もしカモ君にシュージが今体験している事を話したら、怪訝そうな顔をしてこう答えるだろう。
舗装されたダンジョン?
ラスボス戦か裏ダンジョンでしか見たことが無い。
え?もうエンディング?
そんなすっとぼけた答えが返ってくるだろう。
まだ物語的には3分の1も終えていないのだ。あまりにも早すぎる展開に驚くだろう。
しかし、そんな驚く場所にシュージはいた。
舗装されたダンジョン。さすがに内部全てというわけにはいかないが、まるで訓練場のように舗装されており、少なくても段差や小石で転ぶなどと言ったことはなさそうだ。その上、落とし穴や落石といった心配もないため道中の緊張感は薄かった。
五階層まで行くまではゴブリンやコボルトといった雑魚モンスターとも遭遇したが、どこか覇気がなく、生気も感じられない。まるで病床から無理やり起こされたかのように弱弱しかった。
補助魔法が主な光魔法だが、それでも攻撃方法がないわけでもない。光の玉を生み出し、それをぶつけるといったライトスフィアを放つが、それでも全属性の中でも弱い攻撃魔法だ。威力も子どもがバッドで殴りつけた程度の威力しかない。
「これだけ浅いとあなたの出番はまだないみたいですね」
それでもゴブリンとコボルトはやられていった。はっきり言ってシュージが蹴りつけただけでもやられそうなほど弱い。
人に害をなすモンスターであるにも関わらず同情してしまいそうになる。
だが、それは中層と呼ばれる十五階層まで続く。
巨大蝙蝠。スライム。といったやや特殊なモンスターからブラックアリゲーターやフォレストウルフといった肉食のモンスターまでもがライツの放つライトスフィア一発でやられていく。道中で発生した小さな宝箱から回復ポーションを入手したりもした。
これは…。確かに禁止されるわけだ。
喜ぶライツに対して、シュージは渋い顔をしながらそう思った。
弱体化したモンスター倒せば宝箱が出現する。
どういった理屈かわからないが、このように楽をしてアイテムが入手できるなら養殖ダンジョンも悪くない。入手したポーションも金貨3枚ほどの価値がある。それをたった三時間で入手できるのだ。
更にはモンスターの弱体化でよりモンスターの行動パターンが理解できる。これを繰り返していれば対モンスター戦の経験値になるだろう。と、同時に慢心も生みかねない。
カモ君はいつも口酸っぱく言っている。絶対なんてものはない。という言葉だ。
モンスターもそうだが、人間も首を切り落とす。心臓を潰す。遺体も残さず燃やし尽くすまでやってようやく安心できる。
死んだふり。人間はもちろんモンスターもやる。
凄腕冒険者が死んだふりをしたゴブリンという最弱モンスターにやられるというのは戒めとして今もなお語り継がれている言葉だ。
冒険者と共にダンジョン攻略をし始めてようやくそれが実感できたシュージだが、この養殖ダンジョンのモンスターとの遭遇はそれを忘れさせるようなものだと感じた。
…これはいけない。
いざ、養殖以外のダンジョンで失敗を生み出すものだ。
シュージはそう思いながら、中層に入ってからライツと後退してモンスターを討伐していくことにした。が、あまりにも手ごたえがない。
火の指輪と火のお守り。
シュージの魔法の威力を底上げするアイテムが二つもあるのだ。
ただでさえ『主人公』としての力を持っていると思われるシュージの魔法を補助するものが二つもあれば中層のモンスターといえどシュージの一度の魔法で一掃されるだけだった。
自分達に向けられる敵意をライツが魔法で発見、位置の把握。距離が離れている間にそのことをシュージに伝えて攻撃するだけの作業が続いていく。
そして、モンスターに魔法を放つ事を五回やると一回は宝箱が出現する。
シュージ達は既にもう三顧のアイテムを入手している。ポーション二本と銀のナイフと王都の表通りでも買える代物だが、それには少なくない費用が掛かる代物だった。
一般冒険者ではまずありえない。高位な魔法使いでも無理。そしてドラゴンやラスボスでも不可能な現象がシュージの前では起こる。
以前、ゲットした施しコインの効果が後押ししているかもしれない。
「やりました。また宝箱ですよ。シュージ君」
「うん、そうだな」
ライツはほくほく顔でシュージに声をかけるがシュージの顔はすぐれない。
仮にも美形の部類に入る異性と一緒にいるのだからもう少し隠してほしいものだが、まだ十二歳。もうすぐ十三歳の平民。戦闘力はあっても小僧であるシュージにはそれは難しい事だった。
今更。養殖ダンジョンに関係したことを後悔したのだろうか?
