鴨が鍋に入ってやって来た   作:さわZ

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第十二話 ソロ活動

ピンク色で染め上げられたその一室で、一組の男女が心を一つに重ねていた。

男は大量の汗をかきながらも腰を何度も前後に突き出していた。

対する女も、男同様に息を切らしながらも男の背中に手を置いて、彼を前へと押し出していた。

 

「いい加減ぶっ壊れろやぁああああっ!」

 

「頑張ってエミール様!貴方だけが頼りです」

 

男女がこの一室に来て既に三時間が経過していた。

最初は男女ともにこの一室から脱出したいがために、鉄の扉に手をかけるがびくともしない。大声をあげながら人を呼んだが誰かがくる気配も感じない。魔法で無理やり扉を開けようとしたが、どうやらこの扉耐魔力の性質を持っているのかどうやっても開かない。

男。カモ君は頭を怪我していたので、一度回復魔法を使ってから、扉に対して攻撃魔法や素手での破壊を試しているがどれも効果が無いように見える。

女。ライツはカモ君が扉を破壊しようと魔法使う時に威力が増す魔法を男にいくつか試したが、効果はなかった。だが、自分の攻撃方法はカモ君と比べるとだいぶ劣るため、彼に補助魔法をかけて応援していた。

散々大騒ぎしたため、二人とも汗ばみ、喉も乾いてきたところで妙に粘度のある水に手を伸ばしたが、男が鑑定の魔法を使ったところそれは媚薬であることが判明した。シャワーはもちろん、トイレに流れる水まで媚薬が入っている事にショックを隠せないカモ君だった。すぐに自分の魔法で飲み水を作り出し、ライツと共に飲んだが、一向に体が休まることが無かった。むしろその逆。体は常に高揚感が溢れていた。

 

「あっつ…」

 

散々、鉄の扉を拳で殴っていたり、魔法をぶつけていたが、目の前の扉は一向に壊れそうになかった。

そんな時、体を思いっきり動かしていたせいもあってか、体温が上昇。額からは汗が後からどんどん流れてくる。それを拭うために着込んでいたジャケットの裾で拭き取る。その動作の際にチラリと見せる、汗で体に張り付いたシャツが、彼の鍛え上げられた肉体を強調し、ライツはそれにときめきを覚えた。

 

こいつ、体つきがエロすぎる…。

 

このエロ空間。エロアイテムに囲まれた状況でなければそんなことは微塵にも感じない

だが、ここに置いてあった媚薬入りの飲み水の入ったツボ。そこから気化していく際に媚薬がこの一室に充満し、知らず知らずのうちにカモ君とライツの体を媚薬が徐々に浸食していた。その効果が出て、ライツはカモ君にドキドキしていた。

 

「え、エミール様。体の汗でも流して少し休みましょう。そうすれば他の案が出てくるはずです」

 

ライツはカモ君の方を出来るだけ見ないようにそう提案してベッドに腰掛けた。正直これ以上カモ君のオスの体を見ていると胸のときめきが抑えられそうにない

それを聞いて、カモ君は今まで殴っていた扉からライツの方を向いた。

その目に映っていたのは、ベッドに腰掛けながらもじもじといじらしいしぐさを見せている美少女。ライツの姿があった。

媚薬の効果もあってか、少し汗ばんでいる彼女の肢体は艶やかで男を誘っているのではないかと思わせるものだった。

 

え、なに子の美少女…。

 

元はライツがシュージを連れ込むためのこの部屋。

一度使用を始めてしまえば外から誰かが開けるか。とある条件を満たさなければ開かないこの部屋自体が一種のマジックアイテムである。

カモ君がここを出る為に魔法を使えばこの部屋の扉はその魔力を吸い上げ、頑強さを増す。

カモ君が鑑定魔法を最初から使えばそうならなかった。しかし、いきなりこんなエロ空間に飛ばされ、初見で気が付けというのは難しい。

ライツは自身が準備させた空間だが、もともとすぐに出るつもりもなければ、カモ君と共に来るなんて思ってもいなかった。そのため、このエロ空間の仕組みを詳しく知る必要はないと考えていたので、カモ君同様に焦っていた。

カモ君はここに転送される前まで戦闘中だった。ある意味興奮状態だったのだ。致し方ないといってもいい。

 

「…そうだな。少し汗を流すか」

 

「で、では私はあっちを見ていますのでお早めに」

 

カモ君がシャワーのある方へと歩いていくとそれに合わせて、ライツはベッドの上で三角座りをしながらその反対側を向いた。

カモ君が服を脱ぎ、シャワーには媚薬が仕込まれていることに彼は寸でのところで思い出し、自身の魔法で作り出したお湯で汗を流した。

その際に生じた服を脱ぐ音やお湯の流れる音が、媚薬の効果で通常時より鮮明に聞こえるライツのカモ君への関心が大きくなる。

 

あのジャケットの下にあるカモ君の体はどうなっているのかと。

 

