重核子爆弾の消失。この情報はデザリアム地球侵攻軍、特にカザン司令を始めとする侵攻軍司令部に激震を走らせた。なぜなら地球侵攻作戦は重核子爆弾が効果を発揮すること前提で作戦がたてられていたのだからだ。しかしカザンは数的優位を生かし作戦を継続させることにした。この判断は後に賛否が分かれる判断となった。またなぜ艦隊を集中して運用しなかったのかは専門家の中でも長きに渡り議論されることになる。
重核子爆弾破壊後の防衛艦隊とデザリアム艦隊の交戦は防衛艦隊第三機動艦隊とデザリアム前衛艦隊の戦闘で幕が上がった。前衛艦隊は重核子爆弾破壊により損害を受けていたものの依然232隻という大艦隊であり第三機動艦隊めがけて全速で突撃していた。そしてこの戦闘で先手を取ったのはメダル―サ級を有する第三機動艦隊であった。
第三機動艦隊旗艦出雲
「敵艦隊前進してきます」
レーダー手が報告する。
「やはり退かんか。砲術長、火焔直撃砲は撃てるな?」
川崎中将は呟いた後に砲術長に確認を取った。
「何時でもいけます!」
若い砲術長は元気一杯な声で返事をする。
「よし、通常射程に入るまでに可能な限り敵の戦力を叩く。メダル―サ級全艦任意の目標に対して火焔直撃砲撃ち方はじめ!」
川崎の号令を受けると出雲、ウエストバージニア、ロスバッハの3艦は任意の目標めがけて必殺の火焔直撃砲を撃ち始めた。
こうして地球防衛艦隊初の火焔直撃砲による敵艦隊への攻撃が開始されたのであった。
一方のデザリアム前衛艦隊は第三機動艦隊目掛けて全速で突撃していた。
デザリアム前衛艦隊旗艦ネズガリア
「地球艦隊、射程まであと10分です。あっ、地球艦隊より発射反応あり!」
レーダー手が声を上げて報告する。
「なに!さっきの攻撃か!」
司令のアズダが問いただした瞬間、三つの火焔直撃砲が前衛艦隊を襲い、護衛艦や巡洋艦を撃沈する。直撃を受けた艦は一瞬で吹き飛び周囲にいた艦も火焔直撃砲の影響を受けて爆沈する。最初の攻撃で失われた艦はその数、実に14隻だった。
「いえ、先程の攻撃と似ていますがエネルギー量が違います!」
観測員がすかさず報告するがそれだけで火焔直撃砲はどうにかなるものでは無い。
「巡洋艦、護衛艦計14隻轟沈!」
攻撃による損害の報告が上がる。
「そんなバカな、たったの三発だぞ…」
司令のアズダは唖然とした、デザリアム軍の艦艇は比較的防御力が高いはずである、それがたったの三発で14隻轟沈は想定外であった。
そこへ「地球艦隊から再び発射反応!」と唖然としているアズダの元にレーダー手が悲鳴のような声を出して報告する。
第三機動艦隊旗艦出雲
「火焔直撃砲第二射全艦命中、10隻撃沈」
レーダー手はレーダーを見つつ淡々と報告する。
「火焔直撃砲次弾発射まであと20秒」
レーダー手同様火焔直撃砲要員もエネルギーメーターを見ながら報告する。
「わかった、発射準備が完了次第発射せよ」
川崎はそう言った。そこへ副長が話しかける。
「しかし、改めて恐ろしい兵器と実感しますな。いくら3艦同時発射とはいえ2回の斉射合計で24隻撃沈とは」
「あぁ全くだ」
川崎がそう返した直後、第三斉射目が発射された。
(実に恐ろしい兵器だ。ガトランティス恐るべしだな)川崎はそう思った。
「敵艦16隻撃沈、敵艦隊通常射程まで後7分」
レーダー手は撃沈数と射程までの時間を報告した。それを聴いた川崎は思考を止め、新たな命令を出す。
「第一宙雷戦隊に突撃準備命令を」
「はっ」
オペレーターは返事を返すと直ちに命令を第一宙雷戦隊に伝える。
第一宙雷戦隊旗艦ラスコー級ゴリアテ
「戦隊長、旗艦出雲より入電、突撃準備命令です」
「よし、全艦突撃準備だ!」
戦隊長と呼ばれた人物は張り切った声を出した。そしてこの人物は見かけこそ地球人だが実際は違った。
第三機動艦隊はガトランティスの鹵獲艦で編成されている艦隊であり、中核となっているメダル―サ級3隻こそ地球人で運用されているがその他の艦艇は降伏や投降してきたガトランティスの植民地兵や元奴隷兵で編成されていた。
彼らの扱いについて政府は最初、一般市民として生活してもらう方針であったが、そこに少しでも戦力が欲しい防衛軍が手を挙げ彼らを防衛軍の一員としたいとし、彼らに対してオファーを掛けたのだった。すると殆どの者が防衛軍の提案に乗り、猛訓練を受け現在の第三機動艦隊に編成される流れとなっていた。
「俺達がどれだけこれまでの訓練で強くなったか地球人に見せてやるぞ!」
「おぉぉ!」
戦隊長はそう言い、戦隊の士気を上げ突撃命令を待った。
