問いただすが、返答はどれも期待にそぐわないものだった。

 

「なーぶぎあ? すまほ? 何それ……パソコンならあるけど」

「見せて!」

「分かった。付いてきて」

 

 太一に案内された部屋にはパソコンがあった。しかし、そのパソコンもシリカの知っている液晶画面とは程遠い、ゴツくて画質の荒い、旧式のパソコンだった。

 

「太一くん、最新機種は無いの?」

「バカを言うなよ、これが最新機種だ」

「うそ」

 

 現実に戻ってきたとしても過去の世界に飛ばされたことが確定。文化も技術レベルも分からない。だって、この頃にシリカは生まれてすらないのだから。

 SAOの世界でもない、過去の日本。途方に暮れてシリカは力なくその場にへたり込んでしまった。そんな年上のお姉さんを見て。

 

「……父さんが帰ってくるまでならいてもいいよ」

 

 太一なりの優しさだろう。シリカは膝を抱えてうずくまりながらも力なく、「うん」と頷いた。

 子供部屋に戻った太一ははじめに押し入れを開いて、シリカが隠れる分のスペースを作った。太一の親が帰ってきたらシリカとコロモンがここに隠れることに決まった。

 

 丁度その時、太一の母親が帰宅。太一が子供部屋に入らないように上手く立ち回り、夜を迎えた。八神兄弟が寝るまで父親が帰宅しなかったため、いや、出ていくタイミングを失ったシリカは子供部屋にお世話になった。コロモンはヒカリに抱きかかえられて布団に入り、シリカは予定通り押し入れに隠れる。

 

 

 

 

 

 シリカがウトウトと舟をこぎ始めた頃、笛の音で目が覚めた。そっと押し入れの襖を少し開いて様子を伺うと、ガタガタ震えるコロモンと心配そうに見つめるヒカリが見える。太一も下りてきた。

 

「太一、ヒカリー帰ってきたぞぉ」

「父さんだ!」

 

 太一の父親が帰宅したらしい。深夜なのに声が大きいのは酔っぱらっているからだろう。コロモンの存在がバレるのは非常にマズい。芋ずる式でシリカまで見つかったら大騒ぎだ。

 太一は子供部屋のドアをしっかりと塞ぎ、父親が入って来れないように抑えている。太一の姿を見てシリカも加勢。二人でガチャガチャと物音を立てるドアノブにしがみついた。

 

「あれー、おっかしいなぁ。まあ、いっか」

 

 酔っぱらいの父親は諦めたのか、去って行った。危機を乗り越え、ふうと息をつくシリカと太一。握手して互いに健闘を称え合っていると、ヒカリの布団に山ができる。それはだんだん大きくなり、上のベッドを突き破り、重さでベッドを破壊した。

 ズルリと布団が落ちて、中から出てきたのは黄色い爬虫類。恐竜のような見た目で太くて大きな手足が生え、表情の読めない緑色の瞳が動いている。

 

「進化した」

 

 ゲームではお馴染みとなった進化。丸いボールのような生物が恐竜の怪物へと進化。黄色い恐竜は人語を話す気配もなく、窓を見つめるとツメで切り裂き、窓ガラスを割った。そのままベランダから外へと飛び出していった。

 

「コロモン!」

 

 太一が恐竜の姿になったコロモンを追いかけようとする。シリカはすぐに彼の腕を掴んだ。

 

「どこ行くの!」

「コロモンを探すんだ」

「どうして?」

「だって、コロモンの背中にはヒカリが乗っていたんだ」

 

 ヒカリを背負ったまま外へと飛び出していったコロモン。窓ガラスを破壊し、二段ベッドを突き破る大きさに成長した。昼間あれだけ仲が良かったからコロモンがヒカリを襲うとは考えられないが、このままどこかへ行って帰ってこないのも問題だ。

 どこか不安そうな太一に、シリカは言った。

 

「私も連れて行って」

 

 シリカは太一を抱きかかえると、コロモンが破壊したベランダに出る。壁が無くなって、飛び降りようと思えば簡単に飛び降りるが、その高さから考えて常人が飛び降りれば大ケガする。ネコに引っかかれたキズなど比ではない。マンションのベランダから見下ろして太一が叫んだ。

 

「シリカさん、一度戻らないと。ここから飛び降りることなんで出来ないよ」

 

 パニックになったシリカは昼間効果ないと分かっていたはずなのに、いつもの癖で指を振ってステータスウインドウを開こうとする。

 

 

 

≪繝励Ξ繧、繝、繝シ:silica≫

≪繧ケ繝??繧ソ繧ケ≫

HP:8300

STR:73

VIT:97

AGI:97

DEX:97

 

竕ェ陬?y竕ォ

繧、繝シ繝懊Φ繝サ繝?繧ャ繝シ

繧キ繝ォ繝舌?繧ケ繝ャ繝?ヨ繝サ繧「繝シ繝槭?

