―――パタンッ。
(二日目にして最早ルーチンワークになっている様な気がする)日記を提督は書くのを止め帳面を閉じる。
そして今日あった出来事を振り返り……人増えたなと思った。それもその筈、昨日は自分入れて5人(※憲兵さん等は除く)だったのが今日一日でその倍である。まだまだ練度や装備等色々あるが一応形にはなった……と思う、思いたい。
「(装備か……。どうしようかな……。)」
艦娘さん達本人の力量等は大丈夫だろうと提督は思う。確かに今は他の先に活躍している艦娘さん達には経験等で負けてはいるが、提督から見て自分の所の娘達は大丈夫だと思う何かを感じられる。きっと、そう遠くないうちに他の艦娘さん達に勝てる……かどうかは知らんが(他の所の娘だって努力はしてるだろう)いい勝負してくれることだろう。
……最もド素人から見た評価だから信用できないと言われればそれまでだが。
ならば、手っ取り早く戦力を上げる方法としてはやはり装備の質を上げることだろう。
―――が、開発はほぼ運任せ(※連れている艦娘である程度は限定できるが)、そしてこの提督は運があまり良くない。
当たり付きアイス100個食べたら当たるのは1,2回位、しかも最低の当たり(1等が商品券プレゼントだったら、6等は5本集めたら1本交換なアイスを想像して欲しい。)
今度開発回す時は連れている娘に回させた方が良いのかもしれない。
色々と考えなければいけないことが沢山だが、今は出来ることに集中しようと思い、明石がいるだろう『工廠』場へと足を向ける。
現在建造中の艦娘がそろそろ来るからだ。
「お!提督だクマー。どこ行くんだクマ?」
「おお、提督よ!丁度よい、吾輩に茶を奢る権利をやるぞ!」
行く途中の渡り廊下で球磨と利根に出会う。
「はあ~……」とため息を吐くと近くの自販機からお茶とジュースを1本づつ買いそれぞれ渡した。
「もうそろそろ新しい娘が来るので出迎えに行く途中です。――――それと、利根。ジュース位奢るのは構いはしませんが、あなた達の給料と比べたら駆け出し提督の私の給料は遥かに少ないんですよ。寧ろ、これからは貴女が奢ってくださいよ。」
「ははは!提督、お主冗談が過ぎるぞ?本当は結構貰っておるんじゃろ?」
冗談だと思って笑っている利根に、提督は手持ちのバックから支給されているタブレットを取り出しデータを開いて見せる。
「これが私の雇用契約の内容ですよ。」と言って見せられた物を見た利根、とその横で覗き見する球磨の二人。
「……ちょっと少なくないクマ?」「……マジか。……マジじゃった……。」と絶句した二人は哀れんだ目で提督を見る。そんな二人の反応に「人は明日生きるのに必要な小銭とパンツがあれば生きられるんです。それに比べたら恵まれている方ですよ私は。」と返す。実際、食費以外は只なのだ。手取りがほぼ丸々自由に使えると考えれば其処まで酷い労働環境ではない筈だ。
「いや、提督って高級取りじゃなかったのかの?こんな給料では後続が尻込みせんか?」
「広報に使っている情報はもっと上の方のです。何の戦果もまだ出していない私の様な駆け出しは実際はこんなものですよ。」
野球で例えるなら元帥クラスの上の方々が一軍、ベテランや最近話題のほぼ同じ時期に着任した期待の新人提督さんが二軍、そして此処の提督のような駆け出しは草野球。其れ位年収に差があるのだ。
「……あ~……うん。ま、まあほら我輩に任せれば直ぐに昇進させてやるから大船に乗った気持ちでおればいいぞ!」
「こいつの言葉に全面的に同意はできないクマが、地道に評価を稼いで昇進すればマシになるクマ。」
「(う~ん、本当に対して気にしていないんですがね……)」と思った提督であったが二人のフォローを無碍にしなくても良いのではと思い口に出すことはしなかった。
