鴨が鍋に入ってやって来た   作:さわZ

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第一話 これが俺の全力全開

 弟妹の誕生から五年が経った。エミールことカモ君、十歳。

 あのマトリョーシカのような体形は弟妹達が誕生した次の日から、剣と体術の訓練を加えて、今まで鍛えてきたことによって体が引き締まっていた。どれくらいかと言うと「お前その体型系で頭脳派の魔法使い?ていうか十歳?」と言うくらいに引き締まっていた。同い年の子どもの服を着ようものならパツンパツンになるだろう。というか千切れる。それくらいに筋骨隆々。THE・戦士な体である。顔は年相応に童顔だが髭が生えていないのが不思議に思うくらいの少年?だった。

 そんな体つきになった理由もある。それは、

 

 「にーさま、肩車~」

 

 東、青竜の方角より、愛弟クー。その太陽が如くその笑顔でとてとてと歩み寄ってくるその姿、輝く金の髪と金の瞳はまるで太陽のごとくカモ君の心に温かみを与えていた。口角思わず上がりそうになるがそれを必死に抑えてポーカーフェイスを貫く。

 格好いい兄貴は弟にだらしない顔をしないのだ。元気なショタっ子にクールな笑顔で答えてやるのが兄貴の務め。

 普通は兄じゃなくて父が肩車だろうだって?馬鹿言うな、年中デスクワークで家族サービスなんか考えていない狸な体をしたクズ親父の肩車なんか危なっかしくて見ていられない。まあ、あっちもするつもりなんざさらさらないんだろうけど。

 

 「にぃに、わたしも…」

 

 西、白虎の方角より、愛妹ルーナ。クー同様に近付いてくるとズボンのすその部分をそっと掴んでくる辺りが実に愛らしい。その思わず抱きしめたくなるおっとりした雰囲気に愛らしさを倍増させるような垂れた目尻。赤い瞳と長い目つげは艶っぽさを引き立て今や領内どころか国内一の美少女なのではないだろうか?思わず同じように目尻が下がりにやけてしまいそうになるがそれを抑える。

 格好いい兄貴は妹に見惚れないのだ。どれだけ健気な雰囲気を出そうともその要望に応えるまでが限度なのだ。

 普通は父親が応えるものだろうって?馬鹿を言うな、あの無愛想、無作法、不養生なダメ狸が応えられるわけないだろう。応えるとしてもそれは自分の利益になる時だけだろう。まあ、俺にとってはこの触れ合いが何よりの報酬ですが。

 

 とまあこんな感じでモカ子爵領にある屋敷の中庭で、双子の弟妹達をそれぞれ右肩左肩に乗せて肩車をするカモ君。この五年のうちにすっかりブラコン&シスコンになっていた。

 しかもこの男、少年と言うには体つきが屈強過ぎるが、幼児を抱え上げても体勢を全然崩さない。そう、この屈強な体は弟妹達と安全に触れ合うため。万が一に転んで二人を傷つけないために鍛え上げた物である。兄馬鹿である。

 

 「エアジェル・ダブル」

 

