《午後7時20分》
建造終わりました……が、何だこれ?
艦娘さんはいなくて、あるのは艦の艦装部分?
一先ず明石さんから説明を聞かねば。
《午後7時半》
明石さんから話を聞きました。
要約すると
①建造して出来あがるのは艦装部分のみ。女の子はついてこない。
②残念ながら望んでいない艦だった場合、出来た艦装を解体するなり、近代化改修(※要は強化。限界がある。更に強くなるには練度を上げて改造する必要がある)の資材に出来る。
③運良く望んだ艦だった場合、妖精さんに頼んで艦装に命を吹き込んで(妖精さんはゴールドエクスペリエンスか何かだろうか?)艦娘へ進化(?)させよう!これで新たな艦娘が提督のもとに。
……進化後のクーリングオフは受け付けておりません。一度その娘を受け入れたら面倒は最後まで見ましょう。
以上
成程。確かに、艦装だけだったら解体してもそんなに心傷まないので、艦娘さんたちの数の整理をしっかり出来る。
それに、このやり方でしたら艦娘の厳選が十分できます(さすがに、残り枠が全部同じ艦娘とか私の様なド素人じゃあ詰みますわ。)。偉い人はやれば出来るから偉いんですね。……もっと早く考えてればな~と思うのは流石に難癖レベルでしょうけど、やはりちょっとは思っちゃいますね。
まあ、何はともあれどんな艦娘か分かりませんが、今は少しでも戦力が欲しいので早速艦装を艦娘にして貰いましょう!
……え?明石さん、何で解体を勧めてくるんですか?
《午後7時40分》
出来上がった艦の名前を教えてもらいました。
軽巡洋艦『川内』
何か問題でもあるのでしょうか?そう思った私は艦の資料(※大本宮が提供している情報サイト。)をネットで見ました。
『軽巡洋艦『川内』――――川内型軽巡洋艦の三姉妹の長女やで。姉妹の中では防御と対空がお高いんや。間違いなく着任間もないルーキー共にはお勧め……の筈なんやけど、何でか提督達の間では評番悪いんやな……。何でやろうな?』
…………何でやろうな?じゃないがな。肝心な所が分かんないんじゃあ意味ないでしょう!?
仕方がないので明石さんにどうしてお勧めしないのか聞くと、
「いや、優秀なんですよ彼女。……でも、ちょっと、いや一つだけ欠点がありまして、それが提督の大きな負担になるようで……」という返事が返ってきました。
―――――何だ、そんなことですか。
要はあれでしょう?性格がきついとかそういうのでしょう?確かに私のメンタルはクソ雑魚ナメクジですよ。
ですけどね!そんな私にもプライドがあるんですよ。
女の子があんなにボロボロになって戦っているのに、私だけのうのうと椅子を温めるだけの仕事して平気でいられるかってんですよ。
少しでも艦娘さん達の負担が減るなら、被害が私だけで済むなら何でもしますよ。
それが提督ってもんでしょう―――そうだろう 明 石 !!??と説得を試みた私。
そんな私の熱意に負けた明石さんは「吐いたツバ飲まさんかんな!!」と言い、妖精さんに川内さんを呼び出すようGOサインを出すと、目の前の艦装が光はじめ―――うを!?まぶし!!?
