地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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アスターテ戦線

遡る事ディンギル帝国攻略戦発動前

 

 

 

アスターテ星系にあるゼダンの門の方面軍司令長官室に居るワン・グンロン中将は驚きの声を出した。

椅子に座るワンの前には遥々防衛艦隊司令部から出向いてきた首席参謀の武内宏明大佐が冷静な表情のまま立っていた。

 

「はい。防衛艦隊司令部と統合参謀本部での協議の結果です。一時的にですがアスターテ戦線に回す予定の艦艇等の戦力をディンギル帝国攻略に回します」

 

武内はそう言うと書類をワンに渡した。

渡されたワンは書類に目を通すと武内に問いかけた。

 

「協議内容は理解した。作戦中止の件も受け入れるが引き抜かれた戦力はディンギル帝国攻略後には戻ってくるのだな」

「勿論です。それと防衛艦隊司令部ではディンギル帝国攻略作戦中もアスターテ戦線で活動を行う戦力を送る予定です」

「なるほど。我々の暇は許さんということか」

「えぇ。戦力としては遊撃戦をメインとした戦力を送る予定です。どう扱うかはワン中将に任せます」

「承知した。手元に送られてくる戦力を楽しみにしているよ」

 

ワンはそう言うとニヤリとした。

そして協議が終わると武内は地球へと護衛艦ノックスに乗艦し帰っていった。

 

 

協議から数日後には集結していた艦隊の転戦も始まった。

準備の完了した艦艇は随時ゼダンの門より発進、アスターテ星系を後にした。

こうしてアスターテ星系からの戦力転戦により展開する艦艇が減るゼダンの門であるが、それらと入れ替わるように弾薬を満載にした輸送艦とその護衛艦隊は入港し続けた。

 

 

 

一方、この地球連邦の動きはボラー連邦軍も察知していた。

 

アスターテ星系から尤も近いボラー連邦の領域であるメルデーリング星系にあるボラー連邦軍メルデーリング星系方面軍司令部では情勢の変化に頭を悩ましていた。

 

「地球軍の意図が分からん」

 

そう呟いたのは方面軍司令のワザロフ・デルギン大将である。

デルギンは現場からの叩き上げの将官であり、部下からも一目置かれる存在の軍人であった。

 

「こちらを欺く行動、もしくは何かしらの作戦開始の予兆か」

「いや、純粋な艦隊撤収かもしれん」

「それだと新規に観測している増援や輸送艦隊の意味が分からん」

「そうだ、通商破壊部隊も確認されている以上純粋な撤収はあり得んはずだ」

 

参謀達は口々に意見を言うが可能性が多すぎて何が正しいのか迷っていた。

この時期、ワン中将は撤収作戦を誤魔化す為に撤収しない部隊を用いて2つのボラー連邦輸送船団を襲撃し一つは壊滅、もう一つは護衛艦2隻撃沈、輸送船7隻撃沈、2隻大破の損傷を与えていた。これまで沈黙していた地球連邦防衛艦隊のこの突然の襲撃はメルデーリング星系方面軍に衝撃を与えると共に戦力をどう動かすべきかの課題を押し付けていた。

 

現在メルデーリング星系方面軍には2個主力艦隊と2個打撃艦隊の他に旧式のコル型フリゲート10隻からなるフリゲート戦隊が5個配備されている。またアスターテ星系からアルゼ星系に至る航路にあるロスドル、ジェルデ、モウルド、フリーデルドの4つの惑星にアマンガ型戦艦10隻、デストロイヤー艦20隻、コル型フリゲート20隻の計50隻からなる駐留部隊もメルデーリング星系方面軍の指揮下にあった。

 

そしてデルギン大将としては指揮下の戦力をどう動かすか迷っていた。

方面軍司令部での議論は長時間に及んだが、結果は警戒レベルを最大限に上げるのと全部隊の即時戦闘待機命令だけであった。中には「積極的に動くべき」という意見もあったがアスターテ星系に居る地球艦隊戦力が不明であり、尚且つメルデーリング星系方面軍の戦力増強目途が経たない現状此方から手を出すのは危険という判断になっていた。

