東方死線華   作:マスターBT

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独自解釈やオリジナル要素などがモリモリになる(予定)吸血鬼異変の始まり始まり


吸血鬼異変其の壱

「……これで今日の仕事は終わり。しかし、本当に外は幻想が薄まってるんだな」

 

 久しぶりに幻想郷の外で仙人を輪廻に戻し、外界を眺める。自然を切り抜き街という名の隔離された空間を生み出し暮らす人間達。仙人も随分と見なくなった。時代なのだろう。もう人間は自らの命を先延ばしにしてまで手にしたい未来も夢も無いのだろうな。

 

「仙人からの告白保留にして、仕事漬けとは乙女の敵だねぇ?」

 

 突然、訪れた小町さんに思わず反射で拳を放つ。途中で加減したが停止が間に合わず、思いっきり殴り飛ばした。ぐぇ…っという声と共に飛んでいく小町さんを全力で走り受け止める。

 

「すみません……思わず反射で」

 

「い、いやいきなり真横から声かけたアタシが悪いんだけど……なんで殴り飛ばしたアタシに走って追いついてるのさ?」

 

「はい?飛んでいく小町さんの速度は私より遅いからですが」

 

「なんでそこで心の底から不思議って顔が出来るんかねぇ……とりあえず降ろしておくれよ」

 

 小町さんを降ろし、話しやすい様に距離を取る。しかし、態々幻想郷の外まで私に会いにきて何か用事があるのでしょうか。そんな事を思ってれば小町さんが口を開く。

 

「で、なんで保留にしてるのさ?仙人もそれを受け入れてるし」

 

「その話に戻すんですね……分かりましたよ説明します」

 

 はっきりと覚えているあの日に意識を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……雫。こんな時にううん……こんな時だから言います。私、茨木華扇は死神、終雪雫の事が好きです。

 他の誰よりも、貴方が私じゃない異性と一緒にいるだけで鬼になりそうなほど掻き乱されるぐらい、私は私の心は貴方を欲しています」

 

 私が好きだと彼女ははっきりと告げた。七夕の時みたいに濁した言い方ではなく、はっきりと。真っ直ぐ私を見つめ、顔を赤くしたその姿は嘘ではないと伝えてくる。死神として、断るべきだと思っていても心臓が激しく脈打ち、私が華扇さんの言葉を嬉しく感じていると告げていた。きっと、私も華扇さんを好きなのだろう。あぁ、確かに好きだ。意識してなければ、告白紛いの言葉を選んでしまう事は七夕で自覚した。

 

「そんな困った顔されたら傷つきますよ?でも、雫ならきっと、そういう顔をするだろうなーって思ってたから良いです。

 我慢出来なかった私の我儘ですからこの告白は。今じゃなくて……いつか貴方が貴方自身を理解できた時に返事を下さい。ずっと待ってますからね」

 

「……華扇さん、私は……」

 

 どうにか開いた口は優しい顔をしている華扇さんが伸ばしてきた指で塞がれる。彼女は気がついている。華扇さんが好きだと自覚する私が同時に、その想いに応える事に恐怖している事を。私は死神として産まれてからずっと、輪廻を乱す仙人達を殺し続けてきた。それが私の仕事であり役目なのだからと。同僚達ともほぼ関わらず、殺して殺して殺して来た私には、誰かを大切に想うことも想われることも無かった。

 今日、この瞬間までは。だから、怖くて仕方がない。華扇さんという女性の想いに答えて、他人を受け入れるという事が。こんな自分が誰かを真っ当に愛せるのか。

 

「無理に答えなくて良いですよ……それに、今この場で振られちゃったら流石の私も堪えちゃいますし!ね?雫、私にも覚悟の時間を頂戴。貴方が出すした答えをちゃんと、私として受け入れられる覚悟を」

 

「わかり……ました。必ず、答えますから」

 

 だから、この優しさに甘えてしまったのだろう。めちゃくちゃ情けない私の返答に華扇さんは笑みを浮かべたまま頷き、立ち上がる。私もそれに倣い立ち上がり、背を向ける。もう今日は別れた方がいい。お互い、色々とありすぎた。こうして、私は華扇さんへの答えを曖昧にしつつ、仕事に戻った。

 

 こうして、ことの経緯を小町さんに説明すると呆れた様な納得した様な顔をしている。

 

「で、二週間。考えてみてどうなんだい?」

 

「…答え、出てると思います?」

 

「だろうねぇ」

 

 小町さんも予想できていた様だ。なんとも言えない沈黙の空気が流れる。この空気を変えたのは、私でも隣にいる小町さんでもなかった。突如、足元にスキマが生まれ、私と小町さんを飲み込む。目玉だらのこの気色の悪いスキマは八雲か。なんの連絡も無しに拉致とは随分と不作法な事をしてくれる。小町さんの気配が離れていく。どうやら、私とは別の場所に送られた様だ……っと、そろそろ出口か。

 

「……随分な「ししょーーう!!」うおっ!?」

 

 スキマから出ると同時に博麗の巫女が飛びかかってくる。思わず、顔面を鷲掴みにする様に掴み、激突を避ける。

 

