東方死線華   作:マスターBT

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東方初挑戦のマスターBTです。
はい。短編ですよ。
暫くは続くけど、連載ほど長くはない予定。書きたいから書いた以上!


100年目

「華扇さーん、そろそろ死ぬ気になりました?」

 

「なりません。そもそも、私は修行中の身です」

 

百年に一度の会合。

私と華扇の始まりの挨拶。

 

「あ、まだですかーそうですかー」

 

今回で何度目だろうか。数えるのも面倒であり、重要なのは数ではなく華扇と出会う事。

 

「……んじゃ、いつもの始めようぜ?」

 

「えぇ。かかって来なさい死神」

 

互いに濃密な殺気を放ち拳を構える。

これから始まるのは、死神と仙人による本気の殺し合い。この殺し合いを避けては俺たちの関係を語る事は出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の始まりは、私が上司である四季様に呼ばれた今から数百年前まで遡る。

 

「よく来てくれました。死神きっての武闘派である貴方に頼みたい事があるのです」

 

「なんでしょうか?」

 

「とある仙人を殺してきて欲しいのですよ。貴方が得意とするやり方で。

まぁ、かなり特殊な事例ですが、規則は規則。輪廻を崩す者に我々地獄の者は容赦しません」

 

私が得意とするやり方。つまり、武力での殺害か。

死神が仙人を殺す場合は、特殊な精神攻撃を用いて殺すので武力は必要ない。なら、何故私が武力を一番得意としているのか。

理由は簡単。無窮の鍛錬を積むために仙人となった根っからの戦闘狂は、戦い以外では絶対に死なない。

理屈は一切不明だが、そういうものだ。少なくとも私達死神からは嫌われる連中と言える。

しかし、輪廻を正常に運行させなければならない死神が毛嫌いしてて良いのだろうか?

仕事を放棄する駄目死神にはなりたくない。故に私は、自らの身体を鍛えて鍛え抜いた。その結果、今では戦闘狂担当になってしまった。

 

「構いませんが、ここ数年はそういう手合いばかりですね。もちろん、私としても戦えるのは楽しいので良いのですが」

 

「貴方も立派な戦闘狂いですよ…まぁ、それだから頼めるのですが。

明日で彼女は百年目を迎えます。最後通告を出し、拒否された場合殺して下さい」

 

死神である私としては聞き慣れた言葉ですが、殺伐とした職場ですね本当に。

四季様は手紙を手渡してくる。中身を見れば、今回の仙人、茨木華扇の居場所が書かれていた。

 

「死神の目には、仙人が住居としている場所への侵入経路が見えますが、そもそも場所を知らなければ話になりませんからね。

彼女の名前と住処を記しておきました。其処へ向かってください。何か質問はありますか?」

 

受け取った手紙に目を通していく。

妖怪の山ですか、少々めんどくさいですね。

 

「容姿に関する情報がありませんがこれは、不明という事でしょうか?」

 

「あ、忘れていました。髪は桃色で右腕を包帯でグルグル巻きにしています。髪型はお団子を二つ結ってます」

 

説明をしながら自分の頭部に手で作ったお団子を二つ乗せる四季様。

ふむ、なるほど。大体のイメージは出来た。

 

「では、準備もありますので下がっても?」

 

「良いですよ。では、頼みますね」

 

四季様から許可を貰い四季様の仕事部屋から退出する。

特殊な事例と言っていましたね……一体何が特殊なのでしょうか。特に言わなかったという事は直接出会えば分かるという事でしょうか。

仕事の時間は夜ですが、場所は妖怪の山ですし早めに移動しておきますか。

別に仲の良い同僚という者もいないので、身支度を済ませ幻想郷へと向かう。仕事の時以外ほとんど行かないですし、人里に立ち寄るのも悪くないでしょう。

 

「…ん?出勤かい?」

 

「あぁ、小町さん。そうですよ、場所が妖怪の山なので早めに行こうかと。序でに、人里の様子も見たいですしね」

 

「人里に興味あるなら私が案内してやろうか?ちょうどサボれるし」

 

「はぁ……私は仕事のために行くのですよ小町さん。そもそもですね、三途の川を渡る為の船の船頭をしている貴女がサボったら、どれだけの魂、そしてそれらを裁く四季様に迷惑がかかると思っているのですか?

