DARKER THAN BLACK ―煉獄の扉―   作:オンドゥル大使

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第四章「決別の閃光は、愛憎の翼とともに…」(中編)
第三十一話「協定を結ぶ」


 

「――以上だ。昨日の契約者騒動に関しては分かっている事は少ない」

 

 そう結んだレインマンにミシュアは提言していた。

 

「では継続捜査は打ち切れと?」

 

「判定の危ない事件に部下を関わらせたくはない、と言っているんだ。バックには巨大企業が見え隠れする。それに、君がご執心の契約者の星のスペクトルが観測された。……前回の事と言い、あまり無茶をするもんじゃない」

 

「それは……」

 

「それはその通りでしょう。レディロンド。命はいくつもあるものじゃないんですから」

 

 執務室備え付けのアンティークを眺めつつ、ジキルは声にする。彼女とその相棒であるジェッツはアンティークの調度品を観察する。

 

 その有り様がどう見ても契約者のそれには思えず、ミシュアは当惑する。

 

「……口を挟まないでいただきたい」

 

「ですが、一蓮托生です。私達はこの国で成すべき事を遂行するまで祖国にも帰れない。ここでの事件の解決は急務ですから」

 

「……それは皮肉ですか」

 

「いえ、事実のみを。第一、あなた達を皮肉ってどうするのですか。前回の失態は明らかに私達二人のもの。あなた達は現地警察との軋轢もある。案外この国での捜査は上手くいかない事も分かった」

 

「それを祖国とやらに報告しますか」

 

「いえ、その気分でもない」

 

 応じたジキルはアンティーク品を見つめつつ、鼻歌を漏らす。

 

「……ぼくから言わせればね、君らの戦いは少しばかり迂闊だとは思うな」

 

 まさかジェッツが口火を切るとも思っておらず、ミシュアは目を白黒させる。

 

「迂闊……ですか」

 

「契約者相手の装備も貧弱が過ぎる。もし、本当に契約者と会敵したらどうするつもりだい? ……その辺がイマイチだと思うけれど」

 

「ジェッツ。正直さは時に毒となる」

 

「これは忠告だよ、ミシュア。このままじゃ契約者どころか、一企業の力さえも抑えられない」

 

 まさかのジェッツの厳しい声音にミシュアは言葉をなくす。

 

 レインマンが咳払いを発し、話題を変える。

 

「……昨日の活動契約者に関しては確かジャンが今、天文部に問い質しているところだったな」

 

「あ……はい。メシエコードが割れれば、ある程度の追跡は可能かと」

 

「だが企業が契約者を擁するようになれば、それこそ警察の権威は地に堕ちる。ただでさえ契約難民絡みの事件は解決の日の目を見ていない。見通しもつかない中でどれほどの検挙率を上げられるのか。市民は見ていないようでよく見ているとも。【煉獄門】関連にしてもそうだ。わたし達が未熟である事はニューヨークの市民には知れ渡っていると思ったほうがいい」

 

 レインマンの声音は重い。ミシュアは執務室を後にしていた。

 

 どっと疲れを感じ、嘆息を漏らしたところでジキルがひょいと顔を出す。

 

「……疲れていますか?」

 

「……それなりに。第一、あなた方は帰らなくって本当にいいんですか? ……例の契約者は死んだのでしょう?」

 

「確かにこの国の警察機関に潜り込むための方便でしたがね。気にもなるのですよ。契約者の能力で殺される旧市街地の者達。現地警察に任せたくないのはよく分かりますし」

 

 ジキルはデスクにつき、煙草のパッケージを発見する。

 

「意外ですね。吸うんですか?」

 

「いえ……これは友人が……」

 

「なるほど。友達想いなのですね、レディロンドは」

 

 その言葉振りはどこか嘲りが混じっているようで、ミシュアは眉根を寄せる。

 

