第十一番惑星沖の戦闘が終結してから1日後、太陽系外縁部を数十隻のガトランティス艦隊が陣形を組んで航行していた。
「正面に地球艦隊捕捉。中型艦2、小型艦6」
ガトランティス艦隊旗艦の艦橋でレーダー手が報告する。
「提督どうなさいますか」
レーダー手の報告を受けた参謀は艦隊司令に問いかけた。
「勿論攻撃する。全艦攻撃用意!」
「はっ!全艦攻撃用意!」
司令の命令によりガトランティス艦隊は戦闘隊形をとり、捕捉した地球艦隊に攻撃を開始する。
宇宙空間を多数のビームが走り地球艦隊に命中する。
地球艦隊は反撃するが数的不利により為すすべなく全艦が撃沈された。しかし艦隊は攻撃を受けた情報を確実に発信していた。
この時、戦場に一番近い防衛艦隊は第五艦隊(通称、ティアンム艦隊)だった。
第五艦隊は旗艦アナンケ級タイタンを含むマゼラン級戦艦7隻、サラミス級巡洋艦20隻、レパント級フリゲート30隻からなる大艦隊だった。そして指揮官であるティアンム中将はガミラス戦争以前からの歴戦の指揮官であり、土方防衛艦隊司令、レビル中将と並ぶ防衛軍三将の一人であり、指揮下の艦隊は最新鋭艦こそいないものの戦闘力は防衛艦隊最強クラスとされていた。(なお第五艦隊にはまだ所属艦艇が居るが現在はドック入りなどで不在であった)
第五艦隊旗艦タイタン
「司令、付近にいた第四無人哨戒隊との通信が途絶しました」
「なんだと」
通信兵からの報告を受けたティアンムは冷静ながらも驚いたような声で答えた。
「最後の通信から推測するに、ガトランティス艦隊から攻撃を受けたものと思われます」
「そうか。付近の友軍はどうなっている」
「付近に展開していたレビル中将の第三艦隊は十一番惑星防衛に向かったため居ません」
参謀の一人がそう言い終わった直後に通信兵が大声で報告をしてきた。
「司令!第三艦隊より入電!」
「内容は」
「第三艦隊は第六艦隊到着まで十一番惑星宙域に展開するとのことです」
「よし。第十一番惑星はレビル中将に任せる。全艦戦闘配置、本艦隊は戦闘隊形に陣形を整えつつ、第四無人哨戒隊が展開していた宙域に向かう」
報告を聞き、少し考えたティアンムはそう全艦に命令した。
「了解。各艦に伝達します」
オペレーターはそう返事をすると直ちに全艦に命令を伝達した。
こうして第五艦隊は戦闘隊形に陣形変更をしながら移動を開始し始めた。
その頃、第四無人哨戒隊を殲滅したガトランティス艦隊は進路を太陽系に向け前進していた。
「提督、先行していたナスカ司令の外惑星攻撃隊との連絡がつきません」
「なんだと!」
ガトランティス艦隊司令は驚いた声で反応した。(この時外惑星攻撃隊は第十一番惑星防衛艦隊と第三艦隊によって殲滅されている)それに対し参謀が冷静な声で尋ねる。
「何かトラブルがあったのでしょうか」
「わからん」
「提督、どうなされますか」
参謀は今後の行動を決めるべく司令に尋ねる。
「作戦は変更しない。艦隊はこのまま前進する」
「了解しました」
ガトランティス艦隊司令はあくまで作戦は変更しないと言った。(この時ガトランティス艦隊司令は外惑星攻撃隊が殲滅されているとは想定すらしておらず、何かしらのトラブルだと推察していたのであった)
こうしてガトランティス艦隊と第五艦隊は確実に双方の索敵圏内に入ろうとしていた。
そして索敵戦にて先手を取ったのは第五艦隊だった。
マゼラン級やサラミス級の索敵能力が発揮された瞬間であった。
「レーダーに反応あり!本艦隊正面艦影多数!艦種識別、ガトランティス」
「全艦戦闘用意!」
レーダー手の報告を受けティアンムは全艦に戦闘用意の命令を出した。
「全艦戦闘よーい!」
「艦数特定完了、ナスカ級3、ゴストーク級5、ラスコー級20、ククルカン級50」
「主砲発射準備完了!」
「ミサイル発射準備よし」
オペレーターの張り切った声による各所からの報告が艦橋に響いた。
士気は十分に高いと判断できる状態であった。
一方、ガトランティス艦隊もわずかに遅れたものの第五艦隊を捉えていた。
「提督!正面に地球艦隊確認!」
「戦艦7、巡洋艦20、駆逐艦30」
「なんだと!展開するのが早いな。全艦戦闘配置!」
