デザリアム帝国艦隊旗艦ガリアデス
「地球艦隊、我が艦隊を半包囲する形でワープアウト!」
レーダー手がそう大声で報告するとカザンはすかさず「直ちに反撃しろ!」と命令を出した。
カザンは突然の地球艦隊のワープアウトに驚いたが直ぐにこの反撃命令を出した。そして命令を受けすぐさま多数のデザリアム艦が砲撃を開始する、しかしその攻撃は防衛艦隊がワープ直後に展開したビームかく乱幕と波動防壁によって哀しくも無力化されていった。
一方、カザン率いるデザリアム艦隊主力を半包囲する形でワープアウトした防衛艦隊は第十艦隊の春藍、アリゾナ、ペンシルベニア、アルバート、アルテミスと第十五艦隊のカシオペアがワープアウト直後に波動砲を発射準備に入っていた。特に第十艦隊の春藍は波動エンジンを二基備えており波動砲のエネルギーチャージ完了までそこまで時間はかからなかった、またアリゾナ、ペンシルベニア、アルバート、アルテミス、カシオペアも新型波動エンジンを搭載しており短距離ワープ後ならば直ぐに最大出力での波動砲発射が可能であった。そしてそれらの護衛艦隊はビームかく乱幕を展開し6隻を守るような布陣を取りつつ応戦していた。
第十艦隊旗艦春藍
「波動砲エネルギーチャージ完了まで30秒!」
「各艦隊、ビームかく乱幕展開完了!」
省力化によって僅か数名しかいない艦橋にオペレーターの報告が響く。
「射線より全艦を退避させろ」
司令兼艦長の山南大将が指示を出す。山南は春藍就役以前まではアンドロメダ艦長兼第一艦隊司令であったが春藍就役により第十艦隊の司令兼春藍艦長になっていた。そして波動砲のエネルギーチャージが終わると直ぐに6隻は波動砲を発射した。
一方、デザリアム艦隊も波動砲発射の予兆は捉えていた。
旗艦ガリアデス
「複数の地球艦より高エネルギー反応!」
「なんだと、全艦散開回避―!」
オペレーターの報告を聴きカザンは空かさず指示を出したが遅かった、この指示を出した時には総旗艦春藍艦橋では山南司令による「全艦波動砲発射!」の号令がかかっていた。
戦艦6隻から発射された波動砲は拡散波動砲とアリゾナ級の拡大波動砲であり、デザリアム艦隊が密集していようが散開していようが関係なく無数の艦艇をそのエネルギーの濁流に飲み込みこの世から消し去った。その中には総司令カザンが座乗する旗艦ガリアデスの姿もあり、ペンシルベニアの拡大波動砲の直撃を受け、カザンは何が起きたのかを理解する時間もなく一瞬でエネルギーの濁流に包み込まれこの世から退場した。
これによりデザリアム艦隊は総指揮官を失い指揮系統が一時的に麻痺した、この機を防衛艦隊は逃がさず各艦隊は猛烈な砲撃とミサイルによる攻撃を開始、第一航空艦隊と第三機動艦隊、第四機動艦隊、第一独立任務部隊の航空機を有する各部隊からはコスモタイガー隊が発艦し、一斉にデザリアム艦隊を襲った。その中でも特に第十艦隊からの砲撃は苛烈であった、編成は旗艦春藍、戦艦アリゾナ、ペンシルベニア、アンドロメダ級アルバート、アルテミス、アナンケ級2、マゼラン級6、ドレッドノート級8 サラミス級14、エンケラドゥス級12、駆逐艦30という旗艦クラス大盛りの大艦隊であり、さらに春藍やアリゾナ級など正面火力が高い艦艇が多く、第十艦隊正面にいたデザリアム艦隊は瞬く間に数を減らしていった。しかしこの状況下でもミヨーズ率いる部隊は統制が取れており激しく反撃の砲撃をしていた。
「部隊の再編を急がせろ!」
ミヨーズはそう部下に命令したが既に半数以上の艦艇が戦闘不能になっている状況でこれ以上継戦できるわけがないと判断しており、再編後は素早く撤退するつもりであった。また後方の輸送艦隊にも後退命令を出そうとしていた。しかしそこへミヨーズの予定を崩壊させる悲報が入ってきた。
「ミヨーズ様、後方の輸送艦隊より入電、攻撃を受けているとのことです」