 そうカモ君が呟くとクーとルーナの周囲を薄い緑色の風が包み込んだ。

 魔法のレベルには五段階あり、1から5まであり、初級、中級、上級、特級、王級となりレベルが上がる程習得が難しい。

 貴族出身の魔法使いが一生かけて魔法の修練を重ねても上級までが限界である。中には平民の中からも魔法使いは産まれるがそんな彼等でも中級、上級までが限界。

才能が有り、幼いころから環境に恵まれ、良い師、経験を重ねた上で血統も上等な王族でなければ王級は扱えないと言われるのがこの世界の魔法である。

 そしてゲームに似ている世界なら別の理由がもう二つある。

 それは成長ボーナス補正である。生物としてのレベルが上がればそれによって扱う魔法に上昇補正がかかる。

 それはある特定の人物に認識されないと使えないが今は語るべきではない。

そしてもう一つは魔法の属性の少なさに比例してその属性の魔法が成長しやすいという物だ。つまり魔法は浮気をしない一途な魔法使いが成長しやすいという物である。

 つまりカモ君は全属性の魔法を使えるとはいってもそれはレベル1、2が限界でそれ以上は前者の方法を取らないと魔法のレベルを上げにくい事を表している。

 エレメンタルマスター等と言われているがその実器用貧乏ということを表しているのだ。

 更に弱点補正という物がある。火属性の魔法使いには水属性の魔法攻撃を受けると他の魔法使いに比べて大きなダメージを負う事になる。水は地に弱く、地は風に弱い、風は火に弱い。闇は光には弱いが残りの全てに強い。光は闇には強いが他の属性に弱いといった。タイプ相性がある。

 つまり全属性の魔法が使えるエレメンタルマスターのカモ君は全ての魔法に弱いということになる。まあ、魔法は基本的に先手必勝。攻撃するだけなら手札が多いカモ君にも利点はある。

 話を戻すがカモ君が使ったのは風魔法のレベル1で修得できるもの。駆け出しの魔法使いなら使える魔法だがその効果は対象になった物や人への外部からの攻撃を緩和するといった保護膜のような物だ。

 しかし、それを十歳の少年がしかも対象は自分ではなく他人。しかも二つ同時に発生させ、それを持続させるなど本来ならあり得ない出来事だ。普通の魔法使いがその技術を扱えるようになるには十五年近くの修行がいる。

 それが出来るのはカモ君のゲーム内では高スペックな性能を持っていた。扱える魔法のレベルは低いが魔法の同時使用を行っていた。だから出来るだろと考えていた現世カモ君はそれを弟妹達の為にと意欲を駆り立てながら修練を重ねてそれを修得させた。まさに才能と努力がかみ合った結果である。

 

 「にーさまの風は気持ちいねルーナ」

 

 「うん・・・。気持ちいい」

 

 そやろっ。そやろっ。ん~~っ、俺も気持いい。愛すべき弟妹からの称賛の声程心ふるわせる物はなかなかないな。時点でクソ親父の悔しがる声とネグレクトを働いている母親の金切声だ。まあ、そんな事は顔には出さないけどな。格好いい兄貴は自画自賛していることを感じ取らせてはいけないのだ。

 

 父親ギネとの関係は相変わらずで自分の息子の外見がポッチャリからガチムキへと驚くべきビフォアーアフターしてもそうかの一言で仕事の邪魔になるからと部屋から追い出された。

 クーとルーナも全然構ってくれないギネの事を父親ではなく同じ屋敷に住む無愛想な人間と思っていた。むしろ邪魔扱いするギネよりもクールぶりながらも構ってくるカモ君に懐いていた。

 母親のレナも仕事ばかりのギネに冷え切った関係に辟易していたが、下手に逆らえば暴力で返ってくることが分かっているので下手に口出しできない。その関係が続けば続くほどに家族という繋がりに嫌気がさしていた。

 カモ君も最初はそんなレナに明るく接していたが八つ当たりのようにクーとルーナに手を出すようになっては距離を取るようになり、今では、母親のレナは育児の殆どはメイド長のモークスに任せるようになっていた。

 その所業の所為で弟妹達からはモークス(御年5●歳)とカモ君(十歳)がお父さんお母さんだと思っている節もあった。

 

 「少し大きくなったか?二人共」

 

 「にー様、昨日も同じこと言ってたよー」

 

 「にぃにも大きくなったよ」

 

 「そうかそうか。ふははは」

 

 兄弟三人が戯れている光景に癒されているのは何もカモ君だけではない。それを見守っていたメイド長のモークスとメイドのルーシー(十九歳)と執事プッチス(二十五歳)だ。

 カモ君。正確にはカモ君がクーとルーナに構いだすまでは、まるでぬるま湯の中にいるよう雰囲気が漂うモカ子爵の屋敷内の生活だった。

 三兄弟が遊びに興じている時は本当に幸せな空間を作り出していることに、従者達は癒されていた。

 領主であるギネは仕事だけで気に喰わなければ、従者である三人はもちろん、妻だろうが息子だろうが手を上げるような人物だ。今のところ年の功でモークスが矢面に立つことでどうにかなっているが、カモ君と妻のレナが口答えしただけで、弟妹達は子ども特有の遊び声が五月蠅いから殴られたことがある。