「その話はどっかに放り捨てて、それよりも我輩らも新人の面を見たいから一緒に行くぞー!」
「何か勝手にクマも行く流れになっているのに困惑だクマ。……まあ、暇だから一緒に行ってやるクマ。」
そうして、提督のお供に二人が加わり再び歩を進めると、今度は前方から川内の姿を見つける。川内の方も提督たちを見つけたのか走ってきた。……その姿に球磨は「おかしいクマ……。何かあいつの姿が大型犬とかぶって見えるクマ……」とポツリと零した。
「提督~!……と、そっちの二人は、新しい仲間?」「利根じゃ!」「クマは球磨だクマー。」と簡単な挨拶をした後、川内は提督の方を振り返る。
「それより提督、那珂見なかった?」
「いや、見てませんけど?」
「一緒に夜戦の訓練をしようと思ったのにな~……。」
「ちぇ~」と可愛くふくれっ面になった川内を見て、「(本当、夜戦除けば美少女なんですけどね……)」と残念そうに、しかし夜戦に全く興味が無い彼女もそれはそれでせっかくの個性を捨てたせいで魅力が落ちるのではと思わないわけではない。
「それじゃあ提督!今夜も夜戦頑張ろうね!またね~!」と走って去っていく川内の後ろ姿を見送り、再び歩きだす三人。そして後少しで目的地に着こうとした時に、ふと提督が「そういえば……」と二人に話を振り出した。
「川内に球磨さん、それに利根って長女なんですよね?やっぱり妹さんに会いたいですか?」
「会いたくないと言ったら嘘になるクマ~。でも、あの娘達はちゃんと立派にやっていけると信じているからそこまで心配はしてないから今直ぐ会いたいとは特に考えていないクマ。」
「筑摩は吾輩がいないと駄目じゃからな~。と言うわけで提督、早めに建造頼むぞ!」
う~ん。同じ姉枠なのにこの違い。ともあれ、両者とも妹を大事に思っている事だけは共通していた。
「これは神通さんだけでなく二人の妹さん達も考慮に入れるべきでしょうね……」とやることが増えて少し途方に暮れる提督に「我輩たちのことより、お主はどうなんじゃ?」と利根が聞いてきた。
「私?私は姉と兄がいますがどちらとも仲はあまり良くないのでどうでも良いですよ。」
「……お、おう。そうか。」
―――が、予想外な答えが帰ってきて面を食らう。
「あれ?吾輩地雷踏んじゃった?」と心配そうな面の彼女に「気にしないで下さい。正直私も言われるまで自分に兄弟いたことをすっかり忘れていましたから。」と言葉を掛け、その答えに「ええ~……。最近の若者は意外とドライなんかの~?」と利根は呆れた。
「私の家庭事情なんて、この先特に語る必要がある機会など無いでしょうからポイで。それより、建造は大まかには厳選できるようですが、後はもう完全に運なんです。ただ、出来れば二人とも妹さんと再開できれば良いと私は思ってますよ。」
何やかんやで知らない、そんなに仲は良くない艦娘さん達だらけよりも気安い仲の娘が居てくれたほうが馴染みやすいと思う。これから長くやっていくのだからギスギスよりも和やかな空気でやっていきたい。そういった場のつくりも提督の仕事だと思う。
「(まあ、今は新しく来てくれた娘を歓迎しましょう)」提督はそう思いながら工廠場の入り口扉を開いたのでした。
――――――――――そして、目に飛び込んだ光景に絶句した。
そこに有るのは何処から持ってきたんだと突っ込みたくなる「結構大きめの仏壇」、「サカキが挿されている花瓶」、「節分でもないのに何故かある柊の枝に挿された鰯の頭」エトセトラエトセトラ……
とにかく、神頼みに関係がある道具やお供え門がそこら中に置かれていた。
「………那珂、ちゃん……?」
そして、建造部屋の扉近くで仏壇の前で祓い串を一心不乱に振っている那珂ちゃんの姿が!しかも巫女服だ!