これは気の迷いだ。エロ空間の雰囲気がそうさせている一時的なものだ。

そう理解しているにもかかわらずライツの関心は大きくなるばかり。そして、チラリと見てしまった。

あの美人でエロい体つきをしたミカエリがエロいと言っていたカモ君の体を見てしまった。

引き締まった体は魔法使いというよりも戦士を彷彿させる筋肉。そして若さ所以の艶。まだ成長の余地を思わせんばかり体は少女の性への関心を引き立てるには十分すぎた。

 

ごくり。と、思わずつばを飲み込んでしまった。ライツ。その音が彼に聞こえてしまったのではないかと思い、慌てて顔の向きを正す。

それからしばらくしてカモ君がバスタオルを着込んだ音を聞いて、一応確認を取ってから振り向いた。

 

やばい。カモ君なのに格好よく見える。

 

ライツは再びカモ君とは反対側の壁を向く。

リーラン王国に来る前までは、このような状況に陥った時の訓練も受けていたが実演は今回が初めてだったライツはまるで乙女のような反応を見せてしまう。

何度も言うがこのようなエロ空間でなければこんなことは両者とも思わない。

このエロ空間を作り出すマジックアイテム制作者である、ネーナ王国の技術者にライツは恐れ慄いた。

バスタオルの下に学生ズボンを履いたカモ君が、ライツから少し離れているが、同じベッドに腰掛けた。

ぎしっと音を立てたベッドにライツは思わず背筋を伸ばしたが、それはカモ君も同様だ。二人とも意識しあっている。だが、これが異常事態という事もわかりあっていた。

 

「…さて、これからどうするか」

 

「…誰かがここを探し当ててくることを待つしかない。と、思います」

 

カモ君が切り出した現状の問題にライツは現実的な答えを出した。

仮にも自分達はリーラン王国を支える貴族の子弟。魔法使いの生徒という立場だ。既に夕食を取る時間どころか就寝時間を示しているだろう時間帯でも帰ってこないとなれば捜索隊が組まれてもおかしくはない。

 

だが、問題がある。

それはカモ君が、廃嫡。その上、モカ領はハントの監視下にあるため、実質取り潰し状態。カモ君を探そうと尽力する貴族はあまりにも少ないだろう。彼を助けたところで実入りが少ないとやる気が出ない。それが貴族という権力を持った人間だ。物好きでもなければやってられないだろう。

 

そして、ライツは他国の娘だ。一応商人上がりの貴族だという事もあって、彼女に何かあればリーラン王国の額縁を少し汚してしまうことになる。だが、それでも他国の娘だ。自国の貴族に比べれば彼女を見捨てたほうがいいと判断するだろう。

 

更に今頃、シュージの証言で、リーラン王国国民以外のよそ者による事故だと判断されるだろう。この国での貴族の力は絶大であり、平民ごときが彼らに逆らえばただでは済まない。

リーラン王国に入国する際もこの国の貴族の機嫌を損なわないほうがいいと他国にまで知られているのだ。

それでも魔法学園の生徒=貴族に手を出したという事は何かしらの対策は取られたとしてもそれは現貴族である生徒達のみ。

廃嫡されたカモ君と他国の娘のライツ。平民のシュージが襲われたという事件よりも、現貴族である生徒が襲われなかったことに今頃この国の重鎮たちは胸をなでおろしている。いや、むしろ関心が無いどころか彼らの耳に届くこともないだろう。

 

「…駄目だ。いいアイディアが浮かばない。…一度眠るぞ」

 

「…いいと思います。体力も魔力も使い切ってしまった今の状態では何も好転しませんから」

 

以上の事から自分達の捜索には時間がかかると判断したカモ君とライツは、消費した魔力と体力の回復を考え、一度仮眠を取ることにした。

ダンジョンと違い、今すぐに命の危険があるわけではない。今のように媚薬で興奮状態になってはいるが、休めば冷静さを取り戻せると踏んで二人は仮眠を取ることにした。

同じベッドの上で。

 

いや、なんでそうなる?

 

ここにコーテがいれば怒りながら首をかしげるだろう。

これにも訳がある。

今、ここを脱出できる力を持っているとしたらそれはカモ君の魔法。もしくは拳だ。彼には出来るだけ万全になってもらうためにもベッドの上でしっかり休んでもらうのが一番だ。

そして、カモ君の魔法と拳の威力を上げる補助魔法を使えるライツもしっかり休んだ方がいい。彼女の魔力を回復してもらうにはしっかり寝てもらわなければならないのだ。

そういうわけで二人は背中合わせのように少しだけ魔を開けて休むことにした。

カモ君は慣れているのか、残った魔力を全部使って自身に睡眠魔法をかけ、即座に夢の世界へと旅立った。

ここで問題が一つ起きた。

ライツも魔力を使い切った。そのためカモ君のように即座に睡眠魔法が使えるという状態ではなかった。その上、媚薬で興奮状態だったため寝付けずにいた。

 

自分のすぐ隣に性的に美味しそうな体がある。

 