窶ヲ窶ヲ

 

……

 

竕ェ繧「繧、繝?Β竕ォ

繝昴?繧キ繝ァ繝ウテ暦シ托シ×13

繝上う繝昴?繧キ繝ァ繝ウテ暦シ×7

 

……

 

 なんとシリカの目の前にステータスウインドウが表示された。一部文字化けしているものの、SAOの世界でなんども見た、あのステータス画面だった。

 

「ステータス画面が開いた。……よし、これなら」

 

 シリカの耳にボレロが聞こえてくる。ゲームの世界で一年かけて育て上げた力が復活。モンスターと戦ってきた証がここにある。これならベランダから飛び降りてもどうにかなるかもしれない。

 

 シリカは太一を抱きかかえたままベランダから飛び降りた。ゲームの力を取り戻したシリカの身体は見事着地を決めて、二人にケガはない。

 

「す、すげえ」

「たかが数字が増えるだけで、そこまで無茶なことができるんです」

 

 とある黒の剣士が言った言葉。太一は数値が何なのかは分からなかったが、単純にベランダから飛び降りて無事だったことに感心していた。興奮さめぬ太一を下ろすと、シリカは手を握って走り出した。

 

 破壊された自販機、小さな炎に包まれている電話ボックスの残骸。歩道橋やマンションにも焼け焦げた跡が付いている。それは、例えるならドラゴンが吐いた火球が爆発してできた焼け跡と言ったところか。

 もちろんここが現実の光が丘ならドラゴンなど存在しない。コロモンが進化した恐竜が火球を放ったと考えるのが妥当だろう。

 

「誰がいったい」

 

 太一は現状を受け入れられていない。いつも見ていた自販機や歩道橋が破壊されたことは、太一にとって日常が破壊されたことに等しい。かつてシリカが受けたソードアート・オンラインのデスゲーム化宣言と同じくらい衝撃的な出来事だった。

 太一はショックを受けて動けなくなってしまった。シリカは彼の両肩を両腕で叩くと、言い放つ。

 

「違うよ、だってコロモンはネコに負けたんだよ」

 

 太一はうなずいて、シリカを見返した。

 

「ヒカリー、ヒカリー」

「ヒカリちゃーん、コロモ―ン」

 

 太一とシリカはお互い離れないように手をつなぎながら夜の光ヶ丘を走った。コロモンが破壊した痕跡をたどっていくと、最終的には太一の住んでいるマンションに戻ってきた。建物の下をくぐって、大通りまで走ると、二人の目の前を巨大な鳥が横っぎった。怪鳥を追うように、小さな火球が追随する。

 

 火球は怪鳥や、その後ろにあった歩道橋へ当たり、爆発した。歩道橋の被害からそれなりの威力があると思われるが、怪鳥の大きさは5メートルを超え、その巨体、反応から見て火球のダメージはないに等しい。

 

「鳥?」

「火球は誰が」

 

 太一は怪鳥に注目し、シリカは火球を撃った相手を探す。

 

「太一そこにヒカリちゃん!」

 

 シリカが歩道橋の下に黄色い恐竜となったコロモンを見つけた。背中にはヒカリがしがみついている。

 

「ヒカリー!」

 

 すぐさま太一は妹の元へと向かった。太一の背中を見ながら、シリカは隠していたダガーを取り出した。黒い剣士から貰った大切な武器だ。

 両手でしっかりと握りしめ、怪鳥から視線を外さないように太一の後を追う。

 

≪繝代Ο繝?ヨ繝「繝ウ≫

 

 怪鳥のステータスらしき文字が表示されるが、相変わらずバグっている。しかし、シリカにとってそんなことはどうでもよかった。

 

「ステータスが表示されている……SAOにいた時、ゲンナイさんの隣にいたモンスターと一緒。だったら、あの怪鳥は倒せるの?」

 

 文字化けしているとはいえ、ゲームのソードアート・オンラインと同じ表現が使われている。なら、この光ヶ丘は精密に造られたステージか何か。もしくは怪鳥の出現によって、MRのようなゲームとリアルが融合した世界になってしまったか。どちらにせよ、ゲームのシリカの能力が通用するならば、あの怪鳥を倒せる可能性は大いにある。

 

 太一はヒカリを助けようとするが、ヒカリはコロモンを心配しているようで、離れようとしない。恐竜になったコロモンはさっきから火球を撃って怪鳥を攻撃している。太一とヒカリ、コロモンがNPCならシリカの味方だらろう。

ならば。

 

「ソードスキル、発動」

 

 シリカはダガーを構えて、怪鳥目掛けて突っ込んだ。

 幸い、怪鳥はコロモンのみを敵と認識していないため、シリカは攻撃を受けることなく近づけた。そのまま股の下をくぐり、柔らかそうな尾羽にたどりつく。

 

「ラッピドバイト……スキルまで」

 