「……あの、用がないのならこの案件には関わらないでください。その祖国とやらも望んでいないのでは?」

 

「これは手厳しい。……しかし、私達も暇を持て余していると上からお叱りが入る。だから出来るだけ無能ではないように気取らなければならない」

 

「それもこれも、ジキル、そっちの応対が遅いからだ。いつまでも安穏としているから、相手に先を越される」

 

「……手厳しい」

 

 肩を竦めたジキルにミシュアは問いかけていた。

 

「あの……MA401と、あなた達は戦ったんですよね? ならば、その能力は……」

 

「言っておきますが、諜報機関が警察に情報を簡単に流すとお思いで?」

 

 それもその通り。こちらで手を焼いているからと言って、諜報員から情報を聞き出そうなど虫が良過ぎる。

 

「……少し調子に乗りました。すいません」

 

「いえ、構いませんよ。まぁ、本当なら教えてもいいんですが、秘匿情報の一つに抵触しましてね。教えたいのに教えられない。歯がゆいものですよ」

 

 本当にそう思っているのかどうかは不明だが、少なくとも彼らはMA401と戦っている。いつかは共同戦線を張るかもしれないのだ。その時に足手まといになりたくない。

 

「……いえ、教えられない事があるのはお互い様ですから」

 

「ニューヨーク市警は優秀だとは思いますよ。我々よりかはずっと。だが……この街を蠢動する連中はその上を行く。あまり容易く喋り過ぎないほうがいい。寡黙なほうがよっぽど長生き出来る」

 

「その論点じゃ、君も長生き出来なさそうだ」

 

 思わぬジェッツの声音にジキルは呵々大笑と笑う。

 

「違いありませんね! ……いや、失敬、レディロンド。そこまで驚かれると」

 

「あっ、いや……その……」

 

「可笑しかったですか? 契約者が大笑いするなんて」

 

「いえ、その……」

 

 まごつくミシュアにジキルは見通した声を発する。

 

「契約者は人間の感情を失った存在。人間のように笑う事もなければ泣く事もない、と。それが通説でしたね」

 

「……失礼を」

 

「構いません。契約者と言うだけで化け物扱いされる事も儘あります。私達もね、契約者になってもユーモアを失わずに済んでいるのはどうしてなのだか、よく分からないのですよ。そういう風に出来ているとしか言いようがない」

 

 彼らでもその感情を持て余していると言うのか。ミシュアは瞠目した後に、煙草のパッケージを弄ぶジキルへと言葉を振っていた。

 

「……契約者はでも、一般的には感情のない、まるで冷徹な機械のようなのだと思われているはずです」

 

「そのようですね。それもこれも、天国戦争でまるで人間らしくない、本当の殺戮マシーンのように振る舞った契約者が多かったせいだと思うのですが、彼らだって別に、全く感情のない存在でもなかったと思いますよ。ただ、その戦場では、そういう風に振る舞ってでもいない限り、人間らしく扱われなかっただけの話で」

 

「……天国戦争の話を?」

 

「いえ、直接には。噂話程度しか流れては来ませんよ。ただ……戦争に従事した契約者達が旧市街地に流れ込んでいると聞いて、少しだけ、ホッとしたのもあるのです」

 

「……ホッとした?」

 

「彼らは祖国からも、あるいは世界から爪弾きにされた存在。そういうどん詰まりでも、一応は縋るものの一つや二つはあるのだな、と思いましてね」

 

 契約難民は国籍も軍歴も、何もかもを剥奪された存在。当然、人間として扱う権利もない。だが旧市街地では、市民権はなくとも人間としては扱っている。それは現地警察のスタンスを見ても明らかだったのだろう。

 

 外から来た人間にとってしてみれば、絶妙なバランスで成り立っているこの街こそがいびつに見えるのかもしれない。

 

「……【煉獄門】に、契約難民……。決して豊かとはいえない国家です。いつかは歯止めが来るのは、この国に住んでいる人間ならば誰しも思ってはいる事……」

 