「ひ、ひしゃしぶりの弟子に酷い挨拶じゃぁないですかぁぁ??」

 

「いきなり飛びかかって来て殴り飛ばされないだけ有難いと思ってください。それで、八雲紫、これはなんの集まりですか?」

 

 私に博麗の巫女、八雲紫だけであればまた修行関係だろうと思ったが、それなりの広さが用意された部屋に座っている強者達の気配。

 

「おっ。漸く来たねーひっさしぶり〜」

 

 酒を飲みながら気軽に声をかけてきたのは、以前人里近くで戦った鬼。確か名前は、萃香だったか。そのすぐ近くに座っている緑髪の長髪の妖怪は、私をチラリと見て目を細めた後お茶を飲む。なんだろうか、文字通り目を付けられた気がする。しかし、この両名より気になる存在が上座に座っていた。手入れの行き届いた金色の長髪をした女性。恐らくこれでも抑えているのだろうが、隠しきれない神としての存在感を強烈に放っている。何者だ?

 

「そんなに私が気になるか?死神」

 

 言葉と視線を向けられただけで重圧が俺を襲う。なるほど……これだけの威光。正しく神か。

 

「ほぅ。認めてやろう、この状況で私から視線を逸らさず楽しげに笑みを浮かべるその豪胆さ。此度の危機に馳せ参じるに相応しい。良いものを見つけたねぇ紫」

 

「そりゃあ、あの華扇と真っ向から殺し合いをしてなお、潰れない方ですからね」

 

「へぇ!なら、後継者に……」

 

 ドンっと神の目の前にお茶が置かれる。凄い勢いで置くものだから、お茶が跳ね着物を僅かに濡らしたが、そんな事は一切気に留めず、その人物──華扇は、口を開く。

 

「摩多羅?今は、そんな事話してる場合じゃないですよね?」

 

「ひゃー……ちょっとした冗談よ。ほら、貴方も座りなさい」

 

「分かりました」

 

 適当に空いてる場所に座ると、華扇さんがすぐ近くに座る。というかものすごく近い。少しでも身体を動かせば必ず華扇のどこに触れてしまうほどの距離。至近距離に心臓が高鳴るが、僅かでも動けば触れてしまうので身を固くして動かない様にする。

 

「うふふ。そんなに硬くならないても大丈夫よ雫」

 

「そ、そう言われても……はぁぁ。分かりましたよ、今度甘味を奢りますから長いこと幻想郷を留守にしてたの許してください」

 

「別にぃ〜怒ってる訳じゃありませんよ〜寂しかっただけですから」

 

 さらに距離を詰めて完全に触れ合う事になる私と華扇さん。彼女の暖かい体温を感じる。女性特有の柔らかい感触に、男性にはない香りが鼻孔をくすぐる。さらに彼女はするりと、腕を組んで胸を押し当ててくるものだから理性がゴリゴリと削られる。

 

「そこ、イチャイチャしない!これから話す事は幻想郷の存続に関わるのよ」

 

 八雲紫に注意され、漸く少しだけ離れてくれる華扇さん。早く返事をした方が良いなこれは……とは言え、したらしたでまたべったりとくっついてきそうな気もするのですが。

 

「はぁ……さて、集まってくれてありがとう幻想郷が誇る強者の皆様方。ここ数日の間に、突如として現れた吸血鬼達が幻想郷を侵攻。私も気がついてなかった欠陥が明らかになったわ……貴方達は実感していないと思うけど妖怪達の力が著しく低下。吸血鬼達に屈してるのが現状よ」

 

 私が外にいる間に随分な事になってるみたいですね幻想郷。つまり、我々をこうして集めたのはその吸血鬼に対抗する為。いや、それだけならこれほど集める必要はない。八雲紫の能力で敵の大将をさっさと打ち倒せば良いだけだろうし。

 

「大軍ってわけですか……」

 

「話が早くてありがたいわ。吸血鬼とそれに屈した妖怪達が現在、博麗神社や人里目掛けて進軍中よ。一度、敵の大将に直接戦闘を仕掛けに行ったのだけど、予想以上に強くてね。一対一なら兎も角、周囲に他の雑兵がいる状況は負ける可能性があるわ。だから、貴方達に頼みたいのは連中の軍勢に対して大暴れして、可能なら幹部級を大将から引き離して欲しいの。それが出来たらあとは私達でやるわ」

 

「好きな様に暴れて良いから囮を引き受けろって?なんで私がそんな事しなくちゃいけないのよ」

 

 緑髪の妖怪が呆れたようにしながら話す。強い妖怪というのは総じて我が強い。従えと言われて素直に従う様な者達ではない。

 

「幽香、貴女がさっき弾いた霊力弾。それを撃ったのはここの巫女だけど、その師匠がそこの死神なの。協力してくれるなら、彼との一戦の場を設けてあげても良いわよ?」

 

「へぇ」

 

「おい、八雲紫。お前……」

 

 なに勝手な約束を取り付けようとしてやがる。そんなこと言ったらもう一人黙ってられないのがいるだろうに。

 

「なに!おい、それなら私もそれを報酬にしてくれよ。紫」

 

