地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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望まざる競争

デザリアム反攻作戦艦隊の出撃したその日の晩、総長をはじめとする転生者達はいつもの料理店に集まり会合を開いていた。

 

「とうとう始まりましたな」

 

そう言ったのは本土防衛軍司令部の参謀長である芹沢である。

 

「えぇ漸く反攻作戦が始まりました。これからは我々のターンだ。見ていろよデザリアム」

 

総長はそう笑みを浮かべながら言った。

 

「しかしこの状況で百隻を超える大艦隊を送り込むのは少し無茶と言いますか危険だったのでは」

 

芹沢参謀長は総長に尋ねた。

芹沢参謀長は現在、本土防衛軍という最前線からは離れた部隊の参謀長ではあるが、地球本土防衛という重大な任務が課せられている軍の参謀長である為、外交や軍の状況には常に気を配っており、ボラー連邦との関係性に尤も気を付けている人物のひとりであった。

 

「確かにボラー連邦との間での関係性に不安定感が出ていますがまだ衝突には至らないでしょう。それに反攻作戦艦隊出撃に合わせて隠れるように新型艦を大量に就役させました。暫くは訓練漬けで第一線には配備できませんが書類上では第二十一艦隊から第二十五艦隊までが揃い、さらに新型艦及び新造艦のみで編成される攻勢用の遠距離遊撃打撃艦隊の艦艇群もまだ一個艦隊分ですが揃いました。万が一、反攻作戦艦隊が帰還するまでにボラー連邦と衝突する事態に陥っても暫くは持ちこたえられるでしょう。それにボラー連邦軍は軍組織そのものが地球との衝突には及び腰であるとの情報があります。あの気難しい首相が幾ら地球との衝突を命令してもよっぽどの事が無い限り軍部が戦闘を拒否するでしょう。まぁ親衛艦隊がどう出るかはわかりませんが」

 

総長はそこまで言うと料理を口に運んだ。

 

「なるほど。しかし私の元に入ってきた情報によりますとボラー連邦軍はアンドロメダ級に匹敵する戦艦の量産を始めたという情報がありますが大丈夫ですか?」

 

芹沢参謀長がそう言うと会合の場がざわついた、この情報を知っている者は限られた者だけだったのだ。

 

「総長それは本当ですか」

「さすがにアンドロメダ級に匹敵する戦艦を何十、何百隻も用意されたら不味いのでは」

 

転生者達は口々に総長に尋ねる。転生者達にとってもアンドロメダ級クラスを量産されているのは驚異として感じたのであった。そして総長は食べていたものを飲み込むと喋り出した。

 

「あぁ本当だ。ボラー連邦にある大使館と情報部の諜報機関であるコントロール経由の情報だから事実だろう。なんでも本星にある造船所でかなり巨大な戦艦の建造が数隻始まっているらしい。アンドロメダ級クラスというのは造船所の職員が喋っていたそうだ」

「なるほど。しかしアンドロメダ級クラスなんかよく量産できますねぇ」

 

そう言ったのは財務省に努めている転生者であった。それに対して総長が答える。

 

「恐らく防衛軍の戦力を脅威だと感じたのだろう。そして最近の演習では明らかにアンドロメダ級クラスでは無いが多数の新型戦艦が確認されている。ボラー連邦軍では珍しい回転式の砲身付き砲塔を備えた戦艦がね」

 

総長の言葉を聞き、さらに場はざわつく。

 

「つまりボラー連邦軍は新型戦艦を多数就役さしているということですな。しかも防衛軍の戦艦を参考にして」

 

そう言ったのは芹沢参謀長であった。それを聞いた総長はさらに続けて喋った。

 

「そうです、芹沢参謀長。おそらくドレッドノート級クラスの戦艦でしょう。3連装砲3基と艦首に大口径のボラー砲を一門備えていますから。そしてここからが重大です。この情報を大統領や政府及び各州、各国の代表と協議した結果、ボラー連邦が防衛軍の艦艇を参考に新型艦を開発、生産し大規模な軍拡をしていると判断しました。そして地球とボラー連邦は軍拡競争の状態に陥っている可能性が高いとの協議結果になりました」

 

{軍拡競争}この言葉を聞き場はざわつき、財務省の転生者は顔を青くした。そして財務省の転生者は総長に尋ねる。

 

「総長は軍拡競争と言いましたけど。まさか地球連邦はボラー連邦と軍拡競争をするのですか」

「そうだ。これは大統領、いや連邦政府そして連邦議会の決断だ。それに各州や各国の代表や財務省の大臣も賛成した。地球はボラー連邦と軍拡競争をする」

 

この言葉で場は静まり返った。

 

「総長。幾ら何でもボラー連邦との軍拡競争は不味いのでは」

 

一人の転生者がそう言い何人かが頷く。

 

「たしかにそうだ。だが地球はボラー連邦を仮想敵国としている以上こちらも軍拡せねばならない。尤も既に軍拡はこちらがビンソン計画などでかなりの規模の艦艇建造で進めていたから、軍拡競争は仕方のない一面もある。ただシャルバート関連についても調査を始めた以上、いずれはボラー連邦と全面衝突する可能性が有るだろう。その為万が一に備えての軍備増強は必要だよ」

 

総長の言葉を聞き何人かは「たしかに」と呟いた。総長はさらに続ける。

 

「そしてこの決定を受けて財務省に用意してあった機密費及び貯蓄費をすべて解放する事になった。これを受け春藍型を三隻、アンドロメダ級を五隻さらに超A級戦艦を含む長門型戦艦などの新型艦や無人艦を大量生産することが決定した。既にこれらの艦艇建造は時間断層工場を含む各地の軍の造船所や民間の造船所で建造が急ピッチで始まっている。幸いデザリアムの侵攻艦隊撃破以降防衛軍兵士の応募者は増えているから乗組員に問題はない」

 

総長が言った通り乗組員問題は無かった。そもそも地球の総人口は60憶人。ガミラス戦争前に比べると遥かに少なくなっていたが、原作に比べると遥かに多かった。

これはガミラス戦争時に無人にしたサラミス級巡洋艦を遊星爆弾に体当りさせるなどをして徹底的に遊星爆弾を防いだ地球圏艦隊の努力の結果であった。

 そして現在はデザリアム侵攻艦隊を完膚なきまでに叩きのめしたこともあり防衛軍の志願者数は急速に増えており、長年の問題であった、乗組員不足が解消されることになる。

 

「しかし機密費や貯蓄費を当ててもいずれは予算が足りなくなるのでは」

 

財務省以外の転生者はそう尋ねた。

 

「大丈夫だ。今の地球はシリウス・プロキオン星系の各惑星の開発やその他の惑星の開発の成果で資金と資源に大量の余裕がある。それにボラー連邦やガミラス共和国との貿易でも稼ぎがある。お金持ちとは戦争するなと言うが我々は今やお金持ちだ。今は持っているお金をふんだんに使い、いずれ来るであろうボラー連邦との全面衝突に備える。造船所も各惑星に新規に建設し艦艇を量産する。勿論民需や経済には影響が出ないようにするがね」

 

総長のその言葉を聞き、会合にいた全員が納得した顔をした。

 

 

この時点ではボラー連邦と地球連邦の軍拡競争の結末を知る者はこの場には一人も居なかった。結末を知っているとすればヤマトに乗艦しているテレサだけであろう。しかし一つだけ確かなものがあった、それは地球とボラー連邦の全面衝突する可能性が確実に増えているという事実であった。

 

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