最外縁の惑星テッローを制圧した地球防衛軍は予定通りこの惑星を橋頭保としディンギル帝国侵攻の準備に入り、侵攻艦隊や陸戦部隊を支える兵站基地の建設や物資の備蓄が急がれた。
そして、その時間を稼ぐために複数の作戦支援艦隊が行動を開始した。
一方のディンギル帝国軍の行動には目立つ物が無かった。しかし都市衛星ウルクは本星から発進し既に宇宙空間に進出し部隊指揮に就いており、また本土防衛艦隊も依然として本星軌道上に待機していた。
都市衛星ウルク
「地球軍は最外縁のテッローを占領。ここを橋頭堡にするようです」
「うむ。では遊撃部隊を用いて輸送艦隊を攻撃させよ」
報告を聞いたルガール大総統はそう命令を下した。だがディンギル帝国崩壊へのカウントダウンが進んでいる事に彼らは気づいていなかった。既に地球防衛艦隊はディンギル帝国領奥深くに侵入していたのである。
「監視衛星233号及び周囲の戦闘衛星群の反応が消えた。調査されたし」
司令部からの命令を受けてディンギル帝国軍第3遊撃隊は監視衛星233号近辺の調査に向かっていた。だが3隻のカリグラ級からなる第3遊撃隊は突如襲撃を受けるのである。
「ミサイル接近!数3!」
「全艦迎撃!回避行動!」
突然の報告を受けた隊司令は直ちに迎撃命令を下したが更なる悲報が入った。
「これはハイパー放射ミサイルです!」
「なんだと!?」
これが司令の言った最後の言葉であった。
3発のハイパー放射ミサイルは狂いなく3隻のカリグラ級に1発ずつ命中しカリグラ級を轟沈させたのであった。
地球防衛艦隊デザリアム自治州軍第8任務部隊旗艦プレアデス級キレアデス
「カリグラ級3隻撃沈。轟沈です」
「ほぉ、急造のコピー品とは言え恐ろしい威力ですな」
少し離れた宙域から轟沈したカリグラ級をモニター越しに見つめていた地球防衛艦隊デザリアム自治州軍第8任務部隊司令のケルギア少将は言った。
「えぇ。急造ですが想定通りの威力を発揮してくれました。本格生産品は更なる威力向上も見込めます」
そう言ったのは地球防衛軍科学技術局技術員の久米大佐であった。彼は地球製ハイパー放射ミサイルの開発部員の一人であった。
この地球製ハイパー放射ミサイルは先のディンギル帝国による地球侵攻の際に鹵獲したディンギル帝国軍要塞母艦に搭載してあったハイパー放射ミサイルを分析・改修し生産したものである。だがハイパー放射ミサイルはその特性故小型化が難しく防衛艦隊の艦艇で運用できる艦艇が限られており、運用できるのがレパント級や磯風改型宙雷艇タイプなどに限られていた。しかしより小型で地球製ハイパー放射ミサイルを搭載できるものが居た。それがデザリアム自治州のキャタピラー戦闘艇(原作イモ虫型戦闘機)である。
「ハイパー放射ミサイルは波動エネルギーが使えない我が自治州艦隊で重宝するでしょう。キャタピラー戦闘艇の主武装として使えます」
続けて横に居たアルフォン少尉も発言した。彼もまた地球製ハイパー放射ミサイルの開発部員の一人であった。
アルフォン少尉は今回の作戦にあたりキャタピラー戦闘艇に対してステルス処理を施しハイパー放射ミサイルを1発搭載する案を提出しそれが採用されていた。
そして彼の提案はしっかりとした戦果を挙げた。
3艇のキャタピラー戦闘艇はその存在に気付かれることなくディンギル帝国軍第3遊撃隊に向け3発のハイパー放射ミサイルを発射し、見事3隻を轟沈させたのであった。
その頃別の宙域でも戦闘は起きていた。
「見つけたぞ!ディンギル帝国の要塞母艦だ!」
本国艦隊第12任務部隊指揮官の近藤中将は長門型蝦夷の艦橋で歓喜の声を挙げた。
近藤中将は原作完結編からの転生者であり、ディンギル帝国により苦杯を舐めさせられたので容赦をするつもりはなかった。
「全艦要塞に肉薄!強襲揚陸艦は接舷し空間騎兵隊を突入させろ!あの要塞母艦を鹵獲せよ!」
近藤中将がそう命令を飛ばすと、艦隊は速度を上げ要塞母艦に肉薄した。
一方、ディンギル帝国の要塞母艦はパニック状態になっていた。
小惑星帯に紛れ込み、攻撃の機会を伺っていたところをいきなり奇襲されたので仕方のない事でもあった。まさか防衛艦隊の潜宙艦に見つかっていたとは夢にも思っていなかったのである。また潜宙艦から情報を得た第12任務部隊が小ワープで奇襲を仕掛けてきたので要塞母艦は満足に戦闘態勢を整えられてすらいなかった。
此処からは一方的であった。駐留艦隊を展開させていない要塞など只の的であった。
無論、要塞母艦も艦隊に対して迎撃戦闘を行ったが、逆に武装の位置を晒すだけとなり、集中砲火を受け、射点は次々と沈黙していくだけであった。
そして強襲揚陸艦が接舷し空間騎兵隊が要塞母艦に流れ込む。この時点でディンギル帝国要塞母艦の鹵獲は決定的になったのであった。それも駐留艦隊諸共の鹵獲である。
だがディンギル帝国の災難はこれだけに留まらなかった。
防衛艦隊の輸送艦隊を攻撃しようとした第1遊撃隊も悲劇に見舞われた。
「なんて弾幕だ!」
そう第1遊撃隊司令ベルン准将は声を荒げた。
カリグラ級10隻からなる第1遊撃隊は予定通り地球防衛軍の輸送艦隊に接触できたが護衛に当たっていた本国艦隊第105任務群と正面からの戦闘に陥ったのである。
第1遊撃隊がカリグラ級10隻なのに対して本国艦隊第105任務群は改カラクルム級3隻を中心に改ナスカ級1隻、改ラスコー級5隻、改ククルカン級10隻であり戦力比は火を見るより明らかであった。
第105任務群は速射輪胴陽電子衝撃砲を用いて凄まじい弾幕を第1遊撃隊に浴びせ、第1遊撃隊を圧倒しこれを壊滅に追い込んだのであった。
こうしてアンファ恒星系各地で防衛艦隊がディンギル帝国軍を圧倒している頃、惑星テッロー軌道上には侵攻艦隊主力が侵攻再開に向けて準備をしていた。