地球連邦首都メガロポリス 大統領官邸
首都メガロポリスにある大統領官邸の執務室には客人である統括司令部総長と官邸の主である地球連邦大統領キーストン・チャーチルが会談の為に集まっていた。
チャーチルは先日の大統領選で選ばれた3代目地球連邦大統領であるが、以前は英国首相を務めながらガミラス戦役時には各国間の調整で奔走し、多大なる実績を残した人物であった。
「ふむ。ということはボラー連邦内の正確には軍関係の体制に良い変化、我々にとっては悪い変化があったという訳か」
葉巻を口から外したチャーチルは総長が渡した報告書に目を通した後にそう言った。
「はい。スパイやボラー連邦内の協力者からの情報ですので間違いないです。ボラー連邦軍の指揮系統は完全に整理、効率化されました。総司令官も戦争は嫌がるタイプですが老練な人物であり、やるときはやる人物です」
「それは厄介だな」
チャーチルはそう発すると葉巻を口にくわえた。
「その通り厄介です。しかし厄介なのはそれだけではありません。新型艦が多数確認されています。戦艦であればアンドロメダ級クラスのソユーズ型、ドレッドノート級クラスのクロンタット型が生産、配備されています。それに加え他の新型艦の建造計画があるのを入手しています」
総長がそう言うとチャーチルは葉巻を外した。
「やはり超大国というものは侮れぬな」
そこで一旦言葉を区切ると続けた。
「尋ねるが、総長としては連合国軍。いや地球防衛軍は後どれ程戦える」
そう尋ねられた総長は少し考える間を置くと発言した。
「戦おうと思えば地球連邦の国力が持つ限り戦えます。無論、優勢劣勢問わずです。戦力は常時補充、増強されていますし、これと人的資源が持つ限りは戦えるので、後は我が国の国力の限界までが上限と言えるでしょう」
「ふむ。やはりそうか。では国力を維持ないし増強を続ける政策を政治側が行えば防衛軍は戦えるわけだな」
その問いに対し総長は「その通りです」と答えた。
それを聞いたチャーチルは再び葉巻をくわえると、少し黙り込み。1分程度間を空けると再び口を開いた。
「5日後に農業用コロニーと工業用コロニーが7基ずつ完成し地球からは新たな移民船団が出航する。それに加え首都分散化計画に基づく惑星開拓や植民地惑星の開拓、更にマゼラン銀河での開拓活動も始まる。つまり少なくとも後数年、いや数十年は開拓事業が続き国力増強は実現する。つまりこの期間は最低でも軍に回せる予算は増えることはあっても減ることは無い」
チャーチルはそこで再び言葉を区切り一息つくと言葉を続けた。
「地球連邦が経済拡大政策を取る限り経済低迷は起こり得ない可能性が高い。よって我が国が国力の限界を迎えることはほぼないだろう。迎えるとすればそれは人的資源の枯渇だな」
チャーチルがそう言うと総長も同意を示した。
「はい。軍としても人的資源の枯渇が一番の懸念です。どれだけ兵器が増えようが動かす人が居なければただの置物です。それは軍としても避けたいところです」
「その通りだな。そこは何とかなるように政府内でしっかり議論しておこう」
チャーチルがそう言うと総長は別の話題を切り出した。
「大統領。大統領はこの戦争はどれ程続くとお考えですか」
総長はそう問いかけるとチャーチルは少し間を空けてから口を開いた。
「それはわからんことだね。私としては今すぐにでもベムラーゼ首相が失脚して戦争終わりが望ましいがそんなのは夢物語だ。少なくとも数年は続くと考えていいだろう。いや数年どころか十年、冷戦となって数十年続くと想定しなければいけないだろう。幸い絶滅戦争にはなってないがそうなる可能性も否定できない以上、備えをしなければならない。君がそう聞いてきたのは軍としても終わりが見えないからだろう」
「その通りです。情報部が情報収集や政権転覆活動に力を出していますがいつ結果がでるか不透明。政権転覆前に連合国軍がボラー連邦本星に進軍するのが早い可能性もあります。つまり軍部も終戦までの道のりが見えないのです」
「厄介なことだ。終わりが見えない戦争程恐ろしい物も無い。これは連合国内でも議論すべき課題だな。現状のベムラーゼ首相失脚を絶対にした連合国の方針も徹回しなければならないかもしれん。まぁあり得ない事だろうが」
チャーチルはそこまで言うと葉巻を口にし、一息ついた。
「戦争は早く終わらせねばならん。目下の敵はボラー連邦とディンギル帝国だ。ディンギル帝国はタイタンに集結中の侵攻艦隊とコロニーレーザーで容易く片付くだろうが、ボラー連邦はそうはいかん。先の見えない大戦争を延々と続けるのは国民生活にもいずれ悪影響がでかねん」
「はい。軍としても早期の戦争終結に向け努力しております」
「大丈夫だ、そのような事は100も承知だ。相手は銀河の超大国。時間が掛かるのは仕方が無いことだ。だからくれぐれも負ける事の無い作戦を実施してもらわねば私としても困る。戦争は勝たなければいけないのだ」
そこで一息ついたチャーチルは続けた。
「総長、戦争遂行に必要な兵器、物資そして予算は必ず用意させる。だから遠慮なく上申を掛けるよう軍内、特に司令部で徹底させてくれ」
チャーチルの言葉に対して総長は「了解いたしました。必ず勝った戦争にします」と返答したのであった。