媚薬で興奮してそう思わされているライツははっきり言って寝付けない。むしろ興奮して目が覚めた状態になっていた。

チラリとカモ君の方を見ると彼はすやすやと小さな寝息を立てて寝ている。自分はこんなにも寝付けないのにこの男は。と、思わざるを得ない。

その苛つきからカモ君を隠し持った薬で毒殺する機会でもあるのではと思ったが、思い直す。このエロ空間がどこにあるかわからないが、カモ君を毒殺した後、もしシュージ達がここにやってこればどう見ても自分がカモ君を殺したことになる。そのため、毒殺は出来ない。そして、こんな体つきをした人間のオスを殺すのは勿体ない。

後半の部分にライツは頭を振って自分を貶した。

 

情けないぞ。ライツ。

お前は仮にも王族の娘。末端とはいえ姫なのだぞ。

この体も教養もすべては自分が正式に姫だと認められるためにこの機会を得たのだぞ。

それなのに『主人公』であるシュージを篭絡できないばかりかカモ君といった味方なら最悪と言ってもいい人物に心を、体を許すのか?

いくら体つきがエロかろうが一時の感情に流されて、生娘という少女の最大の武器を捨てるのか?

 

情けない。浅ましい。そんな自分に反吐が出る。

そう思い直すと少しは興奮した感情も落ち着いてきた。これなら眠ることが出来るだろう。

しかし、カモ君が自分に手を出してこない事が少し気になった。

踏み台キャラな彼に好かれようとはこれっぽっちも思っていないが、彼は自分を女性として見ていないのだろうか。そう考えると媚薬以外のイラつきを覚えた。が、すぐにそれを忘れることにした。

いろいろ考えるのはここを出てからだ。そのためにも今は体を休めなければとライツは再び瞼を閉じ、カモ君同様に夢の世界へと旅

 

立てなかった。

 

腐ってもここはネーナ王国が準備したエロ空間。カモ君のように魔法という力技で眠るか、意味深な激しい運動をすれば疲れて眠れるかもしれないが、ライツはそこまで疲れていなかった。

魔力を使い切って脱力感は感じるが、ここの媚薬効果を覆せるまで疲れは感じない。

 

眠れない。

 

一種の不眠症になったライツは必死に眠ろうとしたが、睡魔は襲ってこず、自身の息遣いだけがやけに熱を帯びてきているようにも感じた。

そして、ふいに喉が渇いた。ここにも一応、飲料可能な液体はある。

 

ツボに入った水(媚薬入り)

シャワーの水(媚薬入り)

水洗トイレの水(媚薬入り)

 

ライツは、何が何でもエロいことをさせようという製作者の意図がここまで憎いと思ったことはない。

これらのどれか一つでも飲んでしまえば、自分は興奮して余計に眠れないだろう。しかし、喉が渇いてきた。そう自覚すると余計に飲みたくなるのだ。

 

飲みたい。だめ、でも飲みたい。

 

ライツは苦悩する。

一時の渇きを潤すためにさらにドツボにはまるか、それとも堪えるか。

どうしてカモ君は眠る前に飲み水を用意してくれなかったのかと糾弾したくなる。

興奮を避けとうとして喉が渇く。しかしそれを潤せばさらに興奮する。そうなってしまえば眠ることが出来ない。魔力も回復しない。せめて、カモ君ではなく『主人公』のシュージなら興奮しても問題が無ければ飲んでいたのに。

 

…興奮しても問題が無ければ飲める?

 

媚薬は意味深な運動をさせるための物。しかし、その運動をすれば効果はなくなり興奮することもなくなる。

カモ君相手に運動は出来ないとはいえ、自分一人でなら別に構わないのではないか。いわゆるソロ活動ならセーフなのではないか。いや、セーフだろう。これなら自分の純潔も失わずに済む上、興奮も発散できる。

そんな考えが浮かんだライツは迷うことなく、ツボに入った媚薬入り水を口にした。

ソロ活動するにはもってこいのオカズな体も目の前にもある。

この時、ライツの瞳を漫画的な表現をすれば瞳孔が♡になっていた。

 

「ふ、ふ、ふぅっ」

 

カモ君が悪いんだ。彼がシュージを蹴り飛ばし、『主人公』の代わりに自分とここに来たのが悪いんだ。

こんなエロ空間であんな男らしい体を見せつけるから私はこんなに苦しんでいるのだ。

カモ君が苦しめているから、それを除去するためにもカモ君の体をオカズにしても文句はないはずだ。

 

その考え方の元。ライツのソロ活動は始まった。

 

 

 

六時間後。

しっかり睡眠をとったカモ君は体力・魔力共に回復したことを確認すると、まずは自分の体に異常がないかを調べた。どうやら媚薬により少し興奮状態にあるようだが、これなら初級の魔法で対処できる。

ライツも自分と同じ状態だろうから、まだ寝ている彼女を起こして同時にそれを快復させて再び脱出を図ろう。そう思い、自分の隣で寝ているライツを起こすことにした。

その時のライツは眠る前よりなぜか着崩しているようにも見えたが、それ以上に肌の艶が増したようにも見えた。だが、それが何から来るものか、カモ君は知る由も、知ろうともしなかった。

 

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