その代わり、主人公のことを少し掘り下げてみました!
取りあえずどうぞ!
行動は早かった。
気付いたときにはベースキャンプを抜けエリア1にある坂道を下っていた、荷台に腰掛けていたレダンの怒号はもう聞こえない。
「やっぱり、なんか変だ・・・」
普段、生活の糧になっていただいているアプトノス達の姿が見当たらない。
そればかりか、川の向こう側にすら姿形がない。
ティオはエリア1の脇にある段差を越えて森に入る。
「!・・・近い!」
やはり自分が聞いた声は間違いではなかった。
ティオは視界にランゴスタの群れを捕らえる。
死肉をむさぼるかのような黄色い群れの中心部に居たのは・・・。
「こ、殺されてしまうニャ~ッ!?」
野生のアイルーだった。
言わずと知れた獣人族〈アイルー〉彼らは、共に狩りをする『オトモアイルー』であったり、ときに商売仲間だったりと、人間と密な関係であり、大概は信頼の置けるパートナーである。
ちなみに、いま襲われているのは、人里離れた狩り場で暮らす野良のアイルーだ。
「太刀は・・・危ないから」
ティオは腰に着けたハンターナイフを抜き、ランゴスタに奇襲をしかける。
まずは、力一杯ナイフを斜めに振りぬき、巨虫をはたき落とす。
そのまま反す刃で、二匹目を斜め上に叩き切る。
しかし、流石のランゴスタも反撃とばかりに、ティオの頭部めがけて硬い歯を突き立てるが、すんでの所で回避が間に合う。
「お、今日は調子よさげだな!」
ティオは自分の体の軽やかさを自画自賛する。
そんなティオに挑戦するかのように、ランゴスタは動きに緩急を付けながら、腹部のゴツい針を刺しに来るが、これもギリギリで体を反らしいなす。
「そこ!」
不発に終わった針刺しはランゴスタ自身に大きな隙を与える。
そこを見逃さず、ティオはハンターナイフをランゴスタに突き刺す。
「お返しってな……お!やっぱ調子良いじゃん俺!」
ベースキャンプでは、むかつく同行者にくそみそに酷評されたが、終わってみれば結果はこれだ。
群がるモンスターを無傷で撃破し、怯えるアイルーを助けられた。
自分はきっとスランプだったのだ、ここからドンドン調子も右肩上がりになるに違いない。
「きっとそうだ……」
「ハンターさん!後ろニャ!」
確認する前に、衝撃が来た。
なにか冷たいものが背中に触れる感触、痛いと思う前に体が、正確には全身の筋肉が強制的に硬くなり、体の自由が奪われる。
この状態は麻痺毒に体が侵されたときとソックリである。
(あー、やっちゃった……)
意識だけはハッキリしているのに体だけがいうことを聞かない。
無様だな、っとティオは心の中で毒づく、そういえばあのアイルーは逃げられただろうか?
せめて、無事であって欲しい。
そんな事を考えていると、コン……っと金属でも岩でもない、どちらかというと木を叩いたときのような、そんなくぐもった音が後ろで聞こえた。
直後、不気味な断末魔を上げながら、ランゴスタが地面に伏した。
「ほら、いわんこっちゃねぇ」
それは、ティオがいま一番聞きたくない男の声だった。
ベースキャンプで自分を罵ってきたクック装備の男、レダンの声だ。
「ほれ」
軽い言葉とは裏腹に、重い一撃がティオのお腹に突き刺さる。
「ぐべッ!」
ごろんごろんと、地面を転がったティオの体は不思議と麻痺毒から解放されていた。
「……ありがとう」
感謝や恥ずかしさ、色々なものを凝縮した声で礼をのべる。
「いや、感謝には及ばねえよ、さっきもいったけど申告書書くのダルイしな」
「……ッ」
もちろん言い返せるわけがない、さっきのは確実に死んでいた、この男が助けに来なければ、ティオはランゴスタ達の養分になっていたことだろう。
「……なあ」
「?」
ティオが視線を上げると、指を三本立てていた。
「救助料か?悪いけど持ち合わせはないんだ」
「はっ倒すぞガキンチョ、そうじゃなくて3つ聞きたいことがある」
「1つめ、なんであのアイルーを助けた?」
「なんでって、アイルーが危なかったからだろ、見殺しになんか出来ないね」
