地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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土星沖会戦3

土星沖での戦闘は応戦しつつ後退する防衛艦隊をバルゼー艦隊が追撃する形となり、双方の距離は縮まりつつあった。

しかし防衛艦隊はじわじわと損害を出しながら後退しつつも、その応射は収まるどころか激しさを増していた。

 

 

防衛艦隊総旗艦アンドロメダ

 

「第一から第三大隊、前面に展開します」

「駆逐艦西安、綾波轟沈 戦艦インドミタブル被弾 巡洋艦酒匂戦線離脱」

 

アンドロメダ艦橋ではオペレーターが次々と現状を報告する。

 

「ガトランティス艦隊は距離を詰めてきているか」

 

その報告を聞きながら土方司令はそうオペレーターに尋ねた。

 

「はい。ガトランティス艦隊は依然加速しつつ追ってきています。その為距離も次第に近づきつつあります」

「うむ、全艦後退を続けろ」

 

土方はそう言いつつ位置関係の映されたディスプレイを見た。

ディスプレイには敵味方の情報が映されており、主力部隊の前面には第一から第三大隊がアンドロメダ以下の波動砲搭載艦を守るように展開し、防衛艦隊は土星の輪の上部に後退しつつあった。

 

一方のバルゼー艦隊は勝ち戦感が強くなり、功を焦った艦が続出し足並みがそろわず追撃する部隊が突出し、集中砲火を浴びて損害が拡大していた。

 

 

バルゼー艦隊旗艦アポカリクス

 

「地球艦隊依然後退中」

「突出した艦がやられています」

「突出させるな!焦る必要はない、此方がいずれ追いつく。各艦に厳命せよ」

「了解しました。各艦に通達します」

 

この時、バルゼーは表向きは冷静に命令を出していた。

 

だが冷静を装うバルゼーも功を焦る部隊に対して若干の怒りを抱きつつあった。

現在のバルゼー艦隊は所謂混成艦隊であり、普段からバルゼー直卒の艦隊は一糸乱れぬ統率が取れていたのだが白色彗星から増援として派遣されていた艦隊が功を焦っていた。これは普段から戦場には出ずに後方待機が続いていた弊害であった。

 

一方の防衛艦隊はバルゼー艦隊がこのような問題を抱えるとは知らず応戦を続けていた。

そして両軍とも砲戦は続き被害が出るが、防衛艦隊は防御力の高いマゼラン級を前に出しつつ後退し被害を抑えていた。

 

 

マゼラン級インドミタブル

 

「左舷に被弾」

「損害報告急げ!」

「マゼラン級が簡単に沈むか!主砲撃ち返せ!」

 

転生者の艦長が大声で言う。

既に被弾が相次ぎ損害が蓄積しているインドミタブルだが艦長はまだまだ戦うつもりでいた。

 

「了解!」

「目標正面ククルカン級駆逐艦。主砲撃てっ」

 

次の瞬間インドミタブルの1.2番主砲が発砲し、その砲撃によってククルカン級駆逐艦が1隻、爆発を起こしながら土星の輪に沈む。こうして土星の輪の上で砲撃戦が繰り広げられる。

 

そして、そんな激戦続く大艦隊戦の光景を静かに見つめる眼が幾つもいた。

 

 

 

総旗艦アンドロメダ

 

「ガトランティス艦隊さらに増速しました!」

「ガトランティス艦隊、目標空域に間もなく突入します!」

「うむ。照明弾発射用意だ」

 

土方はオペレーターの報告を聞き冷静に命令を出す。

 

「了解、照明弾発射よーい」

 

命令を聞いたオペレーターから復唱がおこなわれ、照明弾発射の準備が行われる中、土方は赤い円の書かれたディスプレイをじっと見ていた。

 

「照明弾発射準備完了。司令いつでもいけます!」

「まだだ、もう少しだ」

「しかし!」

 

ガトランティス艦隊が赤い円の中に突入し焦るオペレーターに対して土方司令は冷静に対処の命令をする。

 

「敵艦隊を完全に空域に入らせるんだ」

「了解」

 

そして永遠とも思われた時間約2分が経ち、その時が来た。

 

「ガトランティス艦隊完全に空域に入りました!」

 

オペレーターのその報告を聞いた土方は目をカッと開き命令を出した。

 

「照明弾発射!」

「照明弾てっー」

 

土方の命令によりアンドロメダから照明弾が打ち上がった。

 

 

 

バルゼー艦隊旗艦アポカリクス

 

「地球艦隊が照明弾を打ち上げました」

「なんのつもりだ」

 

バルゼーが呟いた瞬間それは来た。

 

「下方より熱源多数!」

「なに!」

 

バルゼーは思わず叫んだ。

 

次の瞬間ガトランティス艦隊下方、土星の輪から現れた無数の火線はメダル―サ級を直撃し2隻撃沈、3隻を大破に追い込んだ。

 

