地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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ディンギル帝国侵攻1

ディンギル帝国では先の地球侵攻作戦の失敗を受けて地球連邦の逆侵攻に備える必要が出てきていた。これに伴い国家元首ルガール大総統の指示により、対地球軍本土防衛体制が構築されることになる。だがアンファ恒星系の防衛体制は脆弱であった。

 

ディンギル帝国は単一星系国家で高い科学技術力を持ってはいるものの、星系の開発は全く行われておらず、本星以外の惑星には小規模な観測施設や哨戒基地がある程度で、それらの惑星で最も大きな基地も星系最外縁部にある侵入者撃退用の為の水雷艇基地であった。

 

その為、大艦隊を率いて報復に来るであろう地球連邦防衛軍を撃退するには外縁部で迎え撃つか、本星付近で迎え撃つかの二択になっていた。更に不幸なのが、ディンギル帝国は極度の鎖国国家であり星系に侵入する者はハイパー放射ミサイルを用いて全て撃退していた為、捕虜も居らず相手の国家情報を入手する機会が全くなかったのである。

 

これにより先の地球侵攻に際しても地球連邦についての満足な情報収集はされず、「かつての祖先の母星である地球をディンギル帝国の版図に加える」という理由だけで侵攻が実施され、結果侵攻艦隊は圧倒的な力を有する地球防衛艦隊に一方的なまでの戦闘を強いられ、艦艇は悉く撃沈ないし鹵獲され、生き残った兵士は皆、その国民精神により自害するという悲惨な結末になっていた。

 

この結果はディンギル帝国軍にとって致命的なまでのダメージを与えていた。

侵攻艦隊の中核であったディンギル帝国唯一の機動艦隊は要塞母艦共々失われ、その他艦艇も帰還艦がゼロという結果は、ディンギル帝国軍の戦力が実に50パーセント以上消し飛んだ事を意味していた為である。このため、ディンギル帝国軍は戦力を再建しなければならなかったが、帰還艦がゼロというのは地球防衛艦隊との戦闘の詳細な情報が無い事を意味しており、ディンギル帝国軍が地球防衛艦隊に対してどのような立ち回りをすれば良いのかが全く想定できなくなっていたのである。

 

更にディンギル帝国本星防衛の為の戦力配置や地球防衛艦隊に対して有効な武器も不明なのはディンギル帝国軍上層部に重い空気を漂わせていた。事実ハイパー放射ミサイルは前回の地球防衛艦隊アンファ恒星系侵入時に防衛艦隊の圧倒的な防空戦闘により完璧に防がれており現状での効果は不明であった。

 

これはディンギル帝国の生存戦略そのものを根底から覆す出来事であり、これまで独立を担保してきていた物、切り札が無くなったも同然であった。また深刻なことにディンギル帝国軍艦艇の主力武装のガトリング砲が地球防衛艦隊に対して完全に無力な事がディンギル帝国軍は未だ把握できていなかったのである。

これも完全に地球侵攻艦隊が一隻も帰還しなかったことが影響していた。

 

星系には防衛用の大規模機雷源も戦闘衛星群も無い、何が有効な兵器なのかも不明、今までの排他主義・鎖国主義が完全に裏目に出て友好国どころか仲介国も無く地球連邦との交渉は不可能、最早ディンギル帝国は詰んでいた。

辛うじて艦艇の生産は出来ているが恐らくは焼け石に水であるとディンギル帝国軍上層部は考えていた。何しろ高い科学力を持っていても相手の科学力が分からなければ手の打ちようが無かったのである。

 

そしてこの結論を軍上層部はルガール大総統に報告。これを受けルガール大総統は自ら防衛体制構築の指揮を執ることにしたのである。だが状況が劇的に変わるわけでは無かった。艦艇の増産の為に生産力強化が行われたが、それでも既存艦の増産であった。

 

「兎に角情報が欲しい」

 

これがディンギル帝国の現状であった。

兎に角いつ報復に来るか分からない地球連邦軍に対してとれる応急策として、既存の機雷源の拡大と新設、監視衛星及び戦闘衛星の増強、水雷艇の増強が決まったが、その効果は不透明であった。

そして都市衛星ウルクもいつでも発進可能な状態で待機しておくことになっていた。

 

 

一方、地球防衛艦隊はディンギル帝国地球侵攻艦隊撃破後から動き出していた。

まずはディンギル帝国侵攻に際してボラー連邦との戦争で苦しいながらも特務艦隊から潜宙艦3隻、次元潜航艦1隻(後に1隻追加)を抽出し偵察部隊アンファ恒星系へ進出、偵察活動を開始した。

 

そして偵察部隊からの情報と鹵獲したディンギル帝国艦艇からアンファ恒星系の星系データとディンギル帝国軍の情報を抜き取り、ディンギル帝国に関するあらゆる情報を纏め、それを基に逆侵攻の為の作戦が立案された。

 

それがディンギル帝国侵攻作戦、通称「カタストロフィ作戦」であった。

このカタストロフィ作戦実施においては他作戦への投入戦力が転用されたため、デスマーチ的な指揮の下、急速に作戦準備が進められたのであった。

 

次から次へと戦力が移動し追加で必要な物資が次々と準備され、それと同時に作戦詳細も決まっていく。後に関係者が「銀河大戦の中でも最も過酷な作戦準備期間だった」と言わしめる程の忙しさであった。

 

なおこの作戦は地球単独の軍事行動であったが、ガルマン・ガミラス帝国から数名の武官がデスラー総統指示の下、作戦に参加していた。

 

 

そして2205年6月22日。

バジウド星系に集結した地球防衛軍ディンギル帝国侵攻艦隊がアンファ恒星系を目指して出撃。

 

カタストロフィ作戦は開始されたのであった。

 

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