 自分はともかく弟妹達を殴られた時は本気で殺してやろうかと魔法を使いかけたがギネの魔法使いとしてのレベルは地属性のレベル3。当時のカモ君では逆立ちしても勝てない為に歯を食いしばって耐える事しか出来なかった。

 カモ君が体を鍛え始めたのもこの理不尽な所業に対抗する為である。魔法はまだ勝てないが素手の殴り合いなら負けんぞと口に出さないだけで雰囲気作りの為もある。

 そのかいもあってか今ではカモ君と遊ぶクーとルーナの声を聴いても呻き声のような物を出しながら自室にこもるという状態になっている。ざまぁである。

 そんな裏事情がありながらも関係良好な兄弟達の時間に野暮な知らせが届いた。

 モカ領に駐在している衛兵からゴブリンの群れが領内にある村の近くに現れたとの報せがあった。そこに駐留している衛兵だけでは手が足りないから領主であるカモ君に指示を仰ぎに来たのだ。なんで領主のギネじゃないかって?

 魔法使いのレベルは3という中堅レベルでもお偉方のいるところでしか魔法を使いたがらない頭でっかちタイプで「お前等だけで対処しろ」の一言で終わるからである。

子どもながらもエレメンタルマスターであるカモ君はクーとルーナに格好をつけたい為に最初は衛生兵代わりに水魔法レベル1のプチヒールという回復魔法をかけて回り、次第に弓兵代わりに火魔法・地魔法レベル1のバスケットボールサイズの火球を投げつけるファイヤボールや鍋くらいの厚みの鎧なら貫通できる複数の土くれの針、アースニードルで襲い掛かってくるゴブリンを対処していくにつれ衛兵たちの信頼を勝ち取り、複数の魔法が使える人間として父ギネに代わって衛兵達に指示を出すようになっていた。

 それだけ魔法使いは貴重で力を持つ存在なのである。

 ゴブリンについて。奴等は全身が緑色の人型モンスター。子ども位の背丈で膂力も子供並だがその不衛生な生態と増殖力。集団で人を襲い、襲われた村には疫病が蔓延する厄介なモンスターである。一匹二匹程度なら領内に住む平民の成人男性でも対峙できるが群れとなると危険度は跳ね上がる。そのような存在が駐在している衛兵達が指示を仰ぐほどの数だと判断したカモ君はクーとルーナを地面に降ろして従者達に自分の剣とローブを持ってくるように指示を出した。

 この時のカモ君の表情は先程まで穏やかな雰囲気を出していた兄貴の顔ではなく、これから戦いに出向く戦士の顔をしていた。

 本来魔法を使う事が出来るのはその才能が有るか、貴族のように先祖が魔法使いか、特定の条件を満たすことでしか使うことができない。その為、幼いながらも複数の魔法を使う事が出来るカモ君に支援を求める。

 そんな兄の雰囲気を察したのか、クーは頑張ってとエールを送り、ルーナは早く帰ってきてねと安全を請う。そんな二人にカモ君は不敵な笑みを浮かべてこういった。

 

 「また帰ってきたら遊ぼうな」

 

 それは自分達のヒーローだ。少なくても二人の弟妹達には正しくヒーローだった。

 力無き民を守り、率先して兵達を率いて、領の恐怖を取り除く。紛れもなくヒーローだった。

 これから向かうのはゴブリンの群れの討伐。衛兵だけでは足りないからカモ君に頼って来たという事はカモ君にも危険があるという事それはわかっている。だからこそ二人の兄へとエールを送った。頑張って。負けないでと。

 従者達がカモ君の背丈に合わさせて作られたショートソードに下手なナイフでは裂くことが出来ない頑丈なローブ持ってきた。それを身に纏い、報せを届けに来た衛兵と共に馬に乗って出陣していった。まさにヒーローの出立である。

 ちなみにその時のカモ君の心境はというと。

 

 おのれっ!くそゴブリンが!三人のふれあい時間を何度も邪魔してくれたお馬鹿さんはお前等が初めてですよ。じわじわどころか確実に皆殺しにしてくれる!覚悟しろよ!

