銀河大戦はその規模を加速度的に拡大していた。最初はボラー連邦陣営との戦闘であったがSUSという国家が乱入、地球連邦はボラー連邦陣営のみならず、かなりの物量を有すると思われるSUSとも戦闘を繰り広げる必要が出てきた。その事実は戦禍未だ遠い地球連邦市民に少しながらも不安という名の影を落としていた。
無論その不安を払拭するために地球連邦政府と防衛軍は活動を開始していた。だがそれは戦闘では無かった。
統括司令部総長室
「よくもまぁこれだけの艦艇を集めたね」
コーヒーを片手に資料に目を通した総長は報告書を持ってきた防衛艦隊司令長官マンフォード元帥に語り掛けた。
「はい。予備役艦、保管艦共に再就役可能艦は出来る限り現役復帰させてもらいました。また他に連邦加盟国からも艦艇を派遣してもらいます。連邦加盟国の中にはまだ過去の観艦式に未参加だった国も多く、その存在や保有する艦隊をアピールする機会となりますので各国共に手隙の艦艇と言ってもそれなりの規模の艦隊を派遣してくれるようです」
「なるほど。まぁ数は多ければ多いほど良い。特に今回のような場合はね。それに連邦加盟国も乗り気なのはありがたい。観艦式参加を打診した時も快く快諾してくれてる面もあったから実にありがたい」
総長は報告書の表紙を見ながらそう言った。その表紙にはこう書いてあった「戦時特別観艦式」と。
この戦時特別観艦式は地球連邦政府及び防衛軍が計画した物であり、地球連邦市民に防衛艦隊が如何に強力な艦隊を保有しているのかをアピールするための観艦式であった。しかし前線から部隊を引き抜けないので、新造艦及び予備役や保管艦を根こそぎ現役復帰させて観艦式に参加させることになっていた。しかもこれらの艦艇は通常の造船所のみならず時間断層工場からも膨大な数が吐き出されている為、一旦予備役や保管艦となった新造艦も存在しており数は十分なほど存在していた。
「今回の観艦式は地球防衛艦隊が前線に展開している艦隊や任務に就いている艦隊を除いても如何に強力かつ膨大な艦艇を保有しているかをアピールし連邦市民、更には同盟国に安心感を与えつつ、ボラー連邦陣営に地球連邦の強大さを見せつける為のものだ。派手にしてやろうではないか」
総長は言い終えると普段は見せないニヤリとした表情をマンフォードに見せた。
数日後、地球圏ソロモン要塞
地球圏にあるソロモン要塞、地球本星防衛の為の要塞の一つである。その要塞の近傍宙域はこの日、無数の艦艇で埋め尽くされていた。
ソロモン要塞とて小さな要塞では無い。だが今回はソロモン要塞には収納できない数の艦艇がソロモン要塞近傍に集結していた。晴れ舞台としては十分すぎる程の数である。
「なんて艦艇数だ。戦時中とは思えんな」
ソロモン要塞司令室でオペレーターの一人が大スクリーンに映し出されている情報を見ながら思わず心の声を口に出していた。
このオペレーターの言うことは事実であったこの日、ソロモン要塞に観艦式の為に集結しつつある艦艇数は大小合わせて軽く500隻を超えていた。防衛艦隊の総数からすれば少ないが、戦時中ということを考慮すれば多すぎるぐらいである。そしてそれらの艦艇の中で一際目立つ艦艇が居た。その艦艇はスクリーンにこう表示されていた。「ブルーノア」と。
観閲艦隊旗艦ブルーノア
戦略戦闘空母ブルーノア級1番艦ブルーノアはこの観艦式の為に繰り上げて就役した防衛艦隊自慢の最新鋭艦である。旗艦に6連大波動エンジンを搭載したこの艦は戦闘空母としては破格の火力を保有しており、純粋な砲撃戦でもアンドロメダ級なら10隻、春藍型ですら4隻と同時に撃ち合って勝てるとされている強力な艦艇であった。
そんなブルーノアの周りを固める艦艇もまた強力な艦艇であり、新たに就役したばかりのアンドロメダ級やバジリスク級、バーミンガム級、ドゴス・ギア級といった大型戦艦や波動砲を撤去し飛鳥型のメイン装置たる波動共鳴波発生装置を搭載したドレッドノート級甲型などが展開、更に視野を広げれば数多の主力戦艦や空母、巡洋艦、駆逐艦等小型艦、連邦加盟国の艦艇が所狭しと展開し艦列を作り式の開始を待ちわびていた。
展開する艦艇の大部分が無人艦とはいえしっかりとした戦闘能力を持つ艦艇が綺麗な艦列を作り、魅せるその姿は正に圧巻であった。
「素晴らしい光景だ」
観閲艦隊旗艦ブルーノアに乗艦している総長は満足げに呟いた。
政治的アピールの面が強い観艦式とはいえここまでの艦艇数が揃うとなると、見る者全てが圧倒される光景なのは間違いなく、それは観艦式の準備を進めた総長もまた例外では無かった。
その後、始まった観艦式は全宇宙へと生配信された。地球防衛艦隊結成以来、全ての観艦式では新鋭艦がお披露目されているが今回は「ブルーノア」がお披露目され、その性能を紹介し地球防衛艦隊の力を数多の艦艇と共にアピールし、地球はこの銀河大戦を戦い抜くという意思と力を地球連邦市民や同盟国、そして敵であるボラー連邦陣営に対して堅持したのであった。
この日の観艦式で総長は演説でこう述べた。
「地球連邦と銀河連合構成国は大義のため一丸となり、命をかけて祖国を守ろうとしている。天の川銀河において広大な土地と伝統ある国家が悪しき侵略者の手に落ち、落ちようとしているが、我々は怯むことも止まることもない。我々は最後まで戦う。宇宙で戦い、地上で戦う。我々はいかなる代償を払おうとも、国土を、国民を守る。
我々は決して降伏することはない。
惑星沖で戦い。小惑星帯で、要塞で、過酷な環境で戦う。
万が一、平和を求める伝統ある国家が征服され、飢えることがあろうとも、彼らを支える国々と栄えある地球防衛艦隊、そして銀河連合構成国の艦隊が共に戦いを続け、その国に解放をもたらしてくれるはずだ。
精強なる軍隊が地球連邦と銀河連合諸国に必ず勝利をもたらすであろう」