 ほら、萃香が釣れた。なんでこう、妖怪ってのは飢えてるんだ……まぁ、分からん話ではないのだが。しかし、勝手に約束されるのは気に食わないな。何か要求……するものがない。そもそも、趣味とかないんだった私は。

 

「良いわよ。貴方もそれで良いわね?」

 

「断ったところで言い包める気満々だろうに……分かりましたよ」

 

「災難ね、雫」

 

「本当だよ。この恨みは吸血鬼共にぶつけるとしよう」

 

 横で苦笑いしてる華扇と話しながら我の強い妖怪達が私との一戦だけで纏まったのが不思議に思う。だが、少し考えればそもそもこの場にいるのだから全員、この幻想郷が好きなのだ。つまり、元々戦う気はあったのだが、程の良い報酬に使われた訳だと分かる。八雲紫に対する恨みも吸血鬼共にぶつけるとしよう。

 

「兵は拙速を尊ぶと言うわ。早速行きましょうか」

 

 パチンと開いていた扇子が閉じると同時に、再びスキマに吸い込まれる。運ばれた先は、吸血鬼共の軍勢の少し先の高台。ざっと見た限りでも、かなりの軍勢が侵攻している。本気で幻想郷を取りに来たのか吸血鬼は。

 

「まずは、幽香と萃香で派手に敵を蹴散らしてきて。その後、突破力に優れる華扇と終雪が敵軍真っ只中で大暴れして陣形を乱すのよ。支援は私の式神と天狗達がやってくれるから」

 

「じゃっ、お先に〜」

 

 気楽に手を振りながら高台を飛び降りた萃香。そのまま、彼女の能力であろう巨大化で軍勢の右翼側を吹き飛ばす。

 

「「「「「うぁぁぁぁぁぁ!?」」」」」

 

 悲鳴をあげながらかなりの数の妖怪達が宙を舞う。大きさ=破壊力という分かりやすい光景だ。当の萃香は笑いながら酒を飲んでいるのだから眼下で抵抗する妖怪達など気にも止めていない。右翼側の敵は完全になす術がなさそうだ。

 

「少しは合わせなさいよね。はぁ、まっ、良いわ」

 

 遅れて飛び降りた幽香は空中で傘の先に妖力を溜める。右翼側の出来事に完全に混乱していた敵の左翼側にいた妖怪達は空中の脅威に未だ気が付いていない。溜め込まれた妖力は凄まじい輝きを放ちながら、主の指示を待つ。

 

「消し飛びなさい」

 

 放たれた極光に遅れて気がついた妖怪達はなす術もなく、光に飲み込まれる。光が収まり、ぽっかりと空いた空間に優雅に着地した幽香。格の違いを見せつけるには十分だ。萃香の様に妖怪達が宙を舞う事はないが、確実にその数を減らしていた。

 

「さて、私達も行きましょうか雫」

 

「そうだな……俺たちの獲物がなくなりそうだ。っと、そうだ折角だから派手に行こう」

 

 華扇の方に手を伸ばす。意図を理解してくれた華扇は差し出した手を握り返した。脚に霊力を流し、脚力を増加させ地面を砕きながら跳躍する。空中で、華扇が俺を握ったまま回転し勢いがついたところで俺を投げ飛ばす。

 

「獄式焦熱」

 

 投げ飛ばされた勢いそのままに、踵落としを叩きつける。大爆発と共に妖怪達が消し炭になったり宙を舞っていく。そして、未だ空中の華扇は仙術で小さな嵐を再現し、連中を巻き上げたり雷を落として倒しながら着地した。

 

「背中合わせで行きましょうか」

 

「良いな。それ」

 

「こ、今度は何だぁ!!」

 

 完全に混乱している妖怪共を見ながら、ひたすら正面の妖怪共を殴り蹴り飛ばしていく。全くもって歯応えがない連中だ。最も背中を一番信頼している華扇に守ってもらっているから好き放題進めるのだが。壁にすらならない連中を吹き飛ばしながら突き進む。すると、面白いように俺たちから逃げた奴らが同じように萃香や幽香から逃げてきた連中と鉢合わせになる。

 

「お前ら逃げるな!!たた……」

 

 指揮を取ろうとしている吸血鬼の頭を捻り取る。鮮血を身に浴びる事になるが、気にしない。八雲紫の取った戦術的にこういう衝撃が重要なのだろう。再生しようとする吸血鬼をひたすらに叩き潰す。

 

「ひ、ひぃぃ!!吸血鬼すら勝てねぇのかよぉぉ!!」

 

 恐れは伝播する。元々、恐怖で従えていた連中だ。より強い恐怖を叩き込めば戦うどころか逃げる事すらままならない。所詮、烏合の衆という訳だ。

 こうしてのちに吸血鬼異変と呼ばれる争いの火蓋が落とされた。

 

「ふっ、あははは!どうやら腑抜けばかりではなかった様だな。幻想郷、その価値を我に見せつけてみよ」

 

 全て一体の吸血鬼の掌の上であったのだが。そんな事はこの異変が終わるまで知る事はなかった。




速報:死神、恋愛ヘタレであった。

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