地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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ディンギル帝国侵攻5

地球圏・ルナツー基地近傍

 

「こいつを撃つのか」

 

ルナツー基地近傍に展開しているサラミス級ゴトランド。その艦長席からゴトランド艦長はそう呟いた。

 

ゴトランド艦橋からは見えないが右舷前方に測的支援艦久里浜が展開しており、その任務に当たっている。だが何より視界に入るのが右舷に見える巨大な構造物。通称システムであった。

 

「こいつの準備ということは恐らく特波動砲だな」

 

ゴトランド艦長はそう考えていた。

システム後方に無数にあるソーラ・レイ用の太陽光パネルが作動している様子は無い。ということは発射準備がされているのは自然とシステムが撃てる波動砲である特波動砲ということになる。

 

そして「特波動砲」そう命名された強力無慈悲な波動砲は姿勢制御によりその照準をディンギル帝国本星に向けつつあった。

 

 

 

アンファ恒星系

 

地球圏でシステムの準備が進む中、ワイアット大将指揮のディンギル帝国侵攻部隊本隊である第六、第七、第八主力艦隊は惑星ニップル攻略を惑星攻略部隊に任せると、進路はそのままディンギル帝国本星へ向けて進軍を再開させ、第九主力艦隊と強襲揚陸艦隊は惑星ニップル制圧作戦を続行した。

 

 

 

統括司令部

 

「ディンギル帝国侵攻艦隊本隊はディンギル帝国本星へ向け進軍を再開しました」

「うむ。いつでもシステムを撃てる準備をしておいてくれ」

「了解しました」

 

統括司令部ではディンギル帝国侵攻艦隊進軍再開の報告を受けた総長はそう命令を下した。そして命令に対してオペレーターは命令を受けると各所に命令を伝達、システム発射に向けての準備を進めた。

 

 

一方、ワイアット大将指揮の艦隊は戦闘衛星群や監視衛星、機雷源を蹴散らしながら一気にディンギル帝国本星目前まで進軍していた。

 

「レーダ及び光学観測でディンギル帝国艦隊捕捉。巨大な都市要塞1、ガルンボルスト級戦艦10、カリグラ級中型戦艦50隻、空母4隻、水雷艇200隻を確認」

「全艦戦闘用意」

 

旗艦バーミンガムの艦橋ではディンギル帝国艦隊捕捉の報告が入るとワイアットは全艦に戦闘用意を命じた。

 

一方、ディンギル帝国軍もまた防衛艦隊を捕捉していた。

 

 

ディンギル帝国本土防衛艦隊旗艦ガルンボルストⅢ

 

「地球艦隊接近。戦艦41、巡洋艦80、駆逐艦多数」

「全艦戦闘配備。艦載機発進!」

 

ガルンボルストⅢの艦橋で本土防衛艦隊司令のムスク・ゼログ大将は堂々と命令を下した。

そして4隻の空母からは続々と艦載機が発艦していった。

 

 

旗艦バーミンガム

 

「敵機大編隊接近!」

「司令、どう対処しますか」

 

オペレーターの報告を聞いたアルマン中佐がワイアットに指示を求めた。

 

「うむ。全艦対空戦闘用意。一機残らず叩き落せ」

 

ワイアットがそう言うと艦隊は対空戦闘態勢に入った。

 

そして数分の後、対空戦闘は開始された。バーミンガムが発砲したのを号砲に各艦が次々と発砲する。その光景はショックカノンの雨が放たれているようであった。

 

一方、ディンギル帝国軍艦載機は機動性に優れていた為、多くの機体がショックカノンを回避したがそこへ二の矢が襲い掛かる。ショックカノンに続けて発砲された三式弾が次々と炸裂し少なくない機体が撃墜され、三式弾の攻撃も逃れた機体には対空ミサイルが襲い掛かる。そして防衛艦隊が使用する対空ミサイルは超高速、高機動が売りのミサイルであり、機動性に優れるディンギル帝国軍艦載機も回避しきれず被弾し撃墜される機体が相次いだ。

 

しかしディンギル帝国軍艦載機群はこの激しい対空迎撃網を果敢にも突破し、防衛艦隊に接近した機体も少なくは無かった。だが防衛艦隊の最終迎撃ラインに達するとショックカノンや三式弾、対空ミサイルの迎撃に加え対空パルスレーザーの豪雨の如き迎撃が加わりディンギル帝国軍艦載機は次々と撃墜され、艦隊に攻撃できた機体は1機も居なかった。

