地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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アスターテ戦線4

ボラー連邦軍メルデーリング星系方面軍司令部は大騒ぎになっていた。

地球防衛艦隊アスターテ星系方面軍による突然の4惑星同時攻撃という事態にメルデーリング星系方面軍は情報収集に追われていたのである。

 

そしてメルデーリング星系方面軍司令室ではワザロフ・デルギン大将以下幕僚が集まり会議を開いていた。

 

「現在ロスドル、ジェルデ、モウルド、フリーデルドの4つの自由浮遊惑星に対して地球軍は同時に攻撃を仕掛けています。詳細は不明ですがどの惑星も『攻撃を受けた』という旨の報告を最後に通信が途絶えている為、現時点での状況は不明です。恐らく通信設備が破壊されたか電波妨害が行われていると思われます」

 

幕僚の一人がそう言うと司令部の空気はより重くなった。

数を減らしていた地球軍アスターテ星系方面軍がここまで活発な攻勢に出るとは誰も想定していなかった為である。しかも4惑星が同時に通信途絶したことを顧みるに同時襲撃の為に地球軍が相当な戦力を投入していると推測するのが定石だった。

なお観測した結果は少数部隊による基地襲撃作戦だったが、むしろ少数部隊で4惑星同時攻撃を行い、4惑星の基地から電波妨害も含めたやり口で通信機能を奪った地球防衛艦隊のやり方が常軌を逸していると言っても過言では無かった。

 

「司令、ここは救援を出すべきかと。幸い攻撃してきている艦隊は小規模の様ですし」

「いや、フリーデルド近傍に居た第4フリゲート隊からの通信が途絶している。先に敵情を確認すべきだ」

「だが、敵情を調べるには時間が掛かる。このままでは4惑星の駐留軍が全滅する」

「せめてどこか1つの惑星だけでも主力艦隊を出して救援すべきだ」

「そうだ、このままでは4惑星を失い、アルゼ星系に居るガルマン・ガミラスと地球軍への兵站に対する圧力を掛ける拠点が無くなる」

「確かに、このままではアルゼ星系奪還が厳しくなる」

 

幕僚達が次々に意見を口に出す中、デルギン大将は目を瞑ったまま幕僚達の意見を聞いていた。

 

「司令ご判断を」

 

意見がまとまらない中、首席参謀がデルギンに判断を求めた。

 

「うむ。まず知りたい情報がある。地球軍は上陸部隊を伴っているのかだ。これは最重要事項だ」

 

意見を求められたデルギンは少し間を置きそう参謀達に聞いた。

デルギンにとっては同時攻撃されたことよりは地球防衛艦隊が上陸部隊を伴っているかが最重要問題であった。上陸部隊が居れば本気の占領作戦だが居ないのであればただの襲撃である。

 

「いえ。今のところ上陸部隊を伴っていたという情報はありません。各惑星とも通信が途切れるまで上陸を受けた旨ないし上陸部隊の存在は発信していませんでした」

 

通信参謀はそう答えた。

既に4惑星と通信が途絶しているとはいえ、監視衛星等で最低限の敵部隊の情報をボラー連邦軍は入手出来ていた。

 

「わかった。では今しばらく様子見だな。上陸しないのであればいずれ艦隊は撤退するだろう」

 

デルギンは「様子見」という方針を打ち出した。

だが参謀達は異を唱える者が多かった。

 

「なぜ様子見なのですか」

「そうです。後続として上陸部隊が居る可能性もあります」

 

参謀達がそう口々に言う中、デルギン大将は手で落ち着けのジェスチャーをした。

 

「まぁ私の意見を聞きたまえ。まず地球に4惑星を同時に占領するだけの戦力があると思うかね」

 

そう言うとデルギンは参謀達を見回した。

 

「答えは無いと私は推測している。仮にそれだけの戦力があるならばもっと大規模な攻撃で上陸作戦を実行しているはずだ。監視衛星等で観測している限りどの惑星に対しても攻撃している艦隊が少数だ。アルゼ星系の時はもっと大規模な艦隊戦力で攻め込んでいた。無論規模が違うという条件があるとはいえ上陸をするには支援戦力が少なすぎる」

 

「しかし、上陸部隊が存在しないと判断するのは時期尚早ではないですか。他に支援部隊が上陸部隊と共にいることも想定できます」

 

作戦参謀がデルギンの意見に反論する。だがデルギンは尚も冷静だった。

 

「無論そうだ。だがアスターテ星系にはそれほど大規模な艦隊は確認されていない。更なる後方から戦力を持ってくることも可能だろうが、ここ最近増援を求むもしくは上陸作戦を行うというような通信は確認されていない」

 

デルギンがそう言うと参謀達も少し黙った。

確かにアスターテ星系には4惑星を同時に占領する程の戦力は確認されていなかった為である。また通信量もそれほど変わっていない事は確認済みであった。

 

「しかし万が一ということもあります。せめて各艦隊を出撃させて様子見というのは必要では」

「うむ。それはそうだ」

 

