次回こそは二日目終わります。
あと、仕事がちょっと立て込んでて、投稿するの遅れてすいませんでした!!
――――コトンッ
テーブルの上にお茶と茶菓子(羊羹)が置かれる。
テーブルに向かい合って座るのは二人の男女、提督と神通である。
「私達の鎮守府へよく来てくれました、歓迎します。……いや、本当に。あ、お茶と羊羹をどうぞ。」
「はい、ありがとうございます。……いただきます。」
場所は客間……は今使われているので提督の部屋……は流石に外聞が悪いのでその直ぐ隣の作戦室。
あの後気絶した那珂を入渠の浴槽に放り投げて正気を取り戻させ、現在彼女には工廠場の片付けをさせている。
そして、今現在この部屋にいる提督、神通以外は先程此処で作業をしていた大淀含め各々自由にするよう言っている。
さて話を戻して、神通は提督に一言お礼を言ってから出された羊羹を菓子切で一口サイズに切り、ハムっと口に入れた。
「……!美味しい……!」
甘さはくどくなく、しかししっかりと餡この甘さが口いっぱいに広がる。ただ上等な小豆と砂糖を使っただけではこうはいかない。材料を無駄にしない確かな職人の技術で作られている事が分かる一品であった。
「この羊羹本当に美味しいです……。」
「本当!それは良かったです。―――作った甲斐がありました!」
「提督が作ったんですか……!?」
お菓子職人は提督だった……!!事実に驚く。
「まさか購買にあんな上等な小豆が売っているとは思わなくて、別の物作るついでについ作ってしましました。」
「小豆から……!?」
何故提督をやっているのだろうか?いや、もしかしたら神通が提督と思っているだけで、目の前にいる男性はもしかしたら提督じゃ無くてお手伝いさんなのではと思い始める。
「いや〰しかし神通さんが来てくれて本当に嬉しい。」
「え、そんな―――」
「いや~、実は昨日から提督になったんですが。」
提督だったー!!そうだよね?だって、ちゃんと提督の制服着てるもんね?他の艦娘も提督って言ってたもんね!と心の中が愉快な事に成りつつ、疑った事を恥ずかしがる神通。そんな彼女の様子に気づく間もなく、提督は話を続ける。
「さて、来て早々申し訳ないのですが頼みたい仕事があります。」
「―――川内姉さんの事ですね……。」
「もう、那珂ちゃんに話聞きました?」
さっきまでおどおどしていたのに、仕事と聞くや纏っていた雰囲気が一瞬で変わった事に提督は驚いた。これが、あの武神と言われた神通の顔。何と頼りがいのある人よ。那珂ちゃんが一心不乱に来てくれる事を願っただけはある。
「提督……。残念ながら、姉さんの夜戦に対する思いを止めさせる事は私は出来ません……。なぜなら、姉さんにとって夜戦とは生きがいです……。夜戦の為に己を磨き、その日の夜戦で勝利を収めても慢心せずに次の夜戦を求め更に己を磨く。
辛くは無いのか?飽きないのか?そもそもそんな事を続けて何か得れるのか?そう思うかも知れませんが、本人からすれば夜戦をする時が一番生きている実感を得れるのです…・…。それを知っているからこそ、私は姉さんから夜戦を止めろとは言えない―――いえ、言いたくないです……。」
「う~ん……生きがいと言いますが、因みに川内から夜戦を取ったらどうなると思います?」
「ただの美少女に成り果てます……。」
「そいつは大変だ。」
キャラが薄い娘など次の日には知らない内にフェードアウトしていてもおかしくない。特に末ッ子が個性が強すぎる……!