貴女が生者との関わりも大切にしたいのはよく分かりますが、仕事と私用はきっちり分けてください。私達死神は、終わりを見届けるのですから最後に不満や不平を与えては駄目でしょう」

 

「ほんっと真面目だねあんた!四季様とそっくりだよ。

ちぇー、良いサボりになると思ったんだけどなぁ」

 

頬を膨らめ子供のように抗議してくる小町さん。

同僚ながらその姿にはなんとも言えない気分になる。まぁ、誇りを持っているのは知っていますしこれ以上はいいでしょう。

 

「では、失礼します」

 

三途の川を渡り、死者の世界から生者の世界である幻想郷へと足を踏み入れる。

色彩が豊かになり、命に溢れている世界に視界が切り替わる。

妖怪の山はすぐ近くなのだが、あそこはどうにも余所者に排他的で面倒くさい。一応、死神である事を告げれば通してくれるが夜の方が都合いい。

夜なら酒飲んで警戒が緩んでる事も多いし、酒は人も妖怪も大らかにする作用がある。まぁ、だから人里に立ち寄って時間を潰したい。

 

「今は昼過ぎだから…空をゆっくり飛んで行けばまぁ、良いだろう」

 

独り言だから丁寧に話す必要はない。

空を飛び生きた世界を眺める。今の季節は春の様だ。色鮮やかな景色が目に優しく心を癒してくれる。

ふわふわと飛んでいれば人里など案外早く到着する。

 

「前に来たのは、十年ぐらい前の人里だったか。まぁ、余り変化はないな。

少し見慣れない食事処が増えたぐらいか?」

 

少し近づき、人里からは余り見られない場所で降りる。

そのまま徒歩で人里へと入っていく。仕事着のコート、そのフードを被らなければ別に変な格好ではないから問題はない。

活気のある人里を歩き聴こえてくる声はどれも、生気に満ちた明るい声。

死者が根暗とは限らないが、やはり死んでるか生きているかの差は大きいと改めて感じる。

そんな感じで歩きながら生者の営みを楽しんでいると、一つの団子屋が目に入る。

少々人集りが出来ていて、見辛かったがたまたま視線が通った。

 

「ん〜♪美味しいぃ!…あ、追加でもう一皿お願いします♪」

 

ルンルン気分で桃色髪の女性が美味しいそうに大量の団子を食べていた。

四季様から、教えてもらった容姿と合致するがその辺の子供のように、甘味に目を輝かしているあの人が仙人と言う事はないだろう。

欲を捨て切れてないから、天人ではなく仙人と聞くが、いくらなんでも俗世すぎる。

 

「ただ、あれだけ美味しそうに食べてると気になるな。まだ時間もあるし、寄っていくか」

 

団子屋へと近づいていく。

この時、少し周囲が騒がしくなった。耳に入ってくる言葉的に、見目麗しい女性が大食いをしている場所に男性が近寄っていく光景が驚いたらしい。どうやらある種の結界のようになっていた空間に気にも留めずに近づく私の度胸に感心した様だ。

 

「すみません。彼女と同じのを」

 

店員に隣の席に座る女性を指差しながら注文する。すると、店員は困った様な表情を浮かべ口を開く。

 

「すみません。今、材料を切らしてしまいまして…あちらのお客様が注文した団子で最後なんです」

 

「そうなんですか……ふむぅ、彼女が余りにも美味しそうに食べるものだから食べてみたかったのですが。

無い物強請りをしても意味はないでしょう。他に何かオススメはありますか?折角ですし」

 

「あの」

 

隣から声をかけられ、私はそちらを向く。

そこには団子をお皿に乗せた先程の女性が居た。ふむ?私に何か用だろうか?