 

 

本土防衛艦隊旗艦ガルンボルストⅢ

 

「攻撃隊全滅」

「地球艦隊は第二次戦闘空域に入りました」

 

オペレーターがそう悲惨な報告をしてくる中、ゼログ大将は冷静だった。

表情一つ変えずに次の命令を出したのであった。

 

「よし、潜宙艦隊に攻撃させろ」

 

そう命令をゼログ大将が下した直後、悲鳴のような声で報告が上がった。

 

「司令!潜宙艦隊が攻撃を受けています!損害大」

「なんだと!」

 

この報告にはゼログ大将も驚愕を隠せなかった。

 

 

その頃、ディンギル帝国潜宙艦隊は防衛艦隊から猛攻を受けていた。

 

 

旗艦バーミンガム

 

「敵潜宙艦隊壊滅しつつあり」

「残存数5隻」

 

バーミンガム艦橋ではオペレーターの報告が淡々と上がっていた。

 

「ふむ。潜宙艦隊による狼群攻撃とは考えたが、我々を少し甘く見ていたようだな」

 

ワイアットは冷静なまま表情一つ変えずに言った。

ゼログ大将が地球防衛艦隊迎撃の為に差し向けた最新鋭のゲル級潜宙艦は狼群作戦による攻撃を目論んでいた。だが現実は非情であった。

 

「流石に全艦対潜宙艦ソナー装備では潜宙艦が隠れるのは不可能でしょう」

 

潜宙艦轟沈の爆炎が差し込む中、アルマン中佐はそう返した。

 

事実ディンギル帝国軍潜宙艦隊はレパント級フリゲートやフレッチャー級駆逐艦のソナーに捕捉され、ショックカノンを雨あられと撃ち込まれ次々と撃沈されていた。

 

そしてディンギル帝国軍潜宙艦隊25隻は5分と経たずに全艦撃沈されたのであった。

 

 

本土防衛艦隊旗艦ガルンボルストⅢ

 

「潜宙艦隊壊滅!」

「地球艦隊に第二次戦闘空域を突破されました!」

 

潜宙艦隊が呆気なく蹴散らされたことに対して動揺が広がる中、ゼログ大将は尚も冷静であった。

 

「慌てるな。隕石ミサイル発射に続いて水雷艇は前進しハイパー放射ミサイルを発射せよ」

 

ゼログ大将はそう命令を下した。

そして隕石にエンジンを付けた隕石ミサイルが発射されると続いて水雷艇が突撃を開始したのであった。

 

 

旗艦バーミンガム

 

「ディンギル帝国艦隊より隕石ミサイルらしきもの発射を確認。また水雷艇も突撃してきます」

「うむ。先制攻撃を掛ける。拡散波動砲発射用意。全艦波動砲発射体形へ!各艦はチャージャーを使用!」

 

ワイアットは素早く命令を下した。

この命令にあったチャージャーは波動砲のエネルギー充填速度を著しく向上させる代物であり、10秒と経たずに波動砲のエネルギー充填が完了する代物であった。

 

「了解。全艦波動砲発射準備。各艦はチャージャーを使用」

「艦隊波動砲発射体形へ」

 

ワイアットの波動砲発射準備の命令を受けオペレーターは騒がしくなり艦隊はエネルギー充填と陣形変更を開始した。

 

「波動砲発射まで後10秒」

「隕石ミサイル及び敵水雷艇群急速接近!各艦注意」

「隕石ミサイル、水雷艇には構うな!波動砲発射が最優先だ。ただし万が一に備えマゼラン級全艦は電磁パルス砲発射用意!」

 

ワイアットは気合の入った声で言った。

この時点でワイアットは波動砲を発射してしまえば勝敗は決まったものだと確信していた。

 

「了解!」

「敵水雷艇群ハイパー放射ミサイル発射!」

「波動砲発射まで5・4・3・2・1、発射!」

 

そしてカウントダウンが終わった瞬間、艦隊のドレッドノート級、エンケラドゥス級の艦首が光り拡散波動砲が撃ちだされた。

それは発射されたハイパー放射ミサイル400発と接近していた多数の隕石ミサイル、水雷艇200隻を飲み込みながら直進し、ディンギル帝国本土防衛艦隊の前で拡散、本土防衛艦隊64隻を破壊しつくした。

 

