2203年3月14日
月面基地。月に存在する基地では地球連邦防衛軍最大の基地である。大規模な艦隊収容施設から造船所や修繕施設などが設置されており、月にあるグラナダ基地、フォン・ブラウン基地、アンマン基地と共に月の防衛艦隊の一大根拠地群を形成している。そんな月面基地より数十隻の艦艇が発進する。
どの艦も真新しい塗装で塗られており、一目でそれらは明らかに新造艦だとわかる。
その艦艇群の旗艦では司令官がオペレーターから報告を受けていた。
「全艦発進しました」
「うむ。進路を集結ポイント07に」
「了解。進路ポイント07へ」
艦隊司令の命令を受けた艦隊は地球各地の造船所やソロモン要塞などの要塞で建造された艦艇群との集結ポイントへと向かった。
地球連邦議会での大規模予算の可決後に太陽系各地の造船所では「防衛艦隊緊急増備計画」に沿って続々と艦艇が建造され、次々と就役していっていた。
そして各地の造船所で建造され就役した艦艇は一度地球圏の各集結ポイントにて集結、そこで正式な艦隊に再編成され訓練へと向かっていった。
タイタン基地防衛艦隊司令部
「第十一艦隊編成完了、これより訓練へ向かいます」
防衛艦隊司令室でオペレーターがそう報告をする。
「うむ」
「とりあえず増強は順調といったところですか」
そうアンドロメダ艦長兼第一艦隊司令の山南中将は土方司令に話しかける。
「そうだな。まだ一個艦隊だが無いよりはましだろう」
「まだ予算可決からそれほど時間が経っていませんからな」
「あぁ、まだ予算可決からたったの3ヵ月程度だ。この短期間で1個艦隊が編成できたことには司令部に感謝せんといかん」
土方司令はそう新規に編成された艦隊の編成表を見ながら言った。
「そうですな。ところで土方さん旗艦はアンドロメダでいいんですか?」
「そうだ。決戦時は山南、お前に命を預けるぞ」
「了解しました」
山南は土方の回答に対していつもの冷静な声で答えた。
場所は変わりルナツー基地、地球と月の間にある防衛軍の基地である。基地内には造船所も備えてありガミラス戦時も地球圏艦隊や国連宇宙海軍残存艦隊を支え続けた重要な基地である。そして今、この基地より数隻の艦艇が出港していった。
「艦長、ルナツーの軌道を抜けました」
「わかった。ソロモンと地球からの艦隊はどうなっている」
「現在、集合地点に向けて航行中です」
「よし。本艦隊も集結地点へ急ぐ」
「了解」
艦橋では艦橋要員がテキパキと報告し艦長は素早く的確に命令を出していた。
このルナツーから発進した艦隊はアナンケ級インディゴ・ベルを旗艦としサラミス級2、村雨改型4隻からなる教導艦隊である。この艦隊はソロモン及び地球から発進した練習艦隊と合流し新兵の訓練にあたる部隊だった。
防衛軍は戦時体制への移行に伴い訓練学校の卒業を繰り上げると同時に増強した練習艦隊を編成、直ちに兵士の育成にあたっていた。
数時間後、教導艦隊旗艦インディゴ・ベル艦橋
「ブライト艦長、艦隊集結しました」
「よし、直ちに訓練へと向かう。全艦に陣形を組む様に通達」
「了解」
「旗艦より全艦へ…」
インディゴ・ベルを旗艦とした教導艦隊に合流したフレッチャー級駆逐艦2、松型護衛艦4、村雨改型軽巡洋艦6、磯風改型8からなる練習艦隊は、各艦が多少もたつきながらも陣形を組み終わると演習宙域へと進路を向けた。
「これを三週間で育て上げろとは司令部も無茶を言ってくるな」
もたつきながら陣形を組む様子を見たブライトは落ち着いた声でそうメラン副長に言った。
「仕方ありません。艦はあっても人が居ないと意味がないですから」
「そうだな。我々も頑張るか」
「ですな」
かくして三週間の新兵達の猛訓練が始まった。
この時、防衛艦隊には兎に角人手が必要であった。艦はあっても動かす人が居ないでは話にも戦いににもならないのである。
五週間後、南米ジャブロー基地
ジャブロー基地は南米アマゾン一帯からギアナ高地に至るまでの広大な地域の地下に建設された巨大要塞である。この基地内には多数の軍事施設を始めとし、無数の艦艇が停泊できるドック施設や大型艦から小型艦までの様々な艦種の艦艇を建造できる大規模な造船施設、各種兵器の生産、研究設備そして大規模兵器工廠まで備える地球防衛軍最大の基地である。
基地内に機械的な声でのカウントダウンの音声が鳴り響く
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0発進」
「いよいよですな」
「あぁ しかし時代は変わったな。昔はロケットで打ち上げていたのだがな」
「まさか彼等が自力で宇宙に上がるなんて想像しませんでしたな」
「まったくだ」
基地の一室では転生者の将校がモニターを観ながら会話をしていた。
そしてアマゾンの森林各地やギアナ高地から巨大な船体が幾つも発進する。
マゼラン級戦艦やドレッドノート級戦艦、サラミス級巡洋艦の発進は数回に分けて行われ、その数は百隻を超える数だった。
ジャブロー基地からの艦隊発進から数十分後、地球軌道上にはジャブローより発進した艦隊の他に時間断層、地球各地の造船所から発進した艦艇が集結していた。
その規模はアナンケ級ケストレルとワルキューレを中心に、マゼラン級15、ドレッドノート級20、エンケラドゥス級38、サラミス級35その他小型艦多数という大艦隊だった。
「アンダーセン司令、全艦集結しました」
「よし全艦に通達、これよりアステロイドベルト宙域に向かい訓練を行う」
「了解しました」
艦隊旗艦アナンケ級ケストレルで艦隊司令のアンダーセン中将はアステロイドベルト宙域に向かう命令を出した。そしてジャブローより発進した第十二艦隊を中心とした艦隊は進路をアステロイドベルト宙域に向け地球圏を離脱していった。
こうして地球防衛軍は兵員不足に悩まされながらも確実に戦力を増強していった。尤も各艦ともに省力化の為に量産型アナライザーや地球版ガミロイドを多数配備し、徹底的に省力化はされており主力艦の無人化まであと一歩までにあった。