鴨が鍋に入ってやって来た   作:さわZ

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第三話 マナーを守って楽しく決闘

満身創痍を隠すように息を整え、試合会場へと戻ってきたカモ君達。

時間ギリギリまで使い、体を休めていたカモ君達は闘技場。決闘場となる闘技場の真ん中に現れた。

彼等の登場と共に闘技場中からブーイングが鳴り響く。まあ、ここは敵地だから仕方ないと諦めてカモ君達は入場した。

試合が始まる五分前だというのに、その場の雰囲気は盛り上がりきっていた。中にはごみを投げつけたりする輩もいた。しかも、それが『コハク』を含めたカモ君達に投げ出した瞬間、ブーイングはぴたりとやんだ。

 

我が姫に無礼を働くか、猿ども。

 

コハクのオリハルコンドレスに変化しているアースが、怒りと言う感情を露わにする。

スフィア・ドラゴンのプレッシャーがその場を支配した。

気配を闘技場全体に向けている。全方位に向けているはずなのに。

まるで氷塊の中に無理矢理埋められたかのような気配を受けた観客は一時の静寂を強制された。そして、それは十秒後、大きな声で破られた。悲鳴によって。

 

殺される!死にたくない!許してください!

俺は悪くない!こいつが悪いんです!私の縁者を生贄に捧げます!

 

まさしく阿鼻叫喚。

体中のあちこちからいろんな液体を噴出しながら、押し合いへし合いで観客達は逃げ出した。

だが、それも仕方名の無い事。争いを知らず。されど力の差を知っている人間の前に絶対強者すら生ぬるい。何をするかわからない絶対存在の不満が自分に向けられたら誰しもがパニックになるだろう。

ネーナ王国の一般兵。それでも一般人の数倍は強いはずの彼らすらも警護の任を放り投げて逃げ出そうとしている。

それだけスフィア・ドラゴンは強い。というか、ラスボスより強い。裏ダンジョンのモンスターだから当然ではある。

意識して自身の気配を消していたというのに、悪意を自分よりも大事にしているコハクに向けたのだ。少なくても普通には暮らせない程の罰を与えなければならない。

しかし、それをコハクに止められた。彼女からしてみれば言葉の通じない羽虫が耳元で喚いているだけであり、払うだけで勝手に消えてくれるならそれで済ませる。

コハクの恩情をくみ取り、アースは、ちょっとだけの罰を与えた。

 

ブーイングを行い、闘技場から逃げ出したほぼ全観客は闘技場から逃げ出した直後、その場で転んだ。どういったわけか、彼等は全員、両足の指先の全てが何かに押しつぶされたかのようになっていた。何が起きたかはアースしか知らない。

 

そんなプレッシャーは一応味方陣営のカモ君達も押しつぶそうとしていた。が、コーテに声を掛けられたコハク。そして、コハクからアースへの言葉で何とか収まった。

 

「何度も思うが、これには、全然慣れないな」

 

「や、やっぱり嫌です。おうちに帰りたい!引きこもりたい!」

 

「いや、引きこもった所ごと押しつぶされるから、慣れも隠れるのも無意味だと思いますわよ」

 

「ほ、本当に何者なんですか…。この人」

 

恐怖に耐えるシィ。耐え切れなかったイタの言葉に、何とか恐怖を飲み込めたネインが発言する。改めて超常の存在感に怯えるライツ。

はっきり言って一つの行動で村一つ。下手すれば領一つ押しつぶされるのではと、自分達の同行者に戦慄を覚えた先輩達をしり目にシュージとキィは幾ばくか平気な顔をしていた。

この二人。いずれ自分はこれすらも超えられる可能性を持っているのだ。今は屈しても将来的には勝てる可能性を持っているために、割と平気だった。カモ君も割と平気な顔をしていた。

 

表面上は!!

 

瞼を閉じ、凛としてその場に直立しているカモ君はまるで彫刻のように力強かったが、その裏では愛する弟妹達との思い出を反芻するだけ。というか走馬灯を見ていた。そして、数秒の走馬灯の後になってようやく事態を飲み込めた。

 

あかん。死ぬぅ。

 

ように見えて若干混乱していた。が、アースが暴れればそれは現実になるので混乱ではないともいえる。

そんなカモ君の視線の先にはネーナ王国の選手たちも見えたが、目に見えて慌てていた。

逃げ出さなかったところはほめたたえるべきだが、その選手たち全員が武器を構えていた。しかし、全員が全身を覆うフードを被っていたので表情は見られなかったが、大分慌てている。二人ほど手にした武器を落とし、一人は腰を抜かしたのかその場にへたり込む。残りの二人は武器を構えるだけでいたが、その後ろでは補欠要員と補助やサポート要員は涙を流しながら、武器を構えた二人に縋りついていた。

 

 

 

それを特別観戦席で見ていたミカエリは意味ありげに微笑んで呟いた。

 

「(コハクちゃんが参加していれば)勝ったわね。この決闘、我々の勝利よ」

 

カモ君達の敗北フラグその1が立った。

 

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