地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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破滅をもたらすもの

10月1日、この日、統括司令部総長は北米にあるシャイアン基地に居た。この基地は厳重な警備が敷かれ、戦車部隊や多数の隠蔽式対空砲台などの武装が備えられており地中深くにあるシャイアン基地にはジャブロー基地に匹敵する防御力が備えられていた。すなわちそれはこの基地が地球防衛軍にとって凄まじく重要な施設であるということを物語っていた。

 

「総長、ご無沙汰しております」

 

司令実に入室した総長にそう挨拶したのはシャイアン基地司令のエイブルス中将であった。

 

「お久しぶりです。エイブルス中将」

 

総長はそう言い握手をした。

 

「いきなりですが中将。状況はどうですか」

「御覧の通り順調です」

 

総長の問い掛けに対してエイブルス中将はそう答え、右手で司令官室から見えるコントロール室を指した。

 

そのコントロール室では多数のオペレーターの声が響いていた。

 

「測的支援艦久里浜、射線上より後退」

「地球軌道艦隊、想定当該空域から退避」

「システム、ルナツーの陰から移動」

「ロンド・ベル隊からの定時報告。システムに異常なし」

「エネルギー転送装置異常なし」

「核パルスエンジンによる姿勢制御開始」

 

オペレーターは淡々と情報を共有していた。

 

 

同時刻ルナツー宙域・ロンド・ベル隊旗艦インディゴ・ベル

 

「久里浜、射線上より退避しました」

「ラーディッシュより入電。{外部に異常なし}です」

「モンブランⅡ、パラオ監視宙域に移動」

 

インディゴ・ベル艦橋内でも淡々とオペレーターの声が響いていた。

 

「了解した。展開中のロンド・ベル隊全艦に再通達{僅かな異常も見逃さないように監視を厳にせよ}と」

「了解」

 

ブライトはそう全艦に命令した。この時展開中のロンド・ベル隊の艦艇は旗艦のインディゴ・ベルとマゼラン級ラーディッシュ、アイリッシュ、サラミス級モンブランⅡ、ブルネイ、パラオ、ソロモン、村雨改型四隻であった。

 

 

そしてプロキオン星系外縁部に展開している波動実験艦銀河も準備を進めていた。

 

「観測艦モーリー、退避完了しました」

「ダミーバルーン展開完了」

 

銀河の艦橋にも続々と報告が集まっていた。

 

「艦長、なぜ今になってこの兵器の試射なんてするんですか」

 

そう尋ねたのは航海長の一瀬美奈であった。

戦術長である日下部うららも同じように同調するような目線を艦長である藤堂早紀に向けた。

 

「そうか。あなた達には知らされてなかったわね」

 

藤堂はそう言うと、今から行われることを話した。

 

「確かに今頃になってこの兵器。コロニーレーザーの試射が行われる理由は単純よ。あれはただのコロニーレーザーではなくなったからよ」

「ただのコロニーレーザーではないと言いますと」

 

一瀬は不思議そうに尋ねた。

 

「あれは今や巨大な波動砲発射システムなのよ」

 

(巨大な波動砲)この言葉を聞き艦橋に居たメンバーに激震が走ったが藤堂は続けた。

 

「コロニーレーザーは地球防衛艦隊の大規模増強に合わせて大規模な改造が行われたの。その使用目的やソーラ・レイの発射は可能なままだけど改造によって500個の波動コアが設置されて強力な威力の波動砲が発射可能になったのよ。そしてガトランティスのメダル―サ級の火焔直撃砲の発射システムを応用して任意の地点にコロニーから発射された波動砲やソーラ・レイを転送できるようにしたの。因みに第3機動艦隊で運用している改メダル―サ級3隻の波動火焔直撃砲はこのコロニーレーザーの実験的な意味も持っていたのよ。そしてこのコロニーレーザーのその威力は理論上では恒星や惑星を一撃で破壊できる。つまり惑星破壊兵器としての一面もある兵器なのよ。だから今回の試射には大量の小惑星やダミーバルーンの艦艇が用意されてその威力を検証する目的があるの」

 

藤堂はそう説明した。

 

そもそもコロニーレーザーはガミラス戦争時に地球圏艦隊の指揮下のもと、建設されたコロニーを利用した兵器であった。その使用目的は地球に接近するガミラス艦隊を迎撃すること。しかしガミラス艦隊による地球侵攻は無く遊星爆弾による攻撃だったので、その力が使用されることがなかった。そしてガトランティス戦役でも射程圏内までのガトランティス軍侵攻は無かった為放置されていた。

 

だが防衛軍の組織改革により現在の総長が全軍の指揮を直接取るようになると、このコロニーレーザーを再利用し波動砲を発射できるようにする計画が始動し現在までに至る。

 

