地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

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第二次ビンソン計画と外交の拡大

「いくらなんでも無茶です!」

 

この日、統括司令部の総長執務室での会議の静寂を打ち破ったのは財務部門トップの転生者であった。

 

2204年12月12日の総長執務室には総長を筆頭に統括司令部の各部門のトップが集まり会議を開いていたのだ。そして財務部門の悲鳴のような意見は執務室に重い空気を流した。

 

「既にビンソン計画と9月以降に始まったボラー連邦に対抗する防衛艦隊大規模増強計画で莫大な予算と人的資源を使っています。ここで政府のこの提案を飲んで急場をしのいだとしても、その後の維持費がとんでもないことになります」

 

財務部門のトップである彼女はそう言った。

防衛軍の財布を握る彼女にとって政府からの提案は非常に苦しいものであったのだ。ではこの日の議題である政府からの提案とは何なのか、それは「第二次ビンソン計画を実施してくれ」というものであった。しかもその中身は直訳すると「新たに新型戦艦100隻以上を含む次世代艦を建造し、防衛艦隊の戦力を増強せよ」というものであり、現在進行中であるビンソン計画と殆ど中身は変わらないのである。

 

そもそも現在進行しているビンソン計画では主力艦隊10個、遠距離遊撃打撃艦隊4個、機動艦隊4個を整備するという計画であり、総長が極秘裏に建造していたドゴス・ギア級とラー・カイラム級の計10隻の就役でビンソン計画は一応完成する。

まだ完全に完成していないのは主力艦隊5個分の旗艦であるアンドロメダ級5隻がまだ就役していない為である。さらに同時進行でボラー連邦との建艦競争で遠距離遊撃打撃艦隊3個とモビルスーツ運用部隊である遊撃艦隊が9個、打撃艦隊4個、無人艦隊10個、エセックス級空母30隻を含む大艦隊その他護衛艦隊、パトロール艦隊、補助艦艇多数が新たにビンソン計画に組み込まれ整備される予定であり、建造艦艇数は更に増えると言われている。しかしこれ以上の増強は今すぐには無理が出るというのが統括司令部での意見であった。その為、ここでの政府からのこの提案は統括司令部のトップ達にとってはとんでもないものであった。

 

「財務部長の言うことはわかる、私としても今の状況で第二次ビンソン計画なんて無茶だと思っている。しかし政府がこの要望を出してきたのにも理由があるから悩ましいんだよ」

 

総長はそう言うと溜息をついた。

 

「政府が防衛艦隊の増強を望むのはやはりボラー連邦との一件ですかな」

 

統括司令部副総長の転生者が言う。

 

「そうだ、ボラー連邦との関係性が悪化する可能性があるからな。まぁ第一連合艦隊のおかげというかデザリアム帝国に勝った代償だろう」

 

総長がそう言うと会議室の空気はさらに重くなった。

実は地球連邦が第一連合艦隊の帰還とデザリアム帝国に圧勝したことを発表してからボラー連邦本星にある地球連邦大使館には親ボラー連邦国家の全権大使や属国の外交官などが次々と訪れ国交開設を申し込んできたのだ。これに対して地球連邦政府としてはボラー連邦の顔色を伺いながらも各国と国交だけは結んでいった。

また親ボラー連邦国家に対しては限定的な通商条約も結んだ。しかし属国にはさすがに手出しは出来ない為、あくまでも国交を結ぶだけに終わっていた。だがその後に問題が起きたのだ。

 

今度は地球連邦本星に大量のボラー連邦やガルマン・ガミラス帝国に圧力を掛けられている国家や星間連合が助けを求めにやって来たのだ。その中にはエトス国を盟主としアマール王国、ベルデル国、フリーデ国を含む原作の大ウルップ星間国家連合の前身であるウルップ星域国家連合の姿もあったのだ。

勿論、地球連邦政府としては無視するわけにはいかず次々と国交を締結し通商条約を結んでいった。

 

しかし多くの国は安全保障条約の締結も求めてきたのだ。これに対し地球連邦政府は安全保障条約の締結は見送ることにしつつも、ボラー連邦やガルマン・ガミラス帝国からの圧力の解除に努めると約束していた。

 

そして最初にガルマン・ガミラス帝国に関してこの話を通すと比較的あっさりとデスラー総統は了承した。だがデスラー総統は見返りとしてそれらの国と地球連邦は安全保障条約を締結しボラー連邦の支配下にならないようにすることと、シャルバート星に関する全ての情報提供を要求してきたのだ。それに対して地球連邦政府はその要望に応じつつガルマン・ガミラス帝国に時間断層工場の使用を許可し、それらの国を地球連邦が守る際はガルマン・ガミラス帝国も全力で援護することを確約させたのだ。そしてデスラー総統は地球連邦政府の提案を受け入れたのであった。

デスラー総統としては地球連邦を始めとする国々でボラー連邦包囲網を築き挙げるつもりであったのだ。

 