だが、もう手遅れだ。彼は関わってしまった。あとは沈み込むように嵌ってもらおう。
そう思ったライツは目の前に現れた宝箱。に、擬態したミミックと言うモンスターであることをその鑑定眼で見抜いていた。だが、あえてそれに近寄りミミックが動いた瞬間に小さな悲鳴を上げてその場に倒れこんだ。
最初から疑いの目をもって見ていれば嘘くさいことこの上ない動作だが、考え事をしていたシュージにそれが見抜けるはずもなかった。
そして、悲鳴を上げたことで考え事をしていたシュージは意識を切り替えてライツの傍まで駆け寄り、彼女をかばうようにミミックの前に立った。
ミミックは、宝箱な形状から無機質な触手染みたチューブを生やし、その先にはメイスや剣。槍といった武器を持って威嚇するように動かしていたが、移動力は無いようでその場からゆっくりとシュージに向かって近づいていく。
攻撃範囲に入っていないうちに仕留める為にシュージは魔法を放ち、ミミックを一瞬で黒い炭の塊にした。
「ありがとうございます。シュージ君。…助けてもらってあれですけど、ダンジョン内ではあまり考え事はしないほうがいいですよ」
「ご、ごめんなさい」
悲鳴を上げて動けないという庇護欲から、注意してくれるという抱擁力を見せて、シュージの気を引くライツ。
そんな魂胆があるとはつゆ知らずにシュージは素直に謝った。
「もう。私は攻撃が苦手で、補助が得意なんですよ。シュージ君に何かあったら私もただでは済まないんですから」
「そ。そうだよな。本当に済まない」
もし、シュージの隣に立っているのがカモ君だったら一度ダンジョンから帰還してリフレッシュさせるか。途中で攻略を諦めさせて魔法学園に戻るなど撤退も考慮したかもしれない。
だが、それではシュージが罪の意識から学園長に自首するかもしれない。だからこそライツは撤退など考えていない。どっぷりと罪に浸かってもらい、この養殖ダンジョンの味に酔いしれてもらわなければならない。
これだけ初心なら一度快楽に溺れてしまえばそのまま落ちて行ってしまうだろう。
そう思ったライツはシュージの腕を取り、自身の体を押し付けるように抱きしめ、出来るだけ体を密着させながらこの先を歩いていくことにした。
そして一際広い通路に行きついた。
そこは更に下へと続く階段と、この廊下の奥へとつながる通路が三つ伸びていた。
普通ならダンジョンの下へと進むべきだが、その前にシュージにはここが養殖ダンジョンだという事を改めて教える必要があるだろう。
前衛職のいない魔法使い二人だけでも十五階層まで行ける理由をここで明かすのも悪くない。
下へと続く階層はそのまま地価へと通じ、弱体化しているとはいえ討伐の難易度が上がるモンスターが出てくる。ここから先は文字通り火力が強いだけでは困難の地区である。
ここから先に行くなら三つに分かれている通路の内、右の通路へ行くとこのダンジョンに先に入った冒険者(無法者)が作った休憩所。コロニーがある。そこに声をかけて、数人連れていくことになっている。
無法者だからこちらに牙をむいてくるのではと思われがちだが、この養殖ダンジョンを支えているのはライツとここ。公爵家。サダメ・ナ・リーラン家がスポンサーであり、彼女等に危害を加えればこの養殖ダンジョンは利用できない。それ以上に公爵家を敵に回すという危険性を知らないという愚か者でもない彼等。
もちろん、協力を申し込まれても甘い汁を吸っている以上逆らえないだろう。
現にその通路からやってきた無法者の数人が通路の向こう側からやってきて、ライツを見るなり頭を下げて深層につながる階段を下りて行った。
「そうですね。一休み入れる前にシュージ君に見せたいものがあります」