「ですが今、破滅が来るとは思っても見ないでしょう? そういう国民性ですよ。まぁ、トーキョーじゃ、【地獄門】のすぐ近くにだって人は住んでいると言うじゃないですか。案外、適応力と言う点では契約者よりそこいらの人間のほうが図太いのかもしれない」

 

 図太さ。褒められているのか貶されているのか分からず、困惑していたところで駆け込んできた影に全員が注目する。

 

「課長! ヤバいってのが……あれ……お邪魔でした?」

 

 硬直したジャンにミシュアはため息をつく。

 

「何でもない。……どうだった?」

 

「ビンゴっすよ! MA401の微弱スペクトル反応! それと……これ、あまり彼らの前では……」

 

「よいですよ。聞かぬ振りをしておきましょう」

 

 背を向けたジキルとジェッツにジャンは憚りながら声を潜める。

 

「……当局の追っていた特A級の契約者……LG891の活動も観測されました。こいつの反応はじつに半年ぶりって言うんで、天文部はてんやわんやですよ……」

 

「そんなに危険な契約者なのか?」

 

「……能力の全容は分かっていません。ですが、一部の資料にはその力だけでビルを割るほどだとか、他の契約者なんて足元にも及ばないほどだとか……」

 

「……噂だろう」

 

「裏が取れない噂でもないんですってば! ……現にLG891と戦闘したであろう、ほとんどの契約者は直後に星が流れています。相当に強いって事ですよ」

 

「一つ、いいですかね、ミスター」

 

 ジキルの問いかけにジャンはびくりと肩を震わせる。

 

「な、何ですか……。ズヴィズダーに渡せる情報なんて……」

 

「いえ、我々もそろそろ身の振り方を極めなければならない。そういう点で言えば、ある意味では無頼漢ですらもある。レディロンド、私達はあなた達と協力体制を敷いているはず。ならば」

 

「……情報共有、ですか」

 

「いけませんか?」

 

 ミシュアはLG891の契約者の情報の優先度を瞬時に概算する。何者かも分からない契約者を、精鋭部隊であるこの二人が欲しているのだとすれば、その帰結する先は多くもない。

 

「……戦力に数えるとでも?」

 

「まさか! 相手は契約者ですよ!」

 

 逸ったジャンの言葉にミシュアは睨んでいた。委縮した彼へとジキルは微笑みをかける。

 

「まぁ、間違いではない認識ですよね。確かに契約者相手に、戦力拡充なんて馬鹿げている。それに、私達は祖国の情報をあまりにもあなた達に話していない。これではフェアではないとも」

 

「分かっているのならば……」

 

「ですが、祖国の情報は渡せません。これは絶対でもあるのですよ。どこの諜報機関かを明かせば、遠からず私達も始末されるでしょう。口の軽い契約者を、わざわざ残しておく必要性はないでしょうから」

 

 そう断じてしまえる精神性もそうだが、彼女の能力特性上、まさか戦いを欲しているのかとさえも勘繰ってしまう。

 

 契約者は殺戮機械――その前提に立つのならば、別段おかしな話でもない。

 

 だが、ミシュアはそうとも思えないでいた。それはジキル達が決して人間離れした精神でない事にも由来していたのだろう。

 

「……分かりました。我々の情報をある程度までは明かしましょう」

 

「課長! みすみす……!」

 

「言いたい事は分かる。だが、これは私の決定だ」

 

 詰めた声音にジャンは息を呑む。

 

「……知りませんよ。って、門外漢を決め込めるような身分でもないんですよねぇ……せめてお供させてくださいよ。俺、課長の部下でしょ」

 

 その眼差しに宿った光にミシュアは首肯していた。

 

「……頼りにはしている」

 

「結構。では、話していただきましょうか。どういう事が今、起こっているのか」

 

