火星自治政府及び火星自治政府軍は地球連邦に属する自治政府及びその自治政府が保有する軍隊である。だがそれらの原型の大元は2164年に突如地球からの独立を宣言した火星政府及び火星宇宙海軍である。
これらの組織は文字通り地球から独立を宣言した火星住民によって作られていた。そしてこの内、火星宇宙海軍は火星で発見された異文明の戦闘艦艇の残骸を基に開発されており、当時の国連宇宙海軍主力戦力を遥かに凌駕する性能を持っていた。その性能は2178年に勃発した内惑星戦争において発揮され、初戦では国連宇宙海軍を圧倒し火星宙域から国連宇宙海軍を殲滅、その勢いに乗り月まで進出するという大戦果を挙げた。だがこれが悪手であった。後に死闘の月攻防戦と呼ばれる3年にも渡る長き戦いが勃発。国連側は機能マヒしている国連宇宙海軍では無く地球圏艦隊を投入。この艦隊が火星宇宙海軍の相手となり地の利が無い火星宇宙海軍は敗北を重ねるだけでなく、戦闘に敗れ艦艇を鹵獲された結果、国連側が金剛型や村雨型と言った火星宇宙海軍の艦艇より高性能な艦艇を開発し国連宇宙海軍はこれを大量生産し前線に投入。それにより火星宇宙海軍は勝利を得られなくなり、マスドライバーを使った地球本土攻撃も行うも、勝利に至れる効果は振るわず徐々に火星に追い詰められるという結果になり、最終的に火星政府は倒れ火星宇宙海軍も解体となった。
だが、内惑星戦争勃発の影響もあり火星にはある程度の自治権と警備隊の保有が認められた結果、火星宇宙海軍は火星警備隊として再出発、主力戦闘艦も少数であるが保有が認められ、警備隊に入れず溢れた元軍人は地球圏艦隊に再就職した。
そしてガミラス戦争において火星警備隊は火星防衛のみならず、火星からの住民疎開や地球圏防衛作戦に参加し戦果を挙げた。その後の地球連邦発足後も火星自治州政府及び警備隊は存続、ガトランティス戦役において再び実施された火星からの住民疎開作戦に従事した。
この時、地球圏へ退避した警備隊は基地への入港を進められたが当時の警備隊司令がこれを拒否。「我々も地球連邦を組織する一員であり、また戦力を有する部隊である。我々だけが基地に避難する訳にはいかない」と言い無理やりながら戦列に並び、月軌道にその艦列を並べたのである。
結果としてガトランティス軍が地球圏に侵入することは無かったが、火星警備隊の意気込みと決意を知った土方司令や委員長は「アンドロメダ級を旗艦とする1個艦隊をプレゼントしたいくらいだ」と記者を前に話す程の出来事であった。
そして銀河大戦が勃発中の2205年7月21日、この日火星最大の宇宙港アルカディアポートにおいて一つの歴史的な記念式典が行なわれていた。
「お集りの皆さん。今日は地球連邦及び火星自治州にとって一つの節目となり、同時に素晴らしい記念日になるでしょう」
火星自治州政府首相アルフレッド・ベンジャミンはマイクを前に声を大にして言っていた。
今彼は歴史的な言葉を口にしようとしていた。それは元火星宇宙海軍艦隊総司令が言うには余りにも大きな出来事であった。
「今日この日、火星警務隊は解散し新たに火星自治州軍として再出発いたします」
ベンジャミンがそう言うと会場からは歓声が湧き、拍手が鳴り響いた。
ベンジャミンの宣言通りこの日、火星警務隊は解散し新たに火星自治州軍として再出発することになっていた。新戦力を加えてであった。
その戦力はアンドロメダ級アルカディアを筆頭に戦艦、巡洋艦を多数有する強力な艦隊であり、地球防衛艦隊の1個主力艦隊を凌駕する戦力を有していた。更に今までの使用していたマーズ級を改修した改マーズ級の他にマーズ級の拡大発展型のオリンポス級戦艦も新たに保有していた。
この保有戦力の内、改マーズ級は火星宇宙海軍時代からの主力艦であるマーズ級の改装艦であり主砲を15.5㎝3連装砲に換装した他に艦底部に1基増設、また艦首にミサイル発射管を6門及びVLS装備とブリストル級軽巡洋艦の廉価版的な存在であった。
そして火星自治政府軍の目玉足るのがマーズ級を基に開発した新鋭戦艦オリンポス級戦艦である。オリンポス級戦艦はマーズ級の船体をベースに船体を拡大、各部の装甲や武装配置の見直しを行っており、武装は艦首波動砲1門を筆頭に48㎝3連装砲を前部2基、後部1基、艦底部1基、15.5㎝3連装砲を片舷2基の計4基、格納式連装対空パルスレーザー20基、艦首ミサイル発射管8門、VLS他という重武装戦艦である。
このオリンポス級の建造は火星自治州軍発足決定後に直ちに建造が開始された艦艇であり、その大元の設計は計画されながら建造されず未完に終わった火星宇宙海軍が計画していた仮称O級戦艦である。そしてオリンポス級は建造にあたりこの仮称O級の設計を流用し再設計した物である。つまりオリンポス級は未完成に終わった火星宇宙海軍の大型戦艦の血を持つ戦艦であった。
「かつての火星宇宙海軍未完成の戦艦の血を持つ戦艦、それが地球連邦を守る一員として甦るか」
アルカディアポートでの式典後、火星軌道上に上がった火星自治州軍宇宙艦隊の旗艦アンドロメダ級アルカディアの艦橋では火星自治州軍艦隊司令官であるメイカー・ラザレンコ大将が艦橋から見えるオリンポス級を眺めながら呟いた。それを見ていた副官は司令に答えるように口を開いた。
「素晴らしいではありませんか。未完の戦艦が蘇る。しかも相手は異星人となれば子孫代々誇れる艦艇になるでしょう」
「そうだな。同じ地球人同士で殺しあうより、同じ地球人を守る為に戦う方がオリンポス級やその他の艦としても本望だろう」
ラザレンコはそう言うと艦橋から見える新生火星宇宙軍である火星自治州軍艦隊を見渡したのであった。