首席参謀がそう言うとデルギンも同意を示した。だがその時であった。司令室に待機していたデルギンの副官が入ってくるとデルギン大将に何かを耳打ちしたのであった。

そして何かを聞いたデルギンは「わかった」とだけ返したのであった。

 

「司令、なにかあったのですか」

 

作戦参謀がそう聞くとデルギンは口を開いた。

 

「メルデーリング星系の最外縁のメルゲル要塞が地球艦隊から攻撃を受けているそうだ」

 

 

メルデーリング星系外縁メルゲル要塞

 

メルデーリング星系外縁に存在する小惑星改造の要塞であるメルゲル要塞に対して攻撃を仕掛けていたのは本国艦隊第77任務部隊であった。

 

「全艦、撃ちまくれ。手加減は不要」

 

本国艦隊第77任務部隊司令の安倍智彦中将は旗艦敷島の艦橋でモニターに映る要塞を見ながら命令を出していた。この本国艦隊第77任務部隊に与えられた任務はメルデーリング星系への嫌がらせであった。そしてその嫌がらせの標的にされたのがメルゲル要塞であった。

 

第77任務部隊はその持てる火力をメルゲル要塞に叩きに叩きつけていた。要塞砲台がショックカノンの直撃を受けて消し飛び、ゲートにはミサイルが着弾して艦艇の出撃が不可能になる。要塞駐留艦隊は果敢に反撃するも地球防衛艦隊有数の巨艦である敷島型2隻の反撃を受け一瞬で艦は轟沈する。

敷島型の持つ56㎝砲の威力はガトランティス帝国が誇る巨艦カラクルム級ですら一撃で確実に轟沈に追い込む代物である。その火力を向けられたボラー連邦艦隊は戦艦だろうがフリゲートだろうが一撃でその船体を爆沈させ立派な船体をデブリへと変えていった。

 

 

メルデーリング星系方面軍司令室

 

「司令、直ちに救援艦隊を出しましょう。相手は少数です1個艦隊で叩き潰せます」

 

作戦参謀が力強く言ったがデルギンの答えは「ノー」だった。

 

「救援艦隊は出さない。敵艦隊の数も少なく、此れは嫌がらせの一環だろう。出撃しても逃げられるか更なる有力艦隊がどこかで待ち構えているだろう。ノコノコ出ていけば手痛い反撃を喰らいかねん。それに敵の策略にわざわざ嵌りに行く必要は無い」

 

デルギンはそう言い切った。事実第77任務部隊の艦艇数は少ない。要塞を攻略するだけの戦力も伴っていない為、デルギンは只の嫌がらせの攻撃と判断したのである。

 

「わかりました。しかし全艦隊を出港させ即応状態で待機させましょう」

 

作戦参謀がそう言うとデルギンは頷き「そうしよう」と口にしたのであった。

 

 

第77任務部隊旗艦敷島

 

「司令、敵に動きは見られませんね」

 

砲撃の光が差し込む艦橋内で各種報告に目を通していた副官の村上瑠璃大佐が安倍中将に問いかけた。

 

「うむ。敵の司令は我々の攻撃が嫌がらせと見抜いているな。これは待機している第二十四主力艦隊には出番は無いな」

 

そう言った安倍は待機していた第二十四主力艦隊の事を脳裏に浮かべた。

第二十四主力艦隊は第77任務部隊のバックアップの為に待機しており、敵有力艦隊が出現した場合に第77任務部隊に変わり敵有力艦隊と交戦する手筈になっていたのである。

 

「しかし敵が此方に目的を読んでいるとなるとどう動きますか」

 

村上が問いかけた。

予定ではメルゲル要塞攻撃後は即座にメルデーリング星系から離脱する流れとなっていた。

 

「予定は変えん。このままメルゲル要塞に対する攻撃終了後にメルデーリング星系からは離脱し補給艦と合流する」

 

「わかりました」

 

村上は安倍中将の意見にそう返答したのであった。

安倍中将としては例えボラー連邦軍に目的を悟られたとしても予定外の行動は起こさずに撤収し以後の命令に従うことを既定路線としていた。メルデーリング星系には有力なボラー連邦艦隊が駐留している事は把握済みの為、冒険的な攻撃は手痛い反撃のリスクがあるのであった。

 

 

第二十四主力艦隊

 

メルデーリング星系から約1光年離れた宙域に第二十四主力艦隊は待機していた。

艦隊の波動砲搭載艦は全艦がトランスワープ可能な状態で待機しており、ボラー連邦艦隊をワープ直後に一気に拡散波動砲で殲滅できる状態で即応体制を維持していた。そんな中、第二十四主力艦隊司令の尾崎徹太郎中将は旗艦アナンケ級ベガの艦橋で第77任務部隊からの報告を聞いていた。

 

「敵が動かないのであればこの艦隊の出番は無さそうだな」

 

副官から報告を聞いた尾崎は言うと命令を出した。

 

「第77任務部隊が無事にメルデーリング星系から離脱したら我が艦隊も現宙域を離脱し補給艦との合流地点に向かう」

 

簡潔な命令であったが、これも予定通りの行動の為、特に何かが変わるということも無くオペレーターも命令を聞いた後も淡々と職務を遂行するのであった。

 

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