ディンギル帝国の滅亡。数十、数百億の人の命を含むあらゆる生命が一瞬にして惑星ごと失われた惑星破壊攻撃は地球連邦が強力無慈悲な惑星破壊兵器を保有している事を改めて内外に誇示した出来事となった。
だが、このディンギル帝国の滅亡も天の川銀河各所で行われている、連合国軍とボラー連邦陣営の大戦争の前には霞む出来事となってしまっていた。
惑星破壊プロトンミサイルなどの惑星に大打撃を与える兵器が飛び交い、惑星や準惑星が一瞬で消え去るという出来事が頻発していては、ディンギル帝国滅亡もまた多々ある悲しき出来事の一つとしてカウントされるだけであった。
そして、地球連邦にとってもディンギル帝国はちょっかいを掛けに来た存在でしかなく、その関心はボラー連邦陣営に向いていた。
銀河大戦は始まったばかりであり、戦域は日々拡大し未だ終わりが見えていなかった。
銀河大戦の戦禍は拡大しつつあった。天の川銀河各地で大艦隊が激突し、惑星が攻撃を受ける。そんな光景が繰り広げられていた。そして艦隊戦では無く後方を狙った攻撃も過酷さを増していた。
日々過酷さが増す通商破壊戦は地球防衛艦隊が更なる通商破壊作戦部隊を投入したことにより「ボラー連邦領内は後方であり安全地帯である」というボラー連邦の認識は完全に崩壊しボラー連邦領内は安心できぬ宙域となりつつあった。
昼夜問わずボラー連邦領内では地球防衛艦隊とガルマン・ガミラス帝国軍が投入した通商破壊作戦部隊によって貨物船や輸送艦が撃沈されボラー連邦の国力に僅かながらもダメージを与えていた。
2205年6月27日・ボラー連邦宇宙軍ゼニー合衆国方面軍司令部
「被害はどうなっている」
ボラー連邦宇宙軍ゼニー合衆国方面軍司令は低い声で尋ねた。その顔は険しい表情であった。
「開戦以来被害は上がり続けています。既に輸送艦や貨物船の撃沈数のここ数日の合計は60隻を超えました。また護衛や哨戒に出ている艦艇も10隻やられました」
「収集した情報では地球防衛軍は戦艦を3隻投入しているようです。なお3隻のうち2隻はビスマルク級と判明しています。他に巡洋艦が10隻近く。その他投入している艦艇があるようですが詳細は不明です」
そう報告する部下の顔も暗い表情であった。
この時、地球防衛艦隊はゼニー合衆国援護の為に戦艦3隻(ネェル・アーガマ、ビスマルク、ティルピッツ)を中心にドイッチュラント級や潜宙艦、次元潜航艦を派遣していた。
「わかった。こんな状況だが我が軍はイワーハ星系に補給船団を出さねばならん。船団の状況は」
「既に準備は完了しています。護衛艦隊もなんとか用意しました。しかし本当に補給船団を出すのですか。私としましては無謀としか思えません」
部下は堪えていた疑問を口に出した。
「やむを得んだろう。ベムラーゼ首相からイワーハ星系の死守命令が出ている。ここ最近活動を活発化させているガルマン・ガミラスとゼニー合衆国の事を考えるとイワーハ星系に居る友軍の為にも船団は出す必要がある」
司令は「友軍の為に」という部分を強めの口調で言った。そしてこの船団は何が何でも出す必要がある船団であった。
理由は単純であり、遡る事3日前。イワーハ星系にガルマン・ガミラス帝国軍ヒステン・バーガー師団が大挙侵攻してきたのだ。これに対しイワーハ星系に駐留していたボラー連邦軍は応戦、激しい攻防戦を繰り広げなんとかヒステン・バーガー師団を退けた。
だが今回の侵攻を受けベムラーゼ首相はボラー連邦軍にイワーハ星系の死守命令を出した。
イワーハ星系の陥落はガルマン・ガミラス帝国とゼニー合衆国に対しボラー連邦領本土進攻へ足がかりを与えるためである。その為、ゼニー合衆国方面軍司令部は死守命令を遂行するためにこのイワーハ星系への補給船団を出さなければならなくなったのである。
「勿論私も無謀だと思っている。だが首相からの命令だからやらねばならんのだよ。我々は嫌がらせの攻撃も不可能だと反論した以上この補給船団を出さねば我々の立場も危ういのだ。兎に角、何が何でも補給船団を出しイワーハ星系の友軍に物資を届けるんだ」
司令はそう力強く言うと。部下は姿勢を正した後、「了解しました」と言って部屋を去って行った。
そして数時間後、ボラー連邦本星から60隻の輸送艦、貨物船からなる船団と20隻の護衛艦からなるイワーハ星系への輸送船団が出航していった。
一方、通商破壊作戦を実施している防衛軍は戦果を挙げ続けていた。新たに通商破壊作戦に投入されたビスマルクとティルピッツは作戦開始数日で2隻合わせて戦闘艦艇含む艦船20隻余りを撃沈していた。両艦とも単艦行動だったもののこれだけの戦果を挙げたのは驚異的とも言えた。そして防衛艦隊はガルマン・ガミラス帝国軍のイワーハ星系侵攻に合わせて通商破壊作戦部隊を移動させイワーハ星系への補給線を遮断する行動を始めていた。