 ジャンは少し困惑しながらも、掻い摘んで口を開いていた。

 

「……要は、昨日の騒ぎは元々仕組まれていたんじゃないかって話なんですよ。LG891もそうですけれど、微弱検出されたMA401の反応も。もしかしたら、敵対するように何者かが誘導していたって言う……」

 

「それは天文部の判断?」

 

「いえ……これは俺の憶測です。天文部は、LG891の反応が半年ぶりだって言うんでてんてこ舞いですよ。それほどまでに、ヤバい奴なのは確定みたいで」

 

 ミシュアは顎に手を添えて考えを纏めようとする。新たな契約者は、しかし何故今になって活動を再開したのか。

 

「……素人考えで、よろしいですか?」

 

 挙手したジキルにミシュアは促す。

 

「では。……恐らくそのLG891、何者かに雇われている可能性があると思います」

 

 思わぬ提言に二人して絶句する。

 

「……どうしてそう思うのですか」

 

「潜伏している契約者と言うのは、能力を限りなく使わないようにしているのですよ。それは星のスペクトルで活動が露になってしまいますからね。出来るだけ隠密に、なおかつ、しかもLG891の能力は派手と来ているのならば、そのミスターだがミスなのだか分からないなにがしは、昨日まで能力を封殺されていたと考えるべきです。あるいは不用意には使えない、そういう面倒な能力の可能性もある」

 

「……天文部の言うのには、LG891の能力はあまり限定的とは言えないようです。痕跡が残りやすいとも」

 

 ジャンの補足にミシュアはある憶測を述べていた。

 

「……強過ぎる契約者はその力を封じている……。これは一般見識ですか?」

 

「どうでしょうかね。ジェッツ、あなたはどう思います?」

 

 全員の視線がジェッツに集まる中で、彼はルービックキューブを弄び、視線を落としたまま応じる。

 

「そうとも限らないんじゃない。だって、ジキル、君は隠そうともしない」

 

「それは任務ですからね」

 

「……契約者はでも、合理的に判断を下す。その時々に使う必要のない能力を露見させはしない……。つまり、限りなくその力を絞っていた契約者が活動再開したのには、裏があるとお思いで?」

 

「そう考えなければ半年間の沈黙の答えは出ないでしょう」

 

 ミシュアは中空に視線を投じる。何か、見落としてはいないだろうか、何か決定的なものが食い違ってはいないだろうか。

 

 堂々巡りの思考に、打ち止めをかけたのはジェッツの一言だ。

 

「そんなに気になるんなら、探りを入れればいいだろうに」

 

「探りって……でも少年君? どの企業が契約者を買収しているかなんてどうやって探るんです?」

 

 ジャンの疑問ももっともだ。しかしジェッツは何でもない事のように言い放つ。

 

「目立つ能力なら、一人で諜報と隠密を両方やっているのは絶対にない。他の契約者から芋づる式に探り当てる」

 

「……なるほど。LG891を探すよりも、その契約者と行動を共にしている何者かを追えば……もしかしたら……」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ! そんな簡単に同行者って見つかるものなんですか? それなら何で、LG891はこれまで姿を隠せていたんです?」

 

「それも簡単な事ではないですか、ミスター。昨日中に、状況が変わった、と見れば。昨日までは確かに、LG891は契約者として単独であったのでしょうが、昨日付でチームによる連携へと移った」

 

「根拠は? それがないと話にならない」

 

 断じたミシュアにジキルは、これは憶測ですが、と前置く。

 

「能力を使った事、それそのものにリスクが高いとすれば? 派手な能力だと判定されているのなら、余計にです。能力を使えば追い込まれてしまう。だがそうとはならない。星は流れていない。しかも……恐らく交戦したのはあのニューヨークの赤ずきんであるミス401MAだ。あの契約者と正面を切って戦ったのに、まだ命があるという事は、強力な契約者であるのは疑いようのない事実。しかし、あの契約者が仕損じて、では一日も二日も命があるとは思えない。絶対に追撃が来る。そう考えれば……」