光が収まると、そこに一人の少女がいました。
――――髪はセミロングでツーサイドアップ。柿色のセーラー服を着て活発そうな美少女―――ええい、此処で書くの面倒くさい!!気になったらググって下さい。とにかく美少女なのは間違いないです。
正直ちょっと見惚れてた私。そんな私に彼女は笑顔を向けながら
「川内参上!これからよろしく!!」と挨拶してくれました。
……ん????どこらへんが問題なのか、さっぱり分かりません。普通に良い娘じゃないの?なのに明石さんの方を見ると「可哀想」な目で見ている。
まあ、何にせよこれで戦力が増えた訳です。一先ず、今日はこれで仕事を終えてぐっすり寝ます。
本日の仕事終わり
明日も頑張ろう
―――――――――――――――――――
場所は移って作戦室
そこにいるのは一組の男女――――そうクソ雑魚提督とその補佐艦【大淀】である。
「ふ~、やっと一日が終わった。」
提督は「う~んんん」と声を出して手を上に上げるストレッチをする。
初日なのか思っていたより緊張していたようで、特に肩と腰が凝っている感じがする。……運動不足の部分も何割かはあるだろうが。
そんな提督に大淀は「提督、お疲れさまです。」と労りの言葉を掛ける。……モゲロ。
「いやいや、ただ椅子に座っていただけですよ。本当にお疲れ様なのは電ちゃんですよ。」
謙遜……いや提督本人としては只の事実なのだが、大淀からすればこの提督の評価は中々である。
作戦立案からのS勝利、艦の訓練、補給物資の調達、エトセトラエトセトラ……それを一人で出来る完璧提督も確かにいる。
というより、この男が提督になる1ヶ月前にそんな完璧提督が着任し、現在期待のルーキーとして活躍している。
そんな提督と比べれば、大淀の目の前の男はダメダメだろう。
そもそも、昨日までは軍とは一切関係ない一般人だったのだ。それらの提督と比べれる方が間違っている。
しかし、大淀からすれば 「そ れ が ど う し た?」しか思わなかった。
一人では何も出来ない?なら誰かが補佐をすればいいだけではないか?
―――逆に、そう最初から何でも出来る提督は……可愛げがないというか、何というか、ほらあれ、「だめな子ほど可愛い」という言葉があるから。出来ない提督はこれから出来るようになっていけばいいから。寧ろ、成長の過程が見れる分お得だから。
といっても、此処の提督が幾ら経験を積もうとも、他の出来る提督どころかこれから入ってくるであろう有望株な新提督にも戦術やら何やらでは勝てるようになれるとは思えない。
分かるのだ。貰った勲章でメンコが出来る様な提督にはオーラというか何というかとにかく凄い何かが感じられる――――実際、遠目で見た先の期待のルーキー提督にも「(こやつ、出来るな……!!)」と思う何かがあった――――一方、こちらのクソ雑魚提督に大淀は「少し真面目が取り柄の新人」位しか感じられない。
(期待のルーキーがアムロならこっちは良くてコンスコンさんだ。三分立たずでズタボロにされる位持っている素質に差がある。)
同じ時期に入ってきた分、よく比べられるだろうから苦労するだろう。
―――――だからこそ支えがいがある。
確かに提督としての才能は低いだろう。しかし、艦娘達が提督に求めるのは指揮とかの才能ではなくやり甲斐だ。
そしてこの大淀、勲章ジャラジャラしながら「いや、別に大したものじゃないよ?他の人でも出来たよ、うん。」とドヤっている者よりも、艦娘達とのコミュや作戦・資材やら何やらで一人では首が回らなくなって「大淀エモン、助けて~」と泣きついてくる方が良いのだ。
――――長々と書いたが、艦娘にも一人ひとり意思がある。
「優秀な提督の下で戦える事に喜びを持つ」娘がいれば、「この人は私が支えないと駄目なんだ」と思う娘もいるのだ。
そして、此処の大淀は後者の少しくらいダメな所がある提督が好きな艦娘だった。
「提督、コーヒーを淹れますね。」
「あ、それだったら私が――――」
「いえ、これも秘書艦の務めですから。」
話を戻して、彼女は初めての仕事で疲れている提督を労ろうと思い席を立ち、部屋に備え付けてあるコーヒーメイカーでコーヒーを淹れてもってきた。
―――容器はインサートカップ。着任したばかりだから仕方ない。時間が取れたら容器をいくつか買いに行こうと、提督が砂糖とミルクを多めに入れたものを啜りながら考えていた時だった。
「提督。着任してからずっと何か書いていたようですが―――」
「え、日記ですけど?」
「―――え?」
「日記ですよ。自分に何かあった時に何か残したくて。」
「それ、普通寝る前に書くものですよ。」
「いや~……それだと3日坊主で飽きちゃいそうで。
そして、書いている時に気づいたのですが、私日記書くの思っていたより速かったんですよ。――――会話の合間に1ページ埋めれるくらいには。まさか私にこんな才能があったなんて……。」
「それは、良かったですね。(……凄くいらない。でも何か少し嬉しそうだから言いづらい。)」
大事なことをメモ取っている割には少し書きすぎなのではないか?と思うくらい終始ペンを動かすのを止めなかったので少し不思議だったが、まさか日記とはこの大淀の目を持ってしても見抜けなかった。
「(日記ですか……。ちょっと見たいですね。)」
何故人は友だちの部屋に入るとベッドの下を漁くるのと同じくらいの高確率で日記を見ようとするのか?
