地球防衛軍戦記   作:第一連合艦隊

79 / 118
メリークリスマス!ということで遅くなりましたが最新話です。


運命の開戦

地球時間3月17日午後23時50分シャルバート星宙域

 

第十主力艦隊旗艦春藍

 

「山南司令、開戦時間まであと10分です」

 

オペレーターはそう報告した。

それを聞いた山南は尋ねる。

 

「ボラー艦隊の動きはどうなっている」

 

それを聞いたオペレーターは直ぐに返事した。

 

「ボラー艦隊ですが撤退する気配はありません。それどころか戦闘態勢に入りつつあります」

「わかった。全艦ボラー艦隊の不意打ちに注意しろ。相手はボラー連邦だ、此方の通達時間前に攻撃してくるかもしれん」

「了解しました。全艦及びガルマン艦隊に通達します」

 

こうして第十主力艦隊全艦に厳重な警戒態勢が敷かれた。

 

 

地球連邦統括司令部

 

「開戦時刻まで後5分です」

「全艦隊配置に就きました」

 

オペレーターの声が統括司令部の司令室に響く。

この時既に地球防衛軍はボラー連邦との和解は無いと確信し、全軍に臨戦態勢を取らせており、銀河連合の同盟国には支援の艦隊がすでに派遣されていた。

また第十一番惑星沖には第二遠距離遊撃打撃艦隊、第三遠距離遊撃打撃艦隊、第七主力艦隊、第九主力艦隊及び揚陸艦隊からなるバース星攻略艦隊が集結し、冥王星にはロンド・ベル隊所属のドイッチュラント級6隻とグラナダ基地で建造され、就役したばかりの新造艦であるネェル・アーガマが待機しており、開戦と同時にボラー連邦領に通商破壊の為に進出できる体制を整えていた。他にも各艦隊が戦闘態勢を整えていた。

 

(よし全て順調だな)総長はそう思っていた。しかし突然第十主力艦隊から一報が入った。

 

「司令、第十主力艦隊から緊急入電!ボラー艦隊から先制攻撃を受けたとのこと現在反撃中!」

「なんだと!」

 

総長は思わず大声を出したのだった。

 

こうして地球連邦とボラー連邦は戦争に突入した。

 

時に地球時間17日23時55分であった。

 

 

シャルバート星宙域

 

シャルバート星宙域では第十主力艦隊とガルマン・ガミラス帝国軍親衛艦隊がボラー連邦艦隊と戦闘を始めていた。

 

 

「艦橋砲、敵B型戦艦に命中。撃沈を確認しました」

「よし、その調子だ。奇襲ごときで地球連邦に勝てると思うなよ」

 

ドレッドノート級戦艦コネチカットの艦長は報告を聞きそう口にした。事実、地球、ガルマン・ガミラス連合は奇襲を受けたが混乱はせずにすぐさま反撃を開始していた。

そのクニャージ・スヴォーロフの艦橋からは爆発するボラー連邦のB型戦艦と激しく砲戦を行う前衛のエンケラドゥス級フェンリルとベストラが見えていた。

 

そしてシャルバート星宙域では双方が激しくビームとミサイルを撃ち合い、激しい戦闘が繰り広げられていた。

このシャルバート星宙域は宙域への入口からシャルバート星にかけては通常空間が広がっているが、その空間を離れると航行不能宙域になり双方は機動戦にはならずに正面切っての艦隊戦になっていた。

 

第十主力艦隊の各艦からは猛烈な勢いでショックカノンが撃ちだされ、ガルマン・ガミラス側も各艦から陽電子ビームが次々と撃ちだされボラー連邦艦隊に損害を与えていった。勿論ボラー連邦艦隊も反撃するが第十主力艦隊やガルマン・ガミラス帝国軍親衛艦隊はビームかく乱幕や波動防壁弾を上手く使い被害を減らしていた。

 

こうして双方が激しく撃ち合う中「拡散波動砲発射!」と春藍艦橋で山南中将は言った。

 

次の瞬間、春藍とアンドロメダ級アルバート、アルテミスの艦首が青く強く光り、拡散波動砲が発射され、ボラー連邦艦隊を包み込み前衛に居た第八打撃艦隊を消し飛ばした。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

 

これが第八打撃艦隊司令ハーキンス中将最後の言葉だった。

 

一方、目の前で第八打撃艦隊があっけなく消し飛ばされる光景を見せつけられたバルコム司令は唖然としていた。

 

「これが噂の地球軍の波動砲の威力か」

 

