10月の終わりが近いある日、地球からシリウス星系に向かうAS第45船団の輸送船30隻、そして護衛の第4護衛艦隊8隻は順調な航海をしていた。
第4護衛艦隊旗艦オーク艦橋では艦長と副長が話していた。
「今回も順調な航海だな。副長」
「ですな艦長」
どこか気の抜けたような声で話す艦長に対して副長も似たような声で返した。
「それにこれほどまでに楽な任務は無い」
艦長は笑みを浮かべながら言った。
「そうですな、何かあれば後方の艦隊が全て対処してくれる」
副長もそれに同調する。
「あぁそうだ。久々にゆったりとした航海ができそうだ」
2人の会話に危機感は殆どなかった。尤もそれも仕方ないことであった。ここが地球の勢力圏であると同時に、現在このAS第45船団と第4護衛艦隊の後方約1000キロには防衛軍最新鋭艦隊である第1遠距離遊撃打撃艦隊が船団の間接護衛艦隊として航行していたのだから。
第1遠距離遊撃打撃艦隊旗艦アナンケ級デア・アウローラ
「AS第45船団との距離、約1000キロ」
「全艦、艦隊間の距離をこのまま維持せよ」
オペレーターの報告を聞き司令官兼デア・アウローラ艦長である速水祐輝中将はそう言った。
現在、第1遠距離遊撃打撃艦隊は初の遠洋航海の訓練の途中であった。この第45船団の間接護衛艦隊を務めているのは遠洋航海の訓練の一環であった。
そもそも遠距離遊撃打撃艦隊とは防衛軍の沿岸海軍から外洋海軍への転換政策の一環で編成された艦隊であり、この第1遠距離遊撃打撃艦隊は旗艦をアナンケ級デア・アウローラに置きマゼラン級戦艦6、長門型戦艦6、超A級戦艦6、イラストリアス級戦闘空母4、サラミス級巡洋艦8、アラスカ級巡洋艦8、秋月型駆逐艦A1タイプ16、秋月型駆逐艦A2タイプ8、無人戦艦2、無人駆逐艦10からなる大艦隊であった。
そしてこの編成は長期航海に適した艦艇だけで編成されており遠隔地において様々な活動ができる編成であった。現在の計画では遠距離遊撃打撃艦隊は7個艦隊が編成される予定であり、第2遠距離遊撃打撃艦隊以降の遠距離遊撃打撃艦隊には旗艦としてさらなる新鋭艦が配属される予定である。
そして遠距離遊撃打撃艦隊は砲撃訓練や陣形変更などをしつつAS第45船団と第4護衛艦隊を見守りながら順調に訓練航海を進めていった。しかしシリウス恒星系まであと一歩のところで緊急電が入る。
第1遠距離遊撃打撃艦隊旗艦デア・アウローラ
「速水司令、緊急入電です」
「なに!どうした!」
速水は驚いた声で尋ねた。その脳内では(またどこかの国が攻めてきたのか)と考えていた。しかしそれは杞憂だった。
「シリウス星系司令部からです。間もなく臨時の艦隊が本艦隊付近を通過するとのこと」
「なんだそれだけか」
オペレーターの報告を聞き速水はどこか気の抜けた声で尋ねる。
「はい、それだけです」
その返答を聞き、速水は大きなため息をついた。
「びっくりさせるなよ」
そうぼそっと呟いた。
それから数分後、臨時の艦隊が現れた。
「速水司令、本艦隊右舷前方に多数の重力震。恐らく臨時の艦隊かと」
「了解した」
(さて何がお出ましかな)速水はそう考えた。
そして臨時の艦隊がワープアウトする。それを見た速水は驚いた。その艦影は見間違うはずがない艦影群であった。艦首に三基の波動砲を備えた春蘭型やハリネズミの様に主砲を搭載した戦艦アマテラスやアリゾナ級が4隻、その他にも大小様々な艦が居たがその中でもその名と姿を知らぬ者は居ないヤマト型戦艦が三隻も居た。
「こいつは驚いた。第一連合艦隊じゃないか」
速水は驚きの声を出した。まさかもう第一連合艦隊が帰還するとは思っていなかったのだ。
「もう帰って来たんですね」