 シリカが短剣に力をこめて走り出すと、短剣スキルの中級突進技、≪ラッピドバイト≫の発動に成功。シリカの短剣は柔らかな羽毛を散らしながら、怪鳥の背中に突き刺さった。

 思わぬところからダメージを受け、緑色の怪鳥の目がシリカを捕らえる。感情のない丸い二つの目は瞳の大きさを変えてシリカに焦点を合わせた。

 

 見た目が鳥なのに、夜目が効くなんて。

 

 シリカは内心悪態をつくが、街灯に照らされた光ヶ丘は明るい。まして光源のすぐ近くにいるシリカはスポットライトが当たったように目立っていた。

 下から照らされた怪鳥は鳥のくせに額は銀色の甲殻に覆われていて、赤い触角が付いている。緑色の巨体に金色の翼、翼の根元から鷲の足のような腕が生えていた。

 

 ここまで来ると鳥というより怪獣に近いが、この怪鳥の顔がインコに似ていたので、シリカの頭にインコのモンスター、≪パロットモン≫という単語が浮かんだ。こんな時に何を考えているんだろうと思いながらも、敵が怪獣ではなくインコへとランクダウンすると、何とか倒せそうな気がしてきた。

 パロットモンは鋭利なツメを振り下ろしてシリカを狙うが当たらない。さらに背中からコロモンの火球を受けて戦いにくそうだ。

 

「よし、いける!」

 

 ここでシリカの短剣スキル≪ファッドエッジ≫がクリティカルヒット。連続攻撃がパロットモンの足を捕らえ、≪怯み値≫が溜まったのか怪鳥が膝をついた。シリカはここぞとばかりに短剣を振って追撃を図る。

 パロットモンが電話の着信音のような鳴き声を上げると、シリカの攻撃を嫌がるように翼を広げて飛び立った。二本の触角を立てて、電気を生み出した。

 

「ヤバい!」

 

 パロットモンの触角が一瞬、光ったかと思うと轟音と共に青色の稲妻が歩道橋へと走る。

 戦闘に慣れていたシリカは回避できた。直撃した歩道橋は跡形もなく崩れ去っていて、瓦礫の山と砂ぼこりが舞うだけだ。

 まともにもらわなくてよかった。シリカは胸を撫で下ろすが、大切なことを思い出した。

 

「太一、ヒカリちゃん!」

 

 あの二人はコロモンと一緒に歩道橋の下にいる。瓦礫の下敷きになっているかもしれない。血の気が引いて汗が流れる。この『光ヶ丘』という異質なフィールドで、唯一のシリカの仲間を失った。クエストは失敗。それだけならまだマシ、元のフィールドに変えれる可能性が無くなったかもしれない。

 

 ダメージはともかく、コロモンの攻撃はパロットモンのヘイトを分散させていたのは確かだ。今後、援護無しであの怪鳥を倒せるのか。

二人の安否を確かめるために、いつもの癖でステータス画面を開いた。

 

 

 

≪プレイヤー:silica≫

≪ステータス≫

HP:8300

STR:73

VIT:97

AGI:97

DEX:97

 

≪装備≫

イーボン・ダガー

シルバースレット・アーマー

……

 

≪アイテム≫

ポーション×13

ハイポーション×7

 

……

 

 

 

 透明の長方形のようなものに文字が書かれている。パソコンに表示されるウインドウのような情報。それはシリカが見慣れていた数字であり、文字配列。デスゲームと化した世界でシリカの身体の一部となっていたようなもの。ゲームで言うところのステータス画面。それも、完全な形で文字化けなど一切なく、復活してた。

 

「や、やったあ、ステータスが戻ってる。文字化けもなし」

 

 耳をすませばBGMだったはずのボレロは、まじかでオーケストラが演奏しているかのような迫力をもっていた。狂ったように鳴り響く電話の着信音。信号機は発狂し、三色のライトを同時に点滅させている。マンションの廊下の電灯は付いたり消えたりを繰り返していた。

 何が起きているのかサッパリ分からない。デジタルに関するものが意志を持ったように動き出し、シリカとパロットモンの戦いに興奮している。

 

「地図、地図っと」

 

 シリカはパロットモンの攻撃を避けながらメッセージウインドウをスクロールしてマップを選択。シリカの前にマップ画面が表示された。自分を示すアイコンと、近くに敵を示す赤い印で表示されている。大きさを考えるとパロットモンだろう。NPCのアイコンを探すが、それらしきものは見当たらない。代わりに緑色のNPCマークが表示されていた。

 シリカが不思議に思い、眉をひそめると、ボレロの間から地鳴りのような鳴き声が聞こえてくる。

 

「歩道橋から……コロモン?」

 

 シリカが瓦礫の山に注目すると、砂ぼこりの中心に巨大な影が見えた。滑らかな曲線、二対の尖った何か。それらは決して瓦礫が積み重なって出来たものとは思えない。次第に砂ぼこりが晴れて、その中心にいたものは。

 

「……怪獣」

 

 あまりの変貌にシリカは息を飲んだ。

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