ライツは、深層に繋がる階段でもなければコロニーに繋がる通路でもない。一番幅の広い通路へと歩みを進める。腕を取られているシュージも連れていく形で進んでいく。
その先にあったのはダンジョンの入り口よりも厳重な雰囲気を持った巨大な赤い扉だった。
その両脇を明らかに高ランクな杖を持ったローブの中年女性と不気味な雰囲気を放つ大剣を背負った戦士然とした大男が立っていた。
彼らはライツ達がやってくるなり戦闘態勢にはいたが、相手がライツだとすると剣と杖の先を地面に向けた。
「ダンジョンコアの警備。お疲れ様です。彼にこの先を見せたいので、通らせてもらいますね」
「彼は…。いえ、貴女様のお連れならば大丈夫でしょう」
女性の方は一度止めようとしたが、大事なスポンサー様がわざわざ足を運んでまで連れてきたお客様を無下にするわけにはいかないと思い、扉を開けることを了承する。
そこからシュージには何を言っているかわからない程の小声と詠唱の早い魔法を使い、扉の封印を解くと、その赤い扉に白い筋が数本描かれる。カモ君がそれを見ればまるで旭日旗みたいなと感想を零すだろう。
その扉を地面に大剣を突き刺した大男が全身を使って押し開けていく。
見るからに巨大な力が込められている男の体は一回り大きく膨れ上がったかのように見えたシュージ。カモ君にトレーニングをつけている教師。アイムよりも力が強そうな彼に怖気づきそうになったが、何とか堪える。
ゴゴン、と非常に重厚感のある扉の向こうにあった物はとても広大に。それこそ野球ができるほどの広さを持った空間だった。
中央には鈍く灰色に輝く大きな玉。以前見たダンジョンコアの数倍は大きなダンジョンコア。それがこの空間の端から伸びている十数本の鎖で空中に固定されている異様な状態だった。
ダンジョンコアの下には数名の魔法使い達がいた。彼等に声をかける為にライツは歩みを進める。それを見た魔法使い達は近づいてくる者がライツだとわかると皆、頭を下げた。
どの魔法使いも上等なローブと杖を持っている。明らかにさっき出会った冒険者とは雰囲気が違う。それこそ公務員を思わせるような律義さがあった。
その雰囲気はまるで魔法学園にいる教師のようだと、シュージが思っていると、彼の後ろでゴゴンと扉が閉じた。
あの扉は魔法的な封印と物理的な抑え込みの二重のプロテクトがかかっており、この扉を正規以外の方法で開けるのは非常に骨だと感じた。
「驚きましたか。これがここのダンジョンコアです。以前見てきたコアの何倍も大きいでしょう」
カモ君と攻略したダンジョンのコアは手のひらサイズから人の頭ぐらいの物だったが、目の前のダンジョンコアは明らかにサイズが違う。直径は一メートルを超えており、今も不気味に輝いているコアは鎖に縛られているにもかかわらず、まるで心臓のように蠢いている様にも見える。
「これが、養殖ダンジョンのコア…、なのか」
「ええ、コアをこのように固定するとダンジョンの階層は増えますけど、モンスターは弱体化するんです。それを利用してダンジョンの奥深くまで探索できるのですよ。それこそ50階層まで行けるんじゃないでしょうか。そこで取れるアイテムやドロップアイテムは変わらず手に入れられ」
ライツが自慢げに説明している時だった。あまりにも早い詠唱と魔力の波動が彼女の言葉を遮った。
勿論ライツ自身ではない。このフロアでダンジョンコアの固定をしていた魔法使いでもない。
この天を突くような熱風は人の頂点に立つ人間のみにしか生み出すことが出来ない。
『主人公』の恩恵を持っているシュージから発生した物だった。
こんな状況で彼が魔法を使う理由など一つしかない。
すなわち、ダンジョンコアの破壊である。