素直に疑問を口に出すと、彼女は慌てた様に手を振った後に恥ずかしげに口を開く。

 

「私は十分に食べたので、どうぞ。此処の団子とても美味しいですから、オススメです」

 

言葉は頼んでいる様なのにグイッとお皿を押し付けてくる。

どうやら相当気恥ずかしい様だ。

 

「では、その好意に甘えましょう。ありがとうございます」

 

私がそう言って皿を受け取ると安心した様な表情を浮かべる女性。

表情がよく動くお方だ。もうすでに、安心した表情からキリッとした表情に変わっている。

なんとも微笑ましい方だ。 

さて、せっかく貰っておいていつまでも彼女を見ていては失礼だろう。貰った皿から、団子を一つ取り食べる。

柔らかな食感と、餡の甘さが口に広がる。

口の中の団子を食べ切ってから、お茶を一口飲む。団子で甘くなった口内にちょうど良い渋みがゆっくりと染み渡る。

 

「…美味しい」

 

彼女が美味しそうに食べていたが、まさかここまで美味しいとは。

 

「美味しいですよね!人里にはそれなりに甘味処があるけど、一段とここが美味しいのです。

彼方の甘味処で食べたどら焼きを大変美味しかったですが、少々甘すぎましたね。まぁ、好みは人それぞれなので多くは言いませんが」

 

「なるほど。人里には余り来ないのですが、今度来るときはそちらにも行ってみますか」

 

「おや。どこか遠くのお住みで?」

 

「えぇ。今日は仕事で来ただけですので」

 

話しているうちに気が付いたが、彼女身に纏う気配が人のそれではない。

さて、人に仇なす者ではない事は分かるが、深入りは避けるべきか。幻想郷は一筋縄ではいかない連中が跋扈している。

 

「そうだったんですか。おっと、では私はこれで。また会いましょう」

 

「はい。団子、ありがとうございました」

 

勘定をし手を振って彼女は甘味処を去っていく。

ゆっくり団子とお茶を飲んでいれば日が傾きつつある時間になる。

さてとそろそろ妖怪の山へと向かうとしよう。私も勘定を済まし、妖怪の山へと向かう。

またしてもゆっくり飛んでいけば、辺りが暗くなった時間に到着する。そこには、警備係の白狼天狗がいた。

 

「死神です。今宵、時間を迎える仙人を殺しに来ました」

 

「閻魔様から連絡は頂いてます。どうぞ」

 

やはり天狗は話が通っていれば簡単だ。

見送られながら妖怪の山を歩いていく。耳を澄ませば、酒を飲んでいる妖怪たちの声。私を見る妖怪の唸り声など。

聞こえてくるのは全て妖怪の音。そんな中、音の聞こえない場所を見つける。

 

「ここか」

 

迎え担当の死神の目に仙人の結界は余り意味をなさない。

本拠地に辿りつかないようにしても、死神の目には順路が見える。そういう種族の特性だから。

 

「……複数の動物に見られてるな。だが、襲いかかってくる気配はなさそうか」

 

単に幼体だからという事もあるが、恐らくここの仙人に無闇に襲い掛からないように教えているのだろう。

正解の道だけを進み、仙人が住んでいる屋敷までたどり着く。

 

「また会いましたね」

 

あぁ、やはりただの人ではなかったか。

甘味処で感じた気配は間違いではなかった。四季様から聞いた容姿とも合致する。

 

「そうですね……真面目にこの目で見れば分かる。貴女、かなり特殊ですね?」

 

「さて、なんのことでしょうか。死神、貴方が来たという事は私を殺しに来たのね。

まだ、余裕は全然合ったと思うけど。何故、来たのか教えてくれます?」

 

確かにこの仙人にはまだ、明確な寿命はきていない。

だが、地獄の判断が私には何より優先される。

 

「百年周期に合わせたのですよ。恨むのなら、仙人になり輪廻を乱した事を恨んでください」

 

私が言い切ると同時に月が天を彩る。

直後、私は目の前の仙人へと飛びかかり、踵を落とす。

 

「…死神が直接攻撃とは。貴方も特殊ね」

 

「仙人には意地でも戦いを好む者もいるので」

 