 

 とまるでどこかの宇宙帝王な事を考えながらゴブリンの圧殺を考えているカモ君だった。

 

 

 

 モカ領は領内にいくつかの森を持つ比較的平坦な土地で、その土地性を活かし、農耕を中心に発展しているのどかな土地だ。そんな平和そうな土地に住む人達は今、ゴブリンという魔物に平穏を侵されつつあった。

 日が暮れ、松明にともされた火と月明かりで静かに照らし出されるのは緊張で顔を引き締めた衛兵達。それに対してモカ領へ侵入しようとしているゴブリン達は嗜虐心からくる笑みでその腐臭の香る顔を醜く歪めながら侵攻を開始した。

 モカ領から少し離れた森から続々と現れるゴブリンの数は五十匹以上。更に森の影から出てくる総数は百をくだらない。まさに大群だ。そしてモカ領の入り口に見えるのは王都から派遣された衛兵達その数二十人前後。まさに五倍の戦力差である。

 このままぶつかれば衛兵達は数の差に圧倒されてモカ領への侵入を許してしまうことになる。

 領主はいけ好かない貴族だが、その息子。子どもはいまどきの貴族には珍しく頭を下げてこの防衛線に出てきた。それも今回だけではない。度重なるゴブリンの侵攻の防衛に参加してきた。

 最初は子どもに何が出来ると話も聞かなかったが、一度目は衛生兵として水魔法で清潔な水を生成し、どんなに小さな傷でもふさがるまで治癒魔法に該当する水魔法プチヒールを何度もかけていた。防衛を終えた後にもあなた達のおかげで領(弟妹たちの遊び場)が守られた。ありがとうと。その時、感じ取った。こいつは領主とは違うと。

だが実のところ領主のギネのように弟妹達が関係していなければ参加していなかったという事に誰も気が付いてはいなかった。

 二度目の防衛線は深夜だったので松明代わりに幾つもの火球を魔法で作りだし、衛兵達の視野を広め、防衛成功させた後には感謝の意を伝えた。一度目の防衛で築き上げた信頼を更に盤石の物にした。そして、三度目のゴブリンの侵攻。

 一度目、二度目に比べて確実にゴブリンの数は多い。だが、ゴブリン達が侵攻を開始する前にモカ君は領を守る衛兵達と合流することができた。そして衛兵達に伝えた。とっておきの魔法を修得した。と、

 彼等の半分には領を守る柵の内側から弓を構えてもらい待機してもらう。残りの半分の人員は。その弓を構えた人達の護衛だ。今から使う魔法に巻き込まれないようにするため遠距離戦をしてもらいたいから。

 そしてカモ君の魔法の詠唱が終わる。するとゴブリン達の視界の下半分が土色に。それはカモ君が使った地魔法ホールという採掘場で使われる岩盤を彫るための魔法だ。本来ならそれは直径二メートル、深さ五メートルの穴を瞬時に作り出す魔法だが、カモ君はそれを薄く広く広げゴブリンの先発隊の真下に深さ五十センチ直径二十メートルの落とし穴と言うには広く浅すぎるそれはゴブリン達の足を止めるには十分だった。

 ゴブリン達が慌てている間に衛兵達の弓で放った矢が降り注ぐ。その矢はゴブリンの頭や腹足に突き刺さり、絶命ないし足止めに成功した。だが、後続のゴブリン達は落とし穴に落ちた仲間達を足場に更に侵攻を開始した。降り注ぐ矢の雨をかいくぐり、または動けなくなった仲間のゴブリンを盾にして進んでいく。