余談ではあるが現在地球周辺にはL1からL3までのラグランジュポイントにコロニー群があり、ガミラス戦役後期に打ち上げられた農業用コロニーと工業用コロニーが十基ずつの合計四十基のコロニーがL1のサイド1とL2のサイド2には存在し、L3のサイド3には防衛軍の工業用コロニー二十基が存在していた。そしてL3にはルナツーが存在し、そこにコロニーレーザーはあった。正式名称はグリプスではあるが現在は(システム)のコードネームが与えられている。

 

 

そして銀河艦橋は奇妙な空気が流れていた。

 

「つまりこれは威力を超強化した波動砲ということですか」

 

一瀬はそう若干力のない声で言った。

 

「そうよ。これも地球が新たなる侵略者に対抗するには必要なのよ」

 

藤堂はそう言うと一呼吸し命令を出した。

 

「シャイアン基地に打電{観測部隊準備完了}と」

「了解」

 

副長の神崎恵はそう短く返事した。

 

コロニーレーザー発射の時は刻一刻と迫っていた。

 

一方、ルナツー基地付近は発射が近づくにつれ騒がしくなっていた。

 

「想定射線上より全艦退避完了。また民間船舶も存在せず」

「よし、シャイアン基地に打電。{射線クリア}と」

「了解」

 

インディゴ・ベル艦橋ではブライトが命令を出していた。

 

 

シャイアン基地

 

「インディゴ・ベルより入電{射線クリア}」

「銀河より入電{観測部隊準備完了}」

「システム、エネルギー充填率120パーセント」

「司令、何時でもいけます」

 

オペレーターの報告が司令室のエイブルス中将の元に届く。

 

「総長、お聞きの通りです」

「わかった。発射30秒前だ」

「了解しました。発射30秒前、カウントダウン開始!」

 

エイブルス中将の言葉を聞き総長は発射30秒前を命令した。そしてモニターには30秒からのカウントダウンが始まった。オペレーター室や司令官室にはカウントダウンの声が響いていた。

 

 

グリプス付近

 

グリプスはその直径七キロにも及ぶ砲口を青白く光らせていた。そしてグリプスの後方にはソーラ・レイとして使用するための大量のソーラーパネルがあった。

 

「発射20秒前」

「エネルギー転送装置正常に作動」

 

インディゴ・ベル艦橋にオペレーターの声が響く。

艦橋のモニターにはカウントダウンが表示されそのカウントダウンは発射15秒前を切っていた。

 

(いよいよだな)ブライトはそう心の中で呟いた。

 

そしてカウントダウンはゼロになった。

 

次の瞬間、グリプスの砲口が強く光ると波動砲が撃ちだされ。200キロ進んだ地点でエネルギー転送装置の影響を受け遠く離れたプロキオン星系外縁部に転送された。

 

 

プロキオン星系外縁部・観測部隊旗艦銀河艦橋

 

「巨大な重力振確認」

 

ブラックアナライザーがそう報告した次の瞬間、転送されてきた巨大な波動砲はダミーバルーンの艦艇群や無数の大小様々な小惑星をそのエネルギーの濁流に飲み込んだ。

 

 

 

この波動砲の掃射は30秒近くだった。

 

「コロニーレーザー掃射終了。命中付近にはデブリ一つ確認されません」

 

ブラックアナライザーの報告を聞き藤堂は命令した。

 

「了解した。シャイアン基地に打電{システムの試射成功。デブリは観測されず。観測部隊は引き続きデータ取集に当たる}と」

「了解」

 

神崎はそう短く返答した。

 

 

シャイアン基地

 

「システム、試射終了。システムに異常なし」

「インディゴ・ベルより入電。{システムに異常なし}」

「観測部隊銀河より入電{システムの試射成功。デブリは観測されず。観測部隊は引き続きデータ取集に当たる}とのこと」

 

オペレーターの声を聞き、エイブルス中将は総長に言った。

 

「総長、試射は成功です」

「わかった」

 

総長はそう短く返答した。

 

(これで地球はプロトンミサイルを超える超兵器、いや銀河最強の兵器を手に入れた)

総長はそう心の中で言った。

 

なぜこの兵器が銀河最強なのか。それはコロニーレーザーが威力だけでも恒星一つを簡単に破壊でき、尚且つ射程が理論上は無限な為である。なぜ射程が無限なのか、それは目標地点を報告できる艦艇もしくは航空機が存在し、目標座標データを地球本土に送信できれば後はボタン一つでこの凶悪な波動砲であるコロニーレーザーを撃てる為であった。

 

 

そして数日間にも及ぶ詳細な調査結果、掃射地点にはデブリどころか塵一つ確認されなかった。これによりコロニーレーザーの試射は完全成功という結果になった。

 

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