月面基地から発進したデザリアム反攻作戦艦隊、正式名称第一連合艦隊は超長距離連続ワープを繰り返し、デザリアム帝国中間補給基地10光年手前まで進出していた。
このデザリアム帝国軍の中間補給基地の存在は地球侵攻艦隊の艦艇から得たデータで地球防衛軍は把握していた。
第一連合艦隊旗艦リヴァイアサン
「全艦ワープアウト完了」
「機関異常なし」
「落伍艦はありません」
旗艦リヴァイアサンの艦橋にはオペレーターの冷静な声が響いていた。
「わかった。第一無人艦隊をデザリアム帝国中間補給基地の偵察に向かわせろ。その他の全艦現宙域で待機するように伝達。それと通信衛星の投下を忘れるな」
総司令官である沖田はそう命令した。
「了解。第一無人艦隊をAI操艦に移行します」
「全艦に待機命令伝達完了」
「通信衛星投下完了」
沖田司令の命令を受けた第一無人艦隊は第一連合艦隊本隊から先行しデザリアム帝国中間補給基地の偵察の為、超長距離ワープを行い出撃した。
一方の第一連合艦隊本隊は宙域にとどまり船体やエンジンの確認や補給を行うのであった。特にエンジンについては念入りに点検が行われるのである。その理由は超長距離連続ワープを繰り返したためである。超長距離連続ワープはまだ完成された技術ではない為、データの収集とエンジンの整備がなにより大切であった。そして地球との通信を可能にする通信衛星が投下された。この通信衛星は常に地球との通信を可能にする為の中継衛星であり第一連合艦隊は長距離連続ワープの度にこの通信衛星を設置して進撃していた。
デザリアム帝国本星
「例の部隊は中間補給基地に着いたか」
そう側近のサーダに尋ねたのは聖総統であった。
「はい。無事に到着したとの報告がありました」
「よろしい。地球軍よ、我が軍の中間補給基地がお前たちの墓場だ」
聖総統はサーダの返答を聞くと、不気味な声でそう言った。
その聖総統直々の命令で中間補給基地に派遣された部隊は中間補給基地に到着後、戦闘準備を既に済ませ、いずれ来るであろう地球艦隊に備えていた。
中間補給基地
「准将、本当にこの基地に地球艦隊は来るでしょうか」
そうモニターに向かって報告したのは基地司令のグノンであった。
「必ず来るだろう」
モニターに映る人物はそう短く答えた。そしてモニター画面が切れた途端にグノンの元に緊急報告が届いた。
「グノン司令!レーダーに地球艦隊を捉えました!」
「もう来たか数は」
「18隻です」
「なんだとたったそれだけだと!?」
グノンは驚いた。地球を発進した地球艦隊は百隻を超える大艦隊のはずである、それがたったの十八隻とは基地司令のグノンの判断を迷わせる材料としては十分であった。
中間補給基地のレーダーが捉えたこの艦隊は沖田提督が放った偵察の第一無人艦隊であった。そして第一無人艦隊は中間補給基地から極力離れた地点を数分間航行した後に、再び超長距離ワープを行い本隊の元へ戻っていった。
「地球艦隊ワープをして離脱しました」
部下からの報告を聞きグノンは悩んだ。(どうする、追撃するか。それとも)
グノンは数分間悩んだ後に命令を出した。
「基地外に展開している艦隊は警戒態勢を厳にしろ。補給中の艦隊も何時でも出撃できるようにしておけ」
「はっ」
部下はそう返事すると各部隊に伝達していった。一方の聖総統直々の命令で派遣された部隊の指揮官は淡々と状況を見守るだけであった。その表情は不気味な笑みを浮かべていた。
第一連合艦隊待機宙域
第一無人艦隊は超長距離ワープを行い一瞬で第一連合艦隊本隊の居る宙域に帰還していた。
「沖田司令、偵察の第一無人艦隊帰還しました」
「わかった回収したデータの分析を急がせろ。それと各部隊の指揮官は本艦に集まるように伝えてくれ」
「了解しました」
オペレーターは沖田の命令を受けるとすぐさま仕事に取り掛かった。
数十分後、第一連合艦隊の指揮官達は旗艦リヴァイアサンの作戦室に集まっていた。
「これは厄介ですな」
そう偵察情報を見ながら言ったのはムサシ艦長の古代守であった。
「ですな。事前情報では中間補給基地とその護衛艦隊だけを相手に取ればよかっただけですが、今回は敵艦が多いだけでなくゴルバが7基もいる。事前に無人艦隊で偵察を行わせて正解でしたな」
第一機動艦隊司令の安田俊太郎中将はそう言った。
第一無人艦隊が持ち帰ったデータは沖田達艦隊指揮官を驚愕させるのには十分なものであった。その情報は中間補給基地の護衛艦隊が百五十隻前後、そしてゴルバが七基という情報であった。この展開している兵力は第一連合艦隊を遥かに超える火力を持っていた。
この情報を手に入れた第一連合艦隊は作戦の変更を余儀なくされていた。このゴルバ七基は聖総統がグロータス准将に命じて派遣した戦力でありデザリアム帝国が出せる最後かつ最強の戦力であった。そして指揮官であるグロータス准将は七基のゴルバと中間補給基地に居る戦力で基地攻略に来るであろう地球艦隊を全滅させることができると確信していた。
「しかしゴルバが7基とは厄介です。どうします沖田司令」
古代進の問いかけに対して沖田は少し考えた後に口を開き作戦を語った。
そして沖田の作戦を聞いた艦隊指揮官達は「異議なし」と答え、作戦は実行されることになった。その後作戦会議は終了し各指揮官達は乗艦に戻っていき、作戦の準備を始めるのであった。そんな中、沖田と古代守は二人作戦会議室に残っていた。
「沖田司令、仮に今後の作戦が順調に進めば総長から与えられた作戦期間4ヶ月以内に地球帰還ができるかもしれません。幸いここまで総長が懸念されていたエンジントラブルでの落伍艦はありませんから」
守はそう言った。作戦期間4ヶ月、これは超長距離連続ワープを繰り返した場合であれば考えられないほど長い期間である。それでも総長がわざわざこれほどまでに長い作戦期間を予定したのは超長距離連続ワープにて不具合を起こす艦艇がいるかもしれないという懸念であった。
今回の反攻作戦は過去にガミラス・イスカンダル遠征を行ったガミラス救援艦隊でも考えられないほどの工程と規模である為、総長は余裕を持ってこれほどまでに長い期間を用意したのであった。しかし実際は月面基地から現宙域までのエンジントラブルはゼロであり総長の懸念は杞憂で終わりそうであった。
「そうだな。わしも1隻2隻の落伍艦は出ると思っていたが実際は違う。各艦の将兵とエンジンは良くやってくれている」
沖田はそう言うと一呼吸し続きを話す。
「兎に角これから先もトラブルが起きないように願おう。だがまずは目の前の敵を倒さなければな」
「そうですね。まずは目前の敵を叩くことに全力を尽くしましょう」
守はそう返事した。
こうして二人は短い会話をした後、それぞれの持ち場へと戻っていった。
それから一時間後、艦隊は戦闘態勢に移行し出撃準備が完了していた。そして沖田司令の「全艦ワープ」の合図で全艦は一斉にワープし、中間補給基地攻略作戦を開始したのであった。
その頃、地球ではとある兵器の試射が行われようとしていた。
ロンド・ベル隊旗艦インディゴ・ベル
「まさかこいつを撃つ日が来るとはな」
艦長兼司令のブライトはとある兵器を見ながらそう呟いた。