(最初俺達は新たな支配者として地球人がやって来たと思っていた。だが彼らは支配者ではなく解放者だった。この戦いで少しでも恩を返さなくては)そう戦隊長は思っていた。尤もこの思いはこの戦隊長だけでなく、この戦いに参加しているガトランティスの支配下に居た者すべての思いであった。
数分後、第三機動艦隊旗艦出雲
「火焔直撃砲第9射目命中10隻撃沈、敵は散開しつつあります。通常射程まで後1分」
レーダー手の報告を聴いた川崎は少し考えた後命令を出した。
「火焔直撃砲第10射後、第一宙雷戦隊は突撃を開始。その他の艦はミサイル、ビームで突撃を援護せよ!」
「了解、全艦に伝達します」
命令が伝達されたことにより第三機動艦隊は全力での攻撃態勢に移行しつつあった。
一方、前衛艦隊旗艦ネズガリアは大混乱だった。10分もの間に100隻近くの艦艇が轟沈または戦闘不能にされているのだ。
「地球艦隊から再び発射反応!」
「全艦ランダム回避!」
司令のアズダが叫ぶ。
この短い時間で司令のアズダが思いついた対処法は艦隊を散開させ、ランダム回避することであった。この戦法は咄嗟に思いついた戦法だったものの効果は発揮され被害を軽減させていた。しかしこの回避方法も完璧ではなく今回も9隻の轟沈艦を出していた。
「巡洋艦及び護衛艦計9隻轟沈!」
「クソッ!」
レーダー手の報告を聴きアズダは悔しむ、だが待っていた報告も上がった。
「地球艦隊射程に入りました!」
「よし、いままでの分を返してやる!全艦攻撃開始!」
アズダの号令により前衛艦隊の全艦が攻撃を開始した。それと同時に第三機動艦隊全艦も射撃を開始し、第一宙雷戦隊は突撃を開始する。
デザリアム前衛艦隊と第三機動艦隊、第一独立任務部隊は激しい砲雷撃戦へと入った。
第三機動艦隊のカラクルム級、ラスコー級、ククルカン級の回転砲塔からはすさまじい勢いでビームが撃ちだされ弾幕を形成する。またメダル―サ級は通常の砲撃をしつつ火焔直撃砲も発射しデザリアム前衛艦隊に打撃を与える。さらにダメ押しに多数の量子魚雷が第三機動艦隊各艦から撃ちだされる。
そして第一独立任務部隊のヤマト型3隻は主砲の統制射撃を行い確実にデザリアム艦を撃沈していった。一方のデザリアム前衛艦隊の攻撃は波動防壁とビームかく乱幕によって防がれていた。
デザリアム前衛艦隊旗艦ネズガリア
「アズダ司令、我が方の攻撃が無力化され地球艦隊に打撃を与えられません!」
参謀が報告すると観測兵からも報告が上がる。
「司令、交戦している地球艦隊ですが識別できる3隻のヤマトタイプ以外全てがガトランティス帝国の艦艇です」
その報告を聴いたアズダは驚いた。
「なんだと! ということは我々が相手にしているのはガトランティスからの鹵獲艦の艦隊だというのか!」
「恐らくそうかと」
観測兵はそう返事する。
「そんなバカな…」アズダの小さな呟きはレーダー手の「下方から敵接近!」の報告にかき消された。
第一宙雷戦隊は第三機動艦隊に所属する6隻のナスカ級から発艦した200機のコスモタイガー隊と共にデザリアム艦隊下部から接近していた。
第一宙雷戦隊旗艦ゴリアテ
「デザリアムの奴ら主力の対応で手一杯みたいだな」
そう戦隊長は呟いた。この時デザリアム艦隊は突撃してくる宙雷戦隊とコスモタイガー隊に気づいてはいたが、正面の第三機動艦隊主力と第一独立任務部隊のメダル―サ級3、カラクルム級15、ラスコー級12、ククルカン級24、ナスカ級6、ヤマト型3からの猛烈な射撃への対応に追われており、第一宙雷戦隊への迎撃は僅かなものになっていた。これにより第一宙雷戦隊とコスモタイガー隊は無傷で攻撃を開始できた。
「猪突猛進こそ我らが本領だ! 全艦突撃しつつ攻撃開始!」
戦隊長の号令により第一宙雷戦隊のラスコー級3、ククルカン級12は一斉に砲撃と量子魚雷を放ち、コスモタイガー隊200機は装備されていた波動ミサイルをデザリアム艦隊旗艦ネズガリア含む中央部隊に撃ち込み、旗艦ネズガリアを含む多数の艦艇を撃沈した。いかに防御力に優れたプレアデス級ネズガリアでも多数の波動ミサイルと量子魚雷には耐えられず、命中後瞬時に爆発し轟沈したのであった。この時司令のアズダは自分の身に何が起きたのかも理解できなかった。
旗艦を失ったデザリアム前衛艦隊は距離を詰めるにつれ正確になる第三機動艦隊とヤマト型3隻の砲撃で次々と轟沈し、離脱しようとした艦も第一宙雷戦隊とコスモタイガー隊の餌食になるだけであった。そして戦闘開始から40分後、デザリアム前衛艦隊は全滅した。
こうしてデザリアム前衛艦隊と防衛艦隊の戦闘は第三機動艦隊と第一独立任務部隊の無傷の圧勝という形で終わった。しかしこの時既に多数のデザリアム艦隊と防衛艦隊の戦闘が始まっていた。