放浪の赤の星の主従   作:謎の食通

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久しぶりの小説投稿。

マンネリとか新作とかサーフィンとかいろいろあるけど、一番はあれだな。


・・・リアルの仕事と体調。これは強敵すぐる。



お持たせして大変申し訳ありませんでした。最近創作関係で迷走していますが生暖かい目で見てくれると幸いです。


第十一話『天香香背男命の闇』

荒野となった横浜の空を白き箱舟は飛ぶ。

 

 

「船体に多数の指向性重力波を感知」

 

 

アベルは現在の状況をソルダートJに伝える。この船の生体コンピューターとなった彼女には外の様子が手に取るようにわかる。

 

 

「なるほど・・・ソレが奴らの目か」

 

 

Jが呟くと同時にジェイセイヴァーが赤く輝く。ジェイアーク級に標準装備されているジェネレイティングアーマーに一定以上の圧力が掛ったことの証だ。それはすなわち攻撃を受けているということだ。

同時に判明する。BETAがどの様に目標を識別しているのか。宇宙空間で活動するならば光学センサーだけでは心もとない。いや、星系外を航行するなら役不足だ。故に、ジェイセイヴァーにも搭載されている重力波探知機の類がBETAにも内蔵されているのだ。

 

 

「まあ、仮にも恒星間での運用を想定するならソレぐらい普通ですからねえ」

「レーザーもジェイセイヴァーを落とすには威力が弱すぎるようだな。まあ、隕石迎撃用ならこの程度か」

 

 

BETAの光線級のレーザー攻撃、それを受けてもジェイセイヴァーはビクともしない。そもそもマグマの中で活動できるジェイアーク級にその程度の攻撃では無意味だ。むしろ、光を取り込み物質精製を行なう光子変換翼を持つジェイアークにレーザーとは悪手以外の何物でもないだろう。

 

 

「そうですね。・・・さて、虫を駆除いたしましょう」

「了解。メーザーミサイル、斉射!」

 

 

命令が発せられると艦の後部から多数の光の束が放たれる。一見すると曲がるビームの用に見えるが、これはソルダートJの指令通りのミサイル攻撃である。そして、メーザーミサイルは桃色とも紫色はたまた赤色とも言える光の軌跡を描きながらBETA群に着弾、瞬間に破裂する。メーザーは大勢のBETAを焼き尽くし、辺り一面を更地にする。

 

 

「ふん。この程度か・・・」

「炭素系生体ロボット程度だとジェイアーク級は過剰戦力ですね」

 

 

ジェイの詰まらなそうに呟いた言葉にアベルは、BETAの死骸を見やり、ジェイセイヴァーの出力を調整する。対象を原子レベルで分解する反中間子砲は地上で使うには威力が大きすぎる。いや、そもそもジェイアーク級事態がトンデモじみている。何せ地球クラスの衛星を一撃で粉砕することも可能なのだ。

 

 

「しかし、奴らの物量は厄介極まりないがな」

「まあ、そもそもジェイアーク級は対原種を想定していますから、あそこまで物量との戦闘は想定外ですからね。ですけど、ある程度データは出ましたので、それを元に調整します」

「そこは我が主のシュミレート結果を信用するとしよう」

「あら、なら頑張りませんとね」

 

 

アベルは、微笑む。その微笑みは、見る人に見た目相応の可愛さと評されるだろう。・・・実際の年齢については語ってはいけない。生体コンピューターとなったアベルの今のボディはスペアボディなので中身・・・精神年齢はお察しである。

 

 

 

***

 

 

 

国連軍明星作戦司令部は、騒然となっていた。モニターに映る横浜ハイヴ周辺のBETAが消し飛ぶ姿を見ればそうもなるだろう。

 

 

「状況はどうか!」

 

 

肌の浅黒い剛と称せるような男が司令部要員に状況を確認させる。それを受け、オペレーターは目の前の非現実的な現実から意識が戻り、己の職分に取り掛かった。

 

 

「異星人戦艦、ハイヴ周辺のBETAを攻撃中!」

「レーダーに依然として反応ありません!」

 

 

モニターに白い戦艦が映っているにも関わらず、彼らのレーダーは空に浮かぶ翼を捉える事が出来ないでいた。

 

 

「目視してもか・・・」

 

 

地球の科学力では彼らを補足するには光学観測しかなかったのだ。モニター前で地球人が右往左往している間もBETAはたった一隻の戦艦に駆逐され続けていた。

 

 

「あら、中々壮観ですね」

「香月博士・・・」

 

 

彼、パウル・ラダビノッドの後ろから、軍の作戦司令部には似つかわしい白衣の女性が入ってきた。一見すると彼女は軍人というよりも科学者にしか見えない。しかも、一般的な美的感覚に照らし合わせると美女とも呼べる彼女は、鉄と血が飛び交う戦場には似合わない。だが、彼女は軍属であるどころか、本来、数日後に行われるはずだった横浜ハイヴ攻略戦の発案者、香月夕呼その人なのだ。

 

 

「目視出来るほどのレーザー、いえ違いますわね。着弾した後を見るとレーザーとは別の代物ですわね」

「・・・しかも、あれで副砲なのだから」

 

 

夕呼がBETAの殲滅される様をご機嫌な笑みで見つめながら、白き箱舟の武装を考察している。その隣でラダビノッドは、否。この場にいる夕呼以外の軍人がその圧倒的な戦闘能力に顔を青ざめさせている。そんな軍人たちを横目に香月夕呼の中では思考が常人よりも高速な速度で思案されていた。

 

 

