ボラー連邦と再開戦し二ヶ月以上が経った2205年6月2日、統括司令部の統合参謀本部の会議室には多くの高官が集まり会議を開いていた。会議の参加者は統括司令部総長、副総長、参謀本部からは総参謀長、副総参謀長、防衛艦隊司令長官、作戦参謀長、後方支援・兵站参謀長、情報作戦参謀長など様々であった。
「それでは状況報告を頼む」
総長は会議参加者が全員揃ったことを確認するとそう言った。すると作戦参謀長が立ち上がり報告を始めた。
「それではまず各地の戦闘情報を報告します。現在防衛軍が開戦直後に実施した作戦、バグラチオン作戦とバース星攻略作戦はその後の統治を含め完全に成功しています。続いて防衛戦闘ですがディンギル帝国軍は第十一番惑星沖で鹵獲した要塞や少数の艦艇を除き全滅させました。一方ガルマン・ガミラス帝国北部戦線は膠着状態、アスターテ星系からアルゼ星系への航路確保の作戦は現在作戦準備中です。以上です」
「了解した。作戦参謀長ありがとう。それと防衛艦隊司令長官に聞きたいのだが艦隊のローテーションはどうなっている」
総長は一番の懸念であった艦隊ローテーションについて尋ねた。
「率直に申し上げますと、従来のローテーションは崩壊しています。特に主力艦隊のローテーションは完全に崩壊しており従来の3交代制どころか2交代制も厳しい状況です。主力艦隊で3交代制を維持できているのは何処もありません。機動艦隊は4交代制から2交代制にしてかろうじてローテーション維持をしています。他にも打撃艦隊、遊撃艦隊、無人艦隊、パトロール艦隊、護衛艦隊は2交代制にローテーションを変更しました。航空艦隊や遠距離遊撃打撃艦隊、戦略艦隊は具体的なローテーションが存在していませんので問題はありませんが、これらの艦隊が修理・補給に移った場合の戦力低下は確実です。因みに現在通常ローテーションなのは無人哨戒艦隊や各基地、惑星駐留艦隊だけですが厳しいです。本国艦隊の増強が進めば全体的に改善されるでしょうが」
防衛艦隊司令長官はそう答えた。
「わかった。因みに補給艦隊や船団護衛の状況は」
総長は険しい表情をしながら尋ねた。
「補給艦隊についてですが後方支援・兵站参謀長と話し合い、大部分を北部戦線とアルゼ星系方面に回していますが問題はありません。また船団護衛もシリウス・プロキオン星系方面は護衛艦隊を使用しての護送船団方式で同盟国や親ボラー連邦国家との貿易では本国艦隊も動員しての護送船団方式を取っております。また総長もご存じの通り民間にも要請を出し、これらの輸送艦は全て最新鋭の超長距離連続ワープのできる船舶で運航しており、その他の船舶は安全の確保されている太陽系内やガミラス共和国やガルマン・ガミラス帝国などへの貿易での運行に使用して貰っています」
「わかった。厳しい艦隊運用は承知したのだが、ディンギル帝国攻略艦隊の編成をできないだろうか」
総長はそう切り出した。これについて防衛艦隊司令長官はある程度予想していたのですんなりと返答した。
「わかりました。なんとか艦隊を準備させましょう。ですがアルゼ星系攻略のような作戦をできるほどの大艦隊は準備できないと思いますが」
「それは承知している。ディンギル帝国ついてはコロニーレーザーで敵本国を破壊する前提で動くつもりでいる。ディンギル帝国攻略に時間を掛けたくないからね。それと作戦実施に関してアスターテ星系からアルゼ星系への航路確保の作戦を延期しても構わない」
「承知しました。艦隊司令部で協議しましょう」
総長が「頼んだ」と答え防衛艦隊司令長官と総長が話し終わると情報作戦参謀長が手を挙げた。
「ジャミトフ大将どうぞ」
ゴップ総参謀長が指名するとジャミトフ大将は発言した。
「では情報部が掴んだ情報を報告します。まず同盟国であるネース国付近がきな臭いのです」
「と、言いますと?」
総長が神妙な表情で聞いた。
「ネース国の隣国にガイル皇国という排他的な単一星系国家があるとのですが、どうやらその国がバルバンド共和国という国に占領されたとの情報がネース国の情報部経由で入ってきました。現在、バルバンド共和国の通信を傍受し続けているのですが、その通信内容にネース国の国名も出てきているのでネース国が次の侵攻目的にされている可能性があるとネース国の上層部は予想しており防衛軍に対して追加で主力艦隊クラスの派遣を求めています。恐らく今頃外務省に正式に要請が来ているかと」
