白色彗星 玉座
テレザート星の自爆に巻き込まれ進路変更を余儀なくされた白色彗星の玉座に座るズォーダー大帝は険しい表情をしていた。
取り巻きのサーベラー総参謀長以下幕僚達は何か言われるのではないかと恐れていたがそれは杞憂であった。
「我がガトランティスは今まで一度も進路を変えたことが無い。これは屈辱的な出来事だ。サーベラー直ちに彗星の状況を確認しろ。それと太陽系方面のメーザーはどうしている」
ズォーダー大帝はそう命令を下すと同時に太陽系方面艦隊の状況を尋ねた。
「どうやら苦戦しているようです。なんでも強力な艦隊が太陽系外縁部にいるようで」
「地球はヤマト以外にも強力な艦艇を保有しているようで、潜宙艦隊などは悉く撃退され攻めあぐねているとのことです」
サーベラーとラーゼラーは立て続けに報告した。
「ならばメーザーに伝えろ。己の持つ全力を持って地球艦隊を潰せとな」
大帝はそう鋭い目つきをしながら命令下した。
そして命令は太陽系から少し離れた宙域に展開していたメーザー中将指揮のガトランティス軍太陽系方面艦隊に伝えられた。
ガトランティス艦隊軍太陽系方面艦隊旗艦カラクルム級デスガラム
「大帝より命令を頂いた。全力を持って地球艦隊を潰せとの命令だ。直ちに全艦隊を集結させよ。各艦隊集結後、我々は全力で太陽系に侵攻し太陽系外縁部に居座る地球艦隊を撃破し第十一番惑星を占領。そこを足掛かりに地球を占領する」
大帝の命令を受けメーザーはそう指揮下の艦隊に命令を下した。
数日後、艦隊集結と準備を整えたガトランティス帝国太陽系方面艦隊は太陽系に向けて進撃を開始した。
だがこの時、メーザーは重大な勘違いをしていた。メーザーは太陽系外縁部に居座っているワイアット指揮下の艦隊が地球の主力だと思っていたのである。
2203年5月5日
この日、太陽系外周防衛部隊兼第六艦隊旗艦バーミンガムにて休憩を取っていたワイアットの元に一報が入った。
「司令、第十パトロール艦隊が太陽系に接近するガトランティス艦隊を捕捉しました。詳細はカラクルム級28、ナスカ級6、ラスコー級42、ククルカン級96です。なおパトロール艦隊はギリギリの距離を保ちながら接触を続けています」
そう報告を受けたワイアットは少し考えた後、口を開いた。
「うむ。シリウス・プロキオン星系に居るガトランティス艦隊の動きはどうなっている」
「今のところ動きはありません」
「ならば、接近している艦隊は今まで散漫な攻撃をしてきていた艦隊の親玉だな」
ワイアットはそう言い紅茶を一口飲むと命令を下した。
「直ちに外周防衛部隊はパトロール艦隊以外本艦隊に合流させよ。総力を挙げて迎え撃つ。司令部にも詳細を報告せよ。ただし外周防衛部隊で対処は可能と付け加えて打電だ」
土星衛星タイタン地球防衛艦隊司令部
「土方司令、ワイアット中将は外周防衛部隊の総力を挙げてガトランティス艦隊を迎撃するようですが大丈夫でしょうか」
「大丈夫だ。白色彗星及びシリウス・プロキオン星系に展開中のガトランティス艦隊に動きは見られない。ここで無暗に防衛艦隊の総力を挙げる必要は無い」
参謀長の疑問に土方はそう言い切った。
この時、地球防衛軍は既にシリウス・プロキオン星系に大規模なガトランティス艦隊が展開しているのを波動実験艦銀河の観測システム等で把握しており、この艦隊が地球侵攻部隊主力だと断定していた。無論転生者の入れ知恵である。
「ただし、第一艦隊は土星沖に第三艦隊は木星沖に展開させる。万が一外周防衛部隊がしくじった場合は第一艦隊と第三艦隊を合流させて対応させる」
「了解しました。直ちにそのように」
土方の命令を受けた参謀長は直ちに命令を実行するために司令室を後にした。
2203年5月10日第十一番惑星沖
第十一番惑星沖に集結したワイアット指揮の太陽系外周防衛部隊はガトランティス艦隊を今か今かと待ち構えていた。
外周防衛部隊旗艦バーミンガム
「ガトランティス艦隊進路変わらず進撃してきます。後数分で波動砲の射程に入ります!」
バーミンガム艦橋には張り詰めた空気が漂っていた。
太陽系に接近してくるガトランティス艦隊は数多くいたが此処までの規模は初であったので仕方が無い事であった。
「波動砲はガトランティス艦隊が主砲の有効射程に入るまで使用禁止だ。一撃で勝負を決める。撃ち漏らしが発生した場合は主砲で仕留めろ」
ワイアットは覇気のある声で言った。
この時、ワイアットはガトランティス艦隊を一撃で葬り去り、撃ち漏らしは絶対にしないつもりであった。
外周防衛部隊にはアンドロメダ級のアルデバランとアキレスが旗艦の第二艦隊と第四艦隊も含まれており、撃ち漏らしが発生しアンドロメダ級の力及び拡散波動砲の威力が敵に露見することは避けたかったのである。事実今まで拡散波動砲の攻撃を受けたガトランティス艦隊は一隻残らず殲滅されていた。
