コロニーレーザーの照射テストを成功させた地球であったが、コロニーレーザー実用化の情報は秘匿された。勿論同盟国のガミラス共和国にはある程度の情報が伝えられたが全貌は伝えられなかった。
月面上・ガミラス共和国地球大使館
「以上が地球側から伝えられたコロニーレーザーの概要です。私見が入りますが恐らく実際の威力は伝えられたデータより遥かに強力だと考えます」
ガミラス共和国地球駐在武官のクラウス・キーマン中尉は上官であるバレル大使にそう報告した。
「わかった。恐らく君の私見は正しいだろう。幾ら同盟国相手と言っても全ての情報を公開する必要は無いからね」
バレル大使はそう言った。すると横で話を聴いていたフォムト・バーガー少将が言った。
「恐らくこの兵器使用相手はボラー連邦でしょうな。この凶悪な兵器さえあれば波動砲艦隊なんぞなくてもボラー連邦の本星を粉々にできますから」
バーガー少将の意見にキーマンも同意するように頷いた。だがそれにバレル大使が異議を挟んだ。
「確かにバーガー司令の言う通りだが少し違うな。この兵器には我らが祖国、ガミラス共和国を牽制する意味も含まれてしまっていると私は考えている」
その言葉を聴いた二人は「まさか」と言いたげな表情をした。
「二人とも顔に出てるぞ」
バレル大使はそう言うと続けた。
「我が国、ガミラス共和国は時間断層工場使用の見返りに幾つかの植民地惑星を地球に譲渡している。そしてそれらの惑星の防衛は将来的には地球防衛軍の手元に移るが、現状はガミラス共和国軍が防衛を請け負ってる。だから我が国の首脳部が変な気でも起こしたら一瞬でそれらの惑星を奪還できるからそれに対する牽制も含まれてしまっているだろう。尤も地球側は狙って牽制している訳ではないと思うがね」
「なるほど。地球側が意図していない牽制効果もあるわけですか。」
キーマンはそう言った。
「軍事兵器が意図していない効果を持つということか」
バーガー少将も納得したような声で言った。
「そういうことだ。地球側が完璧ではないにしろ。秘匿するべき兵器の詳細なデータを渡してきたのも『ガミラス共和国に対する敵意を持った兵器ではないですよ』と言うことを我々に伝える為だろう。それに敵対する気があるなら、コロニーレーザーと相性が悪い兵器を地球がガミラス共和国と共同開発する訳がないしね」
バレル大使はそう言った。そしてこの意見は正しく、統括司令部総長はガミラス共和国が地球に対する不信感を抱かないようにできる限り詳細なデータをキーマン武官に渡していた。また強力な新兵器の共同開発も進めていた。
「ですが首脳部が変な勘違いを起こさないように正確に情報を伝えないとまずいですね」
「そうキーマンの言う通りだよ。本国には私から直々に報告しておくよ。君だって奥さんの居る国の軍隊と戦争なんぞしたくないだろう」
バレル大使がそう茶化すように言うとキーマンは少し顔を赤くした。
「顔に出てますぞ。武官殿」
そのやり取りを見ていたバーガー少将は顔をニヤッとさせながらそう言った。
その後、ガミラス共和国首脳部にはバレル大使からコロニーレーザーの正確な情報が報告され、ガミラス共和国首脳部は地球との同盟関係を更に深めるという結論が出された。
このようなやり取りが行われ地球との関係を深めていくガミラス共和国とは変わり、正確な情報も得られずにただ地球にある大使館から送られてきた「地球がプロトンミサイルを超える何かしらの超兵器を開発した」と言う不完全な情報だけを得たボラー連邦首脳部はパニック状態だった。
首脳部の中には「有力艦隊の一部が出払っている今、地球を攻撃すべきだ」と言う過激な意見を言うものまでいた。それに対し軍部は「あんな戦闘狂集団と戦争なんぞ出来るか」と反発していた。
そして双方からの意見を聴き、判断を求められたベムラーゼ首相であったが、彼は冷静に「今は軍がガルマン・ガミラス軍との戦闘で手一杯である。地球に対しては情報取集と艦隊の演習による牽制以外は禁ずる」と言いその場を治めた。
だがベムラーゼ首相自身は内心謎に包まれた地球の新兵器を警戒しており今すぐに攻撃しても良いとも思っていた。しかし彼の理性がそれを止めていた。理性がこう訴えていたのだ「あの戦闘民族と戦争するのは危険」だと。
それともう一つベムラーゼ首相を安心させる材料があった。それはボラー連邦本星にある地球大使館の存在である。ベムラーゼ首相はこの大使館がある限り地球はボラー連邦本国に攻撃できないと確信していた。そしてこの推測は正しかった。地球側の意思としてはコロニーレーザーの目標地点に同胞である地球人が居る限りこの兵器は使用しないと決めていた。流石に同胞を巻き込む勇気は地球には無かった。
だが地球側にはもう一つボラー連邦本星に対してコロニーレーザーの使用を留める存在があった。それは防衛軍情報部内の諜報組織「コントロール」のスパイ網が張り巡らされていた為であった。
そしてボラー連邦は自国内に地球のスパイ網が築かれつつあることに気付いていなかった。
各国はこのような状態でありボラー連邦も首脳部のパニック状態は僅かな時間であり直ぐに落ち着いたがそうではない国があった。そう、自由に動かせる最後の戦力が全て消し飛んだデザリアム帝国である。今、デザリアム帝国本星は大荒れであった。
「どうするんだ!あれが動かせる最後の戦力だったんだぞ!」
「そうだ、それにゴルバが7隻も一度に失われたんだぞ。地球軍は化け物か」
「既に他の戦線に影響が出ています。フェイツ戦線では敵に前線を突破されそうです」
「このままでは本土防衛も困難です。どうしましょう聖総統」
聖総統を交えた会議では次々と参加者が発言するがそれは最早悲鳴であった。そんな会議でも聖総統スカルダートは沈黙していた。彼も動揺が収まっていなかったのだ。満を持して送り出したグロータス准将指揮のゴルバ7隻、これが撃破されたとなると最早打つ手がないのだ。そしてゴルバ7隻を撃破した犯人である地球艦隊は本星めがけて一直線で進撃してきている。偶然接敵した哨戒艦隊は全て三分と持たずに殲滅されていた。
「サーグラス准将、貴官に本土防衛の任務を任せる。最新鋭艦である無限β砲搭載超弩級戦艦グロデーズも与える。何が何でも本土を侵攻してくる地球艦隊から死守せよ」
聖総統、スカルダートはそう言った。そして本土防衛の任を命ぜられたサーグラスは言った「了解しました。グロータスの仇を取り、本土を守ります」と。
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