 そんな時だった。ゴブリン達の視界が暗くなった。今夜は雲一つない月明かりが自分達を照らしているのになぜ暗くなるのか?視界を上に移すとそこには宙に浮かぶ直径二から三メートルの岩が幾つも浮遊しており、それが岩だと気が付いた時にはその岩は自分達めがけて落下し始めた。

 地魔法レベル2のロックレイン。カモ君は魔法のホールの後すぐにこの魔法を詠唱していた。落とし穴で身動きが取れないゴブリン。衛兵達の弓矢による攻撃で時間稼ぎをして押し潰す。それがカモ君の作戦だった。

 

 「さすがは次期領主。次はどんな魔法を見せてくれるんだ?」

 

 その言葉にカモ君は不敵な笑みを浮かべながら腰につけていたショートソードを抜き放った。

 

 「見せるまでもないですね。残ったゴブリンは十匹未満。弓矢で射殺してトドメを刺すだけです」

 

 「違いねえ、これだけ削れれば後は俺達、衛兵の出番だ」

 

 今ので魔法力を使い果たしました。さっきのが全力ですが何か?次に使えるのは六時間以上の睡眠をとった後ですね。

 とは決して言えないカモ君だった。

  それからの防衛戦は終始カモ君の心中は「ゴブリン死すべし!消毒だー!!」と今まで衛兵の皆さんに頼んで鍛えてきた体術と剣技でゴブリンの掃討を行うのであった。

 

 

 

 こいつは他の貴族連中とは違う。

 モカ領の衛兵長はそう感じ取った。

 魔法使いと言うのは武器も無しに自分よりも屈強な大男も殺すことが出来る。その為、魔法が使えることで増長するのが常だった。魔法使い=貴族がほとんど通用する。そんな貴族間でもたとえ身内であろうとそこに優劣を見出せば下に見られる。そんな中、エレメンタルマスターという全属性の魔法を扱う事が出来るエミールももれなくいけ好かない生意気なガキだった。

 しかしそれは彼に守るべき存在。彼の弟妹が生まれた時から変わった。

 これまでの対応を詫びた。しかも膝と額を地面につけてだ。基本的に自分達を下に見ている自分達に対して。こいつの父親。領主のやつは絶対にやらない事をやってのけた。その上、魔法が使える人間は体術や剣や弓と言った武器を使う事を毛嫌いする。そんな事をするくらいなら魔法を修練したほうがまし。と考えるのが普通だった。だがそれだけでは足りないと言い、魔法の修練を自分の屋敷で終えた後、わざわざ駐屯上まで出向き、泥臭く汗臭い衛兵の訓練に積極的に参加するようになったエミールに衛兵達は自分も含めて信頼し始めた。

 そして三度目のゴブリン侵攻の防衛。そこで見せた剣術。僅か五年で一衛兵並の体運び、剣術を修得した。これが魔法使いではなく一兵士なら歴史に名を残せたのではないかと思う。

 こいつはいわゆる天才と言ってもいいだろう。だが、そう言われることを嫌っているのもわかる。エミールには自分以上の存在を知っているのか苦笑しながら自分は良くて秀才ですよと。

 お前以上に才に恵まれた奴がいるのかと、是非見てみたいといったら、もう既に見ていると思いますよ。と、言った。まさかあのクソ領主か?

 もしやコイツ、おとぎ話や吟遊詩人の歌に出てくる英雄や勇者と自分を比べているのではないだろうか?だとしたらとんでもない大馬鹿野郎だ。だが、嫌いじゃない。上を目指している人間の姿は万人に受けなくても身を挺して誰かを守る衛兵達にとっては好ましいからだ。

 エミールがどこを目指してどこまで行きつくかは自分にもわからない。だがそれを見ることが出来たらそれは歴史の生き証人になれるのではないだろうか。英雄や勇者の誕生を見ることが出来るのではないかと心踊らされるのであった。

 

 

 

 実際のところ、兄馬鹿なカモ君が弟妹達に自分の格好いい所を見てもらいたいというただの承認欲求からきていることを衛兵長は知らなかった。

 


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