ガトランティス艦隊旗艦デスガラム
「メーザー司令、正面に地球艦隊確認。艦型不明の大型戦艦1、アンドロメダ級2、主力戦艦以下多数です」
「数が多い上にアンドロメダ級か。たしか地球の最新鋭艦だったな。ならば沈めるまでだ」
報告を聞いたメーザーは小声で呟くと命令を下した。
「正面の地球艦隊を殲滅する。艦隊全速前進。射程に入り次第攻撃開始だ」
メーザーの命令を受けるとガトランティス艦隊は前進を開始した。
太陽系外周防衛部隊旗艦バーミンガム
「ガトランティス艦隊増速、距離急速に縮まります」
「主砲有効射程まで後4分」
「よろしい。正面からの堂々とした進軍は敬意に値する。だが今の地球艦隊相手には無謀でもある」
ワイアットはそう言い帽子を被り直した後、言葉を続けた。
「主砲の有効射程に入り次第各艦は順次攻撃を開始せよ。波動砲発射は別命あるまで待機」
そう命令が下されてから数分後両艦隊は砲撃戦を始めた。
最初に発砲したのは第五艦隊旗艦タイタンであった。
「撃ち方始め!」
タイタン艦橋でティアンム中将がそう命令を下した直後タイタンの主砲が発砲し、それに続き外周防衛部隊の波動砲搭載艦を除く全艦が猛烈な砲撃を始めた。
一方のガトランティス艦隊も撃ち返し、反撃を始めた。だがそれは破滅へのカウントダウンの開始の合図でもあった。
「ガトランティス艦隊発砲!」
「友軍艦隊ビームかく乱幕展開!」
「第七、第八、第十、第十四巡洋艦隊ガトランティス艦隊後方に回り込みました。なお波動砲効果範囲外に待機中」
バーミンガム艦橋には続々と報告が入っていた。
どうやらガトランティス艦隊はマゼラン級やサラミス級との撃ち合いにのめり込んでいるようであった。
「よし。波動砲発射用意だ。以降波動砲発射の指揮権は谷中将に移管する」
ワイアットの命令は即座にアルデバランに乗艦していた谷中将に届いた。
第二艦隊旗艦アルデバラン
「全艦直ちに波動砲発射用意。総員対ショック、対閃光防御」
谷中将はそう言い終わるとゴーグルを掛けた。
そうしている間にも波動砲発射の準備は進んでいく。発射カウントダウンまではあっと言う間であった。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1」
「全艦拡散波動砲発射!」
カウントダウンが終わり谷中将が「発射」と言うと数十隻の波動砲搭載艦の艦首が光り、ガトランティス艦隊目掛けて拡散波動砲は発射された。
無論ガトランティス艦隊でも地球艦隊の異変には気づいていたが手遅れであった。
ガトランティス艦隊旗艦デスガラム
「メーザー司令、一部の地球艦隊より高エネルギー反応」
「何!」
報告を受けたメーザーは声を出し、モニターに映る地球艦隊を見つめた。
モニターに映る砲撃をしていない一部の地球艦隊の艦首は青白く光り輝いていた。
「何をする気だ」
メーザーが呟いた次の瞬間、モニターが閃光で埋め尽くされた。
「なんだ!」
これがメーザーが口にした最後の言葉であった。
地球防衛艦隊から発射された拡散波動砲はガトランティス艦隊正面で拡散すると、艦隊戦に気を取られていたガトランティス艦を一瞬で跡形も残らず粉々に粉砕していった。
ククルカン級やラスコー級は一瞬で消滅し、今に艦載機を発艦させようとしていたナスカ級は船体に直撃を受け艦載機諸共轟沈する。大型のカラクルム級も船体をへし折られ轟沈していく。無論メーザー乗艦のデスガラムも拡散波動砲の直撃を喰らい轟沈した。
拡散波動砲の一斉射でガトランティス太陽系方面艦隊は壊滅したのであった。
生き残ったのは現場に居なかった僅かな潜宙艦だけであった。
メーザー率いるガトランティス太陽系方面艦隊壊滅の報は数日経った5月13日に白色彗星のズォーダー大帝の元に届いた。
「メーザーが敗れたか」
ズォーダーはそう言うとサーベラーに問いかけた。
「サーベラー、彗星の状況はどうなっている」
「はい。既に損傷部の修理は完了しております」
サーベラーがそう述べるとズォーダーは玉座から立ち上がり命令を出した。
「彗星の進路を地球へ向けよ。それとバルゼーとゲルンに伝えよ、総力を持って太陽系に進出、目障りな地球艦隊を撃滅せよとな」
バルゼー艦隊旗艦アポカリクス
「大帝のご命令が下った。我が艦隊は総力を挙げて太陽系に突入し、地球軍を撃滅する」
バルゼーが命令を下すとシリウス星系に居たバルゼー艦隊は出撃準備に入ったのであった。
同時刻、プロキオン星系に展開していたゲルン率いる機動部隊も出撃準備に入った。
こうしてシリウス・プロキオン星系のガトランティス艦隊が出撃準備に入った頃、ヤマトはデスラー総統と三度目の戦闘を行い、勝利を収めると共にデスラー総統との和解が成立したのであった。
そしてヤマトは地球へデスラー総統は大破したノイ・デウスーラを破棄しデスラー艦に乗艦しデスラー派の艦隊と共に旅立っていった。