2204年8月19日
南米ジャブロー基地、現在この基地では議会で予算が可決された事により、次世代艦の同時建造が行われていた。その内容は戦艦16隻、巡洋艦27隻、駆逐艦54隻であった。またその他にもマゼラン級など多数の既存の艦艇も建造されていた。そして基地の一室では一人の将校が転生者の一人から次世代艦についての説明を受けていた。
「これが次世代の主力艦か、随分と大型化したな」
そう将校が机に広げられた図面を見ながら呟く。
「はい。次世代艦は太陽系外での長期活動を前提とした設計となっているので」
将校の言葉に対して艦製部門の転生者はそう答える。
「しかし戦艦、巡洋艦はともかくA1タイプ駆逐艦の武装が40㎝連装砲3基と8連ミサイルランチャー1基と艦首ミサイル発射管4基、対空パルスレーザー6基とは重武装というかなんというか、これが駆逐艦の武装として良いのかね?」
将校が疑問に思ったことを聞くと、転生者はすぐに答える。
「それですが問題はありません。A1タイプ駆逐艦は主に戦艦を主力とした艦隊に配属され、戦艦との統制射撃を前提としています。また主砲も速射性に優れたものを開発し搭載しています。逆にこのA2タイプ駆逐艦は新型の10㎝連装砲を艦首上甲板に2基、後部甲板に2基、側面に2基ずつ、艦艇部に2基、また対空パルスレーザーを10基装備しており雷装は艦首ミサイル発射管4基のみで、対空性能に特化した艦艇となっております。またその必要性に応じてどちらのタイプも艦首に破滅ミサイルこと波動融合ミサイルを1基搭載できます」
そう転生者はさりげなくとんでもない武装を装備できることを話した。
「なるほど、武装と運用目的は理解した。しかし最後の破滅ミサイルはなんというか過剰すぎないか?」
「まぁ必要に応じての装備ですし、何より破滅ミサイルを装備できる地球独自の艦艇を建造するためにこのタイプの駆逐艦は設計されました。もちろん破滅ミサイルを装備するのは戦略艦隊所属艦が殆どだと思いますが」
「なるほど、確かにいつまでもゴストーク級を建造して運用するのはコスト的、運用的にも問題があるしな」
将校はそう言い納得しながら続きの説明を聞く。
「またこのタイプの駆逐艦は船体が大型であるため今後、ゴストーク級の後継艦として設計変更をしてミサイル艦として運用しようと艦製部門と統括司令部では言われています」
「なるほど、つまり拡張性にも優れているのか」
「そうです。現在運用されているミサイル艦についてはサラミス級の設計変更も考えましたが、次期主力駆逐艦の方が拡張性に優れているため艦製部門ではそのような結論になりました。また将来的にはミサイル艦として運用したいとの現場の意見も多くありましたので」
「なるほどな。それとサラミス級で思い出したのだが、ジャブローのドックで同時に起工されて出港間近の6隻のサラミス級もどきはなんなのだね。私には詳しく説明をされていないのだが」
そう将校は疑問に思っていたことを聞いた。
「その艦についてですか。あの6隻は仮称改サラミス級と言いまして本来はサラミス級の後継艦として開発された艦です」
「本来は?」
「そうです 本来はサラミス級の後継艦として開発していたのですが、武装配置や船体規模、生産コスト的には現在運用しているタイプの方が良い、という事になったので現在は試作6隻の建造で打ち止めです」
「なるほど、説明感謝する」
その頃、噂の改サラミス級6隻では出港準備が行われていた。
「はぁ、ようやく昇進できたと思ったら中途半端な新造艦の艦長か」
その内の1隻の艦長席でこの艦の艦長がそうぼやいていた。
「仕方ありませんよ。とにかく間もなく出港ですからご命令を」
副長がそうきっぱりと言う。
「わかったよ。機関長、機関異常はないか」
艦長はどこか気が抜けたような声で尋ねる。
「異常なしです」
一方の機関長は至って真面目に返事をする。
「わかった。よし全艦出港よーい。目的地はルナツーだ」
「了解。目的地はルナツー。航路設定急げ」
航海長が復唱する。
その後、6隻の仮称改サラミス級はジャブロー出港後単縦陣を組み、一路ルナツーを目指した。
そして統括司令部の執務室では総長が資料を見ていた。
「ふむ、次期主力艦の建造は順調か。問題なしと」
総長が資料を読んでいると、そこへ秘書が報告に来る。
「総長、ジャブローより改サラミス級が出港したとのことです」
秘書がそう報告を伝える。
「そうか」
「で、総長はあの改サラミス級をどうするんですか」