それに気が付いた魔法使いはシュージを止める為に魔法を使おうとしたが、自国の姫でもあるライツがシュージに抱き留められているためにそれが出来なかった。
ライツもシュージは自分に付き添ってきている。裏切るなんて考えもしなかったからこそ行動が遅れた。
シュージの突き出した右手。ライツを抱き留めている左腕と反対側に発生した熱波は辺りに広がりつつもその中央は煌々と赤く輝き、その光は剣の形を取っていた。
それはいつの日かクーがカモ君にはなった火属性レベル3の魔法。
以前のダンジョン。ミスリルタートルの討伐とカモ君の撃破した時、シュージはレベル3。上級魔法を使えるまでにレベルアップしていた。
「フレイム・カリバーッ!!」
その火の大剣がシュージの意思をくみ取り、シュージの右手の先から勢いよく射出され、不気味に光っているダンジョンコアに突き刺さり、フロアを揺るがすほどの爆音と共に爆散した。
爆心地辺りは大量の黒鉛と土埃が発生し、数メートル先までしか見えないほど視界を奪われた。
そして、黒鉛と土埃が収まると、そこにあったはずのダンジョンコアは粉々に砕かれた状況だった。
「ど、どうして、こんな真似を」
ライツはあまりの出来事に未だ、シュージに抱きしめられたままだった。彼女の腕力であればシュージを突き放すことが出来るにも関わらずされるがままだ。
シュージは養殖ダンジョンに関わった。もうこちら側だと思っていたのに。それを裏切られた。しかし、躊躇いはあったが裏切る真似はなかった。
自分を裏切るなんて考えはなかったはずだ。
それは様々な教育を受け、境遇にあったからこそわかる。
シュージはライツを裏切らないと確信したからここまで連れて来たのに。
「…もう。…君にはこんな事をさせないためだ」
まさか、こいつっ!?
ライツはふと思い出したかのようにもう一つの可能性を見出した。
これはライツを裏切るという悪意から来るものではない。
ライツをこんな裏家業から身を引かせるためにと、善意で。
シュージはその一心で単身、ここまで乗り込んできたのだ。
そんなことをすれば自分がただでは済まない事を理解しているのに。
下手すればシュージはこのダンジョンに関与している人間に殺されるかもしれないのに。
ライツが見落としていた物はシュージの善意だけではない。それは彼の憧れ。
自分が守りたい者(弟妹)のために命を懸けることが出来る男ならきっとこうするだろうという盲目的な確信が彼にライツを騙し、ダンジョンコアを破壊することになる。
ちなみにその確信は半分外れである。弟妹の事が関与しなければカモ君は無様を余裕で晒すことが出来る。それにどちらかと言えば立ち向かうよりも逃げ隠れを選ぶ。
シュージのような危機的状況では養殖ダンジョンの事を気化された時点で学園長辺りに密告する。このような敵だらけの場面で立ち向かうのは本当に最終手段である。
「ふ、ふざけるなっ!お前、どういう状況かわかっているのか!」
ライツは言葉遣いを取り繕う余裕すら無く、シュージを突き飛ばしながら叫んだ。更にそこから数歩下がって、彼を睨みつける。
彼女の任務はシュージをネーナ王国へ連れて行くという極秘任務。そう、秘密にしている任務であるが故に彼と自分以外の人間からしてみれば許されざる裏切り行為である。
つまり、シュージはここで殺されてしまっても文句は言えない。ここで彼を庇ってしまえば自分も殺されてしまう恐れがあり、当然任務も果たせない。
シュージを罠にはめたと思ったが、実際は彼との心中を進められただけだった。
現にシュージ。そして、ライツの周りを取り囲む魔法使い達。彼等はライツが自国の姫だとは知っている。しかし、彼をネーナ王国へ連れて行くという任務を知らない。
