地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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放浪者の訪問

2205年6月10日

 

この日、地球連邦の最外縁の勢力地であるクリード星系外縁部では地球防衛艦隊本国艦隊から派遣されたドレッドノート級武装強化型モノケロスを旗艦とした第22任務部隊と第4特務艦隊、また少し離れた宙域には急遽太陽系から派遣された第二主力艦隊が展開していた。

 

一方、これに相対する艦隊は黒く塗装されており地球防衛艦隊の将兵からしたら見間違える訳がない艦影だった。

その艦影は間違いなくデザリアム帝国の艦影であった。

 

 

第22任務部隊旗艦モノケロス

 

第22任務部隊旗艦モノケロスには第22任務部隊司令のリナルド・ポッツォ准将と外交官を筆頭とした地球側とデザリアム帝国側の艦隊司令のヘルード中将、科学技術者のフロンド博士などが集まっていた。

 

「今回は会談場所を用意して頂きありがとうございます」

 

開口一番ヘルード中将はそう言い頭を下げた。

 

「いえ、此方も会談を求められて断る理由はありませんからお気になさらずに」

 

リナルド准将はそう言った。そして准将に続き外交官のトーマスが口を開いた。

 

「さて、本日はどのようなご用件でしょうか」

 

トーマスはそう淡々と言った。

 

「はい。用件の前にまず、デザリアム帝国による貴国、地球連邦への侵攻を謝罪致します。誠に申し訳ないことを致しました。そして用件ですが我々を助けて頂きたいのです」

 

ヘルード准将がそう言うと地球側は鳩が豆鉄砲を食ったようになった。謝罪されたことも勿論であったが、地球側はデザリアム本星を二重銀河諸共粉々に破壊したことなどに対する賠償などを要求されると思っていたのだから当然であった。

 

「それはどういう意図・意味でしょうか」

 

トーマスはメガネの位置を調整するとそう言った。

 

「はい。特に深い意図・意味はありません。言葉通りの意味です。失礼ですが貴国、地球連邦はデザリアムについてどこまでご存じでしょうか」

 

ヘルード中将はそう言った。

それに対してトーマスは直ぐに返した。

 

「我々が持っている情報ですと、デザリアムは高度な科学技術を持ってはいるものの種としての存続が危機的状況であり、地球人の肉体を求めて地球に侵攻してきたというのが我々の持っている情報と認識です」

 

トーマスの言葉を聞いたヘルード中将は頷くと口を開いた。

 

「はい。トーマス外交官の言う通りです。ですがデザリアムには派閥があります。肉体を求めて地球に侵攻したのは主流派と言われる派閥で他国を征服し我々に適する肉体を探すことが目的です。ですが今ここにいる我々は非主流派という存在です。非主流派は他国と共存し他国の力をお借りして種として存続していこうというのが目的の派閥なのです」

 

ヘルード中将はそう真剣な眼差しで言った。

 

「デザリアムにそんな派閥があったのですか。そこまでは存じておりませんでした」

 

「いえ、トーマス外交官など地球人の方が存じ上げないのも無理がない、非主流派は表に出ない存在でしたから」

 

トーマスの言葉に対してヘルード中将はそう言うと続けた。

 

「我々としてはもう少し早く地球連邦と接触したかったのですが残存する非主流派と賠償の用意に時間が掛かりましたのでこのタイミングでの訪問となりました」

 

ヘルード中将がそう言うと地球側は頭を傾げた。

 

「ヘルード中将、賠償の用意とは何でしょうか」

 

トーマスはそう尋ねた。

 

「我々としてもタダで助けを求める訳にもいきませんし、何より先の侵攻に対するお詫びをしないといけません。ですので賠償の品としてゴルバを用意いたしました」

 

この言葉を聞き、地球側は驚愕した。ある者は驚愕の表情をある者は目を見開いていた。

 

「現在ゴルバは別部隊と共に待機しております。これが別部隊の待機位置です」

 