そう言ったのは、オペレーターの一人、新田綾であった。彼女も驚きであったようだ。確かに驚くのも仕方ない、なにせ第一連合艦隊が大遠征に出撃してまだ一ヶ月ちょっとしか経っていないのだから。
「第一連合艦隊に打電、{貴艦隊の帰還を歓迎する}と」
速水はそう言った。
「了解」
第一遠距離遊撃打撃艦隊乗組員は第一連合艦隊に興味津々であったが第一連合艦隊乗組員は逆に第一遠距離遊撃打撃艦隊に興味津々であった。
「見ろよ、新鋭艦ばかりだぜ」
「あぁ、どれもピカピカだな」
ヤマト艦橋ではそのような会話が飛び交っていた。
第一連合艦隊旗艦リヴァイアサン
「第1遠距離遊撃打撃艦隊より入電{貴艦隊の帰還を歓迎する}です」
「了解した。返信は{貴艦隊の無事の航海を祈る}だ」
「了解」
沖田はそう返信するように命令した。
第一遠距離遊撃打撃艦隊旗艦デア・アウローラ
「リヴァイアサンより返信、{貴艦隊の無事の航海を祈る}です」
「了解した」
(まさかあの沖田提督から返信を貰えるとはな)速水はそんなことを考えていた。
速水はまだ30代後半である為、沖田はイスカンダル遠征を成し遂げた英雄であった。
それから数日経った11月1日、第一連合艦隊は月面基地に帰港した。
第一連合艦隊の帰還は第一艦隊を始めとした、複数の主力艦隊が出迎えた。
そして総長は第一主力艦隊旗艦アンドロメダに乗っていた。
(まさか損害なしで帰ってくるとは流石沖田提督だな)総長はそう思いながら。第一連合艦隊の帰還を歓迎した。
そして11月2日に第一連合艦隊無傷の帰還とデザリアム帝国本星崩壊のニュースが銀河を駆け巡った。地球市民やガミラス共和国市民は憎き敵であるデザリアム帝国の壊滅に両手を挙げて喜び、ガルマン・ガミラス帝国からは地球と地球防衛軍に対して総統から労いの言葉が届いた。一方のボラー連邦は首脳部の衝撃が凄まじかった。
「それは間違いないのか」
ベムラーゼ首相はゴルサコフに聞き返した。
「はい。第一連合艦隊の損害はゼロです。無人艦載機や無人艦も勿論のこと兵士1人も失っていません」
ゴルサコフは冷静に答える。
「地球人と地球軍は化け物か」
ベムラーゼ首相は驚愕するしかなかった。まさか片道40万光年の距離を僅か一ヶ月ちょっとで遠征し、あまつさえ目的を達成してしまうという偉業を成し遂げたのだから。まぁ本星破壊についてはある程度想像がついていたのでそこまで驚きは無かったが。
「しかし地球軍は日に日に脅威になってるな」
ベムラーゼ首相はぼそっと言った。それを聞きとったのかゴルサコフが報告する。
「はい、地球軍は日に日に巨大化しています。未確認の情報ではサイド3というコロ二―群では10隻近くの巨大艦が建造されているようです」
「そうか」
ベムラーゼ首相はゴルサコフの報告を聞きそうぼそっと言った。
最早ベムラーゼ首相にとって地球は驚異だった。無視できない強大な戦力を持ちシャルバート星について調査を進め、挙句ボラー連邦の宿敵ガルマン・ガミラス帝国と国交を結んだのだ。無視しろという方が無理であった。もし地球が変な気でも起こしたらと考えると夜も眠れないのがベムラーゼ首相の日々である。
ボラー連邦にとって地球は驚異的な勢力になりつつあった。しかしその逆の視点もあるわけで、地球連邦からしたらボラー連邦は驚異的な勢力の為、地球防衛軍は諜報組織「コントロール」を使いベムラーゼ首相の失脚を目指す活動をしていた。だがそのことをベムラーゼ首相は知らなかった。
一方この地球連邦のデザリアム帝国に対する勝利ニュースによって、ボラー連邦やガルマン・ガミラス帝国によって圧力や戦禍に巻き込まれている国や勢力は地球に接触しようとする動きが加速した。中には地球に向けて使節を乗せた艦船を出港させる国もあった。