「なるほどわかりました。防衛艦隊司令長官的にはどうですか」
総長は防衛艦隊司令長官に尋ねた。
「そうですな。無理をすれば1個機動艦隊もしくは1個遊撃艦隊なら即応で派遣できるかもしれません。あとは万が一に備えて同盟国の巡回防衛に当たっている第一遠距離遊撃打撃艦隊を派遣できます。ですが派遣の決定には時間が欲しいです。ディンギル帝国攻略作戦の件もありますので」
「わかった。艦隊派遣については正式に要請を受理してから派遣の決定をするからまだ時間があると思ってもらって構わない」
「かしこまりました」
「申し訳ないが頼む。それではジャミトフ大将続きを」
総長がそう言うとジャミトフ大将は続けて言った。
「それでは続けさせていただきます。続いてボラー連邦に関する情報です。まずスパイからの情報ですがボラー連邦は開戦以降1500隻を超える艦艇を就役させ、更に倍以上の艦艇を建造中と思われます」
そうジャミトフ大将が言うと参加者一同暗い表情を浮かべた。開戦から3ヶ月足らずで1500隻の艦艇を就役させられては幾ら敵艦を沈めても無意味な消耗戦が繰り広げられるだけである為だ。
そんな表情を会議参加者が浮かべる中ジャミトフ大将は続けた。
「なおこの数は最低数で実際は更に多い可能性もあります。敵艦艇数については今後もスパイを使い情報を収集します。続いて政治に関する工作ですがこちらは順調です。属国に対しては戦後に銀河連合に参加させることを見返りに与えることを条件に、本格的な参戦はサボタージュなどをわざと発生させて参戦を見送ることで話を付けています。現に少数ですが幾つかの属国はサボタージュを起こして本格的な参戦はしていません。それとボラー連邦本体への工作では反ベムラーゼ首相派閥の代表であるフルチフ氏と接触し様々な情報を交換しましたのでここで入手した情報を報告します。まず強固に見えるベムラーゼ首相ですが実際は完璧に強固な状態ではありません。アルゼ星系陥落やバース星損失、短期間での大規模な艦隊損失を受けボラー連邦軍、特に艦隊司令部内ではベムラーゼ首相への不信が若干ですが芽生えています。現にボラー連邦宇宙艦隊司令は反ベムラーゼ派であるフルチフ氏とも関係があり、なおかつ知地球連邦派の人物です。」
「なるほど。しかし宇宙艦隊司令がそのような人物だと反旗を翻す可能性もあるのでは。あのベムラーゼ首相がそのような人物を放置するとは考えられん」
作戦参謀長はそう尋ねたが、ジャミトフ大将は首を横に振った。
「いえ、残念ながらそうとも限りません。確かに不満は芽生えておりますが、それでもボラー連邦軍全体では少数です。フルチフ氏らも現体制打破の為の活動を行っていますが大々的には出来ない為いつ結果が出るかは不明です。また宇宙艦隊司令も有能な人物であり、ベムラーゼ首相も信頼している人物です。もし宇宙艦隊司令が反旗を翻す場合は反乱が完璧に成功する場合でしょう。」
「了解した。情報収集と工作をこれからも頼む」
総長がそう言うとジャミトフ大将は一礼して座った。そして次は後方支援・兵站参謀長が口を開いた。
「後方支援・兵站参謀長からの報告ですが、まず月面基地で建造中の新型の大型工作艦ドロス級一番艦ドロスが間もなく就役できます。二番艦ドロワ、三番艦ミドロ、四番艦ガドロも建造は順調に進んでおります。また本国艦隊向けの新型航空戦艦ブルーノア級一番艦ブルーノア、二番艦ブルーアース、三番艦ブルームーンの建造も順調であります。あと第二次ビンソン計画で建造艦艇、輸出艦艇やセイバーフィッシュの生産も順調であり続々と同盟国へ引き渡しております。その他の戦時計画の艦艇もまた計画通り調達できます。それと鹵獲したディンギル帝国の要塞ですが、修理・改装をすれば我が軍で使用できます。またその他の軍需品も予定通り、一部は予定より早く調達できていますので補給体制は万全です。以上です」
「了解しました。要塞の修理・改装は統合参謀本部と後方支援・兵站参謀長の判断に任せます」
総長がそう言うと後方支援・兵站参謀長は頷いた。
その後も会議は続き今後の方針や新規にコロニー1基が完成したことにより発生した破棄コロニーを再使用してのコロニーレーザー2基追加などが決められるなど会議な長時間にわたって続けられた。