 

 ハッと、ミシュアは勘付いていた。

 

「……追うのはLG891の行方よりも、MA401の抹殺対象……」

 

 頷いたジキルにジャンは右往左往していた。

 

「えっと……でもMA401は今の今までその尻尾さえも掴ませない契約者ですよ? 相手が悪過ぎるんじゃ……」

 

「だがMA401が関わった案件は全て、未解決、あるいは迷宮入り……。それはある意味ではこうとも言える。――確実にケリをつけるタイプの契約者だとも」

 

 ジキルの分析の鋭さにミシュアは思わず探りを入れていた。

 

「……どこでMA401のやり方を知ったのですか」

 

「噂ですよ、噂」

 

 かわされたのを感じつつ、ミシュアは推測を並べ立てる。

 

「……確実にケリをつけるのなら……それこそLG891の星が流れないのはおかしい。どこかで強襲がある。近いうちに、LG891とMA401が戦うとも」

 

「そしてその戦いの舞台は自然と旧市街地になるのでしょうね。何せ、LG891は能力特性上、派手に立ち回りたくはないはずだ」

 

 ならば、とミシュアは立ち上がっていた。

 

 ここで時間を潰しているのも惜しい。

 

「……行きましょう」

 

「おや? 同行してもいいので?」

 

 どこかわざとらしいジキルの言葉振りにミシュアは嘆息をつく。

 

「……協力者でしょう。それに、契約者のメンタリティは欲しいところでもあります」

 

「課長? でもそれって、部長が許すかどうかは……」

 

「いちいち聞いていても始まらない。事が起これば報告すればいい」

 

 強気な自分の発言にジキルは口笛を吹く。

 

「さすが。ニューヨーク市警の花形なだけはある」

 

「茶化さないでいただきたい。それに、どうせこの考えた方だと……」

 

「ええ、懸念事項は分かりますよ。また、現地警察とかち合わなければいけなくなる」

 

 こちらの認識を読んだジキルにミシュアは早速出向こうと踵を返しかけて、おっと、とジキルの声に阻まれる。

 

「……何です?」

 

「その前に一杯だけ。コーヒーをいただけますか? 頭の体操をしたいので」

 

「……構いませんが、私はホットコーヒーは飲みませんよ」

 

「ならばアイスで一つ、いや、二つかな」

 

 ジェッツはふんと鼻を鳴らしていた。

 

「……要らぬ世話だ」

 

「まぁそう言わずに。ここから先、どう転ぶのかはまるで分からない。まずはレディロンドの手腕を見せていただきましょうか。私達がそこで動くのかは、それ以降の話」

 

 どうとでもなる、と言いたげだ。ミシュアは壁に背中を預けていると、ジャンが声を潜めてくる。

 

「あの……マジにヤバいんじゃ? 勝手に出歩かせていいんですか? 相手は偽名も使っていましたし、そもそも信用ないんじゃないですか?」

 

「信用がないのはお互い様だろう。今は一ミリでもいい。進展が欲しい」

 

「……言いますね、課長。お供しますよ。どっちにしたって、一台の車に契約者二人は重いでしょう」

 

 ジャンが車の鍵を手繰ってジェッツに話しかける。

 

「じゃ、コーヒー飲んだら行きましょうか。少年君」

 

「……子供扱いしないでくれないか。ぼくはこれでも、君らより十年は長く生きている」

 

「へいへい。それってやっぱし、対価って奴?」

 

「……君らには関係のない話だ」

 

 まだジェッツはこちらに信を置いていない様子だ。だからと言って、ジキルがこちらを完璧に信じているわけでもないだろう。

 

 彼女はコーヒーを呷り、さて、と立ち上がっていた。

 

「……では、始めましょうか。野良犬狩りを」

 

 

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