その好奇心と原動力は何処からくるのかは分からんが、とにもかくにも此処の大淀はクソ雑魚提督の日記が見たくなった。
「提督……その、日記ですが少し見ても宜しいでしょうか?」
「―――え、嫌ですよ?」
「ほ、ほら、提督。まだ書き始めですから、被害は軽微ですよ?」
「どういう理屈なの……?」
その後も抵抗を続けること数分、勝者は当然大淀。舌先三寸・口八丁で簡単に丸め込まれてしまう。
クソ雑魚提督は交渉事もクソ雑魚であった。
――――――――――――――――――
パラ、パラとページがめくる音―――――と言っても初日だ、数ページしかないので直ぐ終わるだろう。
読みながら思ったことは、意外と中身は面白い人なんだなということと、
「(美人って……、うわ、結構恥ずかしい……。)」
提督が自分の容姿を褒めている文章を見て恥ずかしい―――知らない優男に会話で褒められてもスルー出来る自信はあるが、意外と好印象の男でしかも真面目で不器用そうな男が書いた嘘偽り無い本音の文章は思った以上にキた。
(そしてクソ雑魚提督は顔を手で隠して「うわー、うわー」と小さくうめき声を上げながら羞恥心と戦っていた。……じゃあ、書かなきゃ良いのに。)
そして、ペラッとページを捲ると、次は入渠での出来事――――――これに大淀は後日明石を呼び出そうと決めた。
最後に、建造での出来事――――
「(そういえば、予定通りなら初の建造をやってもらったんですけど―――――――!!?)」
―――ピタッと手が止まる。
「ふー」と深呼吸、コーヒーを少し含み、メガネを拭く。そしてもう一度手帳に視線を戻すが、書いている内容は―――【川内】という二文字は見間違いでなかった。
「―――――提督。工廠で【川内】を建造しちゃったんですか……?」
「……あ!それ!それですよそれ!聞こうと思って忘れてましたよ。明石さんに言われたんですが、どうして川内さんは駄目なんですか?」
「……あ~、それは……ですね……。彼女はちょっと―――」
提督の疑問に大淀は目を泳がせながら、言いにくそうにしていた時―――「バンッ!!」と勢い良く扉が開かれ―――
「提督!!ちょっと良い?」
――――件の娘【川内】が入ってきた。
「あ、川内さん。どうしたんですか?」
来たばかりで何か足りなものでもあったのだろうか?
鎮守府内にある売店で買えるものなら経費、最悪ツケで買えるが、無いなら車走らせて2時間先のスーパーに行かなければならない。……領収書落ちないなら、もしかして自分が自腹を切らなければいけないのか?と、考えて顔を青くする所持金野口さん4枚、小銭は最近の自販機には対応しなくなった硬貨2枚と少しの甲斐性無し提督。
一方、大淀は突然の来訪者の顔を見て頭を抱える。
「あのさ!私と提督、こうして出会えたのも何かの縁だと思えない?」
「……あ~、何か物足りないと思っていたら、初勤務祝のパーティするの忘れてた……。」
そうだよそうだよ、こういうのは上の―――この場合は彼女たちを預かっている提督である自分が仕切らなければいけないじゃあないか。これから一緒にやっていく仲間達の交流の場(と言っても今は片手で数えられる人数しかいないが……)を設けるのも提督の役目だろう。と、反省する提督。だが、大淀が頭を抱えている理由・そして川内が部屋を訪れた目的はそれではない。
「川内さん。交流の場は作ります。……が、今日は止めましょう。一緒に祝いたい娘がもうお布団でスヤ―してるでしょうし。」
「ううん!違うよ提督!パーティはしたいよ、本当だよ!―――でも、それよりも先ずはしなければならない事があるでしょう?」
はて?何かあっただろうか?首をかしげる提督、そしてますます頭を抱える大淀。
川内はそんな二人を見ながらとてもいい笑顔で口を開く。
「私と提督の出会いを祝して―――――そう、【 夜 戦 】だね!!」
「そうか、夜戦………うん?」
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軽巡洋艦川内型長女【川内】
彼女の戦闘能力は高い―――というより川内型と呼ばれる彼女たち三姉妹は優秀な艦娘だ。
三女は色モn、ゲフンゲフン。ちょっとキャラが濃ゆいが戦闘では頼れる武闘派であり、次女に至っては……一部どころか大部分の重巡洋艦の娘たちのお鉢を奪う強さである。
