統括司令部
「第三艦隊警戒配置に就きました」
「ロンド・ベル隊より第一独立任務部隊がルナツーより出撃、太陽系外縁へと向かいます」
「第五艦隊ソロモンより全艦出港、警戒地点へ向かいます」
「民間船は随時最寄りの港に退避します」
「第25無人哨戒艦隊、不明物体との接触まであと2時間」
「第三機動艦隊、待機地点到着」
「シリウス・プロキオン方面軍警戒配置完了とのこと」
統括司令部司令室ではオペレーターの報告により各部隊の状況が知らされる。総長はそれを聞きながら指示を出す。
「無人哨戒艦隊の接触は慎重に行え。それと全軍に何時でも対デザリアム帝国迎撃作戦が行えるようにさせろ」
「了解しました」
一方、デザリアム艦隊と重核子爆弾は順調に地球に向けて進行していた。そこへ総旗艦ガリアデスのカザンのもとへ連絡が入った。
「カザン総指令、重核子爆弾の護衛についている前衛艦隊より入電です」
「なんと言ってきた」
「重核子爆弾に接近してくる艦がいるようです。まだ光学観測なので詳細は不明ですが」
「了解した。地球艦隊もしくはその他の勢力が攻撃してくるようならば迎撃しろと伝えろ。重核子爆弾の実験台にもなる」
「はっ。ではそのように」
カザンの言葉に短く返事をすると通信兵は下がった。
その頃、統括司令部のモニターには第25無人哨戒艦隊から送られてきている映像が映されていた。
「あれはなんでしょう」
「形状からして巨大な爆弾ですかね」
呼ばれていた技術官が言う。
「なるほど」
(間違いない重核子爆弾だ)総長はそう思った。
「付近に艦影が確認できます」
「数は?」
総長かオペレーターに尋ねる。
「どうやらステルス性が高いようで、詳細は不明ですが熱源観測を含めれば150隻前後確認できます」
「わかった。無人哨戒艦隊から所属を尋ねさせろ」
「了解しました。哨戒艦隊に所属を確認させます」
オペレーターが復唱し、無人哨戒艦隊に所属を確認させた。
デザリアム艦隊前衛艦隊旗艦ネズガリア
「司令、接近してくる艦艇より入電です」
通信兵が報告する。
「なんと言ってきた」
「{こちら地球防衛軍哨戒艦隊、貴艦の所属を答えよ。}とのことです」
「なるほど、接近してきていたのは地球の艦か」
「どうされますか」
「無視しろ、間もなく重核子爆弾の効果範囲に入る。それで攻撃する」
「はっ、了解しました」
「ふっふっふ まんまと接近して来よって。重核子爆弾の餌食にしてやる」
前衛艦隊司令はそう不気味に笑いながら言った。
統括司令部
「第25無人哨戒艦隊さらに接近します」
「異常はないか」
総長は異常がないか常に気掛かりであった
「はい、今のところ異常はありません。いえ!無人哨戒艦隊に対して何かしらのエネルギー波が当てられました!」
「なんだと!艦隊に異常はないか!」
総長は空かさず無人艦隊の異常の有無を確認させる。
「はい、現在艦隊に異常はありません」
「よし。エネルギー波の解析を急げ!」
「了解!それと熱源観測にて敵後方に多数の艦艇を確認しました。およそ二千!更に艦影から不明艦隊はデザリアム帝国艦と確認」
「わかった。第25無人哨戒艦隊は直ちに退避、全軍に第一種警戒態勢を取らせろ。それと対デザリアム帝国迎撃作戦発動だ」
「了解!」
オペレーターからの報告を聴き、総長は命令をだす。
司令室には警報音が鳴り響き始めた。
一方のデザリアム艦隊は重核子爆弾の影響を受けても航行している地球艦隊に驚愕していた。
前衛艦隊旗艦ネズガリア
「地球艦隊に重核子爆弾の影響が効いた様子がありません!」
「どういうことだ!生命反応はどうなっている!」
旗艦ネズガリアの指揮官席で司令が驚愕していた
「それが…生命反応がありません」
「ということは自動航行か」
「恐らくそうかと」
「やむを得ん、艦隊を向かわせて撃破する」
「しかし地球艦隊は加速しつつ離脱コースを取っています」
「くそ、今からだと追いつけんか」
「はい、このまま重核子爆弾の護衛に就いていた方が良いかと」
「うむ、そうだな」
こうしてデザリアム帝国前衛艦隊は追撃せず、第25無人哨戒艦隊は無傷で離脱した。
一方、防衛艦隊や統括司令部は対デザリアム帝国侵攻作戦発動に伴い迎撃態勢を整えていた。
統括司令部
「エネルギー波は特定が完了。ヤマトの真田技術長曰く、ハイペロン爆弾とのこと。特定の生命体の脳を破壊するものらしいです」
「了解した。ハイペロン爆弾は第三機動艦隊に破壊させる」
総長はそう命令を出す。
因みに内心では「なんでわかるんだ」と思っていた。
「了解。第三機動艦隊、ハイペロン爆弾前方の展開位置に移動します」
「冥王星より第一航空艦隊出撃、続いて第三艦隊展開完了します」
「次元潜航艦隊所定位置に展開完了、敵主力の監視に就きます。さらに第一戦略艦隊ソロモンより出撃」
「光学観測にてデザリアム艦隊主力後方に輸送艦隊確認」
統括司令部は各艦隊の情報が続々と集まっていた。
太陽系外縁部・第五艦隊旗艦タイタン
「全艦第一種戦闘配置に就け。それと他の艦隊はどうなっている」
ティアンム中将はそう参謀に尋ねる。
「レビル大将の第三艦隊は本艦隊左50万キロ地点に展開中。川崎中将の第三機動艦隊はハイペロン爆弾迎撃作戦の為、爆弾進路上に展開しています。その後方には第十艦隊と第十五艦隊が展開中。またロンド・ベル隊よりヤマト、ムサシ、シナノの第一独立任務部隊が独自に第三機動艦隊と共に展開しています」
作戦参謀は各艦隊の展開状況が表示されているモニターを見ながら答える。
「了解した。敵主力の総数と動きは」
「統括司令部と偵察にあたっている次元潜航艦によりますと二千以上とのことです。また新たに後方に輸送船団確認、なお現在は纏まって行動中とのことです」
「わかった。敵主力の情報は常に把握し続けろ。敵味方の通信傍受を怠るなよ」
「はっ」
(さぁ敵はどう出る、多少の艦隊ならこの艦隊でも相手できるが…)ティアンム中将はそう考える。現在の第五艦隊は旗艦タイタンを含むマゼラン級13隻、サラミス級28隻、レパント級35隻からなる大艦隊になっていたため、敵がよほどの大艦隊でもない限り勝てる戦力であった。
この時、他にもリーガン中将率いる第一航空艦隊や第一戦略艦隊、第八艦隊など多数の艦隊が太陽系外縁に展開しデザリアム帝国艦隊に備えていた。
勿論、太陽系内にも多数のパトロール艦隊や第一、第二艦隊、第二機動艦隊や地球軌道艦隊、ガミラス共和国銀河方面軍在地球艦隊など多数の艦隊が展開し奇襲に備えていた。その布陣は正にネズミどころかアリの子一匹通さない布陣であった。