「その結果、自分が死にかけてもか?」
「見捨てるよりは良いだろ」
「……そうか」
レダンは、薬指を曲げ、指を2の形にする。
「2つめ、なんでモンスターと戦ってるときバカみたいに前のめりでやり合うんだ?全部ギリギリだったぞ」
「バ、バカみたい?」
「実際そうだろ、命のやりとりしてんだぜ?自分から危険に近づいてどうするよ」
「それの方がいけるかがするから??」
「お前なぁ」
「いや、ホントなんだって!」
ティオは少し前の記憶を呼び覚ましながら語る。
それは、ティオが採取クエストに出かけたさい、大型の飛竜であるリオレウスと対峙したときのこと、後ろに行商人達が居るので逃げるわけにはいかず、だから敢えてギリギリまで迫り注意を引きながら戦ったら、いつも以上に動けてしまい、それ以降前のめりが癖になってしまっていた、そのことをレダンに話す。
「まぁ、結局勝てなかったんだけどな?」
「ふ~ん……で、実際何でそうなったんだ?」
いまの話をすべて無かったことのようにレダンは強引に話を二つ目の質問の冒頭に戻してきた。
「いや!マジなんだって!?」
「飛竜舐めすぎだろお前……まぁいいや、3つめだ」
この事には、あまり言及しないのか、レダンは人差し指を立たせ、質問する。
「最後だ、お前はいま太刀を相棒にしてるみたいだけど、扱いは誰に教わった?正直まるでなってないぞ」
一目、彼の戦い方を見れば当然湧く考えだ。
太刀の構え方、重心、刃の向ける位置や足運び、それらすべてが、てんでダメなのである。
一体なにをどう教えれば、こんなチグハグになるのか、レダンは逆に興味が湧いた。
「誰って、誰にも教わってないけど?」
「は?」
レダンは目を見開く。
「まてまて、最初は誰かしらに教わるもんだろ?」
「いや?最初から一人だぜ」
「えー……じゃあなにか?今のいままで、誰にもなにも教わらずにやってきたってのか」
「しょうがねぇじゃん、誰も教えてくれねーし」
「わかったわかった、じゃあ質問を変えるわ、なんで太刀を選んだんだ?ハンマーでもボウガン系でも良かっただろ」
レダンは内容を変えて再度質問しなおした。
「何でって」
この問いに、ティオは間を置かずに答える。
「一番かっこいいからだ!」
なんとも子どもっぽく、それでいて単純明快な回答、別に斬撃がしたければ大剣でも片手剣でもいい、ガンナー系ならパーティーを組む人達からは引く手数多だろう。
しかし、この少年ハンターは迷うことなく太刀という武器を選んだのだ、自分と同じ武器を。
「バカだな」
「なにをー!?……あ、そういえばもう一つ理由があった」
「?」
それは、ティオがココット村に来るよりずっと前、記憶もかなり薄れつつあるそんな昔、辺境にあった彼の村はモンスターに襲われた、駐在するハンターは全く役に立たず、絶体絶命かと思われた矢先、たまたま近くを通りかかったハンターに命を救われた、そのハンターが使っていた武器こそが太刀だったのだ。
「ふーん……」
「もっと興味持てよ!?」
レダンは頭を掻きながら踵を返すと、ティオを見つめる。
「なんだよ」
「イヤ別に、さっさと帰るぞ」
「げ……覚えてたのかよ……」
「あったりめぇだろ、帰りの便もそう頻繁じゃねえんだぜ」
「キノコ一本でも取っとかないと、レイにお小言いわれちまうよ、頼む!」
両手を合わせて嘆願するティオを哀れに思ったのか、レダンは小さく息を吐く。
「ちょっとだけな、その代わり丘の方には行くなよモンスターの動きが妙に活発だからな」
「よっしゃ!すぐ戻ってくるぜ!」
了承を得たティオは、全速力で森の中を駆けていく、一秒後には豆粒サイズになるほど遠くに行っていた。
「俺も妙に甘いな……ま、その内戻ってくるだろ」
レダンは、近くの木の根元に腰を下ろし、ティオの帰りを待つことにしたのだった。
2部構成になっちゃいましたね~
4000文字くらいが読みやすいと
どこぞの記事か何かで読んだので
それを基準に、書いてます!
次回で一応区切ります!