そして、長女の川内もそれに漏れず、特に防御面は軽巡随一の為生存率がダントツで高い。
これだけ聞けば「お、ええやん。なんぼや?」と言いたくなるだろう。
だが、しかし、彼女には提督、だけでなく他の艦娘達を悩ませる欠点がある。
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「夜戦……?今から?」
「今でしょう!!」
「……え~……?せめて日が登ってからが―――」
「今夜はいい夜だね~、絶好の夜戦日よりだよ~……。」
「ねえ、ちょっと聞いて下さいよ?」
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『 夜 戦 馬 鹿 』
それが彼女の欠点である。
どんな時も夜戦、寝る前に夜戦、家族が風邪を引いたら願掛けの夜戦、夜戦夜戦夜戦夜戦………
その被害にあった提督達は夜型に体を変えるか、休み時間の合間合間で十分な睡眠を取る能力を身につけなければならない。――――出来なければ連日徹夜で精神が「カミーユ・ビダン」になることだろう。
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「あのですね?まだ戦える人たちは貴女含め二人だけなんですよ?夜戦したいならちゃんと艦隊を組んで行かないと―――」
「やだやだやだやだやーーーーーだーーーーーー!!!夜戦するんだああああーーーー!!!!」
「こいつ……!?見た目は年頃の娘さんなのに、最近の幼稚園児さえしないような駄々コネを……!」
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じゃあ何とかして夜戦を諦めさせればいいではないか?
答えは「NO!」
夜戦するために生を受け、夜戦のために己の武を磨き、そして夜戦に生涯を捧げた彼女から夜戦を取り上げることをしてはいけない。
――――もし、取り上げたら士気がガタ落ちになり、戦闘力は夜戦を取り上げる前と比べると10%も発揮できなくなってしまうのだ。
だから、もし彼女と一緒に戦うことになった提督は提督である限り彼女の夜戦に付き合わなければならないのだ。
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「………ああ。分かったよ!!連れていけば良いんだろう!!」
「提督!?」
突然開き直った提督に大淀は驚くと同時に「お前……消えるのか?」という目で見る。
「連れってやるよ!!私が、お前を、夜戦に連れってやるよ!!」
「提督!!」
何故急にオ○ガになるのか分からんが、とにかく夜戦が出来る、それが分かった川内の目が輝く。
「川内!!出撃準備だ!!40秒で支度しろ!!」
「うん!了解!!」
「但し、中破判定受けたらそこで撤退で終わりだからな!!絶対だぞ、ふりじゃないからな!!」
「分かってるって。―――じゃあ、ちょっと準備してくるね!」
まるで飼い主にスペアリブでも貰った大型犬だ。尻尾があったら思いっきり振っていることだろうと思うくらいに元気満々な川内は外に飛び出し、そして残ったのは
「………提督、コーヒー入れ直しましょうか?」
「……うん。思いっきり濃ゆいので。」
「……あのう、提督私も一緒に―――」
「いや、明日私がミスした時のフォローをして欲しいからもう休んで。……大丈夫大丈夫。あの娘が大破進撃をやらかさないように監視するだけだから、ね?」
「―――――――了解しました。では提督、お疲れさまでした。明日もよろしくお願いします。」
「うん、お休みなさい。」
「パタンッ」と扉が閉じられた音がした後、残ったのは冷静になって頭を抱える雑魚提督一人だった。
――――――――――――――――――――
〈深夜4時30分〉
……夜戦、言うだけある。
返ってきた彼女は寧ろ出撃する前より元気だった……
眠い……
提督……やってけるかな……?
とにかく……今は……寝よう……二時間ちょっとだけど……・寝よう……
おやすみ……な さ い … …
―――――――――――――――
川内さんは建造で初めて来てから家のエースです。
なので出すのは決めていました。