左手を広げるように受け止められ、私の足をそのまま掴み万力の如き力で締め上げてくる。

感じる強者の気配に口角が無意識に上がるのが分かる。

逆の脚で、彼女の顔を横から蹴り砕く様に振るう。直後に拘束が解除され、僅かにバランスを崩した私の脚は、勢いを削がれ簡単に避けられる。片手で着地をし、そのまま後方へと一旦飛び下がる。

 

「……名を聞いても?」

 

「茨木華扇」

 

「そうか、華扇か。くくっ、存分に殺し合おうぞ!」

 

抑えていた霊力を解放する。

あぁ、こいつは全力でやっても問題ない。むしろ、全力を出さなければ殺せない。

とある仙人との戦いで学んだ縮地を使用し、接近する。蹴りは防がれた。ならば、次は手数を増やすとしよう。

 

「獄式無間」

 

俺の使える技の中で最も手数の多いもの。

やっている事は単純。フェイント無しの連続ラッシュを急所に向けて放つ。攻撃を放つ拳の回転数をどれだけ増やせるかがポイントの技。

今の私なら、秒間30発は放てる。が、その全てが華扇に叩き落とされるか避けられる。

 

「……」

 

「は、はははは!!これでも一撃も当たらないとはな」

 

あぁ、楽しくて仕方ない。

途中から全力を出すということが出来なくなった。単純に鍛えた仙人より私の戦闘力が上をいった結果なのだが、それは実に楽しみに欠けた戦いだった。だが、今宵は久しぶりに全力を出せる。

 

「獰猛な笑みを浮かべる。凄い顔ですよ貴方」

 

お返しと言わんばかりの拳を顔面で受ける。

避ける気はない。なんとなく華扇の一撃を受けておきたかった。軽くのけ反るが意識が消える程ではない。

 

「…頑丈ですね。死神」

 

「当たり前だ。これぐらいで意識を失ってちゃ台無しだろう」

 

ずっと上がりっぱなしの口角を歪めて笑う。

ガラ空きとなっている華扇の横腹目掛けて、蹴りを放つ。簡単に避けられるが、その勢いを利用したまま、宙に浮き後ろ回し蹴りを放つ。

華扇の顎を狙った一撃だが、上半身を逸らすことで避けられる。

 

「俺を見なくて良いのか?獄式大叫喚」

 

両脚を地面につき、しっかりと腰を落とした上で放つ正拳突き。

一点に狙いを定め放つ一撃は、山を貫いた事もある技。

 

「くっ!」

 

華扇は両手を突き出し、俺の攻撃を受け止める。

直後、凄まじい風が吹き抜け俺たちは互いに少し吹き飛ばされる。なんて事はない受け止められ、行き場を失った力がお互いに戻ってきただけだ。

 

「まだ、戦う気は起きないか?

そろそろ、我慢の限界だろう?その顔、同類だな。俺とお前は」

 

土煙が消え、見えた華扇の表情は笑みを浮かべるのを我慢している様に感じられる。

仙人だから欲に負けない様にしているのだろう。

 

「仙人であろうとするのは構わないが………殺すぞ?」

 

指をパキリと鳴らし、再び縮地で距離を詰める。

が、俺は一気に後方へと吹き飛ばされていた。理由は簡単。詰め寄った瞬間に華扇の一撃を喰らったのだ。

受け身で衝撃を逃し、華扇を見る。拳を振り抜いた形のままだ。だが、身に纏う闘気は今まで一番高い。

 

「あぁ、分かった。貴方の様な手合いに手心なぞ無駄。望み通り相手をしよう」

 

鋭い目つきに俺の身体が震え上がる。恐怖ではない武者震いだ。

眠っていた強者を起き上がるだけの価値が俺にはあったということだ。これを嬉しいと感じない訳がない。

 

「かかっ!!あぁ、いいなその目だ。これで漸く命のやり取りと言える!!」

 