ヘルード中将はそう言いながら別部隊の待機位置を示したデータを地球側に渡した。

 

「わかりました。ではそちらが求める助けとは何でしょうか」

 

「我々の求める助けですが先程述べました非主流派の存在目的そのものです。侵略戦争を仕掛けた国家の一員として図々しい頼みだと重々承知しているのですが、どうか我々が種として存在できるように力添えをお願いしたい。我々としては種が存続できればデザリアムという国家に拘る必要は無いと思っております。どうかお願いいたします。」

 

ヘルード中将がそう言い終わるとデザリアム側の全員が立ち上がり頭を下げたのであった。

その光景に地球側は戸惑ったもののトーマスは直ぐに落ち着き口を開いた。

 

「頭を上げてください。あなた方の要望はわかりました。ですが私の一存ではどうにもできません。少しお時間を頂きませんか」

 

「わかりました。どうかお願いいたします。」

 

トーマスの言葉を聞きヘルード中将等はそう返事を返すと再び頭を下げた。

 

 

それから2日後、政府、地球連邦議会及び世論は大荒れだった。

如何に派閥が違うとはいえ地球に侵略戦争を仕掛けた国家の一員が助けを求めてきたのだ、落ち着いていろというのが無理であった。

 

大荒れの日々は7日間も続いた。だが大荒れの日々は唐突に終わりを告げた。

初代連邦大統領がアンドロメダ就役の式典で述べた「地球は宇宙の平和を守るリーダー」という言葉を一人の議員が連邦議会で使ったのだ。

 

「初代連邦大統領がアンドロメダ就役式典で述べた『地球は宇宙の平和を守るリーダー』という言葉、それにヤマトがテレザートへ向かった理由である『助けを求める者を救う』これを我々は忘れてはいけません。目の前に助けを求める人々が居たら救う、これは地球連邦そして連邦市民のあるべき姿です」

 

これが議会で議員が言った言葉であった。

特段長い演説でもなかったが、この言葉は議会だけでなく世論を大きく動かした。奇しくもガトランティス帝国の植民地だった国家を連邦の一員として迎え入れてから日も浅かった為大きな抵抗は無く、政府、議会、世論はデザリアム帝国の非主流派を連邦の一員として迎え入れる方向に舵を切ったのである。

 

因みにこの演説は政治家を引退し隠居生活をしていた初代大統領も聞いており、後に発売された回顧録に「私が述べた言葉が、私が政治家を引退した後も良い意味で影響力を持つのは嬉しい」と書かれている。なおいつの間にかこの言葉は地球連邦の政治家が胸に刻むべき言葉になり、連邦憲章に「地球連邦は宇宙の平和を守るリーダーを目指す」と書き加えられ、地球連邦団結のスローガンになっていったのである。

閑話休題

 

 

そして2205年6月22日、待機していたデザリアム帝国非主流派の上層部は第22任務部隊旗艦モノケロスに呼ばれていた。

 

「ヘルード中将以下デザリアム帝国非主流派の方々に地球連邦政府の方針をお伝えします。連邦政府はあなた方の要望を受け入れると共に非主流派の方々を連邦の一員として迎え入れます。また移住用の惑星を一つ提供いたします。なおこの決定に際し、非主流派の艦隊戦力及び全装備はそのまま地球連邦防衛軍に組み込むことを了承されたい。以上です」

 

トーマスから告げられた言葉にヘルード中将等は安堵し艦隊戦力についてはすぐさま了承したのであった。

 

この日、デザリアム帝国非主流派は地球連邦の一員になり、地球連邦はゴルバ3基と建造中のゴルバ4基、デザリアム帝国非主流派の艦隊戦力(プレアデス級4、アルキオネ級戦艦18、アトラス級狙撃戦艦14、エレクトラ級大型空母9、マイア級巡洋艦40、メローペ級駆逐艦44、ヒアデス級護衛艦50、中間補給基地4)等を入手したのであった。

 

 

 

正に予想外の勢力との接触であった。

 

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