「なんだと…」
この報告を聴いたときミヨーズは唖然とするしかなかった。なぜならこれにより事実上、退路が断たれたのだから。この時デザリアム輸送艦隊を攻撃していたのは春藍型二番艦リヴァイアサンを旗艦とする沖田司令率いる第十三艦隊と第十一艦隊、第一、第三打撃艦隊であった。そしてこの四個艦隊はシリウス・プロキオン方面から駆け付けてきた増援艦隊であった。
一方、たいした護衛艦隊を伴っていなかった輸送艦隊は第十三艦隊旗艦リヴァイアサンの拡散波動砲をまともに受け反撃もままならない状態に陥っていた。襲い掛かっている防衛艦隊からしたら現在の輸送艦隊はただの的のような存在になっていた。護衛艦隊も必死に反撃するがそれは防衛艦隊の攻勢に比べたら虚しい反撃であった。一方、ミヨーズはデザリアム艦隊主力の立て直しに精一杯であった。艦隊付近では芋虫型戦闘艇とコスモタイガー隊が乱戦を繰り広げ艦隊同士が凄まじい砲雷撃戦を繰り広げていたが、デザリアム軍は徐々にその数を減らしていった。
「第35護衛艦隊、第25巡洋艦戦隊、第4戦闘艇隊全滅!」
ミヨーズの座乗艦には続々と部隊壊滅の報告が入ってくる、もはや良い情報など一つもなかった。既に残存艦は100隻を切っており、輸送艦隊救援に向かえる戦力もなく勝敗は決まったも同然であった。
「ミヨーズ様、残存艦84隻です」そう部下が報告した時、巨大な閃光が発生し残り2隻であったプレアデス級の1隻とその周囲にいた艦艇6隻が轟沈した、これは第一戦略艦隊の地球製破滅ミサイルの攻撃が命中したのであった。正式名称{波動融合ミサイル}の直撃を受けたプレアデス級デリアデスはその防御力を発揮せず轟沈し、周囲の艦艇も誘爆を起こして沈んだのであった。「修正します、残り77隻です」部下は修正しなおした。そこへさらに悲報が入った。
「後方の輸送艦隊からの通信が途絶えました…」
そうオペレーターは報告した。この時、輸送艦隊は最後の一隻になるまで抵抗していたが圧倒的な戦力差により輸送艦の一隻も残さず全滅していた。そしてこの報告を聴いたミヨーズは何かを決意した表情で部下に命令をした「全艦全速で撤退せよ、ただし本艦は殿となり敵を食い止める」と。
この報告は全艦にすぐに伝えられミヨーズ座乗のプレアデス級以外は撤退を開始した。しかしそこへ牙をむく戦力がいた。デザリアム艦隊監視の任務に就いていた6隻の次元潜航艦と8隻の潜宙艦が一斉に雷撃を仕掛けたのだ。
「もうつまらん監視任務は終了だ。水雷長しっかり当てろよ。全弾発射!」
そう次元潜航艦アーチャーフィッシュ艦長は言い。アーチャーフィッシュから6本の波動魚雷が発射された。発射された波動魚雷は迎撃を受けることなく撤退するデザリアム艦に命中し誘爆を含むと10隻を撃沈した。
突然の攻撃によりデザリアム艦隊は大混乱に陥っていたが、そこへさらに太陽系内から駆け付けた第二艦隊と第二機動艦隊がワープアウトし、コスモタイガーを続々と素早く展開しつつ砲撃を開始し、次々とデザリアム艦を血祭りにあげていった。この一連の攻撃により撤退するデザリアム艦隊は全滅した。
そして殿となっていたミヨーズ座乗のプレアデス級ニレアデスも200隻を超える防衛軍艦艇からの集中砲撃を受け艦内のいたるところで誘爆が発生し最後は大爆発を起こし沈んだのであった。なお沈む直前にミヨーズは「これが地球軍の強さか」と呟いていた。そしてこのニレアデスの爆発の閃光がデザリアム地球侵攻軍と防衛艦隊との太陽系外縁部での戦闘最後の光であった。
こうしてデザリアム地球侵攻軍は防衛艦隊の攻撃により1隻の残存艦もなく文字通りの全滅であった。対する防衛艦隊の損害は小破した戦艦が7隻、巡洋艦が2隻、駆逐艦以下が4隻であった。そしてコスモタイガー隊の損害は無人機12機の損失のみで、防衛艦隊の人的被害はゼロであり防衛軍の完全勝利であった。