しかも拡散したエネルギー弾は威力を減衰させずそのままディンギル帝国本星にも多数着弾し本星各地に甚大な被害を及ぼした。

そして本土防衛艦隊後方にいた都市衛星ウルクにも多数の着弾があった。

 

 

都市衛星ウルク

 

「何事だ」

 

凄まじい衝撃が収まり、落ち着いたルガール大総統はそう言いモニターで神殿の外を見た。

そこには大きなクレーターが多数空き無残な姿になった都市衛星ウルクの現状が映し出されていた。

 

 

旗艦バーミンガム

 

「司令、ディンギル帝国艦隊の全滅を確認しました。発射されたミサイルも全て波動砲が破壊しました。要塞は健在なようですが流れ弾が当たっていますので無事では済まないかと」

「うむ。キンゼー艦長、統括司令部にシステムの目標座標を打電しろ。艦隊は反転し全速で離脱だ」

 

アルマン中佐の報告を聞いたワイアットはそこまで言うと通信手に全艦に通信を繋ぐように要請した。そして回線がつながるとマイクを持ち、口を開いた。

 

「艦隊全艦の乗組員諸君。総司令のワイアットだ。これからディンギル帝国本星に攻撃が行われるが、諸君らはこの攻撃に関して一切責任を負う必要は無い。このことは肝に銘じておいてくれるよう頼む」

 

ワイアットはそう神妙かつ丁寧な言い回しで艦隊全艦の乗組員に伝えた。

これはこれから行われる攻撃に関して乗組員が精神的負担を感じないようにする為であった。

 

そしてワイアットが言葉を言い終わるとバーミンガムからシステムの転送目標座標が統括司令部に送られた。その後艦隊は反転しディンギル星から距離を取った。

 

 

統括司令部

 

「バーミンガムから転送目標座標が送られてきました」

「わかった。直ちにシャイアン基地に目標座標を送れ」

「了解」

 

オペレーターが忙しくやり取りしている中、総長は席に座りながら発射の時間を待っていた。(いよいよか)そんなことを総長は心の中で思っていた。そして数分後には発射準備が整ったことの報告が来た。

 

「測的支援艦久里浜、射線上より退避完了!」

「総長、いつでもいけます」

 

オペレーターの報告を聞いた副総長が総長に言った。

 

「わかった。システム発射10秒前だ」

 

総長はそう言い発射ボタンを押した。

そしてカウントダウンが司令室に響き始めた。

 

「10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0」

 

0のカウントダウンになった瞬間システムから特波動砲は発射された。

この瞬間総長は(許せ。罪なき民間人よ)と心の中で呟いた。

 

発射された特波動砲はディンギル星近傍まで転送され、そのままディンギル星に命中しディンギル星を貫いた。そして特波動砲の直撃を受け、コアを貫かれたディンギル星は内部から大爆発を起こし崩壊した。

そして宇宙空間に進出していた都市衛星ウルクも無事では済まなかった。衝撃波と無数の惑星の残骸がぶつかり、都市衛星ウルクは大打撃を受け神殿は崩壊。神殿に居たルガールは何が起きたのかもわからず神殿の崩壊に巻き込まれ死亡したのであった。

 

 

惑星からかなりの距離を取った宙域に居た侵攻艦隊とその旗艦バーミンガムでは艦橋要員全員が崩壊していくディンギル星を眺めていた。

 

「これが特波動砲の威力なのか」

 

誰が発したかはわからない声が艦橋に響き渡っていた。

その後しばらくしてからワイアット大将は姿勢を正した後、マイクを持ちオペレーターに対して全艦に通信を繋ぐように言った。そして通信が繋がるとワイアット大将は「総員、宇宙に散ったディンギル星のあらゆる命とディンギル星に対して敬礼」と言った。

艦隊将兵は敬礼をする者、姿勢を正す者など様々であった。

 

 

この特波動砲の照射は1分間であったがディンギル星の崩壊現象が収まるまでは数日を要した。そして崩壊が収まった後、防衛軍の調査部隊がディンギル星跡の宙域をくまなく調査した結果、巨大な人工物(都市衛星ウルク)と思われる人工物の残骸を発見したが生存者は発見されなかった。またその人工物を構成していたと思われる残骸を調査部隊は回収している。

 

その後はディンギル帝国軍残党の掃討作戦が実施され、アンファ恒星系は地球連邦の支配下になった。

 

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