地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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ボラー連邦内部にて

「ところでどう責任を取るつもりですかな」

 

ボラー連邦本星にあるボラー連邦軍参謀本部内でそう発言したのは新たに着任したガルゴフ宇宙艦隊司令であった。

その目はまっすぐと外務省の役人に向けられていた。

なお前任者は心労的な負担により宇宙艦隊司令の座を辞していた。

 

「参謀本部への申し出でで外務省が艦隊を動かすことができるのは承知していますが、2個打撃艦隊も動かし、作戦成功ならまだしも文字通りの全滅という結果では宇宙艦隊司令としては黙って入れませんな」

 

ガルゴフ宇宙艦隊司令は強い口調で続けた。その目からは今にもビームが出そうな目つきである。

一方の外務省の役人は縮こまっていた。

 

「その件につきましては誠に申し訳ないとしか言いようが…」

 

外務省の役人がそこまで言うとガルゴフ宇宙艦隊司令は遮って口を開いた。

 

「申し訳ないで艦隊は還ってこないんですよ。その2個打撃艦隊があればガルマン・ガミラス方面も少しは余裕ができたかもしれないのでしてな」

 

若干誇張な部分もあるがガルゴフはそう言った。

事実2個打撃艦隊はガルマン・ガミラス方面に対して主力部隊として見てはあってないようなものだが、船団護衛戦力としてみれば巨大な戦力であった。

 

「そうは言いますが、ガルマン・ガミラス方面は膠着状態ですたかが2個打撃艦隊でそこまで楽になるとは思えませんがな」

 

統治省の役人が口を挟んだ。

それを聞いたガルゴフは「役人に何が分かる」と言いかけたがその言葉は飲み込んだ。

 

そもそもボラー連邦軍参謀本部はゴルサコフ総参謀長を筆頭にガルゴフ宇宙艦隊司令や親衛隊司令などの軍のメンバーの他に外務省と統治省の役人が居るのだ。そして厄介な問題なのがボラー連邦軍宇宙艦隊は宇宙艦隊司令部の指揮下にあるのだが、参謀本部に申告すればそこまで大規模(ボラー連邦基準)でなければ宇宙艦隊司令の許可を得ずに動かすことができるのだ。この仕組みにより外務省や統治省は外交圧力や反乱鎮圧などを今まで行ってきたのである。つまり艦隊指揮権が分散されていたのである。

 

しかし今回この仕組みが裏目に出たのである。

約一ヶ月前に外務省が参謀本部に申告し当日所用で不在であった宇宙艦隊司令に一言も言わず2個打撃艦隊をゼークト王国に向けて出撃させ、地球防衛艦隊とゼークト王国艦隊の連合艦隊によって文字通り全滅させられたのであった。しかもこれを外務省は隠蔽し未だ交戦中としていたのだ。流石のこれには今まで目を瞑っていたガルゴフ宇宙艦隊司令以下ボラー連邦軍宇宙艦隊司令部は黙ってはいられなかったのである。しかも他の正規艦隊の編成なども外務省や統治省が容認しなければ宇宙艦隊司令部独断では変更できないなどの問題もあった。

 

「これでは満足に対連合国戦ができない」

 

そうガルゴフ宇宙艦隊司令は確信していた。

 

「たかが2個打撃艦隊と言われますがね、今までガルマン・ガミラス方面軍からの要望をお伝えしてもなんだかんだ理由を付けて総参謀長に根回しし外務省と統治省は増援を妨害してきたではないですか。現場からすれば2個打撃艦隊でも喉から手が出る程欲しいんですよ」

 

ガルゴフの言葉には最早覇気が感じられるレベルであった。そしてガルゴフは提案を出した。

 

「ゴルサコフ総参謀長。この度の事案を受け宇宙艦隊司令部で協議を行った結果、親衛艦隊及び機動要塞ゼスパーゼとその直掩艦隊、総参謀長直属の特務艦隊を除く全宇宙艦艇の指揮権を宇宙艦隊司令部に集約させて頂きたい。統治省所属の警務艦隊もです。指揮権一任については今次戦争に限りとしたいところですが、悪しき習慣を断つためにも今後永続的にとしたいと思います」

 

ガルゴフはそうゴルサコフ総参謀長に要望を提出した。なお特務艦隊とは総参謀長直属の艦隊で規模は大きく、親衛艦隊が出ない場面で通常の艦隊に変わり出撃する艦隊である。そして此れには外務省や統治省から批判が直ぐに出た。

 