バルコム司令は呟いた。

この時ボラー連邦艦隊の状況は悪化していくばかりだった。250隻の前衛を吹き飛ばされ、残るは合計600隻近くの2個主力艦隊であり、数的には有利であったが第十主力艦隊やヤマト型3隻、ガルマン・ガミラス側が猛烈な砲撃をボラー連邦艦隊に加えており、その艦艇数は徐々に減っていた。そしてそこに更なる追い打ちが掛けられる。アリゾナ級アリゾナ、ペンシルベニアが拡大波動砲を発射し100隻以上の艦艇を消し去り、さらにデスラー親衛艦隊の10隻のデスラー砲艦がデスラー砲を発射しこちらも100隻以上の艦艇を消し去った。

 

「ガルマンも波動砲搭載艦を量産、実用化していたのか!」

 

バルコム司令は驚いた声を挙げた。ガルマン・ガミラス側が波動砲搭載艦を量産していたことをボラー連邦はこの時まで知らなかったのだ。

 

勿論ボラー連邦はガルマン・ガミラスの兵器について調査しており、デスラー砲についても知っていた。しかしこれまでガルマン・ガミラスはデスラー砲をデスラー総統座乗艦にしか装備していなかった。だがガルマン・ガミラスもデスラー砲を装備した艦を量産し始め、その初期ロット10隻がこの度デスラー親衛艦隊に配備されていたのだ。

このデスラー砲搭載艦の開発、実戦配備は密かに進められていた為、ボラー連邦には知られておらず、デスラー砲搭載艦量産の事を知らなかったツケをボラー連邦は100隻以上もの艦艇で支払うことになったのだった。

 

だがボラー連邦艦隊も黙っていない。400隻近くにまで減らされたものの数では圧倒的であり物量に物を言わせ攻撃を加える。だが絶え間なく展開されるビームかく乱幕や波動防壁弾には歯が立たず、運よく防衛軍艦艇やガルマン・ガミラス側の艦艇に命中して数隻のガルマン・ガミラス駆逐艦を沈め大型戦艦を行動不能にしたが、殆どの艦艇にはかすり傷程度しか与えられなかった。

 

「バルコム司令、敵艦隊に全然ダメージが与えられません!」

 

一人の兵士が血相を変えた表情で報告する。

 

「おのれぇ。小賢しい戦法を使いよって」

 

バルコム司令はそう唸り声を出した。バルコム司令は圧倒的な物量で殴れば地球連邦にも勝てると思っていたのだが想像以上の防衛艦隊の強さに驚愕していた。

 

(どうする、このまま戦闘を続行するか。それとも撤退するか?)バルコム司令はそう考えていた。しかしそれを考えている時間が命取りとなった。バルコム司令が思考している間にも砲撃によって徐々に数を減らされているうちに第十主力艦隊のドレッドノート級8隻とエンケラドゥス級12隻が拡散波動砲発射の準備を完了させたのだ。

 

ボラー連邦艦隊は既に400隻を切っており20隻からの拡散波動砲だとほぼ確実に殲滅できる状態であった。またデスラー艦もハイパーデスラー砲の発射準備が完了しており今すぐにでも発射できる体制だった。

 

そして20隻から一斉に拡散波動砲とデスラー艦からハイパーデスラー砲が発射された。この一斉射はボラー連邦艦隊に致命的なダメージを与えた、ボラー艦隊は一瞬にして旗艦を含む350隻以上を消し飛ばした。

 

「ぬわぁぁぁぁぁ」

 

バルコム司令はそう断末魔を挙げ、ハイパーデスラー砲のエネルギーの濁流に飲み込まれた。

 

そしてこの一斉射を耐えて残された僅かな艦艇も猛烈な砲撃の前に数分と持たずに壊滅した。こうして地球連邦、ガルマン・ガミラスによるシャルバート星の防衛は成功した。

 

余談ではあるがこの戦闘終了後もボラー連邦との戦争終結までシャルバート星防衛には防衛軍の主力艦隊が交代しながら守備に当たることになる。

 

 

統括司令部司令室

 

「総長、第十主力艦隊より入電。シャルバート星防衛は成功とのこと。ボラー艦隊を殲滅しました」

「了解した。バース星攻略艦隊の状況は?」

 

報告を聞いた総長はそう尋ねた。

 

「バース星攻略艦隊ですが既に攻略を開始しています」

「了解した」

 

(ボラー連邦の先制攻撃があったが作戦は順調だな)総長はそう思いながらモニターを眺めた。そのモニターにはバース星攻略が開始されたことを示す状況が表示されていた。

 

 

同時刻バース星沖

 

「全艦ワープアウト完了」

「よし、全艦バース星攻略を開始する」

 

第二遠距離遊撃打撃艦隊司令兼バース星攻略司令のジェームス・キング中将は旗艦ドゴス・ギアの艦橋でそう言った。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。