(そう・・・。あのテクノロジーは私たち地球人どころかBETAをも超越している。あの二人から聞いた話だけでも空間転移に、一瞬で大気圏を安全に離脱できる慣性及び重力制御を実現しているのは確実。それどころか、あの様子を見るとなんらかの防御フィールドも展開しているわね。全く、地球の・・・いや私の常識に喧嘩売ってるわね)

 

 

自分に喧嘩を売っていると評しながらも、どことなく彼女の様子は嬉しそうに見えた。科学者とは未知を追い求めるもの、そして彼女の宿願でもあるBETA殲滅がなされている現状、そのどれもが彼女の気分を愉快にさせるのだ。

 

 

「司令、あの戦艦に対するコンタクトは?」

「無論している。というよりも帝国に国連や東亜連合、そしてアメリカ等、交信を試みていない所など皆無だ」

 

 

彼の言うとおり、ありとあらゆる回線や通信方法が横浜の空で飛び交っていた。しかし、それを気にも留めずに光の翼は戦場を舞う。

 

 

「正にカグヤ姫と言った所ですか。でも姫さまは蟲退治に夢中のようですね」

「博士に何か考えはありますかな?」

「さて・・・ただ言えることは私の手元に竹取の翁と富士の薬があると言う事実だけですわ」

「・・・ハイヴから救出され子供たちと例の宝石か」

 

 

宝石とラダビノッドが呟いた所、夕呼は、彼に向き直り否定する。

 

 

「司令、宝石ではなく、あれは超高度な情報集積回路兼情報処理システムですわ。・・・まあ、未だに肝心の中身のデータは翻訳最中ですけど」

「博士でもわからないのかね?」

「いくら天才と言われても、そもそも私の専門は量子論なんですけどね。まあ、あれが集積回路と判明できたのも私の研究の一環の成果と言った所ですわね。いえ、むしろあれが解析しきれた時は、もはや計画は完遂したと言ってもおかしくないでしょう」

「それほどのものか・・・」

 

 

夕呼の解説を聞いた彼は思わず、息を呑む。彼は、彼女が主導する計画に属する人間だからこそ、その計画の常識はずれの荒唐無稽さ、その困難さを知っている。それを完遂出来るとすら言わしめた紅き宝玉の事実に驚くしかなかったのだ。

そして、その事実は彼女にもまた別の視点を与える事となる。

 

 

(あの子たちの証言を鵜呑みにするなら、あの連中は日本語を喋ったという。けど、アレの中にあった言語は未知のモノ・・・地球人と近い異星人もしくは異世界人か・・・)

 

 

未知との遭遇、知を探求する者の一人として、これほど興味を惹かれるものは少ないだろう。

 

 

「ふふふ・・・面白くなってきたわね」

 

 

 

***

 

 

 

一方、横浜沖に遊弋している米軍機動艦隊もハイヴ周辺における蹂躙劇を観察していた。

 

 

「凄まじい船だな」

「ええ、いったいどれ程の技術が使われているのか・・・」

 

 

髭を蓄え、如何にも私が艦長ですとも言わんばかりの男、提督は艦長―――提督とは逆にさえない風貌の男―――と共にジェイセイヴァーの戦闘を解析していた。

 

 

「そうだな。それにしても、あれほどの戦艦が出るとなると戦艦開発が過熱しそうだな」

「し、しかし、空飛ぶ戦艦でしかも戦術機・・・戦略機とも呼べる代物に変形するようなモノが我々に作れるのでしょうか?」

「現に目の前で飛んでいるんだ。いつかは出来るだろうよ」

 

 

提督は事も無げに言う。もっとも提督、本人にもそれがかなり難しい事は分かっている。

しかしそれでも追い付いてやるという、フロンティアスピリットを持っている。だからこそ祖国アメリカの栄光を信じ、あんなものを自らの艦隊に積み込むのを命令とはいえ許可したのだ。

 

 

「ですがねえ・・・ん?どうした?」

 

 

もっとも艦長は現実的と言うか悲観的な感想しか抱けなかったが。しかし、そんな風に話し合っている彼らに一兵卒が駆け寄ってくる。艦長は、耳を寄せる。するとどうだろうか艦長の顔が強張り、血の気が引いていく。そして、彼は思わず、声を張り上げる。

 

 

「なんだと!?」

「どうした艦長?」

 

 

提督の呼び掛けに艦長は自分の上司へ思いっきり振り向く。そして、彼の言葉を聞いた瞬間、提督の顔もまた血の気が引いた。

 

 

「提督!Gが発射態勢に入ったそうです!」

「なんだと!?あのゲストめ、何を血迷ったか!すぐに止めるんだ!!」

 

 

搭載された新兵器、それを持ってきた随伴員が勝手に発射してしまったのだ。

 

ジェイセイヴァーが居る横浜ハイヴへ・・・。

 

 

 

***

 

 

 

生体コンピューターとなったアベルはジェイセイヴァーのセンサーを自身の耳目の様に扱える。故に彼女はそれの前兆を知ることができた。

 

 

「これは・・・重力場に異常が?」

「どうした、アベル?」

「地球の船から何か重力兵器らしきものが発射されたみたいですね」

 

 

Jの目の前に空間投影式モニターが表示される。そこには空間を歪曲したフィールドを纏った物体がハイヴに向かって落下していくのが映し出されていた。このような現象は、惑星上で、しかもこの規模で起きるはずがない。あくまで人為的なものだ。

 

そして、Jは思い出した。かつての記憶を。今では忘却の彼方に殆どと消えて、おぼろげにしか覚えていない。だが、彼は思いだした。この地で使われるはずの兵器のことを・・・。

 

 

「重力兵器・・・?っ!?ES爆雷投下!この空域を緊急離脱!!」

「J?いえ、わかりました」

 

横浜上空に闇色の閃光が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

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