9月8日、この日統括司令部にある総長執務室では総長が書類をじっくり眺めていた。そして書類が積まれている総長の机の向かいには一人の男が居た。
「私が忙しいことを知っていて君はこれ持ってきたの?」
総長はそう男に尋ねた。
実際この時総長はデザリアム反攻作戦や獲得した予算などで機動艦隊や航空艦隊増強計画を含む防衛艦隊増強計画などで大忙しであった。
「それは承知しています」
尋ねてきた男は至って真面目な表情でそう答える。
すると総長は「はぁ」とため息をすると喋りだす。
「いくら何でも今の時期にモビルスーツ開発計画なんて無茶苦茶すぎるだろ」
総長は呆れ気味に言った。
それに対して男は意見を言う。
「それは承知しております。ですがデザリアムの兵器の技術と機動甲冑の技術を組み合わせれば開発は可能です。既に設計は出来ております」
男の意見を聞いた総長は少し考えてから口を開く。
「なるほどな。だが開発しても母艦はどうする、既存の空母には載せられないぞ」
「それも承知しております。なのでこの計画には造船部門の奴も巻き込みました。これが計画表と設計図です」
男はそう言うとカバンの中から今後の開発計画と設計図を出した。そして二つの書類を総長はじっくりと眺めながら男に話しかけた。
「つまりモビルスーツは小型化したジェガンで、その母艦にネェル・アーガマを建造するわけか」
「そうです。我々もジオン派と連邦派で揉めましたがこの結果に落ち着きました」
男は苦笑いしながら言った。
「ジオン派か連邦派かなんて私にはどうでもいいが、君たちはモビルスーツの使い道をどうするつもりなのかね」
総長はそう問いかける。尤もこの部分がはっきりしていないと計画承認も何もできないのである。すると男は直ぐに答えた。
「一つは空間騎兵隊の支援です。戦車や機動甲冑では相手にできない敵が出現した場合に役に立つと思います。例えば現在解析中のデザリアムの多脚戦車などです。二つ目は戦闘機と違い様々な場面で使用が可能なためです。少数の隠密作戦にも行えますし土木作業だってできます、何より母艦が単艦で行動することも可能なためです。また艦隊直掩において上空に上げておく必要は無く、艦艇に待機させたままでも迎撃ができ、艦隊の離脱も容易です。他にも複数ありますが詳細は書類に記載してあります」
「なるほどな。因みに計画全体の名前は?」
総長はそう言った。
「V作戦です。ガンダム好きとしてはこれがベストです」
男は笑みを浮かべながら言った。
「わかったよ。私の方で検討してみよう」
総長がそう言うと男は嬉しそうに「ありがとうございます!」と言った。
その後、男は退出する時に総長の方を振り向き言った。
「総長は私たちの計画をご存じだったのではないですか。地球軌道艦隊旗艦のトラファルガーの試験的にもかかわらず大規模な改装の実施や例の巨大ドッグの建設、そしてそこでの建造艦などを見ていたらそう思います」
それに対して総長は「それはどうかな」とニコニコしながら返した。
その後、男が執務室を退室した後、総長は書類を見ながら考えていた。
(ふむ計画としては悪くないか、ネェル・アーガマ1隻とその搭載機分をこの増強のどさくさに紛れて用意するのもありか。それにしてもあいつは勘が良いな。まるで私の計画を知っているようだったな。だが作るのならば大きくかつ運用性が優れた物を用意せねば)
総長はそう考えながらV作戦の計画書に許可の判子を押すのであった。
そしてこの日よりV作戦は始動するのであった。
一方、防衛艦隊ではデザリアム反攻作戦に向けて準備が行われていた。
総長から「できる限り早く反撃の準備をするように」と言われていた為、準備は急ピッチで行われていた。
春藍型2隻とヤマト型3隻は原作では対ハイパー放射ミサイル艦首ビーム砲として登場したものを電磁パルス兵器(電磁パルス砲)として搭載するとともに、作戦参加予定艦には超長距離連続ワープが可能なようにエンジンの改装が行われていた。因みに電磁パルス砲は後日、全ての戦艦に装備された。
こうして地球防衛軍がデザリアム反攻作戦の準備を進める中、ボラー連邦は地球との国境付近で大規模な軍事演習を行っていた。そしてこの軍事演習は地球連邦に対する牽制の意味も込められていた。
勿論この演習は地球連邦の知ることになり、地球連邦内ではボラー連邦に対する警戒感が上がっていた。そもそも地球連邦政府ではボラー連邦と国交締結直後からボラー連邦に対する警戒の声が常に上がっており、防衛軍や政府では友好国としてはいるものの仮想敵国として警戒もしていた。そのため今回の大規模演習は牽制の意味であると政府と防衛軍は正しく意味をとらえたものの不信感は増大し、防衛艦隊の拡張を求める声が急激に上がっていった。
「やはり、デザリアム反攻作戦は早期に終わらせる必要があるな」
総長はそう執務室内で副総長(元副参謀)と話していた。
「はい、デザリアム反攻作戦には少なくない艦艇数を投入します。なので反攻作戦は速やかにそして最短で終わらせる必要があります。尤も反攻作戦参加艦艇が帰還した頃には主力艦隊増強計画によって主力艦隊は大幅に増強されているでしょうが」
副総長はそう言った。それを聞き総長は頭を抱えた。
「そうだな。とりあえず反攻作戦は速やかに完遂するように艦隊司令である沖田提督には伝えておくか。まぁボラー連邦とはすぐに戦争とはならんだろうが」
総長は悩ましいなという顔をしながら言った。尤も総長としてはボラー連邦と戦争なんて御免であった。何しろ相手は銀河の超大国なのだ、しかも貿易で地球側に僅かながら利益が出ている以上、その貿易が途絶えるのはよくないと考えていた。
「はい、私もボラー連邦とはすぐに戦争とはならないでしょう。なるときはガルマン・ガミラスと国交締結をした時ですかね」
副総長はそう言った。
「そうだな、仮に反攻作戦中にガルマン・ガミラスと国交締結となってもボラー連邦とは政府に外交で時間稼ぎをしてもらうか」
総長は悩みながら言った。
「それがベストでしょうな」
副総長はそう賛同意見を言った。
すると「悩ましいな」と総長はそう小さな声で言った。
それが聞こえていたのか副総長も「そうですね」と返答した。
「とりあえず政府ともこの件は調整することにするか」
一息ついた総長がそう言うと「お願いします」と副総長は短くそう言った。
こうして統括司令部内の執務室では統括司令部のトップ二人が悩みながら会談を続けていた。
一方、総長達の会話で名前があがったガルマン・ガミラス帝国では地球連邦と地球でガミラス共和国に接触し国交を締結するための準備が行われていた。そして地球連邦とガミラス共和国に対してはデスラーの側近であるタランが赴くことになっていた。
「タラン。地球との国交締結交渉の際は全権代表として向かって欲しい」
デスラー総統がそうタランに言うと「かしこまりました。総統」とタランは返答していた。
そして地球防衛軍のターゲットにされているデザリアム帝国では必死に地球防衛軍の襲来に備えていた。
戦線の縮小や撤退により戦力を用意し、中間補給基地に少なくない戦力を集結させていた。しかしその数は150隻ほどであった。通常であれば安心できる大艦隊であるのだが、2500隻もの地球侵攻艦隊を容易く殲滅した地球軍相手では実に心細い戦力であった。