「あ、提督!丁度良かった。あれ、何とかしてくださいよ!」
「待て待て!何とかする以前に理解が追いつかない……!」
そりゃあ、部屋に入った自称アイドルが巫女服着た自称アイドルがお供え物を周りにおいて祈祷を捧げていたら混乱するだろう。だがしかし、艦娘は一応提督の部下なのだ(給料上司より高いけど)。部下の行動に対して責任と、そしてそれが相応しくない行動だったら止めてやらねばならない。
「あいつは何をやっているんですか?」
「何って、神頼みでしょう?」
「色々とおかしいですが、そんなに追い詰められていたんですか、あの娘?」
だが、気持ちは分かる。昨日……というより今日の朝だが寝れたのはたった数時間。それがこの先ずっと続くとか考えると目眩と吐き気が止まらない。それを何とか、『川内に夜戦そのものをさせない』は無理だとしても、『もしかしたら週に2,3回に抑えられる』なら藁に縋る気持ちになる。―――それはそれとして『よく仏壇持ち込めたな~……』と呆れるし、明石と妖精さんたちの作業の邪魔になるから撤去するが。
「那珂ちゃーんー!気持ちは分かるが他の人の邪魔になってますよー!!あと、仏壇とその巫女服何処から持ってきたのー!?可愛いし似合ってるけど必死過ぎて恐いから着替えなさいー!」と言いながら那珂を止めようとしたときだった。
「ビー!ビー!」と扉近くに備え付けられているブザーが鳴る。どうやら建造が丁度終わったようだ。
思わず持っていた祓串を落とし、扉の方を見る那珂。
提督は明石の方に目をやり、それを察した彼女は部屋に入っていく。そして静寂に包まれること1分かそこら―――だが、彼女たちが感じた体感時間はもっと長かったことだろう。其れ位場が緊張に包まれていた。
「……何で球磨達は新しい娘を迎えに来ただけなのに、奥さんの出産の無事を祈る控室の旦那さんの様な気分を味合わせられているんだクマ?」
「さあ?何でじゃろうな~……?」
(一部を除いて)緊張した空気がこのまま続くのかと思われていたが、それも扉が開かれたことで終わる。
扉から出てきたのは二人の女性。一人は入っていった明石、そしてもうひとりは――――
「軽巡洋艦、神通です。どうか、よろしくお願いいたします。」
―――――念願の神通であった。
「……まじかよ。お、おい!那珂ちゃん、来たよ!来てくれたよ、君のお姉さんが――――那珂ちゃん?」
あんなに待ち望んでいた姉が来たのだから提督以上に喜んで良いものを、何故か俯いたまま微動だにしないし静かである。
不思議に思い肩を揺さぶると―――ゆっくりとそのまま倒れ伏した。
「――――那珂ちゃん!?」
慌てて駆け寄る神通。必死に呼びかけるが反応が無い。
「はいはい、どいてどいて。」と言いながら、明石が那珂を診る。
「………気絶してますね、これ。」
「気絶って……。芸人真っ青なリアクション芸、この娘はバラドルになりたいのでしょうか……?」
どうやら嬉しさやら驚きやらで思考が完全停止してしまったらしい。
ホッとする神通、呆れてる明石、「(キャラが濃ゆくてバラドル以外アイドルになる道が見えません……(泣))」と心で涙を流す提督。
「で?どうすれば良いんですか?寝かせとけば良いですか?」
「入渠させたほうが早いですよ(※注意 気絶している一般人を浴槽に叩き込むのは大変危険なので止めましょう。これは彼女たち艦娘だから出来る荒治療です!)。
――――というわけで、入渠させる為に那珂ちゃんをお風呂に入れてく来ますから、お姉さんの神通さん一緒に着いてきてくれます?」
「は、はい!分かりました。」
「それとも提督は那珂ちゃんの裸に興味が「はよ行け」アッハイ。」とやり取りをちょっとしたあとに部屋を出ていく二人。
出ていった後、暫くしてから球磨が口を開く。
「……何だか、暫くは妹達の顔を見たくなくなったクマ……。」
「いや、あれは例外中の例外じゃろう?―――この気まずい空気、どうするんじゃ提督?」
少し妹に対する認識が変わってしまった球磨。そして早うこの空気をどうにかしろと提督に訴える利根。
そして提督は腕を組んで目を閉じ、暫く「う~ん……」と考えて、ふっと目を開き―――
「そうだ。3人でマリ○パーティして大人しく待ってましょう。」
―――心に棚を置くことに決めたのであった。
そして蛇足だが、明石の持っているカセットにマ○パは無かったので仕方なくいたス○をし、提督はサイコロファンブルばかりしまくってドベであった。
次回で二日目(多分)終わり
そして次回は神通さんのターン。