「それを聞いたら夜戦を止めろなど言えませんね……。」
「―――ですが。夜戦を完全に止めさせることは無理でも、週に2回に抑える事は出来ます……。」
「え、本当に?」
諦めかけた提督だったが、そこは神通。那珂ちゃんが阿呆なことをやらかしてまで来てほしいと願った救世主である。
「誰かが夜戦の訓練を一緒にやれば良いんです……。そして、次の日は夜戦の模擬戦を組んで、次の日は本番。これを回すだけでいけると、思います……。勿論、訓練の相手は私と那珂ちゃんが努めます。模擬戦は皆に手伝ってもらわなければいけませんが、艦隊の質を上げるメリットを考えると毎日……はしなくても、週に2,3回位は訓練に組んだ方がよろしいかと思います。」
「じゃあ、やりましょう。」
「……提督?」
提案した自分が言うのも何だが即決はどうかと思った神通であったが、「提督になったのは昨日から」「それまでは軍のことなど分からない一般人」「艦隊揃えた後は何をしたら良いか全く分からない」などなど、最後には「という事でこれからの訓練のカリキュラム等の作成を手伝って、いやもう貴女が主導で組んで!」と頭下げてお願いされてしまう。このままでは土下座までしてしまうかもしれない―――いや、間違いなくするであろう、そういった勢いがある。
流石に自分の提督に頭下げられるだけでも困ってるのに、土下座までされたら……考えるだけで頭が痛い、そう考えた神通は提督の頼みを聞きて、この後30分程訓練のカリキュラムの作成を手伝った。
流石に30分では細かいところまでは無理だったが、それでも基本的な週の訓練のルーチンを組むことが出来てこれに提督はニッコリ。
そんな提督を見て「大丈夫かな……」と神通は少し不安になるも、目の前で喜ぶ提督―――まるで夏休みが終わる前日に宿題を親に手伝って貰ってヒイヒイ言いながらも、無事に終わって燥ぐ小学生のようであった。そんな提督を見て神通は何か言おうと思ったが、そんな気も失せてしまった。
彼女は一度ため息をついて「もう、仕方がないですね……、これから頑張りましょう、提督。」と微笑むのであった。
―――――ちょっとイイ話で終わらせようとしているが、要は少しだめな子ぐらいが可愛いというやつで、つまりこの神通も本人は気づいてはいないがダメンズ好きなだけである。
だがしかし安心して欲しい。大淀が「駄目な所も可愛い」に対し、神通は「駄目な所を叩き直したい」という系だ。やったなこれで個性を分けられるぞ。……まあ、だから何だという話だが。
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そして時間が少し経ち、「それじゃあ、今日はこの辺でお開きにして、明日から宜しくおねがいします。」と提督がお開きにしようとした時であった。バタバタバタと外の廊下から慌ただしく誰かがこの部屋に向かって走って来る音が聞こえ始める。
その足音を聞いて、提督は「あ……そういえばそうだったな……」と何かを思い出したのかさっきまで座っていたソファに座り直して手で支えるかのような形で頭を抱える。そんな提督を見て神通は「だ、大丈夫……?」と心配するのとほぼ同時に、部屋の扉が勢いよく開かれた。
「提督ーーーー!!!夜戦行こう、夜戦!!!!」
「川内、夜戦に行ってもいいですけど、昨日遅くまでやったから早めに切り上げてくれますよね?」
「えー?せっかく皆が揃ったんだから思いっきりしたいよ!―――那珂もそう思うよね?」
そう言って川内は那珂――――川内の片腕に借りてきた猫のように大人しく抱えられている……いや、小言で「タスケテ……タスケテクレメンス……」と呟いている。そんなに行くのが嫌なのか……そりゃあ嫌ですよね~―――に同意を求める。
「ほら!那珂も行きたいって!」
「イキタクナイ。ヨフカシハオハダノテキ。ネサセロ。」
「ね!」
「もう少し妹さんの声を聞いてあげてよ……。」
悲しいかな、妹は姉の頼みを断る事ができない。古事記にも書いてある。提督は「これはいくら言っても無駄だろうな」と諦め、こめかみを強く抑えながら出撃の許可をする。さあ、今日も徹夜だ。大淀さんに連絡を取っておこう。と思い、部屋に備え付けてある通信機を手に取る。
「失礼します。提督、少しお話が。」
しかし、丁度件の人物が部屋に入ってきた為、受話器をもとに戻して大淀の話に耳を傾けるのであった。
―――少し、嫌な予感を感じながら。逆は全く無いくせにこういった嫌な予感はよく当たるのだこの提督は。
「何かありました?」
「そのう……今夜の出撃の件何ですが……。」
「天候が荒れそうとか―――「じゃないです。」そっかー……中止になりませんか……そっかー……。」
「私が話すより本人から話を聞いた方が良いかと。」
そして、大淀は扉の外で「どうぞ入って下さい。」と言うと、「失礼しまーす!」と大声で元気よく言って一人の女性が入ってくる。――――明石である。しかも、何か凄くドヤ顔している。ムフー!て言ってる。やり遂げたぜ、褒めろ!って顔をしている。嫌な予感ビンビン物である。
「提督!作業終わりました!」
作業。この言葉を聞いて思い起こされるのは……そう言えば何か整備していたな。確か、『旗艦』―――それを提督が思い出した瞬間、彼の頭に最悪の光景が現れる。
旗艦=提督が乗る船=提督も一緒に出撃出来る。