「ダガルーダ、ゼゴルーダ轟沈!」

「なんだと」

「下方より何か来ます!」

 

兵士がそう報告した瞬間、バルゼー艦隊の直下である土星の輪の中から金剛改型17、村雨改型52、磯風改型80の防衛艦隊と空母型アンドロメダ級ノイ・バルクレイ他3隻とメルトリア級4、デストリア級15、ケルカピア級34、クリピテラ級62が出現し、ガトランティス艦隊めがけてミサイルやビームを撃ちまくりながら突撃を開始した。彼らはずっとこの瞬間のために土星の輪の中で息を潜めていたのだった。

 

さらに防衛艦隊主力の後方に木星沖で待機していた波動実験艦銀河とドレッドノート級14、マゼラン級10、エンケラドゥス級18、サラミス級14、駆逐艦・護衛艦他52とバレル大使とドメル将軍座乗のゼルグート級が1隻ずつの計2隻、そしてランダルミーデ級3、ハイゼラード級4、ガイデロール級4、ガイペロン級3、ゲルバデス級2、デストリア級10、クリピテラ級138がワープアウトしてきた。

特にドメル将軍指揮下の艦隊は地球を救うためにディッツ提督の勅命を受け、ガミラス本星からわざわざ駆け付けていた。

 

一方、下方からの奇襲的攻撃と大規模な増援艦隊出現はバルゼー艦隊に大きな動揺と混乱を与えていた。

 

「下方より地球・ガミラス連合艦隊突撃してきます!」

「前方、地球艦隊後方にも多数のワープアウト反応!」

 

驚きの声がアポカリクス艦橋内に響く。

 

「そんなバカな・・・  まだ戦力があったというのか!」

 

バルゼーは驚きのあまり大きな声を出した。そこへ部下からの悲鳴のような報告が入る。

 

「本艦隊の損耗率急速に拡大!」と。

 

 

バルゼーはまさかの伏兵と大規模な増援艦隊に驚き一時的に艦隊指揮から気が離れた。その間にも土星の輪から突撃を開始した突撃部隊は手当たり次第に砲撃とミサイル攻撃を実施しガトランティス艦を沈めながらバルゼー艦隊を貫く形で進撃していく。もちろんバルゼー艦隊の反撃で突撃部隊にも損害が発生し既に十数隻が沈められていたが、撃沈したガトランティス艦は400隻を大きく超えていた。

 

「撃て撃て!何処を撃っても当たるぞ!どちらを向いても敵ばかりだ!」

 

そう金剛改型の艦橋で艦長が満面の笑みで言う。

実際、周囲がガトランティス艦だらけなので沈め放題だった。どの艦も主砲やミサイルを撃ちまくり、ククルカン級やラスコー級、ゴストーク級といった軽装甲艦を沈めていきながら艦隊後方に回り込んでいった。

 

「カラクルム級8隻撃沈、さらにラスコー級他185撃沈!」

「よし、このまま押し込め!遠慮はいらん!撃ちまくるんだ」

 

オペレーターの報告を聞き、突撃部隊司令のフォムト・バーガー少将は旗艦ノイ・バルクレイの艦橋で言った。

 

一方、バルゼー艦隊は大混乱に陥っていた。

伏兵による奇襲により艦隊を中央突破され隊列はズタズタにされ、反撃のさなかに同士討ちも発生する始末だった。

 

「各艦陣形立て直しを優先しつつ反撃しろ!ただし無理な反撃はするな!」

 

バルゼーはそう叫ぶが既に収拾がつかない状態になっていた。

 

「ダメです、隊列が乱れ同士討ちが起きています!」

「下方からの艦隊は本艦隊後方に回り込むつもりです」

「後方よりヤマトの機動部隊接近してきます!」

 

観測兵やレーダー手が悲鳴なような声で報告する。中でも「ヤマトの機動部隊接近」ほど悲報じみた報告は無かった。

 

 

「なんだと!」

 

バルゼーは「ヤマトの機動部隊接近」の報告を聞き驚きの声を出した。

 

この状況でヤマトの接近は死刑宣告をされたも同然であった。

 

 

一方、突撃部隊は最大戦速でバルゼー艦隊を突っ切ると素早くバルゼー艦隊後方に回り込み、ヤマトの機動部隊と合流し、バルゼー艦隊を前方の防衛艦隊主力と挟撃する陣形をとった。そこまでの機動は実に鮮やかな艦隊運動だった。

 

 

「さすがバーガー司令、鮮やかな艦隊運用だな」

 

土方はそう呟いた。

 

「突撃部隊、ガトランティス艦隊後方に展開しました」

「増援艦隊展開完了」

「ドメル将軍より入電、攻撃準備完了とのこと」

「ヤマトの機動部隊、突撃部隊と合流しました」

 

オペレーターの報告を聞くと土方は命令をだした。

準備は整ったのだ。

 