司令は地球艦隊の展開の早さに驚いたものの直ぐに戦闘配置の命令を出した。
「全艦戦闘配置!」
「全速前進。射程に入り次第攻撃開始だ」
「はっ」
ガトランティス艦隊も素早く戦闘隊形に移行する。
かくして両軍は双方が戦闘準備を整え太陽系外縁部における地球とガトランティスの第二ラウンドの先端が開かれようとしていた。
第五艦隊旗艦タイタン
「司令、ガトランティス艦隊増速、前進してきます」
「全艦射程に入り次第砲撃開始だ」
「了解しました」
ティアンムは冷静に命令を出し、参謀も了承の旨を復唱し命令を伝達する。
第五艦隊は数では劣っている、だが火力では負けていない。それがティアンムが出していた推測であり、艦隊司令部が冷静を維持している源であった。
そして両軍は距離を詰め、戦闘は正面からの撃ち合いで始まった。
ガトランティス艦隊からはビームと量子魚雷が、第五艦隊からはショックカノンやミサイルが次々と発射される。
マゼラン級の砲撃がラスコー級を貫き撃沈し、サラミス級やレパント級のミサイルが命中しククルカン級が爆沈する。一方、ガトランティス艦隊のビームは命中しているものの波動防壁やマゼラン級を集中して狙っていたため損害を与えられていなかった。しかし巡洋艦を狙った量子魚雷やミサイルは確実に損害を与えていた。
「主砲良く狙え!」
「敵魚雷及びミサイル第2巡洋艦戦隊に命中、一部が波動防壁を食い破りました。ジャワ轟沈、ザトペック大破、ゴトランド、スヴェトラーナ中破」
「反撃の激しい艦を優先して狙え。戦闘不能な艦は後方へ退避させろ。無駄な犠牲を出してはならん」
オペレーターが被害を報告するとティアンムはそう命令を出す。
全艦が波動防壁を装備しているとはいえ、流石に攻撃を集中されては被害が発生するのは仕方がない事であった。
そして第五艦隊は反撃が激しいガトランティス艦隊の前衛艦を狙い攻撃を行い、大破したザトペックは後方へ退避していった。
一方、ティアンム艦隊の猛攻を受けるガトランティス艦隊は被害が急増していた。
「ククルダン、ククイズ、ククジバル、ラハブ轟沈。ライルカン航行不能」
「前衛部隊損害拡大!」
「地球艦隊なかなかに手強いな。艦載機を発進させろ」
被害が拡大し地球艦隊が手強いと判断したガトランティス艦隊司令はそう命令した。
「了解!」
「旗艦より全空母へ、全艦載機を発艦させよ」
そして命令発令から数分後、3隻のナスカ級から艦載機が発進し第五艦隊に向かう。
第五艦隊旗艦タイタン
「敵空母より艦載機の発艦を確認」
「全艦対空戦闘用意」
敵機発艦の報告を受けティアンムは全艦に対空戦闘用意を命令し各艦が対空戦闘の準備をする。そして対空戦闘の為二つの戦隊が前へ出る。
「第5フリゲート戦隊 第5巡洋艦戦隊前へ出ます」
「巡洋艦エピオス被弾、戦列離脱します」
「敵機間もなく射程圏内!」
「全艦射程に入り次第対空迎撃始め」
ティアンムは報告が飛び交う中、素早く命令を出した。
そしてガトランティス機は命令後直ぐに射程圏内に入ってきた。
「敵機対空射程入ります」
「全艦迎撃始め!」
ティアンムの号令により各艦が対空ミサイルやパルスレーザーを撃ち始める。
各艦から豪雨の如く対空射撃が行われ、激しい迎撃により何機ものガトランティス機が撃墜される。しかし少なくないガトランティス機が迎撃網を掻い潜り艦隊にミサイルを発射する。
「敵機接近!」
「弾幕張り続けろ!」
「敵機ミサイル発射!」
「衝撃に備え!」
迎撃を掻い潜った機体からミサイルが発射され、戦艦や巡洋艦に命中し運が良ければパルスレーザーを破壊する。
「戦艦オリオン、エリス、アカムトルム、エスメラルダ、ウカムルバス、巡洋艦マイアミ、オンタリオ、プルトン被弾されど損害軽微」
続々と被害報告が旗艦タイタンに入るが艦隊の損害は大きいものではなかった。
「敵機72機中45機撃墜しました」
「よくやった。射程外へ出た撤退する敵機への攻撃は不要。ただし艦隊への攻撃の手を緩めるな」
そう短くティアンムは言った。