その戦力は戦闘空母アトランティカ、パシフィカ、ドイッチュラント級戦闘巡洋艦エドガー、ドイッチュラント、イルマリネン、潜宙艦6隻、次元潜航艦2隻であり既に独行状態や小規模な船団を襲撃し、30隻余りを撃沈していた。そしてまた一つの船団が攻撃を受けていた。
1隻の戦闘艦が大きな爆発を起こし轟沈し、輸送艦は多数のミサイルの直撃を受け一瞬で宇宙の藻屑になる。僅かな護衛艦は果敢に反撃するも攻撃は波動防壁によって防がれ効かず、お返しとばかりの砲撃を受け沈められ、輸送艦は反撃する術を持っていない為何も出来ず沈んでいった。一方的な戦闘でありその様子は最早虐殺とも言える光景であった。
「悪魔め」
船体各所で爆発を起こし沈みつつある護衛艦の艦橋で艦長はモニターに映る灰色に塗られた敵の艦艇を見ながらそう言いった。その艦長も直後に起きた大爆発で艦と運命を共にした。
戦闘空母パシフィカ
「艦長、最後の敵艦沈みました」
「わかった。総員、勇敢に戦い宇宙に散ったボラー連邦軍将兵に黙祷」
戦闘空母パシフィカ艦長はそう言い哀悼の意を捧げた。
この日、地球防衛軍所属戦闘空母パシフィカは15隻の輸送艦と5隻の護衛艦からなるボラー連邦軍の船団を全滅させた。他にも戦闘巡洋艦イルマリネンが3隻の貨物船を撃沈、エドガーが3隻からなるボラー連邦軍哨戒艦隊を壊滅させていた。しかしこれらの戦闘はボラー連邦にとって更なる悲劇の前触れであった。
この翌日、別の宙域をイワーハ星系へ向かう船団が航行していた。しかしこの船団は不運にも防衛艦隊通商破壊作戦部隊に捕捉されることになる。
戦闘空母アトランティカ
「艦長、哨戒機が敵船団を発見しました。数50以上」
「大規模船団だな。直ちに攻撃する。艦載機は直ちに発艦しデスラー戦法を仕掛ける。」
「了解しました。艦載機発艦準急げ!」
アトランティカ艦橋はにわかに騒がしくなり素早く命令が伝達されていく。また格納庫では続々とコスモタイガー隊の発艦準備が進められていき、準備が整った機体はカタパルトや甲板にセットされていった。
「艦載機発艦準備整いました!」
「よし発艦始め!」
艦長であるカール・テクトマイヤー大佐の号令で艦載機は続々と発艦していき、全機が艦前方で攻撃体形を取ると物質転送装置の影響を受けボラー連邦の船団へと向かっていた。そして転送された攻撃隊はボラー連邦輸送船団の直上に出現すると一気に襲い掛かった。
輸送船団護衛艦隊旗艦キルン
「司令、地球軍機が出現しました!」
「全艦、直ちに迎撃せよ!」
司令がそう命令してから数十秒後護衛艦隊20隻から対空砲火が撃ちあげられ始めた。しかし艦艇数が少なく密度が低かった為、効果は表れなかった。それどころか戦闘艦と非武装艦を見分ける手伝いをしてしまったのである。
「全機護衛艦隊を狙え!」
攻撃隊隊長がそう言うと攻撃隊は次々と護衛艦に襲い掛かり、搭載していた波動ミサイルを護衛艦めがけて発射した。発射された波動ミサイルは続々と護衛艦に命中し攻撃開始3分で20隻の護衛艦の内15隻が轟沈していた。さらに5分が経ち追加で2隻が戦闘不能になった時に本命はやって来た。
輸送船団護衛艦隊旗艦キルン
「正面ワープアウト反応!」
「なに!」
司令が艦橋の外を見つめた瞬間、戦闘空母アトランティカはワープアウトしその姿を現した。
戦闘空母アトランティカ
「ワープ完了」
「攻撃隊からの船団情報入手完了」
「よし全砲門開け。一隻残らず沈める」
「了解」
次々と報告が入る中、艦長の命令により甲板の一部が回転し幾つもの砲門が姿を表した。
「砲撃準備よし」
「ミサイル発射準備完了」
「撃ち方始め!」
攻撃準備が整い艦長がそう命令した次の瞬間、アトランティカから無数の砲撃とミサイルが発射された。それらは吸い込まれるように輸送艦や貨物船、戦闘可能だった護衛艦に命中しこれらを撃沈した。この一斉射で護衛艦隊旗艦キルンを含む護衛艦隊は全滅した。
そして護衛艦隊が全滅したことによりアトランティカは大胆不敵にも船団に突っ込み次々と艦船を沈め始めた。主砲、対空レーザー砲、パルスレーザー、ミサイルとあらゆる武装を使用し船舶を攻撃した結果、アトランティカの攻撃開始10分後にはボラー連邦輸送船団は全滅した。
この日、ボラー連邦のイワーハ星系への物資輸送船団は地球防軍所属戦闘空母アトランティカの襲撃を受け1隻残らず沈められた。文字通りの全滅であった。そして輸送船団全滅の結果は数時間後、ボラー連邦哨戒艦隊が輸送船団の残骸を発見したことにより司令部に報告が届いたのであった。
この襲撃はボラー連邦宇宙艦隊司令部に大きな衝撃をもたらすと同時に悪魔の出現に司令部は驚愕するのであった。
3199の予告が公開されましたね。
公開も日に日に近くなり早く観たい気持ちでいっぱいです。
さて、3199の予告及び設定の公開に伴い、一部デザリアム艦艇の表記を変更いたしましたのよろしくお願いいたします。