「建造許可はしたものの建造費は既存のサラミス級の1.5倍だから、まず置き換えには使えんな」
そう苦笑いしながら総長は言う。事実、改サラミス級は既存のサラミス級の置き換えの為に計画された艦であったのだが、武装を詰め込みすぎたため建造費が上がっていたのであった。
「とりあえず6隻はロンド・ベルに編入かな。その後は新兵装の実験に使用したり、新兵の訓練にでも使うか」
「なるほど、ですがしっかりとした運用をしないと議会から何か言われかねませんよ」
「そうだな、第二次世界大戦みたいな戦争があったら通商破壊戦にでも使うか」
「確かに艦名的には使えそうですけど、デザリアム戦役ではそんな戦争にはなりませんよ」
「わかっている、まぁガルマン・ガミラスとボラー連邦の戦争に巻き込まれたら使ってやるさ」
「それには巻き込まれたくないですけどね」
二人はそう言い苦笑いをした。
一方、6隻の改サラミス級はルナツー入港後正式な艦名とロンド・ベル所属を言い渡された。
6隻はドイッチュラント級戦闘巡洋艦と命名され1番艦ドイッチュラント、2番艦畝傍、3番艦イルマリネン、4番艦ニューアーク、5番艦エドガー、6番艦トルードとなった。これらの艦はロンド・ベル隊配属後しばらくの間は訓練漬けの日々となった。
そしてその頃、銀河系で一つの帝国が建国された、その国家名はガルマン・ガミラス帝国。デスラー総統を国家元首としたこの帝国は、旧大ガミラス帝国のデスラー派の人々とガルマン人によって構成され、既に銀河系の超大国であるボラー連邦に肩を並べる国家として建国された。そんなガルマン・ガミラス帝国の本星にある総統府では盛大な建国式が行われ、銀河系に新たなる超大国が誕生したことを示していた。そして現在ガルマン・ガミラス帝国では各方面軍が編成され、ボラー連邦と戦争しつつ新たな領土獲得が同時に進められていた。
一方、初期は旧ガルマン・ガミラス連合艦隊(現ガルマン・ガミラス帝国軍)にボロ負けしていたボラー連邦軍もこの時期になると戦闘経験者も多少増え、さらに戦力を回復させガルマン・ガミラス帝国軍と互角の戦闘をするようになっていた。そのため両国の国境線では一進一退の激戦が繰り広げられることとなる。ちなみにこのボラー連邦軍の立て直しによりボラー連邦では多くの高級軍人が粛清を免れている。
そして地球占領を目論むデザリアム帝国地球侵攻艦隊は中間補給基地で補給及び更なる増援を待っていた。
「増援が到着するまで侵攻はしないという事ですか」
侵攻艦隊司令の一人であるミヨーズがカザン総司令に聞く。
「そうだ。本国からの情報によれば地球は更なる新鋭艦を就役させたらしい。なので、ここで増援艦隊と合流し、総数2500隻もの大艦隊で地球に侵攻する」
「なるほど。しかし、2500隻となると本国防衛や他の戦線に影響が出るのでは?」
ミヨーズがカザンに尋ねる。
「そこは、ゴルバを他の戦線に回すなどするらしい。つまりゴルバの代わりが増援艦隊だ。サーダ様からは我々は地球侵攻の事だけを考えればよい。と言われている」
「わかりました」
「しかし聖総統も容赦ないですな、たかがあの程度の国家に2500隻もの大艦隊で攻め入るなどと」
ミヨーズが返事をした後、会議を聞いていた基地司令のグノン大佐が少し笑いながら言う。
「貴殿はサレザー星系の出来事を聞いておらぬのですか」
そうミヨーズが尋ねる。
「勿論聞いている。ただ、あれはマゼラン方面軍の油断と初めての戦闘で情報がなかったからであろう。情報もあり優秀な指揮官と将兵で固められている、地球侵攻艦隊の敵では無いでしょう」
「なるほど。グノン司令のおっしゃる通り優秀な将兵でこの地球侵攻艦隊は固められている。必ず勝つでしょう」
総司令のカザンはそう言った。ただミヨーズとしては不安が残ってはいた。(奴らは何かとんでもない作戦を用意しているのかもしれん)ミヨーズはそう考えた。
これによりデザリアム帝国の地球侵攻は少しの期間遅れることとなった。
尤もこの会議を防衛艦隊の転生者の軍人が聞けば気を引き締めつつも、笑うだろう。なにせ彼らは戦艦だけでも500隻を軽く超す艦艇数であり総数5000隻を超えるガトランティス艦隊と戦い勝利しているのだから。ただし防衛軍はそれで油断するような軍隊ではなかった。
現在も総長や転生者達や芹沢参謀長が政府や関係各所と連携し、軍備増強と新装備の開発を進め、デザリアム帝国の侵攻に備え軍拡を進めていた。20個主力艦隊計画を超え30個主力艦隊計画という目標に向けて。