「ガルゴフ宇宙艦隊司令、それは幾ら何でも無茶だ。参謀本部をなんだと思っているのかね」

「統治省としても警務艦隊の指揮権まで取られては困る。どうやって統治すればいいのですか」

「そうは言われましても、外務省に貴重な艦隊を使われてむやみに溶かされても困るんですよ。統治省の艦隊も新鋭艦など有力艦艇を今まで宇宙艦隊から散々引き抜いてきたのですからそろそろ艦艇を返して頂きたいのです。それに何も省の全ての権限を宇宙艦隊司令部の寄こせとは言っていません。艦隊指揮権以外は今まで通りでいいのです。この会議に出席して頂いて要望を出して頂いても何ら問題はありません。それに統治するだけなら統治省自前の地上戦力で十分でしょう」

 

ガルゴフはそう外務省と統治省の役人を睨みつけながら言った。

まぁ今まで通りと言っても艦隊指揮権を宇宙艦隊司令部が握れば外務省も統治省は勝手に何も出来ないのであるが、そんなことはガルゴフからしたらどうでもよかった。

 

「ゴルサコフ総参謀長、どうかご許可を」

 

外務省の役人を睨みつけた後ガルゴフはゴルサコフ総参謀長に許可を求めた。

 

一方のゴルサコフ総参謀長は悩んでいた。この提案で痛むのは外務省と統治省だけである。軍人としては特に問題は無いと思っていた。また実際に今まで指揮権に関するこの問題の改善相談は何度もガルゴフから受けており、ここ最近は連合国戦での連敗の件もありベムラーゼ首相も改善を望んでいるので必要以上に悩む必要は無かった。だがゴルサコフ一人で決められる改善できる問題でも無かった。

 

「わかった。ガルゴフ宇宙艦隊司令の提案はベムラーゼ首相にお伝えする。流石に決まりを私の一存では変えられん」

「わかりました」

 

ゴルサコフ総参謀長の言葉に対して、ガルゴフは短く返答した。

そしてこの日の参謀本部の協議は終わった。

 

そして数日後、ベムラーゼ首相からガルゴフ宇宙艦隊司令の提案に許可が出たのであった。

これは今までの再三にわたる宇宙艦隊司令の訴えがベムラーゼ首相にも伝わっていた為であった。ベムラーゼ首相もこの提案には直ぐにOKを出した。

 

このベムラーゼ首相の決断によりボラー連邦軍は急速に構造改革が進むのであった。

 

 

 

一方、地球連邦防衛軍も大きな動きがあった。スフロー基地内に地球防衛軍北部方面軍司令部が発足したのであった。

今までは地球防衛軍スフロー基地司令のアルフレッド・コナー中将が兼任していたのだが、北部方面軍指揮下の艦艇が増えてきたため本格的な司令部が必要だということでこの度北部方面軍司令部が発足したのであった。

 

この日発足しスフロー基地に着任したのは北部方面軍司令の酒井将太郎大将と副官の神谷彩香大佐、副司令のミン・シーハン中将、作戦参謀のラリー・グランデ中将、補給参謀のアンソニー・ブルートン中将など多数であった。そしてこの日を境に地球防衛艦隊は北部戦線で積極的に動き始める準備を急速に進めるようになったのである。

またスカラゲック海峡方面軍も同時に設置され、ラザール・ゴセック中将が方面軍司令に着任したのであった。

 

こうして方面軍を整備し体制を整える地球防衛軍であったが転生者も想定していない事が起きつつあった。

 

 

ボラー連邦本星

 

「我らの国家再建に手を差し伸べてくださるのなら我々は喜んでボラー連邦にお味方致します。一時であれば貴国の指揮下に入っても構いません」

 

ボラー連邦本星では一人の男がベムラーゼ首相にそう述べていた。

 

「よかろう。戦争に勝ったら我がボラー連邦は貴国の国家再建を支援しよう。ただし戦争勝利までの期間は我が宇宙艦隊の指揮下に入れ。宇宙艦隊司令のガルゴフには良くするように伝えておこう」

「ありがとうございます。必ずや期待に応えて見せましょう」

 

ベムラーゼ首相の言葉を聞いた男は笑みを浮かべながら返答した。

 

「うむ期待しておるぞ」

 

ベムラーゼ首相がそう言うと男は深く頭を下げた。

そして数分後、男が首相執務室を去った後、同席していたゴルサコフ総参謀長がベムラーゼ首相に尋ねた。

 

「あの男達を信じてよろしいので」

「あぁ、少なくとも我々は過去に向こうが亡国になる前に地球侵略の邪魔をするなという要望を聞き入れているのでな。向こうも約束を守った我々を簡単には裏切るまい」

「なるほど。確かに我々は向こうの要望を聞き入れていましたな」

「そうだ。まぁ彼らの活躍を期待しておこう。宇宙の放浪者となったデザリアム帝国の軍人をな」

 

ベムラーゼ首相はそう若干笑みを浮かべながら言ったのであった。

 

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