鴨が鍋に入ってやって来た   作:さわZ

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第十一話 ERO MEN 足る MONSTER

「無礼講に女子会をします」

 

「…は?」

 

至福のお昼時間を経て、優雅な夕食でもてなされた。さあ、あとは用意された客室のベッドで眠るだけと思っていたコーテは王城から戻ってきたミカエリになかば拉致されるようにメイド達の寝泊まりする寮へ連れてこられた。

 

「コイバナをします。惚気話もしてもらいます」

 

「ミカエリさん。疲れている?」

 

あの外見は知的で、頭脳明晰で容姿端麗。しかし、中身はファンキーなミカエリが食い気味でコーテをメイド達が六名から八名ほどで眠るベッドルームにコーテを引きずり込んだ。

その部屋にはすでに眠ろうかとしていたメイド達もいたが、中には「…またか」と何かを悟った眼をしていたメイドもいた。

 

「うん。とっても」

 

少し幼児退行を起こしているミカエリの様子にメイド達はまた、王族に縁談を持ち込まれたなと察した。

ミカエリは自由人だが、王族を無視できるほど自由ではない。かといって、王族に縛られるほど律儀でもない。そんな中途半端な人間だから、王城には行きたがらない。行って帰ってきたときは相当フラストレーションが溜まり、こうやってメイド寮に突撃しては愚痴をこぼし、メイド達の恋路や悩みを聞いて発散させる。

王族からの縁談とは一般国民にしてみればこれ以上ないほどの贅沢だが、ミカエリは一般ではない。王族から与えられるものよりより良いものを手に入れられる彼女には欲しいものなど今までなかった。

その事をメイドから知らされたコーテはこれまでの恩義に報いるためにもミカエリの無茶ぶりに応えることにした。

コイバナというか、惚気話は自分にとってはカモ君のことしか思い浮かばないがそれでもよければとメイド達と盛り上がっていた。

メイド達のコイバナから、自分とカモ君の出会いを話していたコーテ達だが、ミカエリの話になると事態は一変した。

 

「私はエミール君がいいと思うんだよね」

 

「いくらミカエリさんでもそれは許せない」

 

ミカエリにとって最初のカモ君はその辺を歩く一般人や貴族と大差なかった。

しかし、それが変わったのはカモ君が自分をほとんど欲していないと理解した時だ。

その美貌に目を奪われるわけでもなく、その地位と名声に惹かれるわけでも無い。

かといって恩義を忘れたわけでも礼儀を忘れたわけでもない。

自分との距離感。ボケに対するツッコミといった遊び心もちょうどいい距離感。

他の誰でもない反応。態度に興味をひかれた。

彼の類を見ない凡庸さ。一般人の素質を最大限に生かそうとする努力とその姿勢。

エレメンタルマスター?そんなもの彼の面白さに比べればおまけにもならない。

その上。

 

「だって…。エミール君。エロいじゃない」

 

「…」

 

ミカエリのような絶世の美女。ダイナマイトボディー。エロい体を持つ人からエロいと言わせるカモ君はそんなにエロいのか?

コーテからしたらカモ君だけが異性と認識している。自分の兄や彼の弟のクーは家族としか認識できない。

魔法学園で自分に言い寄ってくる男子生徒はいたが、今でもその顔はうろ覚え。せいぜい、カモ君が重宝しているシュージの顔くらいしか思い出せない。

だからカモ君がエロいといわれても納得がいかないコーテだったが、周りのメイド達は違った。

 

「わかる」

 

「わかる」

 

…わかるのか。

 

コーテは内心戸惑いながらも彼女たちの意見を聞き出す。

 

「だって、まだエミール君十二歳。もうすぐ十三歳なのにあの体つきよ」

 

「いいですよね。十三歳。子供でもなく、大人でもない」

 

「まだ未成熟な果実。それなのに大人な体つきをしている」

 

「成熟した体に、未熟な精神。そのアンバランス。最高」

 

自分の容姿が子供体型で、そこが受けると級友のアネスがいっていたがそういうことなのだろうか?

 

「あの鍛え甲斐のある体つき。まだ筋肉がつきそうな成長段階の体」

 

「あちこちについている消せない傷、危険な香りがする顔に残った火傷」

 

「ちらちら見せる彼の弱点は逆にいいアクセント」

 

食レポかな?

 

「強がっている割には実は弱点豊富」

 

「大人ぶっているけどまだ幼さの残った所作」

 

「悪ぶっているけどうっかり癖が抜けないところも萌えポイント」

 

…エミール。散々な言われようだけど否定できないよ。

 

「何よりあの股間のスティック。いやスタッフ。戦闘態勢に入ればどうなることか」

 

「思わずのどが鳴りました」

 

「私は胸が」

 

「私は下腹部が」

 

風邪の初期症状かな。すっとぼけ続けるのも難しい。

だからか、ぽろっと余計な言葉をこぼしてしまった。

 

「あれはあと変身を二回、残している」

 

エミールのあれは戦闘状態とその先、戦闘状態2がある。

 

「まさか、そんな…」

 

「それじゃあ、スタッフどこじゃないわ。ランスじゃない」

 

「私の戦闘力で包めるかも怪しいわ。コーテちゃん。どこでそれを…」

 

ここは勝者の笑みを。違った。エミールはほとんど動かなかったからあれを勝利とは言えない。

経験者の笑みを浮かべよう。

 

「…ふ」

 

「そんな、コーテちゃん。そんな小さな戦闘能力でどうやって!?」

 

「そもそもコーテちゃんの戦闘力で彼を受け止められたの?!」

 

「コーテちゃん。恐ろしい子」

 

あと私の体つきを見て戦闘力と言わないで欲しい。

この小ささは希少価値だ。あれから少しだけ。本当に少しだけ大きくなった気がするのだから。

私の戦闘力はエミールとの戦いの中で大きくなっているはずだ。

 

「あれを受け止められるなんて。まさに人体の神秘」

 

「きっと骨があるのよ」

 

「魔物かしら。いや、確かにあれはモンスタークラス」

 

それからエミールの発情ポイントをつらつらと挙げていく女性陣。

 

「結論。エミール君はエロい」

 

「わかる」

 

「主張を認める」

 

「異議なし」

 

本人のいないことをいいことに散々エロいと言われているカモ君。

そんなカモ君はというと。

 

 

 

「女性のドキッとした瞬間」

 

「ほどけた靴ひもを目の前で結んでいるしぐさ。頭頂部に隠れて見えそうで見えない胸の谷間が最高」

 

「髪をかき上げるしぐさに見える項にときめかずにはいられない」

 

「前かがみになった時のヒップだろ。メイド服の上からもわかる肉厚さを知らんのか」

 

「…お腹をさすりながら『きてないの』と言われた」

 

「そんなドキッとはいらねえっ」

 

「遊び盛りだぞ、俺たちっ。お前、まさか…」

 

「…」

 

「…まじかー」

 

カモ君も執事たちに挨拶に行ったら猥談に参加するように言われた。

これまでお世話になったこともあり、カモ君も乗り気だったが、猥談中に一組のカップルが結ばれた(自業自得)ことにバカ騒ぎをするのであった。

 


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