彼等からの目だと、ライツがシュージに騙されてここまで連れて来させられた。もしくはライツが自分達を裏切ったのではという懐疑的になっていた。
それにせっかく作り出した養殖ダンジョンと言う財産を駄目にしてしまった。この事がネーナ王国へと持ち込まれたらライツの失態となる。
『主人公』の勧誘の失敗。
養殖ダンジョンの崩壊。
今ある状況でも多大な失敗である。更にそこから未だ魔法学園にいるライナの任務の足も引っ張っている。そもそもシュージをこのダンジョンに連れ込んだ時もかなりスケジュールを詰めてもらっているのだ。
国政に関わる任務の失敗。
このままネーナ王国へと戻った場合。姫と言う立場があるとはいえ、証拠隠滅のために自分は処刑されるのが目に見えていた。
これを覆す方法はもう一つしかない。
『主人公』の拉致。これだけが彼女の生命線だった。
「あんたには無理やりでもネーナ国に来てもらう」
そう言ってライツは懐に隠していた麻痺毒が仕込まれたダガーを取り出し、中腰に構えた。
今まで彼に見せてきたおっとりとした留学生はもういない。いるのは飢えた狼のような目をした少女だった。
「いいか。絶対に殺すな。これは王命である。…死ななければ何をしてもいい」
ライツの態度と声質から従うべきだと判断した魔法使いは警戒を強めつつも彼女を味方として扱うことにした。そして、シュージを捕縛するための詠唱をする者。ライツのように毒を染み込ませた苦無や投げナイフと言った暗器を取り出す者もいた。
「…小僧。かなり痛い目に遭ってもらうぞ」
「楽に終わると思うな」
今まで感じたことのない悪意に囲まれたシュージ。
養殖ダンジョンから身を引いてもらおうと思っていたライツだが、思っていた以上にこの事に関与していた事に少し驚いた。更に敵になる事に躊躇いがない事にも驚いた。
正に絶体絶命と言うにふさわしい状況。だが、それでもシュージの戦意は少しも欠けていない。何よりも彼の憧れが。憧れに近づきたければこれくらいはねのけて見せろと言っている。
「俺の憧れ。エミールならこれくらい涼しい顔でやってのけるさ」
シュージはそう言って魔法の詠唱を開始する。
それを見た魔法使いの一人。シュージの死角にいる一人が暗器を投げつけようとした瞬間だった。
いや、あの少年なら無様に泣き叫びながらどうにかするだろうな
耳に入った言葉はとても小さな音量だったが、重く、腹にまで響く重低音を響かせて声が彼らの耳に最強を冠する男の声が届いた。
その頃のカモ君はと言うと。
シュージ達とは違う場所のダンジョンで死にかけていた。
「キキィー!」
何でまたタイマン殺しと戦わないといけないんだよ!
ビコーさん!早く来てくれー!
ダンジョン内でオラウータンの体型をしたモンスターに襲われて、内心絶叫していた。
明らかに浅い階層しかないと思っていたダンジョン攻略だったが、舐められてたまるかとダンジョンが意地を見せたのか、先発隊のビコー達がダンジョンコアを破壊した後。ビコー達の続いた後続組のカモ君達は背後にタイマン殺しを生み出したのだ。
鼬の最後っ屁。だが、その最後っ屁は極悪だった。
運悪くカモ君達が襲われた空間は広い空間であり、タイマン殺しが自由自在に動ける場所だったために魔法も当たらず、かといって格闘戦もタイマン殺しの方が上手だった。
ビコーの部隊も人間にしては上位に値するが、タイマン殺しはそれの上をいく。
今のところ誰も戦線離脱はしていないが、このままでは一人ずつ確実に仕留められる。
この状況を打開するにはこちらの最大戦力。ビコーをぶつけるしかない。
ビコーの部隊の連携とカモ君の補助魔法や阻害魔法が無ければとっくにやられていただろう。表情的には硬いままだが、カモ君は内心泣き叫んでいる状況であった。