このガトランティス艦載機のミサイルはマゼラン級やサラミス級に多数命中したが、その強力な防御力や波動防壁によって有力なダメージは全く与えられていなかった。そのため第五艦隊からの攻撃が弱まることはなく主砲は次から次へショックカノンを放ち、VLSや艦首ミサイル発射管からは続々とミサイルが発射される。
「全弾戦艦に命中されど効果なし!」
「なんで平気なんだ!」
「4番機がやられた!」
「被弾した!助けてくれ!」
ガトランティス艦隊旗艦ラジェットの艦橋には攻撃隊からの悲痛な叫びが流れていた。
「地球の戦艦は化け物か…」
自軍の艦艇なら撃沈や戦闘不能になるレベルの被弾、しかし地球の艦艇は何事もなく砲撃をしている。司令官はそう呟くしかなかった。
その間にもガトランティス艦隊の損害は拡大していく。新たに駆逐艦が14隻、巡洋艦が5隻撃沈されゴストーク級は1隻しか残っていなかった。
「提督!艦隊の損害が拡大しています!」
「ゴルザス轟沈!」
「ゴストーク級全滅!」
悲鳴のような声でオペレーターが報告する。そして提督は決断した。
「撤退だ…」
オペレーターの報告を聴き、提督は小さく言った。
「司令なんと?」
「撤退だ!全艦反転。プロキオン恒星系に撤退する!」
「りょ、了解!」
「全艦直ちに反転。戦域より離脱せよ」
旗艦ラジェットから命令が発進され各艦が反転し始める。
第五艦隊旗艦タイタン
「敵艦隊、反転する模様」
「本当か」
レーダー手の報告を聞きティアンムはそう短く聞き返した。
「間違いありません。全艦反転行動中です」
「司令、撤退行動でしょうか」
参謀がティアンムに問いかける。それに対しティアンムは「そうだろうな」と短く返した。
「どうされますか」
「まだ応射してきている艦がいる、攻撃は続行だ。全艦応戦しつつ加速し前進。1隻も逃がすな」
「はっ」
「悪いが全滅してもらうぞ。ガトランティス」
ティアンムはそう呟いた。
既に勝敗は決しているに等しい、これ以上の戦闘は無謀だと素人でも分かる状況であった。だが敵は侵略者である。ここで手を緩めるつもりはティアンム以下第五艦隊将兵に皆無だった。
そして第五艦隊各艦は加速しながら攻撃を続行していく。各艦のVLSからはミサイルが次々と発射され主砲はショックカノンを撃ちまくる。
攻撃は反転中のガトランティス艦に容赦なく襲い掛かり次々と撃沈していった。
「地球艦隊一斉にミサイル発射!総数100以上!」
「ククジン、ククオム、ラスコン被弾、轟沈 。ククハル、ラスブルク航行不能!」
「ナスペ被弾!」
「損害拡大止まりません!」
オペレーターから入る悲鳴のような報告を聴き「おのれぇぇ!」と、そう司令は声を出すが状況は変わらない。
エンジンを撃ち抜かれ航行不能になる艦や次々と爆炎を上げ沈む友軍艦を見ながらもガトランティス艦隊司令は何もできなかった。
「ガトランティス艦隊、巡洋艦、駆逐艦計14隻撃沈!」
「一部の艦が戦列より落伍した模様。航行不能と思われます」
一方の第五艦隊旗艦タイタンでは観測員が冷静に状況を分析していた。それを受け取ったティアンムもまた冷静に命令を出していた。
「落伍艦は応戦してきた艦以外は無視しろ。後で鹵獲する」
「了解。各艦に通達します」
第五艦隊は更に加速しながら追撃しつつガトランティス艦隊への攻撃を続ける。そこには情けはなかった。侵略者をは倒すそれのみであった。
「地球艦隊、更に加速しつつ追撃してきます!」
「なんだと」
「応射し足止めを…」
そこまで言った瞬間に旗艦にタイタンからの砲撃が命中し司令官は艦の爆発とともに消滅した。
こうして旗艦と司令を失ったガトランティス艦隊は必死に戦域からの離脱を目指すが統率が取れずに次々と撃沈や航行不能にされていった。
「敵艦隊大きく隊列が乱れます。旗艦を撃沈したと思われます」
「全艦攻撃続行。1隻も逃がすな。ここで全滅させる」
ティアンムの命令により第五艦隊は情け容赦なく戦列が乱れたガトランティス艦隊に攻撃を続けた。
20分後、最後のナスカ級が集中砲火を浴びて轟沈した後、その宙域にはエンジンを撃ち抜かれ航行不能になり、反撃もできずにただ宇宙空間を漂うガトランティス艦艇と勝者となった第五艦隊のみが存在していた。
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