その後、地球連邦政府は両大国から圧力を受けていた国家と次々と安全保障条約の締結をしていった。だがボラー連邦のベムラーゼ首相はこの動きをよく思っていなかった。

 

地球連邦政府はボラー連邦に対してもこれらの国々に対する圧力の停止を求めたが内政干渉として断った。しかしボラー連邦が圧力を掛けていた国々に地球連邦が次々と安全保障条約を締結していくとボラー連邦はそれらの国々に手出しをしにくくなっていったのだ。それを受けてベムラーゼ首相は各国の国境線で露骨に軍事演習や挑発を活発化させていた。

 

このボラー連邦の動きを受け地球連邦政府は統括司令部に対して第二次ビンソン計画の実施を求めたのであった。因みにガルマン・ガミラス帝国からの圧力が各国ともに地球連邦のおかげで無くなったので地球連邦政府には大量の感謝状が届いていた。

 

 

「総長、提案があるのですが」

 

そう言って手を挙げたのは造船部門トップの男であった。

 

「どうぞ」

 

総長がそう言うと造船部門トップの男はあることを提案した。

 

「そもそも第二次ビンソン計画自体はその後の維持は兎も角、現在の地球連邦の国力で実施は可能です。そこで第二次ビンソン計画は実施し大量にマゼラン級戦艦、サラミス級巡洋艦、ドイッチュラント級戦闘巡洋艦、レパント級フリゲート、コロンブス級多目的艦を建造し、安全保障条約を締結した国に売るのです。それに時間断層で建造すればタダ同然で建造することができます。それと合わせて防衛艦隊で運用する艦艇も増強すればよいのです。また艦載機や戦闘機として余っているセイバーフィッシュを再生産も視野に入れて格安で売るのです、我が国では旧式ですが今でもセイバーフィッシュは強力な多用途機ですし」

 

この造船部門トップの男の提案を聞き「なるほど」といった声が上がる。

 

時間断層で建造した場合、自動化された機械や地球版ガミロイドをこき使うだけで人件費は殆どかからないのだ。それに安全保障条約の締結を求めてきた国家の中にはまともな戦闘艦やボラー連邦と正面からやりあえる艦艇を保有していない国も多かった。

 

「しかし、ショックカノンや波動エンジンの優位性は譲れませんよ」

 

そう異論が上がる。それに対して造船部門トップの男は意見を述べる。

 

「それは大丈夫です。輸出する艦艇の主機にはケルビンインパルスエンジンを使用し波動エンジンの優位性は譲らせません」

「なるほど、他国には最前線でボラー連邦と互角にやりあえる艦艇を譲渡ないし売り渡し地球連邦は売った金で更なる軍備増強をするということか」

 

総長がそう言うと造船部門トップの男は「そうです」と言った。

 

「悪くないな、それについでにビーム攪乱幕も売れば儲かるな。よし、この方向で第二次ビンソン計画を立案して政府に提出したいが異論はあるかね」

 

総長はそう言い会議参加者の顔を見渡したが誰も異論はなさそうであった。

 

「では、第二次ビンソン計画の詳細を決めよう」

 

総長はそう言い会議は第二次ビンソン計画の詳細決定に取り掛かった。

 

そして会議はその後3時間続き第二次ビンソン計画の詳細は決定した。

 

その第二次ビンソン計画の内容は、輸出用のマゼラン級戦艦、サラミス級巡洋艦、ドイッチュラント級戦闘巡洋艦、レパント級フリゲート、コロンブス級多目的艦の大量建造とセイバーフィッシュの格安での販売と再生産、防衛艦隊用に打撃艦隊5個、遊撃艦隊6個そして他国へのビームかく乱幕の販売というものになった。

そして統括司令部で纏まった第二次ビンソン計画は政府及び議会で12月14日には可決され成立、予算が準備された。

 

このニュースは安全保障条約を締結した国々に瞬く広まり、多くの国から購入の要望が即日届くことになり、

 

「これで我が国は安心できます」

 

そう言った声が連日、地球連邦政府外務省に届くことになる。

ここでさらに連邦政府と統括司令部は大盤振る舞いをし、購入を申し出た国にはマゼラン級戦艦などの輸出用艦艇やセイバーフィッシュのライセンス生産の許可と、その為の技術官の派遣をすると宣言したのだ。これを受けさらに多くの国から購入要望が届くのであった。

因みにライセンス生産を許可した理由には自国でメンテナンスなどができるようにしてもらう為という理由もある。

 

しかしこの動きを快く思っていない国も居た、それがボラー連邦やSUSといった国であった。ボラー連邦は地球連邦とその他の諸国が徒党を組むことを恐れた。

 

一方のSUSに至っては乗っ取りを模索していたウルップ星域国家連合を奪われたと考えていたのであった。

 

だが地球連邦政府はさらなる計画を進めていた。

 

「順調だな」

 

総長はそう呟き書類を閉まった。

 

その書類には「銀河連合計画」と書かれていた。

 

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