時に2205年8月25日、SUSの建造中だった要塞を占領をしたことにより、いよいよSUS本国侵攻も今かという時に統括司令部の会議室では重要な会議が行われていた。
統括司令部会議室
「それではSUSの本星攻略作戦について説明します」
参加者が揃った会議室で議題の第一声を放ったのは作戦参謀長チュン・ウー・チェン大将であった。
「まずSUSの本星ですがかなり独特です。偵察に当たったブルーフィッシュによりますと星系と呼べるものではなく自由浮遊惑星と恒星がただ一つあるだけです。付近に衛星すらありません。よって作戦は艦隊でSUS艦隊を粉砕した後、システムの照射によって本星を破壊します。システム使用につきましては総長から許可を得ており、遭遇時の状況を基にするとボラー連邦と違いまともな話し合いができないと判断した為です。」
モニターには作戦計画や知的生命体が住むにしては不気味すぎる惑星の画像を含めて様々な情報が映されていた。
おおよそ自分達と同じ生命体が住めるとは思えぬ惑星の姿を見て、会議室に居る面々は顔を強張らせるもの難しい表情を浮かべる者と様々であった。
「予想される敵戦力は」
説明を受けていたゴップ総参謀がチェン大将に尋ねた。
「偵察ではわかりませんでしたが、過去の戦闘、と言ってもバダルメ恒星系と先の要塞攻略戦の2戦しかありませんが500隻から1000隻は軽くいると予想したほうが良いでしょう。正直に言いまして詳細な戦力を把握することができません。なにせバダルメ恒星系と建造中の要塞での戦闘以外どこを偵察しても接敵どころかSUSの領土痕跡すらありませんでしたので」
「わかった。侵攻作戦に投入する戦力はどうする」
「はい。戦力は第二主力艦隊、第七遠距離遊撃打撃艦隊、第三、第四戦略艦隊を投入します。またウルップ星域国家連合も艦隊を出すとのことでエトス艦隊が250隻、ベルデル艦隊、フリーデ艦隊がそれぞれ150隻ずつ出すそうです。因みに防衛艦隊指揮下に入るとの返答を得ています」
チェンに代わり宇宙艦隊司令マンフォード元帥はそう答えるとモニターに投入艦隊戦力の一覧を表示させた。
艦艇総数では予想される敵艦隊には劣るが質では圧倒的な戦力である。
「了解した。勝算はあるな」
「あります。正直艦艇数では劣りますが過去の戦闘データを見ても総合的な戦闘力では此方が上なので勝てるでしょう」
マンフォードは自信を持って答えた。そして次は艦隊運用参謀ノーマン・スコット少将が発言した。
「本作戦での艦隊運用ですが。第七遠距離遊撃打撃艦隊旗艦のアンドラステを総旗艦とし、キンメル中将が作戦総指揮を執り作戦を行います。またウルップ星域国家連合の艦隊は後詰めとして参加していただきゴルイ提督を艦隊指揮官とすることで話を付けています」
「了解した。艦隊運用については現場に任せる」
ゴップがそう言うと会議はSUSとはどういう存在なのかという話題に移っていった。
8月30日バダルメ恒星系
この日、バダルメ恒星系の各基地から大艦隊が出撃していった。
「全艦発進」
市民に見送られながら発進するエトス艦隊旗艦兼ウルップ星域国家連合艦隊総旗艦のシーガル艦橋ではゴルイ提督が艦橋にある指揮官位置に仁王立ちしながら言っていた。またエトス星の別の基地からは第二主力艦隊がエトス市民に盛大に見送られながら出撃していた。他にもフリーデ星からは第七遠距離遊撃打撃艦隊がベルデル星からは第三、第四戦略艦隊がそれぞれの国家の艦隊と共に盛大に市民に見送られながら出撃していった。
各惑星から出撃した艦隊はバダメル星系外縁部で集結すると隊列を組み一路SUS本星めがけてワープした。
同時刻ウエスト恒星系SUS本星
「全く軍は何をしておるのだ!」