 

一方、アスターテ星系では随時艦隊戦力の撤収が行われていたが、それと同時に撤収艦隊と入れ替わる戦力が到着しつつあった。そしてまたゾーストと呼ばれているガス状惑星にあるゾースト秘密基地でもアスターテ星系目指して出撃準備を進める部隊があった。

 

このゾースト秘密基地は防衛軍でも秘匿されている基地であった。

現在ゾースト秘密基地には駐留戦力として護衛艦4、磯風改型10と基地航空隊が駐留していた。だが肝心なのは秘密基地の中であった。

このゾースト秘密基地には鹵獲したボラー連邦艦艇等が多数収容されていた。そしてこの日、地球連邦式に改修されたボラー連邦からの鹵獲艦がアスターテ星系目指して出港していった。

 

ゾースト秘密基地から出撃した部隊は途中、本国艦隊所属の艦隊と合流しアスターテ星系を目指した。

この合流した本国艦隊は日本が建造した敷島型戦艦敷島、秋津洲を中心にアラスカ級秩父、有珠、ブリストル級宇治、糸魚、富士見、秋月型A2型紺月、碧月、紫月、神月、菊月、天月、令月からなる艦隊である。

この艦隊の中核である敷島型戦艦は日本がヤマト型の発展強化型の後継艦として建造した戦艦であり、長門型戦艦をベースに船体を拡大発展させた戦艦である。武装は艦首波動砲、重力子スプレッド発射機4基、56㎝3連装砲を前部2基、後部2基、艦底部2基、左右両舷各1基、10㎝3連装砲を前部1基、後部1基、片舷4基の計10基、連装砲対空パルスレーザー10基、3連装砲対空パルスレーザー8基、4連装砲対空パルスレーザー8基、艦首ミサイル発射管6門、艦尾ミサイル発射管4門、艦底部ミサイル発射管8門、側面ミサイル発射管片舷8門、煙突ミサイルを装備した超超弩級戦艦であり、地球防衛艦隊の中でも強力な部類の新鋭戦艦である。

因みに準同型艦をアメリカがアメリカ級として建造している他、アメリカと同様に準同型艦の建造を目論んでいる国家が多数存在している。

 

そして合流した艦隊はアスターテ星系にあるゼダンの門を目指した。

 

 

数日後、ゼダンの門の作戦会議室にはワン中将を筆頭に参加の部隊司令が集まっていた。

 

「諸君が揃ったところで会議を始める」

 

ワンは会議室を見渡した後にそう言った。

 

「まず、我々アスターテ方面軍ではあるが統括司令部の意向によりディンギル帝国攻略の為、作戦変更を余儀なくされている。当初は大艦隊戦力を持ってしてここアスターテ星系からアルゼ星系に至る宙域を確保及びメルデーリング星系を制圧することが目的であった。だが作戦変更に伴い宙域確保等の作戦は延期となっている。だが私は再び艦隊戦力が揃うまで指をくわえて待っているのは性に合わん。そこで諸君には私が立案した作戦に協力して貰いたい」

 

ワンはそう言い、モニターに作戦計画を映し出した。

 

「私は敵に対して嫌がらせと戦力減衰を主目的とした作戦を実施する」

「なるほど。攻略はしなくとも後々の攻略作戦を有利にするための作戦ということですね」

 

一人の艦隊指揮官が言うとワンは頷き言葉を発した。

 

「そうだ。今は敵に対して有利にならずとも嫌がらせを行い敵を攪乱、時間稼ぎを行う。詳細な作戦計画については追って指示する。何か異論は」

 

ワンは会場を見渡したが異論を言うものはいなかった。

 

「では会議は終了する。各々の部署に戻ってくれ。ご苦労だった」

 

そうワンが言うと会議参加者は起立敬礼し会議室を後にした。

 

 

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