こいつにA「夜戦を皆でやったら楽しいだろうな~と呑気に考えている長女」、B「自分だけ不幸とかふざけんな!回避不可ならせめて誰か道連れにしてやる!な末ッ子」、C「其処に夜食を取りながら帰りを待つだけの男がおるじゃろう?」のABC3つの条件を加えて考えられる未来を予想しろ。
『答:暗く冷たい夜の海へようこそ♡』
「まあ、待って下さい明石。良いですか?よく聞いて下さい。
私はこれから徹夜の為に苦目のコーヒーを淹れます。ええ、結構良い豆でしてね。愛用のミルで粗挽きで挽いたやつ。自分で言うのもなんですが中々いい味ですよ。だから話は一旦置いて休憩しましょう、ね?」
全力で回避しようと、提督は話を逸らそうと下手な話術で何とか試みる。
「良いですね。―――それは後でいただくとして、さっき『旗艦』の整備が終わったんですよ。」
が、駄目。話を逸らすのが本当クソ雑魚過ぎる。もう少しうまくやれなかったのだろうか?ほら、見ろ。さっきの彼女の口から出た『旗艦』という単語に二人ほど反応を示したぞ。
「まあまあまあ、そう焦らないで。それよりもお菓子どうです?余った材料で作ったアップルパイ冷蔵庫で冷やしていたんですよ。だから話は一旦置いて下さい。―――いや、置け。」
余裕が無くなってきたのか口調が少し荒くなっていく提督。
そりゃあ、実戦の雰囲気を肌で感じたことが無いのに夜―――敵さんの姿も良く見えない、どこから砲弾、魚雷が来るか分からない所に放り出されそうになったらそうなるだろう。
「彼女達の為に出来るだけのことはやろう。」その言葉に嘘偽りはない。
が、かと言って非常事態ならまだしも、平時でわざわざ危険地帯に行きたいとは絶対に思わないのだ。あと、少しでも休みたいという気持ちもある。
「良いですね!あ、そうそう。提督料理が人より出来るって言ってたじゃないですか~。だから、艦内に付けましたよ、キッチン。これなら沖に出ても料理出来ますね!」
「少しは察してくれよ!!」
ワザとか?と言いたくなる位最悪なタイミングの報告に頭を抱える提督。だが、しかし……。その選択は誤りであった。
――――頭を抱える暇があれば逃げるべきであった。
突然、提督の腕に柔らかな感触が当たる。
「提督も夜戦行くの!!―――やったーー!!じゃあ、早く行こう!!今日は一段と張り切っちゃうんだからね!!」
川内が腕を組んできた。柔らかな感触が腕から伝わる―――が、平時ならまだしも今はそれを嬉しがる余裕がない。寧ろ蛇が餌を逃さない様に絡みついている様に錯覚してしまう。
「は、離して―――」
振りほどこうとする提督であったが、今度はもう片側から腕を組まれる。
「な、那珂ちゃん!?」
那珂である。那珂が提督のもう片方の腕を組んで……いや、そんな色っぽい話ではない。
痛いのだ。腕の血管がキュッと締まるくらい強く絞められているせいで腕の感覚が少し無くなってきている。
これは好意ではない、殺意だ。こいつは私を殺しに来ている。そう思わせる気迫を提督は那珂から感じた。
「な、那珂ちゃん……!腕を、腕を離して――」
「提督も那珂ちゃんと一緒に沼に落ちろ!!」
「何言っているんだおめえ……?」
死なば諸共。提督が随伴した所で戦力になるわけでもない逆に邪魔になる可能性だってある。根本的な解決にはなりはしない――――が、合理的かどうかで物事がすべて決まるなら争いなど起こりはしない。
「感情を処理できない者はゴミだ」と偉そうに言った人も結局は感情に振り回された訳で、結局はそれが正しい、最良な案だろうが感情によってはそれとは真逆の行動を取ってしまう位大事なものなのだ。
―――要は「提督も一緒に那珂ちゃんと同じ気持ちになれ!!」と彼女は言いたいわけだ。提督としては溜まったものではない。
「ドローンがあるでしょう!態々艦に私が乗らなくても良いじゃないですか!?」
「いや、提督。試運転って意味では整備したものとしては是非乗っていただきたいんですが?」
「明石!その話は昼間で良いでしょう、昼間でさあ!!―――大淀さん!大淀さん、助けて!!」
「はい、そこまで!!」
大の大人の男性が若い女性に押さえつけられて泣きそうになっている。一体これは何なのだろうか?大淀は頭を抱えたくなったがこのまま見捨てるわけにもいかない。仕方ないので助け舟を出すのであった。
「提督と一緒に夜戦に行きたいのは分かりましたが、無理強いは流石に見過ごせません!」
ビシッと決めた大淀に、川内はブーたれ、那珂は「じゃああんたが那珂ちゃんの代わりに行ってくれるの?」とキレ芸をし、明石は「えー!せっかく提督の為に専用のキッチン設置したんでうから試運転行きましょうよ~」と駄々をこね、そして提督は「お、大淀ぉお……」と感動して泣く。ついでに好感度が大幅に上がった。チョロすぎる。
一応場を落ち着つかせた大淀はため息を一度吐いて、そして少し考える。
「(提督が着任してからまだ二日目。それなのに艦娘達との壁が殆どない……。もしかしたら―――)」
もしかしたら私の提督って隠された才能が――と期待した眼差しを向ける。
……うん。勘違いだわ。ただちょっかい出しやすい雰囲気を醸し出しているだけだわ。だって、どう見ても目の前の提督が艦娘たちに凛々しく、一人前の指揮官として戦場に立っている姿が想像できない。代わりに、この先艦娘達から無茶振り、振り回されていく姿は簡単に想像できてしまう。
「(ま、まあ、そういった提督がいても良いでしょう、はい。)」
自由とはそういうものだ。指揮官としてどうなのかと思わずにはいられないが、指揮も駄目な癖に艦娘たちとの仲も最悪に比べれば十分恵まれているのだ、と大淀は自分に言い聞かせるのであった。