お互い同時に駆け出し、拳をぶつけ合う。

先ほどまでの受け身に徹していた華扇とは違う。俺を殺そうとする即死の一撃が何度も向かってくる。

それら全てを叩き落とし、反撃する。しかし、今度は迎え撃つ形で全ての攻撃が防がれる。

攻撃は最大の防御。

俺が手数にものを言わせた攻撃をすれば、華扇も同じように手数で迎え撃ち、一撃を高めるために蹴りを放てば中間で華扇の蹴りと重なり意味をなさない。

俺も華扇も笑みを浮かべ目の前の者を殺すために拳を蹴りをぶつけ合う。

 

「獄式黒縄!」

 

唸る縄の様に複雑に狙いの分かりづらい拳を放つ技なのだが

 

「はぁぁ!」

 

華扇が放った蹴りが俺の脇に当たり狙いが逸れ、華扇の鳩尾へと叩き込まれる。

漸く互いに当たった一撃。俺は激痛に顔を顰めるが、本気を出せる戦いの高揚感がそれを打ち消す。

それは華扇も同様の様だ。何故分かるかだって?

もうすでに握り拳を作り、俺の顔面へと放ってきているからだ。

 

「この程度!」

 

脇を蹴られた痺れから腕は防御に使えない。

それならと頭突きで受け止める。顎を狙われ、気絶する可能性があるなら頭部で最も硬い場所をぶつければ良い。

 

「かぁ……良いねぇ!」

 

「この華扇の一撃を顔で受け止め、なお笑うか。生粋の戦闘狂いめ」

 

「それはお互い様だなぁ!水面に映る自分の顔でも見てみろ華扇!」

 

華扇の表情を一言で表すなら、凄惨な笑みだ。

口角は上がりきり、目つきは鋭い。身に纏う殺気はそれだけで生物の命を奪えるだろう。俺と華扇の表情は完全に鏡合わせ。

故に今感じている感情も理解できる。

楽しくて楽しくて仕方ない。俺たちはこの殺し合いを間違いなく心の底から楽しんでいる。

 

「楽しいよなぁ!華扇!!」

 

「えぇ、えぇ。認めましょう。仙人にあるまじき事だが、この戦いを楽しんでいる!」

 

無限にも続けたいこの時間。

だが、現実は残酷だ。いつの間にか昇っていた満天の太陽が落ち月が昇ろうとしている。

即ち、死神として仙人を殺す百年目が終わろうとしているのだ。あぁ、名残惜しい。再び、殺し合いをするにはまた百年の月日が必要だ。

 

「そろそろ時間か…」

 

「そうですね。終わりにしますか?」

 

気を抜くなよ華扇。そんなつまらない幕引きを俺は望んでいない。

 

「最後に俺の最高をぶつける。それでしまいだ」

 

「いいでしょう。きなさい」

 

深呼吸をし、全身に酸素を行き渡らす。

残った霊力を拳へ集める。さぁ、華扇受けてみろ。今の俺の全力だ。

 

「獄式大焦熱!!!!!」

 

放つには霊力を大量に込める必要があるため、即座に撃てないのが難点だが放つ事が出来れば最高の威力を持つ。

放たれる拳が空気との摩擦で高熱を帯びる。それに霊力を流し込み、イメージを固める事でこの一撃は紅蓮を纏った一撃となる。

この一撃を華扇は再び真正面から受け止める。

大きな爆発音と共に、大きな煙が巻き起こる。爆ぜる拳。分かりやすく言えばこの技はそういうものだ。

 

「……あぁ、殺せませんでしたか」

 

「…死ぬかと思いましたけどね」

 

拳の先には、所々煤汚れているが、生きている華扇がいた。

殺し合いとしては引き分けだが、死神としては敗北した。お互いを支える様にゆっくりと崩れ落ちる。

 

「強いですね華扇さん」

 

「その言葉そのまま返しますよ。死神さん」

 

お互いを支え合い、月を見上げる。

夜を照らす月は丸く、満天の星空でも輝きを放ちとても綺麗だった。

 

「死神がここまで戦えるとは。予想外」

 

しかし、私のすぐ近くで座り込む彼女には遠く及ばないと感じた。

思えば私はすでにこの時から華扇に心を奪われていたのだろう。

 




戦闘中制御を失った死神さんでした。
あいつ、勝手に動くんだもん。

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