SUS軍総司令官のバルスマン元帥はそう怒鳴り散らしていた。理由は軍が再度持ってきた艦隊再編案と再侵攻にかかる期間の情報だった。第1艦隊から第6艦隊を投入して行ったウルップ星域国家連合への侵攻作戦は只でさえ苦戦していた所に加勢した僅か3隻の戦艦による攻撃で艦隊がほぼ壊滅し失敗した。これだけでもバルスマンからしたら腹立たしいのだが軍が再度提出した艦隊再建と再侵攻に掛かる時間を見て更に機嫌が悪くなっていた。一度に失われた戦力が大きすぎたため再建計画が遅々として進まないのである。これがバルスマンをより不機嫌にさせていた。さらに建設中の要塞守備艦隊が壊滅し要塞は制圧される始末であり、これを受けて軍が再度提出した軍備再建計画は初期案より再建期間が伸びていたのである。
「落ち着いてはどうです、総司令官。怒鳴っても何も解決しません」
そう言ったのは唯一健在な第7艦隊の司令官であるメッツラー大将であった。
「確かにそうだな。怒鳴り散らしても意味ないな」
部屋が冷える様な冷酷なメッツラーの声を聞いたバルスマンは先程までの怒りは何処へと急に冷静になった。そして少し考えた後に口を開いた。
「そうだ。メッツラーよ。新鋭艦を含む今ある艦艇全てをお前の第7艦隊に与える。それで再侵攻か奴らが攻めてきた時の防衛に使え」
「承知しました。総司令」
メッツラーはそう言うとニヤリとした。そしてそれから数日後にバルスマンの言う「奴ら」がやって来た、より凶悪な戦力で。
SUS侵攻艦隊総旗艦アンドラステ
「全艦ワープアウト完了!落伍艦無し」
「ウルップ星域国家連合艦隊も異常なし」
「正面にSUS本星を確認」
「了解した。これよりSUS本星侵攻を開始する。本国にシステムの照射の座標を打電。艦隊は前進」
オペレーターの報告を聞いたキンメル中将はそう言った。そしてSUSにとって破滅をもたらす艦隊の進軍は始まった。
SUS軍司令部
「星系外縁に大艦隊出現。本星に向けて進撃してきます」
「各種情報の照合から地球及びそれに連なる国家の艦隊と確認」
「メッツラーの艦隊に迎撃を命令せよ」
軍司令部でオペレーターの報告を聞いたバルスマンはそう命令を出した。一方命令を受けたメッツラー率いる艦隊は即座に出撃した。
総旗艦春藍型アンドラステ
「SUS本星より艦隊出現、数約700」
「予想通り来たか。全艦波動砲戦用意。手加減は不要だ。薙ぎ払え」
キンメルは即座に艦隊に波動砲戦の命令を出した。
先の戦闘報告から敵のメンタリティは想像を絶するものであると分かっている。だからこそ手加減不要であった。
「了解、全艦波動砲戦用意陣形転換急げ」
「波動砲エネルギー充填開始」
命令を受けたオペレーターは素早く行動を開始し艦隊各艦は波動砲発射の準備を始めた。
エトス艦隊兼ウルップ星域国家連合艦隊旗艦シーガル
「アンドラステより入電、全艦波動砲戦用意です」
「わかった。本艦隊は第七遠距離遊撃打撃艦隊と第二主力艦隊の後方で待機だ。それとウルップ星域国家連合全艦に打電{今回も地球防衛艦隊の戦い方をその目に焼き付けよ}と」
「了解しました」
ゴルイ提督は全艦に地球防衛軍の戦い方をその目に焼き付けるように言った。
一方何も知らないメッツラーは地球艦隊を殲滅すべく艦隊を前進させていたが旗艦マヤには前回拡散波動砲の攻撃を受け、這う這うの体で撤退してきた艦艇から悲鳴のような退避を願う通信が来ていたがメッツラーは無視していた。
「臆病者どもめ」メッツラーはそう言いたげな表情をしながら通信の内容報告を聞いていた。この時、メッツラーが逃げ帰ってきた艦艇からの忠告を聞いていたら戦局は変わっていたかもしれなかった。しかしメッツラーはこの忠告を無視し防衛艦隊の波動砲射程圏内に迷いなく入って行った。
