総長との会談を終えた沖田と古代兄弟はその日のうちに呉宇宙港に帰っていた。
現在は第十三艦隊などが寄港し普段の倍以上の賑わいを見せている呉宇宙港、市民達は入港している春藍型二番艦リヴァイアサンやヤマト型戦艦三隻を見ようと多数集まっていた。そんな賑やかな宇宙港の一角にある基地司令部が入っている建物、その建物にある一室の会議室に三人は集まりデザリアム反攻作戦について話し合っていた。
「俺は総長の言っていた本星の破壊には反対です」
そう食い気味に言ったのは古代進であった。
「まぁ落ち着け進。俺だって敵本星破壊は出来れば避けたいが総長が言っているように情勢が情勢だ。時間を掛けて敵本星を占領できるわけでもないし、占領する物量も地球には無い。それに波動砲で脅して降伏さしてもいずれは復讐戦を挑まれる可能性が高い、それなら総長の言う通り敵本星を波動砲で吹き飛ばしてしまうのが効率的に良い。相手が徹底抗戦の構えならなおさらな。これについて沖田司令はどうお考えですか」
守はそう言い沖田に意見を求めた。沖田は考えるように目を瞑り黙ったが少しすると目を開け、ゆっくりと口を開いた。
「私としては総長の言っていることは良く分かる。実際、地球を取り巻く状況が非常に悪いのは事実だ。一歩間違えれば地球、そして地球人類が絶滅の危機に瀕するだろう。だが地球の為に一つの文明を惑星ごと滅ぼせと言うのも辛いだろう。それは総長の話している時の顔を見ていたら分かるだろう」
沖田のその言葉を聞いた進は真剣に悩む顔だった。進もまた総長がデザリアム本星破壊について話している時の辛そうな顔が記憶に残っていたのだ。そして沖田は話しを続ける。
「進の言うことも良く分かる。だが今回は地球かデザリアム、どちらの文明を優先して残すかの選択であると私は思う。だから私は総長の言う通りデザリアム本星を破壊する前提で作戦を進めたい。正直私も決断するのが苦しかった。だが総長はデザリアム本星破壊の責任などは全て総長自身を背負うとおっしゃられた。私は総長のその決意に反した事はしたくない。だから進、デザリアム本星破壊については深く考えなくていい」
沖田はそう言った。
実際、総長との会談で総長は「全ての責任を背負う」と言っていた、そしてその時の総長の顔は相当険しく何かを決意した顔であった。その顔が沖田の脳裏にはしっかりと残っていたのだ。まぁ総長としては何が何でもデザリアム本星を波動砲で吹き飛ばし、二重銀河の崩壊を発生させたいと思っていたのだが、そんな事を沖田達三人が知る由もなかった。そして沖田のその話を聞いた進は「わかりました、沖田司令がそうおっしゃられるのなら自分はデザリアム本星破壊を支持します」と答えた。その返答を聞いた沖田は立ち上がると窓際に向かい、窓に映る平和な軍港を見ながら呟いた。「時には重い決断をしなくてはならんな」と。
三人はその後もデザリアム反攻作戦についての作戦内容を練っていった。現在得られている情報を基にして。中間補給基地をどうやって攻略するか、予想される防衛線をどう突破するかなど作戦内容を細かく詰めていった。三人の作戦会議は何時間にも及んだ。
一方その頃、統括司令部の総長執務室では総長と秘書が話していた。
「本当に彼ら三人に時間断層工場の事を話してよろしかったのですか」
秘書は執務室にあるモニターに映し出されている時間断層工場の映像を見ながらそう尋ねた。それに対し総長は手に持っていた紅茶の入っていたティーカップをそっと置くと口を開いた。
「あぁ構わんよ。彼ら三人は口が堅いから口外しないだろう。まぁ私としては時間断層工場の事を喋るのは想定外だったけどね」
「やはり想定外でしたか」
総長の言葉を聞き秘書はそう呆れ気味に言った。
「仕方ないだろ、まさか守艦長が地球の年間艦艇建造可能数を大まかに知っていて、私が喋った内容の艦艇建造数の矛盾を突かれるとは想定外だったからね。さすがは一時期、防衛軍司令部で勤務していただけはあるよ」
総長はそう苦笑いしながら話した。
実際、総長としても自身の発言内容の矛盾点を突かれるとは思っていなかったのだ。正直な話、沖田と進だけなら何の疑問も総長の発言内容に疑問を持たなかっただろう。だが守はガミラス戦役後半からガトランティス戦役にかけて防衛軍司令部で勤務していた為、防衛軍の艦隊編成、そして地球の半年間の建造艦艇可能数を大まかではあるが知っていた、なので総長の発言内容に矛盾点があることに気付いたのであった。
そもそも地球防衛軍主力艦隊の基本編成は例外はあれど、二桁番号艦隊の編成は旗艦級1隻とドレッドノート級6 マゼラン級4 エンケラドゥス級6 サラミス級8 レパント級6 フレッチャー級16の47隻編成であり、これを10個艦隊揃えると470隻になる。さらに機動艦隊の基本編成はドレッドノート級4 マゼラン級3 イラストリアス級6 エンケラドゥス級10 サラミス級6 フレッチャー級10 レパント級16の55隻であり、機動艦隊を仮に現在の倍の8個艦隊に増強すると4個艦隊220隻となり合計690隻の建造が必要となる、これは守の知っている軍の建造可能艦艇数500隻を軽く超えている。つまり守は「反攻作戦の予定期間である4ヶ月もあれば主力艦隊は30個艦隊に、機動艦隊も倍近くになっているだろう」と言っているこの総長の言葉の不思議な点を一瞬で見抜いていたのだった。
因みに余談ではあるが第二十一艦隊以降の艦隊は旗艦級1、ドレッドノート級2、長門型4、マゼラン級4 エンケラドゥス級2 アラスカ級4 サラミス級8 レパント級6 フレッチャー級4 秋月型A1型8の編成、機動艦隊はドレッドノート級4 マゼラン級3 イラストリアス級6 エンケラドゥス級6 アラスカ級4 サラミス級6 フレッチャー級10 秋月型A2型10 レパント級6となる予定であり、さらに長門型戦艦、マゼラン級戦艦、アラスカ級巡洋艦、サラミス級巡洋艦、秋月型駆逐艦を中核とする遠距離遊撃打撃艦隊が新たに編成される予定である。
さて場面は戻り総長執務室、総長は時間断層工場の映る映像を見ながら続きを話す。
「まぁ彼らは地球を守る宇宙戦士だ、簡単には喋らんよ。実際、進艦長はガトランティス戦役前に知ったが一切口外してないから信用できるからね。それに変に誤魔化すと不信感を持たれるからね」
そう総長はモニターを見ながら言った。モニターには完成したばかりのドレッドノート級戦艦やイラストリアス級戦闘空母、エンケラドゥス級巡洋艦、フレッチャー級駆逐艦が続々と発進していっていた。そしてそれらの艦の下にある工場内の停泊地には無数の無人戦艦、無人駆逐艦、長門型戦艦、マゼラン級戦艦、超A級戦艦、アラスカ級巡洋艦、サラミス級巡洋艦、秋月型駆逐艦のA1型とA2型が停泊していた。