タイタン基地防衛艦隊司令部
「それは本当か」
地球防衛艦隊司令の土方は低く貫禄のある声で参謀に聞き返す。それに対して作戦参謀は落ち着いた声で返答した。
「間違いありません。白色彗星は遂に進路を地球に向けました」
参謀はそう言いながら観測データを土方に手渡す。
「わかった。敵艦隊の動きはどうなっている」
「特に観測はできていません。ただ散発的な攻撃は完全に無くなっています。外周防衛部隊も前回の艦隊殲滅以降全く接敵していません」
作戦参謀はそう報告した。
事実これまで多数のガトランティス艦隊及び潜宙艦が太陽系外縁各地に散発的に出没しており、それを防衛艦隊の外周防衛部隊や主力艦隊、巡洋艦隊、護衛艦隊が追い払っていた。だが白色彗星が進路を変える少し前からガトランティス艦隊の散発的な攻撃は無くなっていたのである。
そして参謀から白色彗星とガトランティス艦隊に対する情報を受け取った土方は命令を出した。
「そうか。よしプランA発動だ。パトロール艦隊、護衛艦隊、地球軌道艦隊及び練習艦隊を除く全艦隊の波動砲搭載艦は月面基地に、それ以外の艦はタイタン基地に集結、白色彗星の来襲に備えて艦隊を再編成する」
「了解しました。直ちに全艦隊に通達します」
「たのむ。それと防衛艦隊司令部をアンドロメダに移す」
「はっ!直ちに手配いたします」
土方司令の命令を受けた作戦参謀は短く返事をすると敬礼し司令室を後にした。
第十一番惑星宙域 第六艦隊
「ワイアット司令、艦隊司令部より緊急入電です」
「なんと言ってきた」
緊急入電にも関わらずワイアットは冷静に対応した。これまで散々外周防衛部隊を率いてガトランティス艦隊と戦ってきていたので余程の事でもない限り驚きはしない状態であった。
「プランA発動とのことです」
「了解した。全艦に通達しろ、波動砲搭載艦は護衛艦と共に月に、その他の艦艇はタイタン基地へと向かう」
「イエッサー!」
アステロイドベルト宙域・訓練部隊
「司令、艦隊司令部より入電。プランA発動とのことです」
「わかった。各艦所定の集結地点に移動せよ」
司令部より発信された「プランA発動」の命令により太陽系各地に展開していた艦隊はそれぞれの集結地点に向かうべく一斉に行動を開始した。
防衛軍司令部
ここ司令部は防衛艦隊の行動が始まったことで慌ただしくなっていた
「第三十三輸送艦隊は予定通り時間断層工場に入港せよ」
「民間の船は全て最寄りの港に退避だ」
「第二十補給隊を月面基地に急がせろ」
「完成した艦艇は順序発進。性能試験終了後直ちに予備の艦隊に合流させろ」
オペレーターが矢継ぎ早に指令を出し体制を整えていた。
その頃、タイタン基地から一つの艦隊が発進する、艦隊は防衛艦隊総旗艦アンドロメダに率いられ進路を月面基地に向け土星宙域を後にした。
そして月宙域には太陽系各地から続々と艦隊が集結しつつあり月面基地の管制室は大忙しだった。
「第三艦隊所属艦はエリア3に第七艦隊所属艦はエリア12へ移動せよ」
「第十二艦隊所属艦到着しました!」
「第十二艦隊所属艦はエリア8へ誘導しろ」
「了解。{こちら月面基地管制室、第十二艦隊所属艦はエリア8へ移動せよ}」
月周辺には多数のドレッドノート級戦艦やエンケラドゥス級巡洋艦、さらにアンドロメダ級戦艦といった防衛艦隊の新鋭艦が集結しつつあり見るものにその威容を誇っていた。
タイタン基地も月面基地と同じような状況だった。多数のマゼラン級戦艦や旗艦タイプのアナンケ級戦艦、サラミス級巡洋艦といった古くからの地球の主力艦艇が集結していた。その中でも第六艦隊旗艦のバーミンガムは一際その存在感を放っていた。
バーミンガムはイギリスがガミラス戦争時にヤマトと同じく地球脱出用に建造が進められていたが資材不足や遊星爆弾の攻撃により遂に戦争終結まで完成しなかった戦艦だった。
そのバーミンガム艦橋で司令のワイアット中将は好みの紅茶を飲みながら集結しつつある艦隊を眺めていた。
「艦長これは圧巻の光景だな」
「そうですな。最新鋭艦こそ居ませんがこれほど大規模の艦隊が集結することは初めてですから」
「戦争に勝ったら上に観艦式開催を具申するのもありだな」
「そのためにはこの戦争、生きて勝たねばなりません」
「まったくだ」
そう言いワイアットは笑みを浮かべながら紅茶を飲んだ。
その後、タイタン基地の会議室では大将に昇進したレビル大将と各艦隊司令が集まり作戦会議を開いていた
「土方司令からの命令で我々は艦隊を四つに分けることになっている」
集結した艦隊の総司令であるレビル大将はそう言いパネルに編成表を映した
「まず艦隊を再編成し第一から第三までの大隊を編成、もう一つは第一航空艦隊を中心とした空母艦隊を編成する」
「なるほど。それで大隊の指揮官はどうするおつもりですか」
「大隊については私が指揮する第一大隊、ティアンム中将指揮の第二大隊、ムバラク中将指揮の第三大隊とする」
「了解しました」
「今後の作戦については随時アンドロメダから送られてくる情報によって決まる、諸君はいつでも作戦を行えるようにしといてほしい」
「了解しました」
「うむ。よろしく頼む」
会議終了後、レビル大将とティアンム中将は停泊中の艦艇を見ながら腰を掛け、会話をしていた。
「将軍、いよいよ決戦ですか」
「またガミラス戦時のように多くの命を失わせてしまうかもしれんな」
「そうですな。しかし一人でも多くの兵を生き残らせてやらなければなりません」
「だな。そのためにも我々指揮官が知恵を絞らなければならないな」
「ですな。ガミラス戦役生き残りの知恵を生かす時ですかな」
「うむ過去の戦争の知恵を生かす時だな」
「将軍、多くの将兵の為にも頑張るとしましょう」
「あぁ 中将その為にも第二大隊を頼む」
「わかりました」
ガミラス戦争を生き残った指揮官達は一人でも多くの兵を生残らすことを決意するのだった。
同じ頃、月に集結した艦隊も再編成が完了、白色彗星の来襲に備えていた。
しかし、その白色彗星からは大艦隊が出撃していた。それと同時にシリウス恒星系からバルゼー指揮下の前衛艦隊が、プロキオン恒星系からはガトランティスプロキオン方面軍が出撃、白色彗星から出撃した艦隊と合流し圧倒的な戦力で太陽系に進軍していた。