だがこれにはメッツラーなりの考えがあった。メッツラーの座乗艦第7艦隊旗艦マヤ型戦艦マヤの小型版である新型艦のティカル型盾艦が7隻この艦隊には配備されており、この盾艦は艦同士が連携することで電磁シールドを展開し敵の攻撃を防ぐ事が可能であり、メッツラーはこの盾艦を艦隊前面に配置し、7隻で電磁シールドを展開、地球防衛艦隊の波動砲を防ぐ算段であった。
そして艦橋内に「敵艦隊から計測不能のエネルギー反応」と言う報告が入った時、メッツラーは盾艦に電磁シールド展開を命じた。一方、旗艦アンドラステ艦橋では未確認のSUS艦を観測していたがキンメルは構うことなく「全艦波動砲発射!」の号令を掛けた。
号令の掛かった瞬間、第七遠距離遊撃打撃艦隊と第二主力艦隊の波動砲搭載艦の艦首が強く光り、拡散波動砲と拡大波動砲、そしてアンドラステに試験装備されたプラズマ拡散波動砲がメッツラー率いるSUS艦隊に向けて放たれた。
放たれた拡散波動砲はSUS艦隊目前で拡散し艦隊を包み込むように、拡大波動砲は拡大しながら電磁シールドを無いも同然に食い破りSUS艦隊を飲み込んだ。メッツラーは盾艦で攻撃を防げると確信しモニターを見ていたが青く強く光る物が目前まで来たと自覚した瞬間、微粒子レベルで分解された。
波動砲の斉射を食らったSUS艦隊は展開した電磁シールドも意味なく全滅した。
総旗艦アンドラステ
「敵艦隊全滅しました」
「未確認の敵艦は何かしらのシールド展開したようですが波動砲は防げなかったようです」
「本国よりシステムの照射準備完了とのことです」
「了解した。全艦隊反転。安全宙域まで離脱だ」
「了解。全艦反転」
キンメルの命令を受け艦隊は反転し安全宙域までの離脱を開始し、30分後には艦隊の安全圏への退避は完了した。
「本国へ打電退避完了と」
「了解。打電します」
統括司令部
「アンドラステより入電、艦隊退避完了です」
「了解したコロニーレーザー発射10秒前だ」
総長はそう言うとボタンを押した。今回は相手の大ボスが異次元の存在なので罪悪感は無かった。そして司令室にカウントダウンが流れる。
「10…9…8…7…6…5…4…3…2…1…0発射」
カウントダウンが0になりモニターに映るコロニーレーザーの発射口が青く光りコロニーレーザーが発射された。そして発射されたコロニーレーザーはSUS本星付近まで転送された。
転送されたコロニーレーザーはSUS本星2000キロ手前に出現するとそのままSUS本星に命中し惑星を貫いた。そして貫かれたSUS本星はディンギル星同様に爆発を起こしながら崩壊を始めた。しかし今回は少し違った、SUS本星内にはメッツラーが密かに用意した異次元とつながる超小型の特殊なブラックホールが存在していたのだ。それをコロニーレーザーは貫いたためブラックホールと干渉を起こし大爆発を起こしたのだ。その為SUS本星はディンギル星のような崩壊ではなく崩壊を始めた瞬間消し飛んだのである。本星の司令部に居たバルスマンは何が起きたのか理解する間もなく消し飛んだのでった。
総旗艦アンドラステ
「SUS本星の消滅を確認」
「了解した。後は次元潜航艦に任せる。全艦ワープして離脱だ」
キンメルは通常とは異なる惑星の最期を目の当たりにしつつも冷静に命令を出した。
一方のウルップ星域国家連合艦隊将兵も冷静だった。こちらは惑星の崩壊と言うよりも地球の力を目の当たりにしたのが大きかった。「地球連邦、実に恐ろしい国家だ。やはり味方で良かった」ゴルイ提督はそう呟いたが、これはウルップ星域国家連合艦隊将兵の気持ちを代弁したものでもあった。そして艦隊はワープで離脱し、数日後にバダメル星系に帰還した。
またSUS本星跡地は次元潜航艦ブルーフィッシュが数日後に調査したがそこには惑星の残骸と呼べるものも無く、こうしてSUSは消滅した。
強大な軍事国家の余りにも呆気ない最後であった。