「よし。役者は揃ったな。全艦前進、反撃開始だ。一気にガトランティス艦隊を殲滅する!」

「了解、全艦に通達します」

 

通信兵が各艦に通達する。

そして土方司令の反撃命令はドメラーズ三世にも伝わっていた。

 

「いよいよガトランティス軍主力との対決ですな」

 

ドメラーズ三世艦橋内で副官のハイデルンがドメルに尋ねる。

 

「そうだ、全艦持てる火力のすべてをガトランティス艦隊にぶつけろ」

 

ドメルはそう言った。

今までの借りを返す時が来たのだ。

 

そして防衛艦隊とガミラス艦隊は波動実験艦銀河が展開する巨大波動防壁に守られながら一気に反転大攻勢に出た。

 

ゼルグート級やハイゼラート級、ガイデロール級が一斉に魚雷を発射し、バルゼー艦隊の隊列を乱す。そこへ各艦のミサイルや砲撃が殺到し次々とガトランティス艦を沈めてゆく。ショックカノンに貫かれ爆沈する艦、ミサイルが多数命中し大爆発しながら沈む艦、陽電子ビームで戦闘不能にされる艦など凄まじい勢いでバルゼー艦隊は数を減らしていく。

 

さらに地球・ガミラス合同艦載機部隊も攻撃を開始しガトランティス艦を沈める。

勿論ガトランティス艦隊も果敢に反撃するが指揮系統の混乱により統率の取れない対空射撃は思うように当たらず、地球・ガミラス連合艦隊へのミサイルやビーム攻撃は巨大波動防壁により殆どの攻撃を防がれ、その反撃は地球・ガミラス連合艦隊の一大反転攻勢の前には虚しいものだった。

 

また増援のガミラス艦隊が、小マゼラン星雲でガトランティス艦隊を相手にし、常に勝利し続けたドメル艦隊だと判明するとバルゼーは険しい表情を浮かべ、他の将兵の士気は目に見えて低下した。

 

 

ガトランティス艦隊旗艦アポカリクスのモニターには次々と沈んでいく友軍艦が映されていた。既に地球・ガミラス連合艦隊の反撃が始まり10分近く経っていた。そしてこの時点でのバルゼー艦隊の損耗率は7割を超えようとしていた。

 

「バルゼー司令指示を!」

「なんということだ・・・」

 

参謀が指示を求めるがバルゼーはただモニターを見ているだけだった。無敵を誇った自軍の艦隊が崩壊していく姿を前にバルゼーは何もできていなかった。今まで連戦連勝で無敵を誇ってきたが故に、押し込まれた時にはとても脆かったのだ。

しかし突然モニターの画面が変わりズォーダー大帝が映った。

 

「無様だぞバルゼー。もうよい下がれ」

「はっ」

 

ズォーダー大帝の言葉を受けバルゼーは一礼し艦隊に後退命令を出した。

 

この時、ズォーダー大帝は戦闘状況を白色彗星内から観ていたのだが、圧倒的に有利な戦力を有しているはずのバルゼー艦隊が地球艦隊に苦戦し、挙句の果てには地球・ガミラス連合艦隊にいいようにされていき、凄まじい損害を受け、既に戦線の立て直しが不可能なまでにされているのを見て痺れを切らしたのだった。

 

そして突撃部隊後方に突如として白色彗星が出現した。

その白色彗星は前進を開始し突撃部隊後方の艦艇を引き込み始めた。

 

 

防衛艦隊総旗艦アンドロメダ艦橋

 

「白色彗星出現、突撃部隊後方の一部の艦が引きずり込まれています!」

「突撃部隊に伝達、{艦隊は直ちに散開し離脱、本隊に合流せよ}と」

 

突然の白色彗星出現にも土方は動じず冷静に命令を出す。

 

「了解。直ちに伝達します」

 

土方は突撃部隊とヤマト率いる機動部隊に本体への合流を指示した。

しかし突撃部隊とヤマト機動部隊が展開していた後方に出現した白色彗星は、部隊後方に展開していた損傷艦を彗星内に引きずり込み始め、既に何隻かが引き込まれていた。

 

「古代、後方の損傷艦が引きずり込まれてるぞ!」

 

ヤマト艦橋では真田が冷静ながらも大きな声で言った。

 

「くそ!とにかく離脱しないと」

「アンドロメダより入電!{艦隊は直ちに散開し離脱、本隊に合流せよ}とのことです」

「よし直ちに全艦離脱だ!」

「了解、全艦に通達します」

 

ヤマト艦橋内では各々が為すべきことを成していた。

 

 

そして命令を受けた突撃部隊とヤマト機動部隊は直ちに散開、一目散に主力部隊との合流を目指した。それはガトランティス艦隊からの砲撃に対しても僅かな反撃という急ぎぶりだった。

 

 

結果、少なくない損傷艦が白色彗星に飲み込まれたが、艦隊の殆どは離脱に成功し、無事に地球・ガミラス連合艦隊本体に合流したのであった。

 




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